「わわっ、フカフカなのです!」
支給された布団をひろげてダイブする響の真似をして布団に飛び込む電。もう~はしたないわよ電!と声のする方をみるとすでに飛び込んでいる雷の姿が見えた。雷ちゃんだって同じことしてるのです。と心の中でつっこむ。これはいいな。と響は気持ちいいのか、目を閉じてうとうととしている。確かに凄く気持ちがいい。今までは雑魚寝だったのにこんなにいい待遇をしてもらっていいのだろうか。布団の温かいぬくもりと不安な気持ちが同時に襲い掛かってくる。だが今日の司令官はいつもと違う雰囲気だった。上手くは言えないが、少なくともどこかギラギラとした様子ではなかった。明日もあんな感じだったらいいのに。と思いながら寝る支度をする。これとってもすごいわね!っと雷がエアコンの温度や風量をぴっぴっと押しまくっていた。そんなことをしたら壊れちゃうのです。と雷を止め、それぞれ布団に入り、眠りにつく。温かくて美味しい物を食べ、温かい布団で寝る。だがどんなに温かくなろうと、心の隙間は満たされなかった。4人で今日の日を迎えられていたら。3人の枕はしっとりと濡れていく。エアコンの風の音がやけに耳に残っていた。
話し合いを終えて食堂を後にする。赤城はお部屋まで送り致します。とついてくる。ハメられたな。鳳翔と事前に打ち合わせをし、自然な形で話し合いの場を設けようとしていたのだろう。もっとも川内や神通の登場は予定外だったのか、少し焦っていたように見えたが。まぁ鳳翔に関しては酒保という場所を管理してもらう以上嫌でも定期的に連絡をとる必要があるからな。あの様子であれば私の秘密も漏らすことがないだろう。こちらとしても事情を分かってくれる者が多いほうがやりやすいのは確かだ。次回酒保についての話し合いの時に秘密を話すとするか。問題は急激に広まることによって混乱状態になることだ。それは避けねばならない。赤城に今日は君にやられたな。と声をかけると、なんのことでしょうか?とほほ笑みながら返事を返してきた。女の嘘と涙は許せとよく言うが、私はあいにく怪盗ではない。そんな度量の広い心の持ち主ではないのだ。だが今回の話し合いは実りもあったので許すとしよう。
私の部屋の前につくとではまた明日もよろしく頼む。と声をかけドアノブに手をかける。提督っと私を呼び止めてきたので振り返ると、神妙な顔立ちでたたずんでいる赤城がいた。どうやら温かい眠りにはまだ早いらしい。どうした?と声をかけると、やがて彼女は話し出した。
「提督のおかげで私たちは誇りを取り戻すことができそうです。感謝の念に堪えません。私は提督と執務室で初めて出会った日、いえ、先ほどまではきっと心のどこかで疑っていました。きっと口だけなのだろうと。この数日という短い期間ですが、提督の姿や言動、眼差しをみるとそれは私の間違いなのだと気づきました。今日の戦闘も決してむやみな命令をせず、帰投後もねぎらいの言葉をかけてくださりました。それに入渠施設や食堂、工廠まで。提督にとっては当たり前のことをしただけだと思うかもしれませんが、私たちにとってはそれだけで嬉しかったのです。私たち艦娘は元々は兵器でした。兵器とは道具、人が使って初めて機能するものです。ぞんざいに扱われることは何より悲しかった。ですが提督は私たちのことを認めてくださります。先ほどの食堂の会話でそう確信したのです。少しでも長く、大事にしてくれる。道具、いえ艦娘にとってこれ以上の冥利に尽きることはないのです。この感謝の気持ちをどうしても伝えたかったのです。引き留めてしまってすみませんでした。」
深々と頭を下げてくる姿に私も胸が熱くなっていた。がらでもないが、年をとってくるとこういった生の感情に弱くなる。
「大丈夫だ、君達の働きには感謝している。私もできるだけ君達の期待に応えられるように努力する。」
ありがとうございます。と再び赤城が頭を下げる。このままではらちが明かないので今日はもう寝て戦闘の疲れを癒すように。と命令するとはっ!と敬礼をしている。が、まだ赤城は動かない。その様子を察してあげてまだ何か言いたいことがあるのだろう?と促すと赤城は口を開く。
「実は・・・提督に会っていただきたい人、いえ、艦娘がいるのです。明日にでも会っていただけないでしょうか?」
となにやら訳ありな感じの様子で話してきた。事情の説明が欲しいところだが、今日はもう遅い。明日にでもその艦娘から直接話を聞くとしよう。そう伝えると赤城は満足したのか、再びありがとうございます。と嬉しそうな表情を見せてくれた。いつ言い出すか悩んでいたのだろう。では明日執務室にその者ときてくれというと赤城と別れ、ドアの向こうから聞こえてくる眠りへの誘いに導かれ布団に潜り込むとやがて眠りについた。
起床ラッパで目を覚ますと、身なりを整え、食堂に向かう。食堂の片隅で手早く食事をすますと、執務室に向かう。大淀と合流し、昨日の件を話す。鳳翔についてはいいと思います。とお墨付きを頂いたので、後に話し合うとしよう。次に赤城の件を話すと、はきはきと喋っていたのに突然黙り込み始めた。なにか問題でもやってきそうな展開だな。と思い理由を尋ねようとすると、執務室の扉を叩く音がする。赤城が入室を求めてきたので入れと促す。失礼します。と緊張した様子で入ってくるのでこちらも身構えてしまう。
「昨日お話した例の艦娘を連れてきました。只今執務室の入口で待機してもらっています。入室を許可していただいてもよろしいでしょうか?」
かまわん、と快諾するとありがとうございますとお辞儀をし、執務室をでていく。ある程度声はもれているはずだ。何故入ってこない?疑問に思っていると、次の瞬間その理由を即座に理解できた。
「失礼します。このような姿で再会となり、申し訳ありません。航空母艦、加賀。只今参りました。」
これは確かに訳ありだな。私の目の前には加賀と名乗る女性が車椅子に乗ってあらわれた。
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