「出迎えご苦労。早速で申し訳ないが、色々と案内してもらえると助かる。」
ついに海軍本部から谷上中将がやってきた。私は大淀とともに無難な挨拶で出迎え施設を案内していく。谷上中将と数名の護衛はこの鎮守府の施設に驚いている様子だった。まぁそうだろうな。以前の設備を妖精の力を借りて増設、改装しているので見違えるほどに綺麗になった。私自身も当時は驚いたものだ。いくつかの質問を受けながら工廠に向かう。工廠では明石と夕張が作業をしているのか、けたたましい音が聞こえてくる。やがて中に入った私達に気が付いた二人は作業を止めて立ち上がり敬礼をしてきた。谷上中将は敬礼を返すと、少しお邪魔するよ。といいながら工廠を見学していた。視察団の質問に明石と夕張が次々と答えていく。熱が入っているのか、少し熱く語っている感じになってきている二人。おいおいその人偉い人だから余計なことはしゃべんないでくれよ。私は心の中で心配しつつ、いつもとは違う工廠を見渡す。妖精達は見知らぬ人たちが近づいてきた気配を感じたのか、今日は一人もみていない。一般人にとって妖精は見えぬ存在。機材が勝手に空中を浮いて火花を散らしたりして修理作業が進んでいたらそれはそれでこわいので今回は引っ込んでいてもらって正解かもしれない。明石と夕張のことを気に入ったのか、工廠を後にする頃にはすっかり打ち解けていたようだ。このまま機嫌のいいまま帰ってくれるのが一番いいのだがそううまくいかないだろうな。
「このまま相手の思うようにさせてはいけません!一点集中砲火で敵の陣形を崩しつつ一定の距離を保ち砲撃戦に持ち込みます!」
「ここが踏ん張りどころだよ!ひるまず突っ込んで敵に食らいつけ!日頃鍛えた成果をみせてやろうじゃない!」
私は素直に驚いていた。この鎮守府に来てからというもの驚かされていてばかりだ。一度視察にやってきたことはあったが、その時よりも設備が整っている。佐賀山君がいうには妖精の力を借りて資材のみで改装できたのだとか。妖精は私達人間に姿は見えないが、好意的な存在だということなのか。そして工廠の艦娘達。明石と夕張といったか。二人は活気ある麗しい乙女だったが、知識と技術は本物だ。熱く自慢げに語り掛けてくる二人に元気をもらえたような気がした。そして実際に目の前の演習場で繰り広げられている模擬戦。どうやら弾薬は訓練用の特殊な物を使っているらしいが、それでも実戦と見間違うぐらいみな真剣に取り組んでいる。以前の参考映像を見せてもらった時は、どことなくぎこちないというか、撮影用な感じの動きだった。艦娘の轟沈報告を聞いたとしても、まぁそうだろうな。ぐらいにしか思っていなかったが目の前の艦娘達は映像とまるで違う。明らかに練度が違うのだ。旗艦の軽巡の艦娘を中心にしっかり連携がとれている。射撃も正確なのだろう。挟夾ばかりなのか、艦娘の周りに水柱が次々と上がっている。それを紙一重で次々と互いに躱していく。やがて赤いハチマキをしたチームが勝利となり、港に立つ私達に艦娘達が海の上をすべるように近づいてきて目の前で止まると、綺麗に並んで敬礼をしてきた。
「君たちの動きをみれば、先の艦隊決戦で勝利を掴んだ理由が分かったような気がする。これからも国のためによろしく頼むぞ。」
そう声をかけると、勇ましい返事が返ってくる。確かにこの練度であれば深海棲艦にも対抗できるやもしれん。考えを改めなければ。こうして一通りの視察をおえ、建物に戻る。後は佐賀山君の話を詳しくきくとしよう。
「内密にしていただきたいお話があります。人払いをお願いします。」
応接室に案内し、私は谷上中将にお願いをする。護衛達はそれは聞き入れることができないと静かに反論するが、谷上中将はいろいろと察したのか、護衛の者達に隣の部屋で待機しておくように指示をだし、環境を整えてくれた。ありがたい反面、物分かりが良すぎて逆にこわい気持ちになる。部屋をぞろぞろと人が出ていき、残ったのは私と谷上中将、そして大淀だけとなった。ここまできたら腹をくくるしかない。私は意を決して語り掛ける。
「まずは人払いをしていただき、ありがとうございます。実はこれから話すことはにわかには信じてもらえない可能性があるうえに色々と問題もあります。」
「かまわん。君が話したいと思う事をとりあえず話してみなさい。」
そこから私は今までに自分の身に起きたことを話した。目が覚めたら違う世界だったこと。着任したときの鎮守府の現状、佐賀山の不正、妖精がみえることなど、私が知っている限りのことを話した。私がひとしきり話し終えると、今まで黙っていた谷上中将は静かに口を開いた。
「確かに佐賀山君の様子が依然と比べて穏やかな雰囲気になったと感じてはいた。だがにわかには信じられんな。とらえ方によっては、暗にこの活躍で今までの不正をちゃらにしてくれと言っているようにも聞こえる。仮に私が君という存在の情報を握りつぶしてしまえば君は営倉行きでは済まない問題だぞ。赤の他人の罪をかぶる可能性だってあるだろう。」
「できる限りの情報を調べたところ、私にはこの世界に身内と呼べるものがいませんでした。故に保身のためにこの鎮守府を利用するつもりでした。おっしゃる通り赤の他人の罪をかぶって冷や飯を食いたくありませんから。ですが大淀をはじめ、ここの艦娘とよばれる子達と過ごし、話していくうちにこの子達の国を想う気持ちに私も心動かされてしまったようで。私が来たばかりのひどい環境の時でさえ、この子達は国を護るんだと言っていました。自分達の環境は劣悪なのにもかかわらずですよ。なんとかこの子達の力になってあげたい。そしていつのまにか、私自身も国を護るんだという気持ちが芽生えてきたのです。全くの素人なのにおかしな話ですよね。幸い、妖精達も力を貸してくれるようで、以前の鎮守府とは見違えるようにきれいになりました。毎日を絶望していた子達もよい装備や、訓練を重ねたことで先の艦隊決戦で活躍し、勝利を収めることができました。この先深海棲艦と戦っていくには彼女達の力が間違いなく必要です。彼女達の居場所を安堵していただけるなら、私は喜んで罰を受ける覚悟です。」
「・・・・・君の考えはよくわかった。現状普通の人間には妖精が見えないのは事実。そして君は妖精の姿がみえ、意思疎通ができる。これは非常に大きい。このまま艦娘の部隊が戦果を上げ続ければ、そのうち別地方にも同じような部隊ができるやもしれぬ。その時のために運営のノウハウは必要だ。以上を踏まえて引き続き君にこの鎮守府を任せたいと思う。ひきうけてくれるかね?」
「ありがとうございます。謹んでお受けいたします。」
若い。若いな。だがこういった若いまっすぐな気持ちが今のこの国に必要なのかもしれぬ。だが中身が入れ替わったという話はいまだに信じられぬ。この鎮守府の艦娘に色々と話をもっと聞いてみるとするか。私は何人かの艦娘と話をしたいのだがよろしいか?と真船君に尋ねると、かまいません。希望があれば呼んできましょうか?と言われた。真船君の事情を知っている者と知らない者がいると先ほど説明を受けたので、両方数名ずつたのんだ。さて、鬼が出るか蛇が出るか。見極める必要がある。
シリアスなお話は難しいですね。気づかないうちにちぐはぐになってそう。
話は変わるのですが、仕事帰りの途中、イタリア駆逐4人と六駆4人がなんかで対決するという謎のシチュエーションが頭に浮かびました。全く需要がなさそうですがいつか書く機会があれば書きます。