海渡る願い   作:哨戒艦艇

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お仕事で投稿遅れました。


第40話

 「正直にいうとな。私はどうでもいいのだ。艦娘が兵器だろうと人間だろうと。どんな手段を使おうと、世間にどんな評価をされようとも。この国を護れるのであればな。使える者はつかっていく。それが私のポリシーでな。冷たいと思うかもしれないが世の中綺麗事だけではやっていけん。それは君もなんとなくわかっているだろう?それどころか悲しいことに海軍本部でも今回の勝利に浮かれてもう戦後のポスト争いの話をしているものもいる。全く呆れるよ。国が滅んでしまえばそれどころではないのにな。そんな奴らにこの国の防衛の中枢を担わせるわけにはいかん。ゆえにいちはやく君と接触したというのも今回の狙いだったのだ。君は私の傘下にはいってもらう。見返りとして佐賀山時代の不正を私の権限で上手くにぎりつぶしてやる。悪いことは言わん。どうだね?」

 

 

 艦娘達との面談が終わった谷上中将と再び応接室で話をする。この状況でどうやら私に拒否権はなさそうだ。よろしくおねがいします。と頭を下げると満足げにうむ。と中将はうなずいていた。

 

 谷上中将とその後も話をしているとコンコンと扉からノックをする音がする。どうやらそろそろ中将の時間がきているようで、大淀が中将の護衛から呼んできてほしいと頼まれたようだ。私は何とかなったのか正直よくわからないが、この鎮守府がなくなるという最悪の事態は避けることができ、内心ほっとする。立ち上がる中将を見送るために私も立ち上がる。

 

 

 「君についての話だが、私の副官と秘書官には話しても構わないかね?今後色々と君と連絡を取るときに不便が生じる可能性があるのでな。もちろん内密にさせるので安心してほしい。」

 

 

 

 かまいません。と返事をすると肩にポンと手をのせてよろしく頼むぞ。と声をかけられる。

 

 

 「早く戦争を終わらせて平和な世の中に戻ってきてほしいものだな。その際は私のおごりで美味しい寿司でも食べに行こう。そのころには私も引退できていれば、なお嬉しいものだが。」

 

 

 そう言いつつ笑いながら護衛と合流し、外まで見送り、まもなく車に乗って去って行った。なんとかなったのか。この鎮守府をまもれただけでもよしとしよう。大淀と執務室に歩いて戻る。椅子に座ってお茶をのみ心を落ち着かせていると、いつの間にか机の上に小さいちゃぶ台があり、お茶をのみながらリラックスしている妖精達がいた。中将たちが帰ったことにより再び現れたのか。明石からも作業再開の報告を受け取り、いつもの鎮守府が戻ってきた。後は中将の言っていた他鎮守府創設の可能性を考えより多くの艦娘を建造しておく必要がある。おそらくここの鎮守府からある程度引き抜いて派遣するかもしれない。新人ばかりの艦隊だけだと戦闘は難しいかもしれないからな。あとは護送船団の結成だ。この鎮守府の近海限定だが、漁船や輸送船、商船の護衛任務もやっていけるようにしないとな。中将のおかげで資材も優先的に回してもらえるようになるのでそれ相応の艦隊の強化、増設をしないと手が回らなくなる。そろそろ秘書も増やしたほうがいいかもな。大淀も最近忙しいみたいなので早め早めに楽をさせてやりたいものだ。日が落ちる前にそれぞれの艦娘への指示や書類整理を終わらせ、執務室を後にする。シャワーを浴びて食堂に向かうと入渠を済ませた艦娘達の声で賑わうこの食堂も今では当たり前の光景だ。私の前に並んでいる摩耶と鳥海は馴れ馴れしく、よっ!っと声をかけてくる。そんな摩耶をもっと礼儀正しく!もうっと少し呆れながら宥める鳥海のやりとりはもはや様式美だ。

 

 

 「提督今日は大変だったな~。なんか偉い人が本部からきたんだって?私は遭遇しなかったけど提督は気疲れしたんじゃねーの?」

 

 

 「正直いうとめちゃくちゃ緊張したな。かなり大変だったぞ。」

 

 

 「司令官。摩耶が申し訳ありません。しかしそのご様子だと良い結果だったみたいですね。」

 

 

 まぁ悪くはない結果だった。と返事をするとやったなぁ!とひじをくいくいさせておちゃらけてくる摩耶に鳥海がなにかいおうとするも、私が気にしなくていいぞと鳥海に声をかける。ご飯をいっしょにどうだと二人から誘われるもすこしミーティングをしたい子がいるので今度私から誘うと返事をすると絶対約束だからなと笑顔で返され出番がやってきたトレイに今日のメニューをのせて席に向かう。まもなく川内と神通達が現れ、トレイを手に空いてる席を探している様子だったのでこれ幸いと声をかける。川内達二人はまっすぐ向かってくるが、後続の駆逐艦達は初めて食事を共にするのに怯えているのか戸惑っているのか。私達も行っていいのだろうかと顔を見合わせていた。見かねた川内が大丈夫大丈夫と後ろの子達を連れてくる。何とも面倒見のいい子だ。少し大人数になったがまぁ大丈夫だろう。先に食事を食べていた私は食べながらでいいので聞いてくれと言葉を続ける。

 

 

  「今日の谷上中将の視察の際、演習内容に大変満足している様子だった。これも川内、神通をはじめ、君達の日頃の訓練の賜物だ。これからもしっかりがんばってほしい。と同時にこれから対潜警戒の訓練も本格的に加えていってほしい。そのためのソナーや爆雷の作成を明石に頼んでいる。じきに完成するはずだ。それぞれの戦隊に行き届いたらでいいのでよろしく頼む。」

 

 

 了解しました。と川内と神通が返事をする。何か質問がある者はいるか?と問いかけるとすっとよろしいでしょうか。と手を挙げる者がいる。不知火だ。

 

 

 「ここにきて対潜の訓練も導入していく理由をおしえてはいただけないでしょうか。もちろんゆくゆくは必要だとは思っていますが、明確な理由があれば今後の訓練に活かせると思いますので。」

 

 

 相変わらずきちっとした性格だ。だがそれが彼女のいいところなのだろう。ものおじせずよく質問してくれた。こっちとしても駆逐艦の子達がどんどん自主的に質問や会話は気軽にできる環境をつくっていきたい私としては大助かりだ。

 

 

 「実はだな。先の海戦で勝利をおさめただろう?その影響もあってかここの近海の制海権がとれつつある。ゆえに商船や輸送船、漁船の護衛任務も行っていこうと考えていてな。そのための訓練というわけだ。もちろんこのままだと人数不足で手がまわらなくなるので近日また建造を行おうと思っている。そうなると軽巡だけでは流石に皆の面倒を見切れなくなる可能性もあるので、駆逐艦のお前達も旗艦を務められるよう訓練を行っていってもらう。この話は明日にでも全体に話を通す予定だがお前達には先に言っておこうと思っていたな。やることが多く大変だと思うがなんとか頼むぞ。」

 

 

 そういうとありがとうございます。と引き下がった。やはり旗艦というのは誉れ高いものなのか私の言葉に駆逐の子たちはすこし興奮した様子で食い気味に話を聞いていた。みな私の話を聞くために一切食事に手を付けずにいるのに申し訳なく思い、話は以上だと切り上げて立ち上がる。みな立ち上がり敬礼をしてくるが、いつも言ってる通り、業務が終われば気にしなくてよいと言って去ろうとすると、呼び止める声がする。

 

 

 「あの提督。よかったらこの後鳳翔さんのところで一杯どう?さっきの話含め色々と話したいこともあるしさ。」

 

 

 思わぬ川内のお誘いに私は驚くも、ああ大丈夫だと返事をする。じゃあ後で鳳翔さんのとこで合流で!と川内に言われると一旦別れて部屋に戻り、戻ってきたらすぐ寝れるように準備をした後に鳳翔の酒保へ向かう。那智達のおかげですっかり薄くされてしまったお財布は今日を耐えることができるのか。お財布の中身を確認しつつ、まぁあの子達はあまり飲むことはないみたいなのでなんとかなるだろうと楽観していると酒保の入口で人だかりができているのが見えた。よくみるとさきほどのメンバーとかわりない面子がそろっているではないか。

 

 

 「すみません提督。実はこの子達も自分達も差し支えなければ参加したいと申しておりまして・・・」

 

 

 先ほど食堂での話に思うところがあったのだろう。駆逐の子達は恐る恐るこちらを見ながら私の返事を待っている。まぁ駆逐達と交流を深めるためと思えば安い出費かもしれないなと私なりのやせ我慢を悟られぬよう、許可をだす。その瞬間駆逐の子達はやったやったとはしゃいでいた。帰るころにはぺったんこになってしまう財布を想像しながら鳳翔の出迎えの声を聞きつつ、酒保に入っていくのであった。




子供のころ外食するだけで特別なイベント感を感じていたのは私だけでしょうか。いくつになっても子供のようなどんなものも楽しめる感性を大事にしていきたいですね。
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