海渡る願い   作:哨戒艦艇

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誰か私に休みを・・


第41話

 「鳳翔さんのお店の料理初めて食べるなぁ~。私楽しみだよ!」

 

 

 吹雪達がわいわいと喋りながら次々と席についている。前々から興味あったみたいだが中々入りづらい雰囲気があったのかもしれない。確かにここに入っていくのは重巡や戦艦級のものが多いためだろう。確かにあいつらに絡まれたらたまったものではないだろうからな。英断だったかもしれんな。今日は私たち以外に入っている者はいない。鳳翔も珍しいお客さんをお連れしてきましたね。と笑顔でお絞りと小鉢を持ってきながら私に話しかける。この子達もどうやら君のお店に興味があったみたいでな。と返しお絞りで手をふきながら飲物を頼む。この子達にもお酒を飲ませてもいいのだろうか。見た目だけで判断すると完全に中学生、中には小学生クラスの者もいる。

 

 

 「私たち艦娘は見た目とは裏腹にかなり丈夫ですのでそこは心配ないですよ。もっともそれぞれの酒癖はわかりかねますが。」

 

 

 悩んでいた私の表情を読み取ったのか、私の心をまるで見透かしたように解決してくれた。周りを見渡すといつの間にか全員が私を見つめている。私の許可をまっていたようで、注文していいか悩んでいたようだ。私はお前たちの保護者じゃないぞ。だがたしかに見た目を考えるとなにかいけないような気もしなくもない。せっかくここまできたんだ。それに彼女たちも内心期待しているだろう。ええいままよ。

 

 

 「お前たちも好きなものを頼んでいいぞ。だが初めて飲む者がほとんどだろう。飲むペースはなるべくゆっくり飲むように。」

 

 

 またしても小さな歓声があがった。あいつらみたいにのんべぇになってしまわないかが心配だ。もしなってしまったら私がその道に陥れてしまった張本人になってしまう。あの三人衆だけでも大変というのにこれ以上増えたら大変だ。そんな私の気持ちの思いはどこ吹く風状態で何を飲もうかメニューをみながら楽しそうに相談している子達をみるとまぁいいかという気持ちになってくる。私の両隣に陣取った川内と神通も私と同じ生ビールを頼むみたいだ。この二人は何度かここにきているみたいだから大丈夫そうだ。

 

 生ビール。噂にはきいていたがいざ実際飲めるとなると戸惑ってしまう。というのもどんな味なのか隼鷹さんにきいたことがあったが、

 

 「酒なんてぐいってのんじゃえば後は一緒!ビールはのど越しだよのど越し!苦味ってのは飲みなれてくるとそれもまたいいもんでさ~。何?ブッキー飲みに行きたいの?一緒に行っちゃうか~?」

 

というわけのわからない答えをいっていたのを吹雪一同は思い出した。苦いのに頻繁に飲みに行く理由がわからない。だが病みつきになる理由がそこにはあるのだろう。いまだに何を頼むか決めきれないでいると、提督が瓶ビール数本とコップを人数分頼んでくれた。少し飲んでみて飲めそうだったら飲めばいいし、だめそうなら別の物をのめばいいさと言ってくれた。確かにそれならば気兼ねなくチャレンジして飲むことができる。司令官に感謝すると鳳翔さんがもってきてくれた馬のような生き物が描かれている茶色の瓶に入っている黄金色の液体と白く滑らかな泡がコップに注がれていく。やがてみなにいきわたると司令官の乾杯という掛け声とともに私たちは一斉にコップを口に近づけていく。

 

 

 「かぁ~!!思った以上に悪くないねこりゃあ!いける!いけるよ!」

 

 

 長波は飲み終えると瓶ビールを自ら手に取りコップに注いでお通しの小鉢の品を食べつつ再びビールを飲んでいた。少々危険な香りがしてきたがまぁまだ大丈夫だろう。ビールは口にあわなかったのか、うぇぇっといいながら舌を出している者もいる。私は笑いながらまぁ気にするな、酎ハイもあるからそっちでも飲めばいいと他のドリンクを頼むよう言っておいた。鳳翔がジュースみたいな感じですよ。とビールが苦手だった子たちに説明し、それぞれの注文をうけドリンクをもってきてくれた。さっきとは違う飲みやすさに感動したのか、これなら大丈夫と朝潮や睦月たちビール苦手勢はぐびぐびと飲み始めた。少し大人の階段をのぼった気持ちになっているのだろう。暁はなぜか隣の妹たちにマウントを取り始めていたが、その隣の響はなぜかウィスキーを飲んでいた。この子は一体・・?疑問に思っていると頼んだつまみが続々と届き始めた。酒と併せて食べるつまみは最高だ。各々好きなものを頼んだせいかもはや机の上はパーティー状態だ。鳳翔の腕のよさもあってか酒がどんどん進んでいく。それぞれ異なる酎ハイを頼んだ者たちはそれぞれグラスを交換し、少しずつ飲んで味の比べあいをしている。お気に入り探しをしているのだろう。微笑ましい光景をよそに目の前の長波はいつの間にかグラスの中身はウィスキーに代わっている。目覚めさせてはいけない者をおこしてしまったのかもしれない。そんな心配を吹き飛ばす笑顔で長波は私に提督もどんどんのもうぜ~と笑顔でグラスをカチンと乾杯させて飲んでいく。美女に酒と笑顔。これはこれで。そんな風に考えていると横から声が届く。

 

 

 「提督。今日はお疲れさまでした。それでお話の続きですが・・」

 

 

 「みな食事に夢中になっているようだな。これでは話の内容もはいってこないだろう。また後日改まってしよう。楽しく過ごしているときに水を差すのは忍びないのでな。無駄な時間をとらせてしまってすまないな。」

 

 

 「いえ。こうして提督とお酒を飲みながら食事をする機会なんてなかなかないのでとても貴重な時間です。今日はゆっくり飲みましょう。」

 

 

 「そうだよ提督!今日の夜は長いよ~!パーッといっちゃお~よ!」

 

 

神通と川内も久々の酒の席なのか、ぐいぐいと飲んでいく。神通が気を利かせてくれるので私のグラスがあくことはない。そういえば千歳も酒の席では必ずとなりに座って私のお酌をしてくれる。艦娘たちは気の利いた子が多い。だがその分私も飲んでしまうため次の日が大変なのだが美人に注いでもらう酒を断るわけにはいかない。今のとこ暴れたり、脱いだりしている子がいないので安心だ。時々ハラショーという謎のフレーズが聞こえてくるが気のせいだろう。周りの安全を確認しつつちびちびと飲んでいくと耳元からささやく声が聞こえてきた。

 

 

 「提督。私たちに実は内緒にしていることがあるのではないですか?」

 

 

 やはり感づかれているか。その言葉に少し酔いが醒めた私は神通のほうを振り向く。そこには酒のせいかほんのり顔を赤くした神通がこちらをみつめていた。破壊力抜群。気持ちを落ち着かせるために酒をグイっと飲み干すと、まぁいろいろと私もあるのでな。と答え、思考をめぐらす。もともと話すつもりだったのだ。後は私の口から伝えるだけ。神通と川内は私の顔の近くに耳を近づけてくる。そしてざっくりと私の身に起きたことを話した。

 

 

 「中身が入れ替わる・・やはり本人の口から直接きいたとはいえ信じられないねぇ。でも今の提督すごく優しくて私は好きだな。」

 

 

 「今の提督が私たちを信頼していただけるのであればそれに全力で答えるだけですので。それに今の提督のほうがずっと優しくて素敵ですよ。みなきっとそう思っているはずです。」

 

 

 二人にうれしい言葉をもらいうれしくなる。だがこの距離だとさすがに近くの子には聞こえないはずもなく。その話は本当なのですか?と朝潮に質問をうける。何の話だと会話に夢中になっていた他の子達も一斉に視線を私にむける。私としても話を切り込みやすいタイミングだ。そしてあるがままを話していく。話終えた瞬間の静寂な空気が再び騒がしくなるのには時間はあまりかからなかった。




当時海軍のビールは麒麟ビールが主だったみたいですね。麒麟ビールは三菱グループ関係に所属しているため、造船所や有名戦闘機 零戦を開発している同じ三菱グループの麒麟ビールが御用達となったみたいです。
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