建造された艦娘達が鎮守府に着任してから数週間が過ぎた。厳しい訓練や、工廠組の装備開発もおかげもあってか、以前と比べると見違えるようだ。深海棲艦達と小規模な戦闘はちょくちょく起きてはいるものの、こちらの損害無くすべてを撃退し、〇〇鎮守府は着実に戦果をあげていた。本部にあげる戦闘詳報も日に日に調子よくなっていくのがわかる。あとはいつ本部がコンタクトをとってくるかだ。真船提督をお守りしなければ。大淀は執務に励む真船をこそっとみながら気合いをいれ自分も執務に励むのであった。
ブロロロロとけたたましいプロペラの音を聞きながら彩雲のパイロット妖精は今日も偵察をいつもの通り行っていた。最近できたばかりのこの彩雲は主に偵察運用を目的として開発されたものらしい。確かに武装はとても貧弱だが、その分速度は速く、長い距離を飛行できるため偵察にうってつけの機体だ。最近深海棲艦のちょっかいが多いのを気にしてか、飛行ルートを遠くまで長めにとるようにした。海から哨戒するよりも上空から広い範囲を見渡したほうが効率がいいのは決まっている。なにより最近は新型も配備されるし、お菓子も沢山食べれるので任務も苦ではない。哨戒を終え、いつものように異常なし。と打電しようとした瞬間、はるか遠くの海に黒いつぶのようなものが見えた。気になって目を凝らしてみると、やがてそれは群れで動く大きな何かということに気が付いた。
『おい!あれは敵ではないのか?急いで打電しろ!』
後ろにいる通信妖精に声を荒げると、雲を上手く使って近づいていく。かなりの数だ。これは大規模戦闘になる。少しでも情報を得ようとするが、流石に敵も気が付いたか、少数の戦闘機がこちらに進路をむけて突っ込んできた。これ以上は無理だと判断した一行は方向転換し、逃走を図る。得た情報を打電するように伝えると、後ろから敵戦闘機が追いついてくる。少しずつ距離が縮まることに焦りを感じ、フルスロットルで加速する。すると思った以上の速度が出始め、彩雲の性能の高さを思い知った妖精達。こんなんならもっと敵の情報をとって敵をおちょくってやればよかったぜ、と笑いあいながら帰投する。気持ちのいい逃走劇に気分が上がってしまったのだろう。
我ニ追イツク敵機ナシ。
敵艦隊発見の報告とともに送られてきたこの電報に長門はため息をつくのであった。
偵察機から送られてきた情報により鎮守府は慌ただしくなっていた。近海で訓練をしている水雷戦隊を呼び戻し、実弾の装填と燃料補給などをすまし、いつでも出撃をできるようにする。同時に作戦指令室に真船と大淀、そして長門と向かい、敵艦隊の迎撃態勢を話しあうことになる。遅れて赤城と加賀、陸奥がやってきて面子がそろったのを確認すると、真船の声で会議がはじまった。
「緊急事態だ。敵の大規模な艦隊がこちらにむけて進軍しているとの情報が入った。敵は小笠原諸島近辺で発見され、こちらに進軍中。艦種は戦艦4、空母2、軽空母4、重巡8、軽巡10、駆逐18の大艦隊だ。」
私の報告にみな緊張した面持ちで海図を眺めている。敵はこれまでの小競り合いの結果を考え、それなりの戦力を投入する必要があると判断したのだろう。だがこれはチャンスだ。深海棲艦は世界中で発生しており、戦線を広げすぎている。これほどの規模を再び集めるとなるとかなりの時間を有するはず。ここを叩けば南東にある島々の再確保に向けて有利に進めることができるはずだ。そう鼓舞すると、長門はこの戦い、負けることはできんなと気合い十分になっていた。ほかのものも頷くと、私は作戦を立案していく。
「敵部隊はかなりの規模だが空母や戦艦の数はこちらも劣っているわけではない。だがもたらされた情報以外にも別働隊がいる可能性も否定できん。」
「敵は小規模戦闘を繰り返したことにより、こちらの戦力規模をある程度把握しているはずよ。本気でつぶしにきているのならそう考えたほうが妥当ね。」
「陸奥の言う通りだが、仮に敵の別働隊がいた場合、どのルートを通ってくるかが問題だ。何も考えず直進してくる可能性もあるが、そうとも言い切れん。提督よ。ここは戦力をまとめて投入するよりかは、少数の部隊を後詰として残しておくべきだろう。」
「では後詰の部隊の役目は私が引き受けます。艤装の問題で速度が出ない以上、高速の水雷戦隊の機動力が失われてしまうのは痛いですもの。ちょうどいいわ。」
長門と加賀がそれぞれの案を口にし、それぞれ承認していく。 最終的に長門を旗艦とし、そこに翔鶴や瑞鶴、隼鷹、龍驤の空母陣を水雷戦隊が護衛につく布陣になった。館内放送で命令をだしたあと、私も出撃所に向かう。出撃命令のためにぞろぞろと集まってきたものと、訓練から補給整備のために戻ってきた部隊で出撃所は艦娘であふれかえっていた。私は聞いてほしい。と声をあげ、みなに聞こえるように話しかけた。
「君たちの活躍により、小規模ながらそれなりの戦果を誰一人欠けることなくあげてきた。しかし業を煮やしたのだろう。敵がかつてないほどの大規模な攻勢をしかけてきた。これだけの規模の戦闘だ。犠牲もでるやもしれん。しかし、だからといってここで逃げるわけにはいかない。我々の後ろには国がある。民がいる。護るべきものがあるのだ。皆の力を貸してくれ。」
「なにを言うのだ提督よ。我々艦娘は戦うために、国を護るために生まれてきたのだ。戦いの中で華々しく散れるのであればそれは本望だ。この長門を含め、今のこの鎮守府には臆病者など一人もいないぞ!」
私のちょっとした演説のあとに長門が反応し熱い言葉を返す。それに呼応し、そうだそうだ!と皆の高ぶる声が聞こえてくる。戦闘だって訓練だってこなしてきた。装備だってある。もうあの時とは違う。私達だって戦えるんだという強い自信が彼女達の心の中に宿る。その様子をみて私はうなずき、出撃開始の号令を出す。それぞれが艤装をとりつけて順番に海へでていく。最後に長門が艤装を装着し出撃すると、陣をくみながら、敵方向へと向かっていった。陣が整うのを確認すると、長門は吠えた。
「これだけの大規模な敵部隊を叩けば、そう簡単に部隊を再編することもできんはずだ!なんとしてもここで叩くぞ!私に続け!」
長門の一部の艤装がいつもとは違う色に塗り替えられている。四種の色をしたその艤装はこの部隊が不退転の覚悟で挑むことの証だった。
皇国ノ興廃此ノ一戦ニ在リ、各員一層奮励努力セヨ
z旗を掲げられそうな感じが艤装になかったのでカラーリングを変える表現で対応しました。すごい派手な色になってそう。