海渡る願い   作:哨戒艦艇

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更新速度で休みの日ばれてしまう説。


第20話

『畜生早く戻ってこいってんだ!ぼやぼやしてると俺が乗るころには昼飯に間に合わねぇぜ!』

 

 

 そうぼやきながら空を飛ぶ新型を眺める加賀艦内に取り残されたパイロット妖精達。あの時パーを出しとけばよかった。と自分の運の無さを後悔しつつも、先に乗り込んだ妖精の感想を無線越しに聞く。案の定こいつはいい。乗ってみればわかる。と具体的な感想が返ってこない。新型に夢中になっているのだろう。碌なやつがいやしねぇ。とぼやいていると予定時間を大幅にオーバーした先陣組が慣れた手つきで甲板に着陸し、艦載機から降りてくる。悪びれた様子がまったくないのが実に腹立たしい。

 

 

 『てめぇ予定時間よりかなりすぎてるじゃねぇか!艦載機の数がないから使いまわしで交代して乗るって事前に決まってただろうが!』

 

 

 そう文句を言いよると、悪い悪い、お詫びに今度酒保ができたら甘酒奢ってやるからさ。とりあえず乗って見な。おれの気持ちがきっとわかるぜ。と言われむむむ、と引き下がる。まぁそれならいいだろう。と思いながら燃料補給を済ませた直後に乗り込んでいく。現金なやつ。と呆れながら前任のパイロットは発艦していった紫電改二を見送るのだった。

 

 

 こいつはいい。確かに夢中になるのもわかる。撃たれてみないことにはわからないが、燃料タンクにも防弾タンクを装備しているらしい。相手の装備にもよるが一発当たってお釈迦になるってことはなさそうだ。もっとも被弾するつもりはないがな。速度、上昇力も零と比べて申し分ない。あとは馴れるのみだな。20ミリも4丁に追加されており、これで深海棲艦の野郎どもをぶちぬくことができるぜ。一通りの操作をこなしてもう一度。と繰り返していく。提督が変わってから燃料弾薬関係は出し惜しみする必要がなくなったのはありがたい。訓練に励み、後は己の腕をあげるだけだ。無線の会話では隊長はまだ乗っているのかとっくに交代の時間を過ぎているのにもかかわらず、降りてくる気配がないようで、隊長そろそろおりきててくださいよ~!!という声が聞こえる。航空隊の隊長として機体のことを誰より熟知しなければならないのだ。許せ。という上官の権限をフルに活用してひたすら訓練をしているようだった。そんなぁ~っと残念そうな待ち組の声が容易に想像できてニヤけてしまうも、限られた時間での訓練なのだ。誰よりもモノにせねば。と気を引き締めていくのだった。

 

 

 「やはり足回りに少し不安が残るわ。流石に以前のようにはいかないものね。」

 

 

 赤城に感想をきかれると今感じていることを素直に話す。思った通りに体が動かないことに少しのいら立ちを覚えるも、動けるようになっただけましだ、じきになれると自分に言い聞かせ、艦載機のパイロット達の反応も聞いていく。問題は速度だ。20ノットを超える速度がでないのだ。それに旋回速度も鈍っている。これでは艦隊の中心として運用されることはないだろうと残念な気持ちになる。赤城さんの隣で戦うことは叶わないか。残念だけど諦めましょう。少しずつ自分にできることを。そう思いながら訓練を終え、港に帰投した。

 

 

 執務を大淀とともに行っていると、扉をノックする音が聞こえ、入るように促すと、車椅子の加賀と赤城がはいってきた。調子の具合を聞くと、どうやら主力艦隊としてはついていけなさそうとのむねを伝えられた。だがもともと空母は最前線で戦うものではない。どうにでもなるさと励ましつつ、少し会話をしていると昼時になっているのに気づく。執務を一旦切り上げ食事にありつこうとするが、加賀が食堂に現れた時に恐らく質問攻めにあうだろう。その際に私がいたら気まずくなるなと想像し、私を残していくように命令をだした。案の定赤城や大淀は提督ご一緒に。と誘ってくるが今回ばかりは遠慮させてもらう。と丁重に断った。内線で厨房の間宮に連絡し、時間をずらしていく予定なので私の分を残しておいてくれと伝え、少し仮眠をするかと部屋に戻る。気を使ってくれたのか妖精も私から離れようとせず、私の近くでうたた寝をはじめていた。可愛いやつだ。と様子を見ていると、いつの間にやら私の意識はおちていった。

 

 

 提督と一緒に食事ができないことで残念そうな顔をしている赤城とは裏腹に、加賀は内心楽しみにしていた。大淀は気を使ってくれたのか、たまには水入らずで食事を楽しんでくださいね。と明石の工廠にむかっていった。赤城が車椅子を押してくれながら食堂に向かう途中で想像が止まらない。入渠中に赤城が食事のことをあまりに事細かく話してくるものだからいやがおうにも期待してしまうのだ。赤城さんにはきっとグルメリポーターなる仕事が似合うわね。クスっと笑いながら会話していると、まもなく食堂についた瞬間、今日は何がきたんだ。と皆の注目をあびる。少し恥ずかしいがしょうけどないわね。開き直ると赤城さんに早速並びましょうと声をかけ列に並ぶように促す。あちらこちらから加賀さんだ。生きていたんだ!という声やあの人は一体誰なんだ?という顔をしている者もいる。私がいなくなって数カ月たっているのだから知らない子が増えても当然か。と考えていると加賀さん!と声をかけて近寄ってくる者たちがいた。視線をむけると数カ月しかたっていないというのにひどく懐かしい気持ちになっている自分がいた。

 

 

 「加賀さん・・・生きていたのです?・・よかった・・本当によかったのです!」

 

 

 半泣きになりながら自分に抱き着くとこらえきれなくなったのか、わんわんと泣き始めた電。その様子を眺めてあやす雷。信じられないね。と驚きながらもどうやら崩壊一歩手前で踏みとどまった様子の響がそれぞれ加賀を取り囲んでいた。

 

 

 「あの時は本当にごめんなさい。貴方たちに合わせる顔がないわ。でも貴方たちがいなければ私はこうしてここにいることができなったわ。あの時のお礼がやっといえるわ。ありがとう。」

 

 

 「そんなことないのです!!電は・・!加賀さんが無事で本当にうれしいのです!暁ちゃんがいなくなって加賀さんもいなくなって私・・私・・・!」

 

 

 「そうだ。加賀さんがこうして帰ってこれていたのなら暁もきっと喜んでくれてるよ。」

 

 

 感極まってもはや喋れなくなっている電とそれに続いてフォローをしてくれる響。雷もきっとそうよ!と健気に励ましてくれる。3人を抱きしめありがとうというと、続きのお話は食べながらしましょ。と赤城がとりまとめ、列に並びなおす。そして自分の番がまわってきてお盆に食欲をそそる香りをはなつ物体を器にもらい、早く食べましょう、と赤城に席に着くように促す。一航戦の血が騒いでいるのだ。これは戦いになる。間もなく響たちを含め5人で席につくと両手をあわせ、箸を手に取った。茶色い楕円形の物体に黒く、少しだけ濃度がありそうな艶めかしい液体がかかっている。ほかほかと白ご飯とその物体から放たれている湯気が自分を惑わせる。つけあわせのコーンサラダという瑞々しい野菜も色鮮やかで美しい。そしてさらにコーンスープというほのかに甘い香りを漂わせてくるこの液体もなかなか手ごわそうだ。どれから手を付けるか迷っていると。今日のご飯もおいしいのです!と目を少し腫らした電がおいしそうに食べていた。負けていられないと覚悟を決め、謎の物体に箸をいれ縦にわる。こぼれるのではないかという勢いで油が溢れ、ツツーっと皿にこぼれていったかと思うと、気づかないうちにその物体は口に運ばれていた。あぁ。これは抗えない。そこからの箸のスピードは止まらなかった。濃厚なソースと呼ばれるものを絡めたこの食べ物はどうやら私の好物第一号ね。と思いながら目の前の皿が少しずつ寂しくなっていく。サラダもシャキシャキとしておいしく、スープも想像していた味よりもまろやかでほっとするような味だった。雷によるとこの料理ははんばーぐというものらしい。メニュー表にのっていたのだがその存在をしったのはたった今なのだ。無理もない。お腹いっぱいなのです。と満足そうにお腹をさする電をしり目に満たされていない自分がいる。意を決して赤城に神妙な面立ちで問いかける。

 

 

 「ところで赤城さん。これはおかわりすることはできないのですか?」

 

 

 「いえ、提督の計らいにより、おかわりは自由となっていますよ!」

 

 

 一航戦の戦いは始まったばかりだ。




先生の次回作にご期待ください
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