海渡る願い   作:哨戒艦艇

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艦これをプレイするよりもキーボード叩いている時間の方が圧倒的に多くなっていることに気が付きました。


第16話

 「それでね!そこで主砲を撃った後に川内さんの号令でみんなで一斉に魚雷を撃ってそのあとドカーンって!!」 

 

 

両手を使って嬉しそうに表現する吹雪。あの時の興奮が蘇るのだろう。自分の大戦果を聞いて聞いてとご飯を食べ終わった後も食堂に残って白雪や睦月、皐月と話していた。

 

 

 「あの時の吹雪ちゃんかっこよかったね!私ももっと活躍したかったなぁ。」

 

 

 「そんなことないよ睦月ちゃん!睦月ちゃんだって主砲をガンガン当てていたし、なんなら私の方が外してばっかりで焦っていたよ~。」

 

 

 「いいなぁ~二人とも。僕も戦場にでて、ドカーンと活躍したいなぁ。」

 

 

 2人の話を聞きながら皐月は今度は僕も!といきこんでいる。白雪は楽しそうに話す吹雪と睦月を見ながら相槌をうち、微笑んでいた。食堂の入口から赤城の声が聞こえてくる。吹雪と睦月は今日のお礼を言おうと立ち上がって赤城の傍によって行くが、やってきたのは赤城だけではないことに気が付き、そして足がピタッと止まってしまった。

 

 

 やはりこうなったか。今度からは控えるようにしよう。赤城と食堂に入った瞬間、それぞれ楽しそうに話をしていた艦娘達が私の存在に気が付くと一斉に立ち上がり、敬礼をしてくる。楽にするように、といって座らせたものの、先ほどの活気は一体どこにいったのか。声のトーンが明らかに落ちてひそひそと話す程度になっている。赤城にやはり私は失礼するとする。と言って部屋に戻ろうとすると赤城に腕をつかまれ、何を言っているんですか提督。ご飯ですよと無理やり列に並ばされる。力でかなうはずもないので早々に諦め、わかったわかったといいながら連行されていく。そんな一連の流れを見ていた者たちはさらに小声でひそひそと話している。ほらみろ。明らかに疑いの目で見られているじゃないか。だから嫌だったのだ。

 順番が回ってきてお盆を前に差し出すと提督!お疲れ様です!と間宮が声をかけてくる。調子はどうだ。不備や足りないものがあれば遠慮なく言うように。と声をかけるとなにかあったらまたお願いしますね。とお辞儀をしていた。赤城と同じようにカレーとその他をもらい、赤城が座っている席に向かっていく。流石に気を使ってくれたのか、端の席に座り、注目の的にならぬようにしてくれた。それでも十分注目されているとは思うが。

 

 

 「いただきます。」

 

 

 その言葉ともに彼女のスプーンは重機のごとく米とルーをかっさらい、口の中に運んでいく。明らかに私の器に盛っている量と赤城の量は違う。日本昔話並にこんもりとしていたご飯があっという間になくなっていく。だがその食べる姿はまったく下品ではない。むしろ見ていて気持ちいいぐらいにおいしそうに食べる姿に感動すら覚えてしまった。私の視線を感じたのか、赤城はあげませんよ?と少し首をかしげるようなポーズをしてこちらを見つめ返す。逆に今のお前から飯を取り上げるやつがいたら見てみたいよ。私が半分も食べる前に彼女は平らげ、おかわりもしていいのでしょうか?とひそひそと声をかけてくる。誰かこのモンスターを止められる奴はいないのか。あきれたやつだと笑いながらまわりを見渡すと、お盆にご飯を乗せたまま明らかにこっちに向かって歩いてくる者がいる。それも2人だ。1人はやや戸惑い気味にあるいてくるがもう1人の歩みに迷いはない。まっすぐこちらにくると、私の隣にお盆をおろし、椅子を引く。

 

 

 「失礼します。提督。ご相伴に預かってもよろしいでしょうか?」

 

 

 神通と川内だ。川内も同じように声をかけ、椅子を引いていた。今はちょっとした会議中なのだ。あっちに行ってくれ。と追い払う。だが神通はにっこりとほほ笑むとそんな風には見えませんでした。むしろ私たちにも今後の作戦について提督の考えを宜しければお聞かせください。と許可なく座ってきた。こいつ強いぞ。なんなら私の存在に薄々感づいている可能性もある。いただきます。と両手を合わせ食べ始める2人。意外と押しに弱いのだな自分は。と押し切られた自分に情けなさを感じつつ食事を進める。そんな様子をみたのかまた新たな足音がこちらに近づいてくるのがわかった。これ以上はやめてくれ。そんな願いもむなしく。よかったら私もよろしいでしょうか?と声が聞こえた。観念して振り返ると、そこには見たことのない艦娘がいた。

 

 どことなく落ち着いた雰囲気の持ち主だ。鳳翔さん!ささこちらにっ!と赤城が隣の席の椅子をひいてウェルカム状態をつくる。もはや私の意思は関係のないところまで来てしまっている。ありがとうございます。と席にすわり食べ始める。なんとも品のある艦娘だ。カレーとてもおいしいですねとはにかんで声をかけてくる姿はとても絵になる。ああそうだな。と生返事をするとスプーンを進める。そしてそれぞれの皿が空になったころ、鳳翔が切り出してきた。

 

 

 「実はお昼に間宮さんとお話しする機会があり、その際になんでも酒保をつくられるようで。その際の酒保を管理する方は決めていらっしゃるのですか?」

 

 

 「いい話題をもってきてくれた。実はそのことを決めかねていてな。残念ながらこれといった候補がいない。いい者がいなければ人選は大淀に任せようかと思っている。酒なども扱うのでできればある程度上の者がいいとはおもっているのだ。駆逐の者が管理するとなった場合どうしてもな。不安が残るからな。誰かいい人材を知っているのか?」

 

 

 「でしたら私に任せてもらえないでしょうか?私は航空母艦ですが性能的には旧式で、赤城さんたちに到底及びません。ですが何かお役に立ちたいと思っていたところ、このようなお話を耳に挟んだので。」

 

 

 確かに鳳翔の雰囲気やまわりの態度をみるに、敬意を払われているのがわかる。そういったものが管理してくれるとなるとまず間違いないだろう。だが自分で旧式とは言っていたがそれでも空母だ。新兵の訓練などできることも結構あるのではないか。そう思い今自分が思っていたことを鳳翔に告げる。私の言葉に鳳翔はうなずきつつ言葉を返す。

 

 

 「もちろん新兵の訓練などは私も行っていく予定です。ですが艦隊の充実をはかっていくのであればいずれは私は不要になるでしょう。そうなった時も、私も皆を支えたいのです。どうかお願いします。」

 

 

 赤城もこの時ばかりはスプーンを止めて聞いていた。一体いつになったらおかわりを止めるんだお前は。悩んだ末に鳳翔の提案を受け入れ、酒保完成時にはお前に任せるというとありがとうございますと喜んでいた。そんなやりとりの様子を見ていた神通はこの会話の勢いを殺すまいといいタイミングで次の話題を繰り出す。

 

 

 「今後の水雷戦隊の運用方法はどういう方針なのでしょう?宜しければお聞かせいただきたいです。」

 

 

 きたか。きっとこいつは佐賀山提督の身になにか大きな変化があったことに確信をもっている。こちらを見つめる目は真剣そのものだ。さきほどの鳳翔との会話を聞いていた川内もこちらに身を乗り出して聞いている。こちらとしても本性をばらさなければ内容ぐらいはしゃべってもいいだろう。せっかくやる気になってくれている者たちの士気をくじくべきではない。

 

 

 「それについては長門や大淀、そして赤城と協議したのだが、私としては今後、水雷戦隊の作戦方針は大幅に切り替える予定だ。装備を整える段階はすでに進んでいるのが、お前たちも今日の海戦でわかっただろう。今後さらに充実させていく予定だ。そして囮作戦で戦果をあげるのではなく、水雷戦隊単体で戦果をあげられるように練度を高めていってもらう。それぞれの艦娘が装備に慣れ始めたら実践形式で演習を行い、その結果をフィードバックし実際の戦闘で役にたてることができるようにするのだ。戦艦や重巡に火力が劣るが、高速艦ならではの利点を生かし、強みを敵に押し付け、戦いを有利に進められるようにしていくぞ。そのためには、お前たちにしっかり水雷戦隊をまとめてもらう。ついてこい川内。神通。お前たちの力が必要だ。」

 

 

 この言葉を聞き終えた神通と川内の心の中には風が吹き始めていた。熱い。とても熱い風だ。自分達を信じ、任せ、何より必要としてくれている。囮ではない。純粋な戦力としてだ。失われた艦娘の誇りに火がつく。思わず2人はその場に直立し、はっ!と敬礼をしていた。そんな様子をみた提督は焦りすぎだな2人とも。もっと気楽にいてくれてかまわないんだぞ。と笑っていた。信じ、この方についていくこと。この選択が間違っていないことだけはたしかにわかった。

 

 




迷いを捨て、覚悟を決めた神通は強い。
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