海渡る願い   作:哨戒艦艇

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雪風改二の設計図が足りない。悲しいです。


第27話

 訓練を終え、艤装を外した一行は、鎮守府の案内を大淀から受けている。特に摩耶と暁は綺麗な食堂や部屋をみるたびに目を輝かせてあれこれ質問していた。打てば響く反応に大淀はなぜか少しだけ自慢げな気持ちになった。やがて案内が終わると、それぞれの部屋の割り当てと制服の採寸にうつる。暁は採寸中の鳥海を見つめ、やがて自分の体に視線を移すとペタペタと体を触っていく。毎日牛乳を飲めばきっと・・・と小声で呟いている姿が微笑ましくてついつい笑顔になってしまう。暁ちゃんは立派なレディーになれますよ。と笑顔で話しかけながら暁の採寸をしていく。やがて全員の採寸が終わり、後日届きますので届くまではこれを。と言いながら用意していたフリーサイズの着替えをそれぞれ支給する。やがて解散になるとそれぞれが部屋に一旦戻り、入渠施設に汗を流しに向かった。

 

 

 賑やかな場所だ。この分ならここで退屈はしなさそうな予感。北上は湯舟につかりながら、周りできゃいきゃい騒ぐ駆逐艦達を見ていた。隣の大井はさっきから話しかけてくれるが、騒ぐ駆逐艦達のせいでところどころ聞こえない。なんでこんなに元気あるんだこいつら。と思いつつ、今日の訓練内容を思い出す。私達建造組は初回とあってか、訓練内容は軽く流しただけだったが、今騒いでいる子らは文字通り死に物狂いで訓練していた。神通とかいう艦娘。訓練前と訓練中の性格ががらりと変わっていて驚いた。優しそうな雰囲気が一変、かなり厳しい内容を次々とこなすように命令し、その訓練内容にみな苦しい表情を浮かべていた。特に暁は自分の姉妹がぼろぼろになりながらも訓練を続けていることに若干ひいていたぐらいだ。まぁ確かにあれはやりすぎなんじゃないかとは思うが、そこがここのやり方なのだろう。ついていけっかな~と心配していると、これから一緒に頑張っていきましょうね!と大井がニコニコしながら握りこぶしを両手でつくり、グッとしていた。大井っちがいればなんとかなるか~と楽観的な気持ちになり、がんばろーね!と笑顔で返す。そろそろ食事の時間だ。ぞろぞろと上がっていく群れの流れに身を任せて私達もあがるとしますか。脱衣所でもきゃいきゃい騒ぐ艦娘達。あまりのはしゃぎっぷりに何とかならないものかとため息をつく。やっぱ駆逐艦ってうぜーわ。

 

 

 以前よりも人数が増えたため自然と活気づく食堂。うめーなこれ!と摩耶が鳥海に話しながら食べる姿に、もう。行儀悪いわよ。とまるで母親のようにめっと叱りながら食べていた。那智は酒保にある酒が気になる様子で目の前のご飯を食べつつも、視線はちらちらと目当ての酒のある方から離せずにいた。妙高はご飯を食べ終わってからにしなさい。他の子がみて真似したらどうするんですか。とぴしゃり。どの姉妹もやはりしっかり者にはかなわないようだ。提督が食堂に現れても以前のようにシンっとした空気にはならず、活気は衰えることはない。真船が着任して1カ月。相変わらず一部の古参組以外は声をかけてくることはないが、それでも確実にこの鎮守府は変わっていっている。みながその空気を感じていた。

 

 

 「提督。じつはお話があるのです。宜しければ聞いていただけませんか。」

 

 

 あくる日の朝、大淀のおかげで早めに業務を終えた私は鳳翔から相談を受けていた。いわく、間宮達の仕事を手伝っていくうちに自分もなにか料理をつくってみたいと言い出したのだ。料理なら手伝いでつくっているからいいのでは?という私の問いかけに待ってました。と言わんばかりに鳳翔は本を取り出す。そして一部のページを目の前に広げて見せながら話し出す。

 

 

 「酒保で仕入れている雑誌を色々見ていると、晩酌にあう料理というのがあり、それを夜にお酒と一緒にだせたらなぁと。私も嗜む程度ですが、お酒も飲みますし、提督もよくお酒を買いにいらっしゃるでしょう?そういう場があってもいいのではと思ったのです。」

 

 

 「つまり君は居酒屋みたいな感じの店を切り盛りしたいということかね?」

 

 

 お恥ずかしながらそういうことです。と少し照れながらお願いします。と両手をあわせ神頼みポーズをしてくる鳳翔。なんだがこういう大人びた感じの子が、親にお小遣いをねだる子供みたいな行動をしてくるギャップというのだろうか。やられてしまいそうになるが、実際問題そんなことが可能なのか?と、問いかけると鳳翔は酒保をやりながらでも十分に可能。キッチンも酒保と厨房は間宮、伊良湖の菓子を運ぶためにつながっているのでそこを使う。調理スペースも厨房の改装により、余っている部分もあるのでそこを使うとのこと。物は試しだ。それにそれが鳳翔の趣味なのだろう。問題さえおこさなければ大丈夫だ。それに飯を食べ終わった後、部屋で酒をつまみであおるよりも、誰かの手料理で飲む方がいい。許可をやると、ありがとうございます。と嬉しそうに礼をいいさっていった。近くにいた妖精に頼めるか。と声をかけると、びしっと敬礼し、姿を消していった。現場で鳳翔の要望を聞きながら改装をしていくのだろう。

 

 

 後日完成した酒保あらため、居酒屋鳳翔ともいうべきだろうか。彼女の店は繁盛していた。主な客層?は戦艦や空母、重巡など大人の見た目をした艦娘が多い。私も間宮と酒を飲みながら、カウンター越しにいる鳳翔と3人で会話をしていた。間宮は自分達が料理やお菓子をつくるのもいいが、たまには人が作った料理を食べたくなる時があるみたいで、それが実現してうれしいようだ。もてなす側でなく、たまにはもてなされる側につきたいと思うことがあったのだろう。厨房組の2人のリフレッシュできる場所をつくれたのはいいことかもしれない。鳳翔の料理に舌鼓を打ちうつつ酒を飲んでいると、人がぞろぞろとはいってくる。那智と隼鷹だ。

 

 

 「おぉ。提督ではないか。今日は私も飲みたい気分でな。先ほど隼鷹とたまには飲むかという話になってここにきたのだ。どれ、テーブル席に移ってみんなで飲むとしようではないか。」

 

 

 なにがたまにはだ。開店そうそう頻繁に入り浸っているともっぱらの噂だぞ。隼鷹はすでに飲んできてるのか執拗に絡んでくる。わかったわかった飲もう飲もうとあやし、席を移した私たちは再び乾杯した。財布の中身を確認する。まぁ今回初めてここで遭遇したわけだし奢ってやるか。こうして鎮守府の夜は過ぎていくのであった。




居酒屋が完成。そしてのんべぇが集っていく。
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