海渡る願い   作:哨戒艦艇

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資源集めと執筆の両立ができない。


第31話

 『まもなく敵直掩部隊が見えてくる。その後が本番だ。こちらも少なからず犠牲はでるだろう。だがここまで来て怯むわけにはいかない。なんとしても敵戦力を削るのだ!各員健闘を祈る!』

 

 翔鶴爆撃隊隊長の声を聞き終わると向こうからこちらに向かってくる部隊が見える。おそらく敵の直掩部隊だろう。艦爆、艦攻隊はそれぞれの高度をとり退避していく。エスコートはどうやらここまでのようだ。隼鷹、龍驤の護衛部隊は、後はしっかり頼むで!と激励の言葉を後に、敵直掩部隊に突っ込んでいき、激しい戦闘に入った。

 敵も味方も炎に包まれ、火だるまとなって海に落ちていく。直掩部隊とだけあって、敵戦闘機もなかなかにやるようだ。犠牲となっていく味方に後ろ髪を引かれる思いになりつつも、意識を切り替え迫りくる敵追撃部隊を迎撃する。

 

 『あとちょっとで敵艦隊に接触できるんだ。こんなとこで・・!』

 

 

 『七番機!脱出しろ!機体がもう持たないぞ!天蓋を開け!おい!聞こえているのか!』

 

 追撃部隊により蜂の巣となった瑞鶴隊の爆撃機は意地でも引こうとしない。やがて、掛け声むなしく彗星は推力を失い、火に包まれる機体から脱出装置が作動することなく爆散していった。なんてことだ。無茶をしやがって・・!しかし戦友の死に悲しむ時間を敵は与えてはくれない。ここは戦場なのだ。敵と味方の命の奪い合い。敵を殺さなければ自分が、仲間が死ぬ。後部機銃を任されている妖精達は味方の仇!と叫びながら敵を撃ち落としていく。なんとか敵を殲滅するものの、損害はでてしまった。だが進まなければならない。妖精達の精神は戦場特有の雰囲気に飲まれていった。

 

 「必ず敵の別働隊が潜んでいるはずです。敵別働隊の発見を急いでください!」

 

 そのころ後方の予備部隊の赤城と加賀は後方の索敵を行っていた。敵の第二次飛行部隊の向かっていった方向をもとに、敵のルートを予測する。おそらく敵は艦隊をわけてこちらの先行部隊の側面をつこうとしているはず。早期発見し、こちらの艦載機で損害を与えて足止め、そのあいだにこちらの先行部隊が敵艦隊を壊滅させ逆に挟み撃ちにしてやるのだ。そのためにも敵がどの位置にいるのかという情報は第一優先目標だ。なかなか報告があがってこないことに若干の焦りが出始める。索敵部隊を増やそうかと考え始めた時だった。味方索敵機から電信がはいる。ようやくみつけたと喜んだのもつかの間。届いた情報はこちらの喜びを一瞬で冷やすものだった。

 

 二時方向より敵艦隊発見。戦艦二、重巡二、駆逐二、計六艦なり。いずれも赤い気のようなものをまとっており、その存在は異質。注意されたし。

 

 敵の魔の手はこちらに迫っていた。

 

 

 『圧巻だな。前回の時よりも獲物が多くて助かるぜ・・!』

 

 瑞鶴航空隊の艦攻機パイロットは震える自分を抑えるかのように声をだす。あの数だ。生きて帰れる奴は果たしてどれぐらいになるのか。だが今はやるしかない。突撃隊形をつくれ!という隊長の号令とともに隊列を整える。狙いは輪形陣の中心にいる空母たちだ。訓練の賜物である超低空飛行で敵艦隊に近づいていく。弾の雨がこちらを貫こうと向かってとんできては通りすぎを繰り返していく。途中後ろの方から激しい爆発音が聞こえる。味方が撃ち落とされたのだろう。だが振り返る暇はない。やられた分だけやりかえせばいい!

 

 『敵艦との距離1000!今だ!魚雷投下!!・・くっっ!!』

 

 弾幕をかいくぐった残りの部隊が次々と魚雷を投下していく。だが敵もただではこっちを帰すつもりはないらしい。投下後の離脱中の味方も次々とおとされていく。それにもれなく自分の機体も損傷し、操縦桿がいう事をきかなくなっている。おそらく自分の投下した雷撃は当たるだろう。だが物足りない。これでどうせ最後なのだ。最後ぐらいは欲張っていい。

 

 『へへっ。このままだとちょっと寂しい結果になっちまうからおまけにもう一つ頂いていくぜ!』

 

 火を噴きながらも体勢を立て直し、敵に向かっていく一機の天山。やがてその機体は深海棲艦に接触し大爆発を起こす。沈みゆく敵駆逐艦と折れた翼。沈みゆく敵艦を見届けて満足したのか、折れた翼はゆっくりと海の底に消えていった。

 

 『なんて無茶をしやがる。艦攻隊の勇姿を無駄にするな!先行部隊のおかげで我々艦爆隊への対空砲火が弱まっている!この時を逃すな!我々も続くぞ!攻撃開始!』

 

 『隊長に続け!高度600・・500・・400・・300!投下!』

 

 次々と目標へ50番を投下していく艦爆隊。次々と命中報告があがり、敵艦に火の手が上がっていく。そんな中、翔鶴隊隊長は投下後もある程度高度を維持し、敵砲撃のヘイトを集める。赤城隊の先輩たちが以前の戦いの時、投下後もすぐに離脱しないのが謎だったが、先陣をきって投下した今ならわかる。爆撃後も敵の注意を分散させることによって後続の爆撃部隊の負担を減らしていたのだと。今度は自分が護る番だ。敵の対空を躱しながらある程度爆撃隊が投下したのを見届けると、少しぼろぼろになった機体をみながら離脱し笑みをこぼす。あの状況で被弾しなかった隊長はやっぱり化け物だな。火の手があがっている敵艦隊を背に帰投命令と戦果報告を打電するよう指示しながら先ほどの戦闘をふりかえる。果てしない背中を追いかけながらもいつかは追いついてみせると意気込むのであった。




被害を出しながらも敵艦隊に損害を与えることに成功です。
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