海渡る願い   作:哨戒艦艇

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自分で作品を書いておきながら、今第何話なのかいつも忘れてしまう。


第34話

 体が軽い。はるか昔の、あの頃のような感覚に包まれながら矢を構えていく。いつも提督の傍にいたこの妖精のおかげだろうか。沈みゆく中、突然体が光に包まれ気が付くと海の上にたっていた。突然の出来事に戸惑ったが、私はこうして生きている。はるか先にあの子達が戦っているのがみえる。今度は私が護る番だ。発艦用意の号令を妖精達にだすと次の矢を構える。

 

 

 「ここは譲れません。」

 

 

 放たれた矢は太陽の光を浴びながら姿を変え、姿を変えていく。艦爆隊、艦攻隊は次々と飛び去っていき編隊を整える。後は任せておけと無線で連絡をとりあう妖精達。綺麗な編隊を組むと敵戦艦に向かって突撃していった。

 

 

 『悪いが早くしてくれ。艦相手に戦うのは未経験でな。流石に20mmでは戦艦相手じゃどうにもならん。』

 

 

 『お前らのおかげで六駆のお嬢さんたちを護れたんだ。仕返しは俺らに任せて艦で甘酒でも用意しておいてくれ。』

 

 

 先行して囮役を引き受けてくれた戦闘機組にねぎらいの言葉をかけると、みな、わかっているな、と無線をつなげて後続に続く部隊に確認をとる。

 

 

 『敵は派手にやってくれた。加賀の復帰祝いもかねてきっちりお礼をしてやらんとな!艦爆と艦攻同時攻撃を行う!攻撃後の空中衝突に気をつけろ!敵は対空能力ががた落ちしている状態。ボーナスステージだ!』

 

 

 了解!次々返事が返ってくると間もなくそれぞれの投下高度をとり体勢を整えていく。その様子をみて暁は負傷しながらも気をはき、妹たちに指示をだす。

 

 

 

 「うちかたやめ!味方機に誤射する可能性があるわ!タイミングをあわせて魚雷一斉射で援護するのよ!」

 

 

 まもなく一斉に放たれた魚雷は敵戦艦にむかって伸びていく。上からは爆撃機、横からは攻撃機、舵をきれば敵駆逐の魚雷に直撃してしまう。すでに忌々しい敵の戦闘機によって砲塔は破壊され反撃らしい反撃はできない。こんなはずではなかった。人間どもはここまで強くなっていたのか。決して油断したわけではなかった。先行部隊が敵と膠着状態になっているところを迂回し背後をつき、一網打尽にする予定だったものを。エリートである私が・・!こんなとこ

 

 

深海棲艦の最後に見た景色は頭上から降り注ぐ雨というには大きすぎる塊だった。

 

 

 「加賀さん!もうだめかと・・!」

 

 

 すべてが終わった後、赤城は航空隊を収容し、加賀に近づいてくる。六駆も敵残存戦力がないか警戒した後にぞろぞろと集まってくる。電にいたってはもうすでに泣いている。やがてそれぞれ生存していることの喜びを分かち合うと、指令室に電信を送る。この海戦が人類及び、艦娘の反撃の狼煙をあげる歴史的海戦になったのは間違いないだろう。帰ろう。私たちが帰る場所へ。帰艦中のみんなの顔はこれ以上ないぐらい誇らしげだった。

 

 

 加賀が轟沈したと思ったらいつの間にか復活して敵を壊滅させたという情報を受け取った真船は混乱していた。一度沈んだ者が再び甦るものなのか?大淀に尋ねるといいえ。と首を横に振り否定する。

 

 

 「通常ではそんなことはまずありえません。ですが、妖精の中にはこのような奇跡をおこすことができるものがいるというのを聞いたことはあります。」

 

 

 つまりあのいつもそばにいた菓子をねだっていたあいつがそれに該当するやつだったということなのか。あんなぐうたらしながら菓子ばっか食べていたあいつがな。だがあいつのおかげで加賀は助かったのだ。帰ってきたらうんと褒美をあげてやらんとな。遠海で戦闘がおこったため、みなが帰投するまでは時間がかかる。その間に執務を終わらせるとしよう。大淀とともに作戦室をでて、いつもの部屋に戻ってくる。厨房の間宮に連絡を取り、指示をだすと私も負けてられんな。と気合いをいれ、少しうつ慣れてきたデスクワークに励むのであった。

 

 

 「間もなく全艦帰投してきますよ!」

 

 

 無線で明石から連絡があり、迎えに行くか。と小言を言いながら工廠に向かう。やがて続々と帰投し、艤装を取り外していく艦娘達。しかし出撃前と明らかに違う変化があった者がいた。加賀だ。赤城が先に艤装を外し、加賀をささえようと車椅子を準備しながらかまえていると、加賀は微笑みながら優しく声をかける。

 

 

 「赤城さん。ありがとう。でも私、きっと大丈夫な気がするの。」

 

 

 そういうと艤装が取り外されたかと思うと、二本の足でしっかりと自分の力で歩き始めた。その姿に赤城は泣きながら加賀に抱き着き、言葉にならない喜びの声をあげていた。真船も驚いていたが、顔に出さないよう努めていた。ススッ。肩に重みを感じ視線を向けると。出撃前に加賀に乗り込んでいった妖精がいつもまにか戻ってきていた。一仕事したぜ。とでも言いたげな顔をしながら額の汗をぬぐうポーズをとる。バシッときめていた恰好もいつもの普段着に戻っており、あの勇ましくかっこいい姿はどこいってしまったのか。なでくりまわしてやりたいところだが、今は皆の前だ。あとでお菓子も一緒に渡してやるか。そう考えているうちに出撃していた艦娘が綺麗に整列し、敬礼をする。私も敬礼を返すと、長門が代表して声をあげた。

 

 

 「先ほど行われた海戦により敵艦隊及び、敵別働隊の殲滅に成功。こちらの被害は損傷多数ではあるものの、轟沈した艦はゼロ。提督。艦隊無事帰投しました!」

 

 声高らかに戦果報告する長門。後ろに並ぶ皆の顔も凛々しい顔をしている。これが軍人なのだろう。戦士の帰艦に私も応える。

 

 「みなよくやってくれた。この戦いの戦果は人類にとって大きな一歩となるだろう。みなまわりの仲間をみてほしい。凛々しい顔をしているものばかりだ。きっとこれが本来の君たちの姿なのだろう。軍人として、艦娘として、立派に戦い、そして誰一人欠けることなく戻ってきた君たちを私は誇りに思う。みなよくやってくれた。」

 

 

 こういう空気は苦手だ。何を話していいのかわからなくなる。無難な感じでまとめ上げて皆をほめたたえ、それぞれ傷を癒すように。そしてそれぞれの部隊の旗艦に後で詳細報告するよう指示をだし、執務室に戻る。工廠から遠のいていくと後方からわぁー!と歓声があがっている。自分達が勝利したことを再び実感して感情が爆発したのだろう。私はどこか嬉しい気持ちになりながら執務室のドアノブに手をかけ、報告を待つのであった。

 




 戦艦、護、色々考えた結果、応急女神での復活パターンにしました。これからも加賀には戦線を支えてもらいます。
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