まずは現状確認から始めるとしよう。大淀によると現在の戦況は敵側に制海権をとられ物資の海上輸送もままならない状態だという。海軍も精力的に戦闘、船団護衛をおこなってはいるがじり貧。戦うにしても割に合わなさすぎるみたいだ。そりゃそうだろう。相手は人型サイズの大きさの敵がわらわらと湧いてくる。しかも1匹、1人当たりの火力もバカにできず、サイズ的にも非常に小回りが利く。対してこちらは1隻あたりにかかる費用、搭乗員や弾薬、食料などを考えれば積極的に敵を倒しにいくことは難しいみたいだ。1隻沈めば何百の熟練の兵が失われることになる。船艇の建造費、修理費、そしてかかる時間を考えればどうやっても勝ち目はないように思える。諦めかけていたところにこちら側にも似たような存在、つまり艦娘が現れたとなれば皆の期待もさぞ大きかったことだろう。しかし実際はこちらも艦娘を囮につかう消耗戦でなんとか現状維持するのがやっとというところ。そうなると資源の問題的にやはり人間側が不利になっていく。人間側は戦果を焦りすぎたのか。だがこうなってしまった以上はこの結果を受け止め、そして改善しなければならない。幸い日本は艦娘の出現によりまだましな方だという。艦娘がいないそして海軍力に乏しい国はさらに酷いことになっているらしい。余力があるうちになんとかせねばな。
「資材帳簿をみるかぎりではかなり資材には余裕があるではないか。この資材を使ってもっと色々なことができたのではないか?佐賀山は一体何をしていたのだ?」
当然の疑問をぶつけていくと意外な答えが返ってきてた。じり貧な戦況を変えるためには戦艦クラスの火力がもっと必要だと考えた佐賀山は資材をため込み、大型建造を大量に行い大和型なる艦娘の建造を狙っていたとのこと。戦艦大和か。おそらく日本で1番有名な戦艦であろう。素人の私ですら聞いたことある名前だ。世界最大の主砲をつんで最後まで立派に戦ったと聞いている。その大和型を建造すれば戦いで勝てるのだと信じて資材をためこんでいたみたいだ。大和型さえいれば・・・とよくつぶやいていたそうだ。戦いに負けそうになると一発逆転を狙いたくなるのはやはりどの人間もそうなのだなと少しばかりの共感を覚える私もそのタイプなのだろう。しかしそのやり方ではだめだったみたいだ。考えを改めなければ。
なんとか苦しい状況の中資材をため込み大量建造を行おうとした矢先、度重なる艦娘の特攻にも似た扱いや冷遇に嫌気がさしたのか妖精達が突然いなくなってしまった。佐賀山には妖精が見えないといっていたので少しずつ減っていった妖精達の存在に気が付くはずもない。妖精がいないと艦娘の建造はできない。そして完全にいなくなった時には大量に余った資材だけが残ってしまったというわけだ。同情したくなるような展開だな。
「しかしこの余った資材は何か別の使い道はないのか?例えば・・・武器の製造とか。流石に建造だけに必要なものとは思えないのだが。」
「実はその件で相談にあがったのです。先ほど申し上げたように我々航空母艦、空母は艦載機を使って索敵や戦闘を行います。佐賀山提督は大和型建造のために必要最低限の装備しか我々には与えてくれませんでした。しかしこのままでは海はおろか空まで敵に好き勝手されて戦えるものも戦えません。どうか艦載機の補充の許可をどうかお願いします。」
赤城の必死な懇願を聞きながら考える。制空権か・・確かに空の戦いを有利に進めることでこちら側がとれる選択肢がぐっと増えそうな気もする。それに敵がどこにいるのかどれくらいの規模なのか位置はやく情報を握れば迎撃態勢もとりやすくなるというもの。これだけある資材なのだ。おそらく少しぐらい空母にまわしてもびくともしないはずだ。
「わかった。艦載機の補充を許可する。失われた分といつでも出撃できるように予備の分までしっかり作っておくべきだと思うのだがどうだ?予備は過剰か?」
「いえ!予備の分まで作っていただければ余った艦載機で妖精たちの操縦訓練にも使えますのでとてもありがたいです。いきなり新兵を戦いに出向かせるのは心苦しいので。本当にありがとうございます!」
そうだったな。艦載機も妖精達が操縦するのだったな。妖精達がいなくなれば当然空母の出番もなくなる。目の前の仲間が次々と戦場にでていきそして帰ってこない日々を彼女たちは一体どういう気持ちで見送っていたのだろうか。しかしふと気が付く。
「しかし艦載機を作るのも妖精たちの力が必要なのだろう?妖精たちはいなくなったと言っていたではないか。先ほどはしゃいでいた妖精たちだけで人手は足りるのか?」
そうなのだ。まさに先ほどの説明で妖精が消えたと言っていた。作り手がいないのでは生み出せるものも生み出せない。どうすべきかと思っているとご心配なく。と頼もしい言葉が私に届く。まるで有能秘書のようだ。私は秘書がつく御身分ではないので実際秘書の人がこんなセリフを言ってくれるのかどうかはわからないが。ともかく頼もしい言葉だ。
「おそらくですが先ほどの提督と妖精たちのやり取りで妖精たちも提督の中身が入れ替わったことは気づいているでしょう。妖精は本来、人には積極的には近づかないものですが真船提督には懐いていた様子でした。この短時間で妖精たちの間で情報が回っているはずです。現状が変わるかもしれないとわかれば妖精たちもじきに鎮守府に現れるはずです。それにほら。頭の上にも。」
言われてみれば先ほどからほんのり頭が重い気がする。帽子を優しくとって見てみると先ほど菓子をあげた妖精の中の1人が帽子に這いつくばるような形で、だらーんとしている。〇れパンダみたいな恰好をしやがって。頭が重いのはコイツのせいだったのか。少しお仕置きをしてやろう。妖精を帽子から手のひらにすくいあげると痛くない程度の力でわしわしともみくちゃにしてやった。かまってもらってうれしいのか妖精はきゃっきゃと笑いながら目をつぶりながらもニコニコとしている。ふふふ・・これが罰なのだ。甘んじて受け入れるがよい。戯れていると扉の向こうからどこか急ぎ気味な足音が聞こえてきたかと思えばノック音が響く。
「提督失礼する!火急な件により無許可での入室を許していただきたい!明石から工廠に妖精たちが出現した・・・と・。」
長い黒髪の凛々しい顔立ちの女性が現れたことよりも妖精たちのアグレッシブさのほうに驚きを感じる。早すぎだろこいつら。
新たな艦娘の登場です。