海渡る願い   作:哨戒艦艇

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このイベントで手に入っていない艦娘をできるだけ掘りたい。


第42話

 「そんなことが・・・でも最近の司令官の行動を考えると・・・」

 

 

 「何が何だかわからないがつまり前の提督と今の提督は別人ってことなのか?」

 

 

 みなざわざわと話ながらも反応はそれぞれだ。古参組は信じられないとでも言いたそうな顔をしてこちらを見ているが、建造組はどういう状況なのかいまいちつかめていなさそうな雰囲気だ。建造組は私が着任してからの付き合いなので佐賀山時代は当然経験していない。ぴんとこないのも当然だろう。

 

 

 「つまりだな。建造組でこの鎮守府にやってきた者達には信じられないかもしれないが、佐賀山時代のこの鎮守府の管理や体勢はずさんなものだったということだ。勿論私も入れ替わりでやってきたので詳しくは知らないがな。わたしがやってきた時にちょうどいあわせたのが長門や赤城、大淀だったわけだ。」

 

 

 「つまり司令官はここ数カ月私達に隠し事をしていたということなのですか?」

 

 

 酒がはいっているためか、少し荒々しく朝潮がどうなんだと真剣な顔をしてたちあがり質問してくる。

 

 

 「結果的にはそうなるな。着任当時でさえ大淀や長門に信じてもらえるのに時間がかかったのだ。当時の鎮守府の話を聞き、さらに扱いの悪いお前達駆逐艦組に真実を打ち明けたところで信じてもらえないどころか暴動が起きるかもしれないと判断したのだ。嫌いなやつがいきなりコミュニケーションを取ろうとしてきても嫌だろう?それに毎日命を懸けて戦うのにあんな環境で過ごさなけれなばならないお前達が不憫で不憫で仕方ないと思ってな。なのでまずは説得よりも状況改善に努めることを最優先とした。」

 

 

 先ほどよりもざわつきが大きくなる。朝潮はそうだったのですか・・・と大人しくなって着席した。行き場のない感情が彼女の心の中をめぐっているのだろう。下を向きながら握り拳に力が入っているのが私にもわかるぐらいに。

 

 

 「さきほど提督もおっしゃってたように、ここの設備を整えてくださったのも提督のご指示のおかげなのですよ。私は後から提督の素性をお聞きした身ですが、こういった艦娘の憩いの場を設けたいとお願いしたときも提督は快諾していただきました。貴方たちもまだまだ話しかけづらいかもしれないけど、真船提督はここのみんなのことをしっかり考えてくれてますよ。現に装備だって一番最初に全員に支給さされたのはあなたたち水雷戦隊組だったでしょう?昔のことは忘れろとは言いません。ですが少しずつ前に進んでいくのも大事だと思いますよ。」

 

 

 鳳翔の優しい言葉に少しずつ感化されていったのか、ざわめきが収まっていく。何と頼りになる助け船だろうか。ここぞとばかりに私も勢いに乗ねば。そう思い思っていることを伝えていく。

 

 

 「正直私は君達を率いる器ではないと思う。だが上司となった以上、待遇の改善に努めようと思っている。食堂や入渠施設の改善がその一例だな。まぁ実際に働いているのは妖精たちなのだがね。君たちの要望があればどんどんあげてほしい。すべての意見を反映させることはできぬが、できる限りのことはさせてもらうつもりだ。見た目が見た目なのでトラウマを抱えて話しかけづらいかもしれないが、私自身君達とコミュニケーションをもっと取りたいと思っているのでな。」

 

 

 「・・・わかったわ。それにあんた業務外では普通に話してもいいって言ってたわね。自分でいうのもなんなんだけど私結構生意気よ。私はこんな風な口調だけどそれでもいいのかしら?」

 

 

 静寂が響くかと思ったらこちらを試してやると言わんばかりの目で霞が間髪入れずに質問してきた。朝潮が謝りなさい霞!と叱っているが、私はそれを制し返事をする。

 

 

 「やるべき時にさえしっかりしてくれれば私としてはかまわないよ。夕食の時にすこし話したが、いずれ護衛任務も増えてくるかもしれない。そうなった時に君たちの誰かが旗艦となる可能性は大いになる。そう言った時の作戦室での通信のやりとりや公の場でのやりとりなどはしっかり頼むぞ。」

 

 

 ゆっくりと目を閉じつつわかったわ。と落ち着きながら霞はグラスに手をかけ口につけた。

 

 

 「今までの行いを恨んでいないといえば嘘になるわ。でもあの日からこの鎮守府が変わったのも事実だしあんたが頑張ってるのもわかっている。だから私も私なりに頑張らせてもらうわ。」

 

 

 「確かに以前のクソ提督と比べると雲泥の差と言っても過言ではないわね。借りを作りっぱなしというのも性に合わないから私も力になってあげるわ!」

 

 

 曙も続くように話してくる。それにつられたのか古参組は私も私もと決意表明のような感じで私に話しかけてくれた。

 

 

 朝潮は戸惑いを隠せなかった。霞はどこか反抗的な部分があり、以前の司令官にも楯突いたことがある。あの時は解体されないか冷や冷やしたものだ。しかし今の霞は落ち着いた雰囲気で司令官と会話していた。どういった心境の変化があったのだろうか。

 

 

 「真船司令官は私達と向き合おうとしているわ。そんな人につまらない意地はってもそんなの私が惨めになるだけと思ったのよ。」

 

 

 私の知らないところで霞は大人になりつつある。私も負けてられない。みんなのために。司令官のためにできることを精一杯務めるだけだ。盛り上がる話を聞きながら朝潮は一人闘志を燃やすのであった。

 

 

 

 なんとかなったみたいだな。私は落ち着きを取り戻したこの場の空気を感じながらちびちびと酒を飲む。提督、と川内が私に声をかけてくる。なにか言いたいことでもあるのだろうか。どうかしたかと問いかけると諭すような口調で話しかけてきた。

 

 「さっきさ、私達を率いる器ではないって自分で言ってたじゃん?でも提督を信じてついていく私達の気持ちも考えてよね。提督はしっかり戦果もあげてるし今の提督に不満をいう子はこの鎮守府にはきっといないよ!謙遜もいいけどもっと自信をもってくれてもいいんだからね!」

 

 確かに川内の言う通りだ。自分自身を貶すと間接的に部下であるこの子達も貶すことになる。気を付けなければな。感謝の言葉を川内に返すと笑顔でグッと親指を立てている。本当に明るくていい子だ。私ももっと精進していかねば。いいモチベーションを保ったまま明日を迎えられそうだと思っていたが、鳳翔が申し訳なさそうに差し出してきた会計伝票で全てをもっていかれた。・・・まぁ仕方ないか・・・




やる気になっている朝潮を想像すると和みます。
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