してやられた。まさかこっちが本命とでもいうのか。本隊の艦隊決戦が始まったのと時を同じくして、赤城率いる後方部隊と敵の別働隊は激しい戦いを繰り広げていた。
「敵の発見が遅れたためこちらの攻撃機をあげる余裕がありません!戦闘部隊は急いで発艦準備を!」
赤城の指示に急いで準備をするパイロット妖精達。やがて準備が整った部隊から発艦準備完了の合図を赤城に送ると、赤城は弓を構え大空に放つ。加賀も続いて矢を放ち、空に伸びていく矢はたちまち戦闘機に姿を変え、敵別働隊の航空隊へ突撃していく。いかんせん敵との距離が短すぎる。こちらの部隊が全員発艦するころにはとっくに敵の射程圏内だ。先行して飛び立った赤城航空隊隊長は空中で味方と編隊を整えると、発破をかける。
『アポイントなしでやってくるとはなかなかの無礼もんだ。戦闘部隊はそろい次第敵攻撃部隊を叩くぞ!なんとしても味方を守り抜くんだ!』
『調子に乗って赤く色気づいてやがってあの野郎ども。赤城隊より赤が似合うもんがいないことを証明してやるぜ!』
危機的状況にありながらも冗談を飛ばしあうパイロット達。歴戦の猛者ならではの余裕なのだろう。ひとしきり笑いあうと編隊をくみ敵攻撃部隊につっこんでいく。加賀隊も数では劣るが精鋭中の精鋭だ。加賀隊に左翼を頼んだと無線で連絡し、まもなく敵とぶつかり合う。
『こいつら今までの奴らとは一味違うぞ!気を引き締めてかかれ!油断するな!』
激しい爆発音があたりに響き渡りはじめながらも連携を崩すことのない一航戦のパイロット達。だが相手も簡単に落ちてはくれず、怒涛の粘りをみせる。今までの敵よりも墜とすのに時間がかかる。そうこうしていくうちに敵攻撃隊の突破をゆるしてしまった。味方戦闘機が全機発艦できていないものあり、次々とすり抜けていく敵攻撃機。会敵海域がもっと遠くだったら。タラればの願いはかなうはずもなく、敵航空隊が爆撃体勢に入ってくる。敵は狙いを一点集中で墜とすつもりなのか、1人の艦娘に狙いを集めていた。加賀だ。動きが悪いのを見破られたのだろう。避けられない。敵の艦爆機が今まさに投下しようとしたとき、無数の弾幕が敵機を撃ち抜き、加賀の頭上で爆散した。
「電は・・・電はもう逃げないのです!」
「そうよ!あの時の私たちとはもう違うわ!もっと私たちを頼ってもいいのよ!」
護衛をかってくれた六駆の面々が機銃の一斉射で敵を撃ち落としていく。あの時は自分達の無力さゆえになにもできなかった。ただただ逃げ、姉を失い、加賀を負傷させてしまった。だが今はもう違う。自分達は変わったのだ!手に入れたこの力を今使わずしていつ使うのか!
「そっそうよ!レディーは困っている人を見捨てたりしないんだから!」
建造組のため他の六駆のメンバーよりも練度が劣る暁だったが長女の意地があるのだろう。怯みながらも自分を鼓舞し、敵に食らいついていく。そんな六駆の様子をみた加賀はまるでわが子の成長に嬉しさを感じるような気持ちになった。この子達が頑張っているんだもの。私もやらねば。艦爆機を発艦させると次の発艦準備のため矢をつがえようとした瞬間、妖精の声が響く。
『右舷九十度雷跡!!距離1000!・・・さらに右舷七十度雷跡!距離1200!』
見張り妖精の声をうけ右方面を確認する。撃ち落とせなかった敵艦攻機が魚雷を投下し、こちらにむかって泡が近づいてくる。勿論狙いは加賀だ。なんとか面舵をとり、避けようとするが、体が思い通りに動かない。こんなこところで・・!!そう思った瞬間、加賀の体は爆発に包まれた。加賀さん!!!と赤城や六駆の声が遠くで聞こえる。足に力が入らない。そうか。私はここで・・やがて加賀の速度はおち水面に力なく倒れると、空を見上げる形になった。敵攻撃機は投下を終えたのか、空の彼方に去っていった。本隊は無事なのかしら。赤城さんは?この子たちは?色々な思いが脳裏を駆け巡る。これが走馬灯というやつなのかしら。少しずつ遠のく意識の中叫び続ける声が聞こえる。
「加賀さん!しっかりしてください!私が・・!私がもっと敵を早く発見できていたら!!」
「嫌だ。また守れないのかい?見送るのはもう嫌だ!」
涙を流しながらまわりを囲む赤城と六駆。ごめんなさい。お役に立てなくて。と力を振り絞って謝る。謝らなくていいんです!目を開けてください!と赤城が懸命に励ますも、浸水しているのか少しずつ体が冷たくなっていく。ああ。願わくばこの子達が無事に過ごせますように。赤城さん。あなたが無事ならいいの。提督。後は・・たの・・・
暗くて冷たい深い深い海に加賀は沈んでいった。
復讐に燃える別働隊の鬼気迫る声が響き渡る。間もなく敵別働隊が射程距離にはいる。このままでは射程の差で一方的に撃たれるだけだ。そんなのは許せない。ユルサレナイ。素早く体勢を整えると、こちらも反撃と戦闘態勢をとる。六駆の面々の目は赤くなっていたが、すぐに切り替えると砲雷撃の準備に取り掛かる。
電信を受け取った真船は焦っていた。加賀が沈んだ?一体なぜ?だが赤城からの電信だ。間違いのはずがない。自分の無力さをこれほど呪ったことがっただろうか。大淀も下を向いてどう言葉をかけていいかわからないと口を結んでいた。だがここで加賀の犠牲を無駄にしてはならない。彼女は自分にできることを。と常に日頃口癖にしていた。今の私にできることをなすだけ。悲しむのはその後だ。気持ちを切り替え、戦勝報告をしてきた本隊に急いで救援に向かうよう指示をすると、新しい情報を待つ。握りしめたこぶしに爪が食い込み、血が出ていることに気づかないままだった。
「仇を・・仇をとります!艦爆隊!艦攻隊!発艦開始!」
復讐に燃える別働隊の気迫迫る声が響き渡る。間もなく敵別働隊が射程距離にはいる。このままでは射程の差で一方的に撃たれるだけだ。そんなのは許せない。ユルサレナイ。素早く体勢を整えると、こちらも反撃と戦闘態勢をとる。六駆の面々の目は赤くなっていたが、すぐに切り替えると砲雷撃の準備に取り掛かる。
『・・・各機に告ぐ。赤城本隊は敵との距離は近く、我々が攻撃後に帰艦し、再度出撃する時間がない。一発で決めろ!必ず勝つぞ!』
発艦した赤城艦爆隊、艦攻隊、の妖精達は静かに闘志を燃やすと敵に狙いを定めて次々と攻撃を繰り出していく。敵は少数だ。この手数は防ぎきれまい!次々と爆撃、雷撃を決めていく赤城隊。しかし、先ほどの戦闘機同様、敵が妙に固く、思った以上に損傷を与えられない。たった六隻相手になんて様だ!と叫びつつ離脱する。しかし敵重巡を2隻沈め、戦艦をそれぞれ小破に追い込んだ。後は援軍を待ちながら別働隊の戦闘を見守るのみとなった。頼む。どうか生き残ってくれ!祈ることしかできない自分達に歯がゆさを覚える妖精達であった。
「敵重巡が二隻沈んだわ!これで私達六駆で突撃して四対四になるわ!」
「だけど相手はまだ戦艦が残っている。私たちの火力で墜とすことは不可能だわ!」
「一撃必殺の魚雷で・・やるしかないのです!」
赤城航空隊の戦果を電信で確認し、突撃体制を整える六駆。赤城はもう攻撃に参加できない。あとは自分達しかいないのだ。先ほどの対空戦闘で負傷した体と艤装にむちをうち、やってやると意気込む。赤城は情けないこの気持ちをどうぶつけたらいいのかわからない。加賀さんは沈み、自分はもう戦えない。艦載機のパイロット達が戻ってきて弾薬装填をして再発艦するころにはもう間に合わない。あとはこの子達に任せてしまう状況を作ってしまった。旗艦として、一航戦としてなんと情けないことか。だが現実は代えられない。
「こんな状況になってしまってごめんなさい。あとはあなたたちが頼りです。きっと本隊もこっちに向かっているはずです。それまでなんとか沈まないで。」
「大丈夫よ赤城さん!きっと仇はとるわ・・見守っててちょうだい!」
いっぱい訓練したんだから!と雷の頼もしい返事を聞き届けると、六駆は前進し、敵の射程圏内に入っていく。戦艦の射程はこちらより圧倒的に長いため、こちらの攻撃はまだ届かない。陣形を崩すために、そしてあわよくば当たれと願いながら魚雷を放ち、砲を構える。やがてこちらの射程圏内にはいると砲撃を開始した。敵駆逐にはなんとか損害を与えることはできているものの、やはり敵戦艦にはダメージがあまり通っていない。このままだといずれ弾着修正され敵の攻撃が当たるのも時間の問題だ。敵駆逐を仕留めると、残るは敵戦艦2となった。いける!六駆に希望が見えてきた瞬間、暁が爆炎ともに悲鳴を上げる。敵戦艦の副砲がどうやら当たったらしく、ボロボロになっていた。機関部がやられ、速度が落ちていく。三人に悪夢がよぎる。加賀さんも暁もいなくなるのは嫌だ!だがこのままでは。敵の主砲がこちらを捕らえる。主砲の装填がおわったのだろう。
「へへ。もう・・後はお願い。ね・・」
目を閉じる暁。させまいと三人は前に体をだし、腕をバツ字に組み衝撃に備える。敵から主砲を撃つ音が聞こえる。だが、敵の主砲はこちらに届くことなく遠くで爆発音だけが響いた。恐る恐る顔を上げると味方の紫電改二が敵のまわりを飛び回っている。攻撃をしかけ、砲塔にダメージを与えたのだろう。敵戦艦の砲等は2隻ともひしゃげていた。颯爽とヒットアンドウェイを仕掛ける紫電改二。その機体達の一部の色は海と同じ色をした青色のマークだった。
あたりを見渡すと遠くに誰かいるのがわかる。そのものは再び弓をつがえながら語りかける。 無線越しに聞こえた声に赤城と六駆は信じられないと言いつつも、その声は喜びの声だった。その艦娘の肩には白いねじり鉢巻きに青い半纏、手にはインパクトドライバーをもちながら腕を組んでいる。 青い半纏は強い風を受け、パタパタと力強くそよいでいた。
「鎧袖一触よ。心配いらないわ。」