「これほどの戦果を艦娘部隊があげたというのか。間違いではないのかね?」
海軍本部の一室で一人の人間が上がってきた報告書に疑問を投げかける。谷上は報告をあげてきた部下に念入りに確認していた。さきの海戦で佐賀山率いる艦娘の部隊が敵艦隊を打ち破り大戦果をあげたのだ。今まで苦戦していた相手にこのような大勝できた理由がわからない。確かに最近あがってきていた報告では少数戦ではあるものの、勝利を収めていた。だが、だからといってこうも上手く勝てるものなのか。しかもこちらの沈んだ者はゼロ。できすぎだ。なにか大きな変化があったに違いない。そう考えると谷上はすぐに行動にでる。部下にスケジュールの確認をさせ、鎮守府への視察確認にいけるよう調整しておいてくれ。と指示をだし立ち上がって窓から外を眺める。あの佐賀山がな。確かに三十半ばと若くして中佐まで上り詰めたエリートであったのは間違いない。しかし、いささか強情な部分があり、柔軟な発想を苦手としていそうなタイプではあった。俗にいう堅苦しい感じのタイプだ。とにかく一度あって様子をみないことにはわからん。仮にもしこの調子で使えそうな感じならこちらの派閥に引き入れなければ。
「全く一体誰と私たちは戦っているのかわからなくなるな。」
部下にそう皮肉をまじえて冗談を飛ばすと、困ったような返事でそうですな。と返ってくる。引退間近の老兵をこき使うのもやめてほしいものだ。と呟きながら今後の展開を関上げていくのであった。
「突然だが五日後に海軍本部から視察したいという申し出があり、お偉いさんがやってくることになった。この鎮守府にやってくる谷上中将という方はどのような人なのだ?もし知っている情報があれば教えてほしい。」
執務室に長門、陸奥、赤城、加賀を呼び、大淀と私、六人で問題について話し合っていた。今までパッとしなかった部署がいきなり多大な利益をあげてきたのだ。そりゃ上の者はなにがあったのかと確認をとるに決まっている。だが今回は事情が特殊すぎた。違う世界から来たといっても信じてもらえるかどうかわからない。信じてもらえず、佐賀山時代の不正が明るみにでれば、更迭、失職すらあり得る。身寄りのないこの世界でそれだけは避けたい。それにこの子達も心配だ。最悪私がいなくなってもこの子達がしっかりとした環境で戦う事ができるのが望ましい。交渉しようにも相手がどのような人柄なのかわからなければどうしようもない。佐賀山が谷上中将とどれくらいの仲なのか。どのような口調で話していたのか。まるでわからない。大淀を中心に集めてもらった佐賀山時代の不正の証拠がカギを握ることになるのは間違いなさそうだ。
「提督よ。何も心配することはない。噂によると谷上中将は我々艦娘の存在も特に邪見にあつかっている様子ではないみたいだ。私たちが誠心誠意こめて谷上中将を説得してみせよう。」
いささか脳筋ぎみな答えが返ってくるが、期待しているぞ。と返事をしてやるとうむ。と長門は満足げに腕を組み目を閉じている。陸奥の若干冷ややかな視線なんて何のその状態だ。そんな簡単にいくわけないでしょ。とお叱りの言葉をうけた長門は少ししゅんとなっていた。
「提督は前任者との明確な違いは妖精が見え、意思疎通がとれることです。我々艦娘が妖精の力を借りて戦っているというのは本部側の人達も認識しています。同時に前任者が妖精がみえないという事実も。これは人格が入れ替わっているという明確な差です。加えて妖精の力を借りなければ建造、新しい艦娘は生まれてきません。多大な戦果をあげつつある我々の状況を垣間見るに、妖精に好かれている提督を前線から外すということは現状してこないと思われます。」
大淀の後押しもあり、私が真船ということは本部側の人間に伝えることに決めた。辻褄がだんだん合わなくなり、のちにぼろがでてばれるというよりかはよっぽど印象がいいだろう。だいたい相手は色々な経験を積んできた人間なのだ。下手に逆らうよりも下から出ていったほうがいい。最悪飼い殺しにされてもこの鎮守府のみんなが無事ならば私は満足だ。そう皆に伝えると、みな私のことを絶対に護ると意気込んでくれた。短い付き合いだが信頼してくれる部下を持てて私は自分のやってきたことに少しだけ誇りをもつことができた。
神通は張り切っていた。本部の人間がくるということでその際おそらく訓練の様子も一通り見るはずだ。その時に無様な姿を見せるわけにはいかない。駆逐艦の子達も少しずつ厳しい訓練になれてきたのか、始めたころと比べると目覚ましいぐらい成長しているのがわかる。神通はみんなの成長を嬉しく思い、そして自分自身もさらに高みへ目指せるように気合いをいれていく。
「五日後に本部から視察がくるそうです。その時に情けない姿を見せないようにしっかり頑張りましょう。というわけでこの一週間は訓練の量をさらに増やしますので覚悟しておいてください。」
駆逐艦達が悲鳴をあげる。何か文句でも?とにっこり微笑むとビシッと隊列を組み訓練に再び戻っていく者達。慣れてきたと思ったらさらに地獄がまっていた。へとへとになって訓練から戻って入渠をすますと、腹が減っては戦ができぬと食堂でご飯をいつも以上に食べていく駆逐達。食事でお腹いっぱいになると甘味を買いそれぞれの部屋で食べながら談笑する。なんだかんだで艦娘達は逞しい。明日の訓練も頑張ろうとしっかり干したふかふかの布団で今日の疲れを癒していくのであった。
神通先生は怒らせたら怖い。