海渡る願い   作:哨戒艦艇

15 / 64
一筋縄ではいかない鎮守府。


第14話

 それぞれの母艦に帰投中の妖精達の会話は明るかった。水雷戦隊からの敵殲滅完了の電報をうけとるとこちらも撃ち落とされ、脱出したパイロットの回収を頼むと水雷戦隊に打電する。瑞鶴隊の面々はあの時の感触が忘れられないのか子供のように興奮していた。

 

 

 『見てくれましたか先輩!我々の雷撃で敵の重巡が沈んでいく様子を!この調子でスコアをどんどん稼いでやりますよ!』

 

 

 『もう少し上手くできたのに・・・悔しい・・』

 

 

 調子に乗っている瑞鶴隊とは裏腹に翔鶴隊の面々は暗い。戦果をあまり上げられなかったことを悔やんでいるのだろう。すこし声をかけてやるか。

 

 

 

 『俺たちが翔鶴隊の分の目標まで食っちまったんだ。落ち込む必要はねぇ。むしろあの状況からとっさに切り替えて1隻持っていけるなんて大したもんだ。なかなか新人にできるもんじゃねぇ。あと瑞鶴隊はビビッて予定投下距離よりすこし遠かったのを俺らは見逃さなかったぞ。』

 

 

 笑いながら瑞鶴隊の面々を茶化すとビビッてなんかいないですよ!!っと口早に返事が次々に返ってくる。笑いながらわかったわかったと適当に流す。が予定投下距離よりも長かったのにもかかわらず、しっかり当てていくやつが多かった。荒削りながらも光るセンスを感じずにはいられない。翔鶴隊も訓練通りこなしつつ、状況に応じたとっさの目標変更への対応の仕方。後輩の育成が楽しみだな。がまだまだエースの座は譲るつもりはないがね。若い戦力が育ちつつあることにうれしさを感じるのであった。それぞれの母艦に戻った航空隊は手荒い歓迎を受けた。とくに赤城隊の2番隊の面々にはなんで俺達にも獲物を残してくれなかったんだ。と笑いながらバシバシと叩かれる。うるせぇお前らが50番をつもうとして配備がおくれたのがいけねぇんだろうが。と反撃する。荒い言葉遣いでしか会話できないが、そこには戦果を上げてきた仲間達が無事帰ってきたことに対する喜び以外の何物でもなかった。

 

 

パイロットの回収を終えた水雷戦隊が間もなく帰投するみたいだ。作戦室から戻り執務をしていた私は大淀から報告を受けると出撃所に迎えに行くぞ。と帽子をかぶり立ち上がる。できたばかりの無線を使い、間宮の厨房に連絡入れる、間もなく水雷戦隊が帰投するみたいなので、ぼちぼちごはんの準備をしてあげるように指示をだす。お昼前に始まった戦闘から時間はすぎ、外はすでに夕焼けに染まっている。私自身も戦闘の指揮のおかげで昼飯を食い損ねた。執務もキリがいいのでこれで終わりにするとしよう。大淀をつれて出撃所に向かう。途中長門と遭遇し、お前もついてこいと引き連れていった。

 

 

 「第一水雷戦隊旗艦川内。及び以下5名。全員無事帰還しました。」

 

 

 「第二水雷戦隊旗艦神通。右に同じく。」

 

 

 工廠で艤装をはずし終えると、明石から何やら紙をうけとった川内が並ぶように指示すると計12名がずらりと並び、川内と神通が少し前に出て敬礼をすると後ろの者たちも同じように敬礼をした。私も敬礼を返し、ご苦労と声をかけ、戦果報告を頼むと声をかけると大淀に記録するように声をかけた。

 

 

 「はっ。では代表して私川内がご報告します。赤城航空隊を中心とした航空部隊の突入後、敵残存部隊を捕捉し、まもなく追撃戦に入りました。しばらく戦闘を行った後、夕立の主砲が敵を捕らえ、駆逐1を撃沈。続いて霞、曙が駆逐1隻ずつ撃沈。その後に好機と判断し魚雷の一斉発射で敵重巡1、駆逐1を撃沈。それぞれ私川内と吹雪。神通と時雨、雪風の共同戦果です。被害につきましては、神通及び響、睦月が小破となっております。弾薬及び燃料の必要補給量はこちらとなっております。」

 

 

 そういって川内が私の前に歩いてきて紙を渡してくる。あの短い時間の中で補給に必要な量を一瞬で計算できたのか。たしかに艤装を外した瞬間妖精達が群がっていたが・・・恐るべき計算力だ。紙を確認後大淀に預かるように渡すと、楽にするようにと川内達に声をかける。

 

 

 「まずはよくやってくれた。航空部隊の活躍もあったとは思うがそれでも君たちが戦果をあげ無事戻ってくれたこと嬉しく思う。艤装に関しては、被害点検をし、緊急修理が必要なもの以外については明日に回してくれ。補給の件については滞りなくやっておこう。そしてもう他の者には少し前に伝えているのだが、入渠施設を拡張し使えるようにしたのでしっかり休んでくれ。あと食堂もだ。今日から3食しっかり食べて英気を養ってもらう。並びに人数分の布団とそれぞれの部屋にエアコンをつけたので必要であれば活用するように。もちろんある程度の温度までしか設定できないようにしてあるが、それでもマシであろう。私からの話は以上だ。よく帰ってきてくれた。では解散。」

 

 

 話は以上だと私は踵を返し大淀と執務室に帰ろうとする。この戦果報告を終えて飯を食べて風呂に入ってさっさと寝よう。今日も疲れた。酒保はまだ完成してないので酒は手に入らない。酒保を管理する人物の割り当てもせねばなと考えながら歩き始めたと同時に待ってください!!と大きな声で私を呼び止める声の方へ振り替える。失礼を承知で質問をよろしでしょうか?と神通が私をみつめていた。

 

 

 「ここにきて以前の提督の方針とは全く違うのは何故なのでしょうか?装備の件といいこの補給や施設の改装もそうです。明らかに違います。これが本部の意思でないのであれば何故ここまで急に変わるのでしょうか?まるで別人の方のような。何故なのですか?」

 

 

 川内が神通に下がるように声をかける。しかし神通は止まらない。

 

 

 「なんで・・なんで今更なのでしょう・・?もっと早くこんな風になっていればこの子たちの姉妹も仲間も・・多くの者が救えたはずです。私たちの妹だって!!抗命罪により私を解体してもらってもかまいません!けれど納得のいく・・納得のいく説明をしてください!」

 

 

 神通の目には涙がたまっている。川内が私から言い聞かせますので何卒どうか許してくださいと懇願する。後ろの駆逐艦たちも気まずそうな顔していたり、すすり泣いている者も多数いた。

 

 

 心配そうに私をみつめてくる長門と大淀、そして明石に大丈夫だとうなずいてゆっくりと神通に諭すように声をかける。

 

 

 「そのことについてはまだ話すときではない。だがいずれ必ず話すと約束しよう。君たちは私が憎いだろう。あるいは恐怖の対象になっているかもしれない。だがこの鎮守府は変わっていく。それを生きて見届けるのだ。私を信じられないのは当然だ。だが大淀や長門などは信じることができるだろう?この者たちは君たちの今の環境を変えようと必死に頑張ってくれている。赤城や明石、間宮だってそうだ。私は信用しなくてもいい。だが君たちを支えようとしている者たちだけは信じてあげてくれ。そして今回の神通への罰だが、神通の抗議はもっともだ。故に罪に問わないとする。これからも水雷戦隊の旗艦として頼りにしている。話は以上だ。では解散。」

 

 

 言葉にならない声で泣いている神通をさすりながら、お許しいただきありがとうございます。という川内の声を後に工廠をさっていく。あんな大人しそうな子が必死に声をあげるとは思ってもいなかった。それぐらい心にたまっていたものがあるのだろう。なんとか改善していかなければ。そう固く誓ったのであった。




時間が許す限り延々と執筆できそうですが、休みはとれないという悲しい現実。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。