「そろそろ建造を行い、艦娘を増やして戦力の拡大をはかってもよろしいのでないでしょうか?」
訓練から帰ってきた川内と神通の報告を受けながら、大淀が私に問いかけてくる。
「今私たちが率いている者たちも十分とは言えませんが、それなりに訓練を重ね、動けるようになっています。新しい戦力を増やしてもかまわないと私は思います。」
「同じく。提督が以前からおっしゃっていたローテションなるものを行うためにも人数は多いほうがいいかと。非番の日が回ってくる回数を増やすことで心身を休めることでさらに激しい訓練を行うことができるようになるかと。」
1人恐ろしいことを言っていたような気がするが、確かにその案は魅力的だ。艦隊としての戦力拡大を図り、スクランブルや大規模な戦闘にも対応できるようにしなければ。幸い今は小競り合いで済んでいるが、いつ深海棲艦が大艦隊で攻めてくるかわからない。備えは多いことに越したことはないのだ。建造を許可すると工廠の明石に連絡をとり、昼から建造を行うので用意をするように内線で連絡を入れる。昼ご飯をすませ、大淀と供に工廠へ向かい、明石と夕張、そして妖精達が迎えてくれた。
「突然の決定ですまないな。事前準備もドタバタだっただろう。」
「いえ!大淀からそろそろ準備が必要かもしれないと部屋で相談を受けていたので提督から声がかかる前に用意はしていました。なので準備はばっちりです!」
明石の頼もしい返事を聞きながら相変わらずできた秘書だ。と大淀をほめると、恥ずかしながらも嬉しそうに頬をポリポリとかきながら照れ隠しをしていた。だが私は建造については全くの無知だ。大淀からもらった資料で一応確認はしているが、実際に見たことがない。では始めてもらってもいいか。と声をかけると、夕張がみんな頼んだわよ!と声をかけると、妖精達が一斉に持ち場につき、トンテンカンテン、バチバチバチと作業を始めた。台のようなものに船の下地らしきものがあり、それをつくってるようだ。明石いわく、建造は妖精達にしかできず、自分たちは一切手出しができないという。しかも戦艦や重巡、駆逐などある程度はオーダーできるのだが、細かい指定はできず、どんな艦娘ができるのかは一切わからないみたいだ。つまり運任せという事か。と明石に尋ねると、まぁそんな感じですね。アハハと困ったように笑いながら妖精達を眺めていた。
にしてもとてつもないスピードだ。一切無駄のない手際で艦のプラモデルみたいなものが出来上がっていく。このプラモデルをどうするのか?と悩んでいると、できあがったのだろう。みんなでばんざーいと三唱していた。他の組は少し大きい艦を組み立てているのか、少し時間がかかっているみたいだ。このできたプラモデルが一体なにになるのか?とおもっていると、重機でプラモデルが窯みたいなところに台にのせて運ばれ、中に押し込まれていった。そして扉を閉じると火が入ったのか、扉の上の灯が赤く光り、音を上げながら熱を発していく。扉の近くにいくと熱がもれてきているのか、少しばかり熱かった。中を覗くことができないようになっていたので、気になるところだが覗けないのであればしょうがない。
「中でどうなってるのか私たちもわからないんですよ。」
夕張にそういわれ、そんなものか。と納得し、しばらく雑談をしながら待つ。やがて次々に完成したプラモデルが同じように窯にはいっていくと、それぞれの扉の灯が赤く光り、
フル稼働で建造にはいったのがわかった。妖精達はやり遂げたことに満足したのか、だらーんとしながら飲み物などをとって休憩している。事前に大淀にこれをわたしてあげてください。と用意された、間宮特製の甘味をご苦労だった。といいながら妖精にあげると、疲れていた様子などどこに行ったのか、わぁっと群がってきてあっという間に配給が終わってしまった。甘味の力は絶大だ。
しばらくすると最初にいれた灯が緑に光った。間もなく完了ですよ!と明石がいうと、扉からぷしゅーっと少量の煙が出たかと思うと、扉がぎぃーと空いてこつこつと足音が聞こえてきた。扉から出てきた少女はあたりをきょろきょろとみまわすと、やがてこちらの存在に気が付いたのか、歩み寄ってきて綺麗な敬礼をして自己紹介を始めた。
「駆逐艦、霰です。よろしく願いします・・・」
あまり元気がなさそうな子だ。不思議な雰囲気を醸し出している。独特な雰囲気とでもいえばいいのだろうか?駆逐艦といえばもっとはきはきした子が多い印象だったが、こんな感じの子もいるのか。と思っていると、遅れて投入した窯もぷしゅーっと煙をあげ次々に完成の合図をだしてきた。もれなく扉がそれぞれあき、艦娘が歩み寄ってきて私に挨拶をする。
「駆逐艦、暁と申します。水雷戦隊の一員として身を粉にして戦う覚悟です。」
これまた幼そうな子が出てきた。難しい言葉を覚えた子が一生懸命に披露してきたような印象を受けた。にしても霰といい暁といい、誰かに似ているような気がする。駆逐艦は姉妹艦も多いみたいなのでおそらく仲間なのだろう。霰と同じように敬礼を返した後、よろしく頼む。と握手をし、暁は霰の隣に並んでいく。その後も綾波、敷波、長波、長良、妙高、摩耶といった艦娘が現れ、合計8人の艦娘が増えた。中には艤装だけがでてきた場合もあり、明石も大淀もこれは初めてのケースなのでわからない。といいながら興味深そうに眺めていた。艤装はなにかにつかえるかもしれないと、一応保管することにした。やけに駆逐艦に波がつく子が多いのが気になるがまぁいいだろう。と気を取り直して皆に挨拶をする。
初めは堅苦しい感じだったが、公の場以外では楽にしてもらっても構わないというと、皆それぞれ砕けた感じになってくれた。古参組はどうしても前任者の思い出があるため気軽に私に話しかけることができないのだろう。このような反応は新鮮だった。とくに摩耶に関しては、どうせなら私の姉妹も頼むぜっと言ってきたのを皮切りに妙高もよろしければ・・とお願いしてきた。狙って出せるものではないと説明するとちぇっと摩耶はつまらなさそうな顔をしていた。資材には余裕もあるし、どうせならあと数回やるか。と建造を行ったところ、摩耶と妙高が興奮したようにしゃべり始めた。出来上がっていくプラモデルらしき物をみて、なんでも自分の型と同じだと喜んでいた。
まさかの展開に困惑しつつも、少しばかりの時間の後に窯から出てきた艦娘は確かに妙高や摩耶と同じような格好をしていた。那智と鳥海というらしい。2人は私に挨拶を終えると、それぞれ姉妹の再会を喜んでいた。残りの二つの窯からは、マイペースそうな感じの北上という子と大井という愛想のいい子がでてきた。これまた挨拶を終えたあと、2人は再会を喜んでいた。こんなに都合よくでるものなのだろうか。そろそろ妖精達もへばっていることだしこれぐらいにしておこう。後で追加の差し入れを持ってこなければな。
そう考えていた矢先、後ろの方から、足音が聞こえたかと思うと、ざわつく声が聞こえた。振り返ると、昼からの訓練を行う水雷戦隊達が艤装を装着しにきたようだった。だが一部の子達の様子がおかしい。朝潮や霞、響、雷、電といった子達は固まっていて、やがて我に返ると少しずつそれぞれ歩み寄って行った。それぞれワンワンと泣きながら会話をしていた。暁と霰は戸惑いながらも照れ臭そうに喜んでいる。先ほど生まれたばかりなのだから、いきなり泣いてこられても困るはずだ。だが2人も何となく事情を察しているのだろう。今度はきっと大丈夫と励ましつつ姉妹に再会できたと敬礼し感謝の意を述べてきた。以前恐らく沈んだであろう暁と、霰本人ではないだろうが、それでも今目の前にいるのは自分の姉妹なのだ。気にするな。と返事をし、
「着任したばかりで申し訳ないが今から訓練にでてもらえるか」
と新参組に声をかけると、了解です。と返事が返ってくる。艤装に装備を付けている間、今日は早めに訓練を引き上げ、それぞれ鎮守府の案内をしてあげるよう指示を出す、新参組は初めての訓練なので無理をしないように。と念を押し見送った。戦力の拡大はこれでしばらく大丈夫そうだ。あとは部屋割りだな。と考えながら工廠を後にした。
人数が増え、戦力の拡大に成功です。もちろん古参組にもまだ出てきていない艦娘もいるのでそのうちお話に出そうと思っています。