なんでも妖精という生き物?は艦娘とは切っても切れない関係らしい。艦娘が扱う装備の開発や整備、はてには建造も担っているときた。つまりこの妖精がいないと艦娘はまともに戦うことすらおろか、この世に生まれてくることすらないのだ。例外的な艦娘もいるらしいが滅多に表れないとのこと。艦娘達にはこの妖精は見えるのだが我々人間には存在が確認ができず、妖精が見えるという艦娘らの主張はにわかに信じがたいものだったのだろう。実際私だって見えていなかったら何を言ってるのだと痛い子を見るような目で見ていたに違いない。それほどオカルトな話だ。だが実際に見えているこの現実を受け止めなければならない。むしろ私も艦娘の仲間だったりする可能性があるのか?
「人には見えぬ存在だと思っていましたがやはり例外もいるものなのですね・・赤城さんら航空母艦の艦載機のパイロットも妖精たちが務めているんですよ。」
この小さいのが?しかし妖精とやらは万能すぎやしないか。戦闘、整備、開発なんでもござれときた。もうこいつらだけでいいのでは?と思っていると大淀に実際の艦娘達が戦っている記録映像を見せてもらった。何やら気味の悪い鯨のような形をしたものなどと艦娘が必死に戦っている姿をみるといかに自分が素人丸出しの考えだったのかがわかる。妖精達だけで戦えばいいと思っていた安易な考えは吹き飛んでしまった。現実はそう甘くはない。私にとっては夢の中の話かもしれぬがな。
しかし佐賀山の代わりに私ができることなどあるのだろうか。自薦でこの鎮守府にきたという以上ある程度打算的な考えはあったのだろう。しかし曲がりなりにも佐賀山は海軍でしっかり勉学、そして深海棲艦が現れる前は艦に搭乗員として現場経験もあったはずだ。艦娘という特異な部隊を扱うのに慣れていないのはしょうがないとしてその道の経験を積んだ者が上手く運用できなかったのだ。素人の私にできることなどあるはずもない。戦果を上げることができず、追い詰められた結果がこの現状を生み出したのだ。おそらく私もそっち側の仲間入りする日も遠くないように思える。
思い悩んでいると、いつの間にか複数の妖精が机の上の茶菓子の近くにきていた。この盗人どもめ。明らかに欲しそうな顔をしている。成敗してやろうと手を伸ばしたが先ほど大淀の言葉が脳裏をよぎる。この妖精なくして艦娘は戦う事はできない。つまりこの妖精達がいなければ何事も始めることができないのだ。ここはひとつ大目にみてやろうではないか。何せ大人だからな。私は。茶菓子と私の顔を交互にみてまるで許可がでるまで餌を食べることのできない犬のような感じがして思わず笑みがこぼれる。つんつんと袖を引っ張るようなつつくような弱い力を感じて袖の部分をみると他の妖精が茶菓子を指さしこちらを見上げている。ついに直接交渉してきたか。おねだりしてきた妖精を軽く撫でてあげ、食べていいぞと袋からとりだし目の前に差し出すと、満面の笑みで菓子を受け取り、妖精達の群れの中に走って行く。つんけんな態度をとるものばかりだと思っていたが、お菓子を自慢しながらそれをみんなに分け与えて仲良く食べる姿は愛らしいものだった。私だったら自慢しながら独り占めしていたかもしれない。清い心はどこか遠くに置いてきてしまったみたいだ。しかし一つだけだとすぐに完食してしまったらしく、食べ終わるとともに残念そうな顔をみなでしていた。当たり前だ。そんな人数で等分したらすぐになくなってしまうに決まっている。物欲しそうな目で御馳走を眺める姿に私の手はいつの間にか袋から菓子を取りだしていた。逆に私がツンデレではないかこれでは。1人ずつ頭を撫でて大事に食べるんだぞ。と声をかけつつ配っていく。丸々1つの菓子をもらえるとは思っていなかったのだろう。先ほどよりも歓声が大きくわーきゃーわーきゃーと喜んでいた。妖精達にも個性があるようで少し食べて残りを大事に持って帰ろうとするもの、一度に食いすぎて口が膨らんでいるもの、自分と違う種類のお菓子をもっているものと半分こしてトレードしているものなど様々だった。こうしてみるとなんだかペットを飼っている気分になるな。
妖精の姿を微笑みながら観察していると鑑賞会の終演を知らせる声が聞こえてきた。正直もう少し見ていたかったと思っている自分が何故か悔しい。
「提督。これからのことですが・・正直に申しますと、どうしたらよいのか皆目見当もつきません。このようなこと初めてですので・・」
「そうだろうな。私にもわからない。海軍本部に私が中身が入れ替わりましたと言っても信じてはくれまい・・しかし私が本部に提督を辞めたいと申し出れば後任にマシな提督とやらがきてくれるのではないか?素人同然の私が指揮がとるよりも何倍もよかろうに」
「それは困ります・・!もし今提督が辞めてしまったら後任の提督はおそらくですがこないでしょう。最近は目立った戦果も挙げられず、いたずらに資材を消費し挙句の果てには艦娘は深海棲艦のスパイなのではという陰謀論まであがっているとのこと。このままでは私たちの立場はなくなりいずれ・・・」
終わりというわけか・・仮に私が戻れたとしても肩身の狭い思いをしながら生きないといけない。佐賀山が嫌な思いをするのであれば問題ないのだが嫌な思いをするのは私だ。赤の他人の尻ぬぐいをしなければならいのか。むむむ・・許さんぞ佐賀山め・・そしてこの鎮守府の提督に着任すると本部からのサンドバックになること間違いなしだ。誰も好き好んで着任するはずもない。結構つんでないかこれ?
「わかった・・では当面の間は私が役職を全うしよう。だが当然なにもできないぞ。そこは了承してくれ。大淀、赤城、頼んだぞ。」
「お任せください。この大淀、力の限り提督の補佐を務めさせていただく覚悟です。」
「一航戦の誇りにかけて必ずや。」
未経験の仕事?にいきなり転職させられた真船の運命はいかに。