『翔鶴攻撃隊からの電信あり!戦艦1、空母2、重巡2、駆逐4の撃破に成功!』
「よし。味方の航空隊が戦果を上げてくれたぞ!ここまでおぜん立てしてくれたのだ。我々も負けてられんぞ!間もなく敵艦隊と会敵する。当初の作戦通り抜かりなく!」
長門は通信妖精から報告を受けると、味方に檄を飛ばし決戦に備える。まもなく主力艦隊の有効射程距離だ。水雷戦隊の突撃をいつでも援護できるように準備にぬかりはない。そしてまもなく合戦用意のラッパの音が海に鳴り響いた。
「日頃の訓練の成果を今こそ見せる時です。各艦。突撃用意!!行きましょう!」
「神通たちを援護するのだ!各艦!一斉撃ち方はじめ!」
突撃していく第二水雷戦隊は魚雷を一斉射して敵に突き進んでいく。その後方で長門を中心とした主力艦隊の砲撃が美しい弧を描いて敵に吸い込まれるように飛んでいく。だが相手もただ黙っているわけがない。同じように敵主力艦隊の砲撃がこちらに向かって飛んでくると、妖精達と艦娘の怒号が戦場に広がる。
『次弾装填いそげ!我々戦艦の砲の再装填には時間がかかる!一撃必殺のつもりでしっかりあてていけ!』
『長門にいいとこもってかれてたまるかってんだ!重巡にだって意地はあるぞ!撃てうて!!』
『敵軽巡に陸奥の射撃命中!敵軽巡の轟沈確認!』
開幕射撃はどうやらそれなりに上手くいったらしく上々の報告が入ってくる。やがて神通達第二水雷戦隊も敵の砲撃をかいくぐりながら自分達の有効射程距離に入ったのを確認すると砲雷撃を開始し始めた。頃合いだ。機会をうかがっていた第一水雷戦隊が動き出す。
「よし!第二水雷戦隊が砲雷撃にはいった!私たちは機関最大で敵の前に突き進む!さぁ仕掛けるよ!私に続け!」
「私たち第三水雷戦隊も続きます!みんなついてきて!」
川内と長良率いる水雷戦隊も待ってましたとばかりに突撃を開始する。敵と味方、互いの艦隊の距離は少しずつ縮まっており、互いに損害が出始める。
「雪風は沈みません!」
「もう以前の僕たちとは違うんだ!残念だったね!」
激しい砲撃の中、第二水雷戦隊の面々は良く粘っていた。訓練の成果が実感できる。あの頃のただただ逃げ回るだけの悔しさ、無力さのおかげで厳しい訓練に耐えることができた。被害は出しながらも致命傷には至ってない。やがて第一水雷戦隊が入れ替わるように自分達の斜めを通り過ぎていくのを確認すると神通の号令で魚雷を一斉射し、妖精達に被害部分の応急修理をするよう指示すると一旦離脱する。戦局は少しずつこちらに傾きはじめていた。
「各艦魚雷斉射用意!しっかり狙って!5・・4・・3・・2・・1・・一斉射!」
前線に躍り出た第一、第三水雷戦隊から魚雷と砲撃が放たれた。敵は迫りくる波状攻撃にたじろぐ。やがて敵の戦艦がこちらの主力艦隊の誰かが放った主砲に直撃すると炎上し沈んでいく。敵は旗艦を倒され統率を失って動揺したところを見逃す川内達ではなかった。旗艦を失い、進路を塞がれたことで逃げ場もなくなった。迷っているうちに足元にスゥーと伸びてくる魚雷が自分たちに到達し次々と爆散していく。勝ち目がないと悟ったのか、次々と反転、あるいは強行突破して戦線離脱を試みる敵艦隊。長門は追撃命令をだして一網打尽だ!と叫ぶと追撃態勢にはいった。敵は逃げようと必死に後退しながら反撃してくるもまたもや進路を塞がれる。
「どこにいこうというのですか?まだ戦いは終わっていませんよ?」
負傷しながらも微笑みながら神通が敵に優しく語り掛ける。だがその時の目の奥は表情と違った感情を抱いていたに違いない。一旦離脱した第二水雷戦隊は体勢を整えると、あらかじめ回り込むように進路をかえていたのだ。こうも変わる物なのね。姉妹ならではの息の合った連携に陸奥は驚いていた。提督が変わってから厳しい訓練を重ねていたのは知っていたが、こうも変わるとは。装備だけではない。彼女達の心も強くなったのだろう。いい報告ができそうだわ。そう思いながら残存部隊を次々と殲滅し、最後に残った軽巡にとどめをさし轟沈を確認すると、周りを見渡す。長門と視線があい、互いに頷くと、んんっ!と咳払いをした長門が静かに目を閉じる。まわりのものは感情がたかぶっているのか、こちらを見つめながらいまかいまかと、まっているのがわかった。
「思えばあの長い屈辱の日々を耐え続けたかいがあった。この時をどれほど待ち望んだことか!!諸君らの奮闘のおかげで誰一人欠けることなく敵を殲滅することができた。我々は勝った!勝ったのだ!今こそ勝鬨を上げる時だ!」
あたりにみんなの声がこだまする。ぼろぼろになったものもいる。砲塔がひしゃげたり、服も破れたりしているものもいる。だが勝ったのだ。犠牲をだすことなく。長門は胸に熱いものがこみあげてくるのを我慢する。まだ作戦はおわっていない。別働隊発見の報告を受け取っているのを思い出す。赤城達の援護に向かわなければ。負傷していない者で水雷戦隊を組みなおし、先行して援護に向かうように指示をだすと、指令室の大淀に電信をする。勝利の報告と赤城達の援護にむかうことを伝えた。誰もが大戦果に浮かれていた。だがその勝利の余韻に浸っている時間はひとつの電信によってあっというまに打ち砕かれた。
敵艦隊の攻勢により加賀轟沈。至急援護を求む。
周囲の歓声はぴたりとやみ、物々しい空気が漂っていくのであった。
艦隊決戦は勝利したものの・・