「提督・・・あなたっていう人は・・全く・・」
頭痛と戦いながら起床したこの日、昨日の出来事を話すと、さらに頭の痛くなるような説教を大淀からうけてしまった。まぁ確かに先に大淀に今後方針を相談しておくべきだったか。今度からは先に相談してくださいと呆れながら業務に戻る大淀にすまんと小声で謝りながら私も業務につく。まるで尻に敷かれる夫のようではないか。しかしここで余計な火種をばらまく必要はない。思っていることを口にしないようにせこせこと働く。明石に朝一番で今日の昼から建造を行うと伝えているのでそれまでになんとか書類関係を掃除してしまいたいところだ。まもなくコンコンとドアをノックする音が聞こえ、入室許可をだすと失礼しますと川内と神通が入ってきた。
「提督、おはようございます。昨日のお約束通りお伺いしました。」
二人に椅子に座るよう促し話を進めていく。今日は昨日の飲みのこともあり、訓練はお休みにすると言っていた。昨日の帰りに訓練は休みと伝えられた駆逐艦達があれだけ喜んでいたのをみるとよっぽど嬉しかったのだろう。こちらとしても今日のうちに水雷戦隊の今後の方針をしっかり決めておきたい。大淀を隣に座らせ話が始まった。
「昨日二人には話した通りだ。今後船団護衛の任務などもこなしていかねばならない。そうなると君達軽巡級の数を考えると手が回らなくなる可能性が高い。今日の午後から建造を行う予定でな。今後、駆逐級の数は増えることだろう。勿論軽巡級の数も少しは増えるだろうが、前の建造結果を見る限りだとどうしても・・な。私としてはそろそろ駆逐の子達も旗艦を任せてもよいのではないかと思っているのだがどうだろうか?」
「あの子達の練度を見る限り護衛任務などは任せてもいいと思います。直接的な戦闘が起きる可能性が少ないことや、船団を襲う敵は主に潜水艦です。対潜、機動力に優れる駆逐艦であれば護衛にうってつけです。新しく建造されて練度が低い軽巡に旗艦を任せるよりも経験豊富な駆逐に任せた方が上手くいくと思います。」
「旗艦を任せるならここの鎮守府の古参組に任せるのがベストだと思うよ。私達の訓練を長く受けているし神通が言う通り経験も豊富だからね。色々・・・と。」
前の出来事を色々と思い出したのだろう。川内に謝ると気にしてないと元気な返事をもらいつつ話をつめていく。協議の結果、演習などで旗艦を数回ずつ務めさせ、適正がありそうなものから順番に旗艦を任せていくことになった。もちろん対潜の訓練もこなしてからの話だが。こういったことはやはり慣れも部分も大きいだろう。焦らずしっかり自分の力にしてほしいものだ。
「提督。ここで一つ提案があるんだけれどいいかな?ズバリ!夜戦の訓練もそろそろ導入してもいいとおもうんだよね!どうかな?」
川内からの提案に首をかしげつつ大淀に助け船を求める。大淀は多少は必要なことだとおもいます。と無難な返事をしてきた。まぁ大淀が言うのであれば。私は許可をだすと川内はかなりはしゃいで夜戦夜戦と連呼していた。こいつは・・日向と同じ類の者かもしれない。今まさに熱く語り掛けようとしてきたところをすかさず建造の話題をだし流れを強引に変える。川内は少し不満げな顔をしていたがしったことではない。私は学んだのだ。隙を見せるとやられることを。身をもってな。二人としてはやはり訓練の面倒を見れる軽巡級の艦娘が来てくれるのが嬉しいそうだ。長良も最近力をつけてきて指導もうまくなってきてはいるが、どうしても数が多く対処できないようだ。かといって私自身がどのクラスが欲しいと願ったところで全ては妖精次第なのでどうしようもないのだが。
話し合いを終えると二人は昼からの建造をせっかくだからみにくるねと言い残し去って行った。私も残りの書類関係の業務を終わらせようと大淀と協力して進めていく。谷上中将と頻繁に連絡をとるようになったためか、仕事量は増えた。だれかいい補佐はいないものか。そう考えながら業務を終わらせ時計をみると昼飯時なのに気づく。大淀を誘い執務室を後にして食堂に向かう。大淀にも定期的に休暇を与えてやらねばな。二人で歩きながら私は新たな補佐候補を頭の中で探すのであった。
相変わらずけたたましい音が響いている。昼食をとりおえ工廠に向かうと夕張と明石が妖精達と業務に励んでいた。精が出るなと声をかけるとお疲れ様ですと二人はゴーグルをとりながら挨拶をしてきた。特に夕張が手掛けている艤装は大規模な改修を行っているのか、沢山の妖精が抜群なチームワークで作業をしていた。予定通り建造を行うと連絡していたおかげか、多数の妖精がキリのいいところで作業を終わらして待機してくれていたようだ。私はダメもとで軽巡級の建造を中心にできないか?とお願いしたところ、資材を多めに使えばある程度は確率があがるかもしれないと明石に言われたので任せることにした。
「では建造をはじめてくれ。」
私の言葉を合図に妖精達が作業にとりかかっていく。相変わらず見事な手際だ。感心してみていると後ろからぞろぞろと人がやってくる音が聞こえる。水雷戦隊組がやってきたのだ。訓練がないのをいいことに野次馬根性でみにきたのだろう。川内と神通はあらかじめ来るといっていたがまたしてもおまけを連れてきたのか。振り返り挨拶をするとみな挨拶を返してくれた。気のせいか以前よりも笑顔の子が多くフレンドリーな気がする。昨日の飲み会の効果があったのだろう。討死した私の財布も本望というものだ。妖精達は多くのギャラリーが増えても全く気にせず艦を組み立てていく。やがて小さい艦から順に完成していくと台にのせて窯に運ばれていった。
完成した艦の模型をみて反応している者がいた。不知火だ。おそらく自分と同じ型のものだとわかったのだろう。窯に運ばれていったその模型をひたすら眺めていた。長良も握りこぶしで渾身のガッツポーズをしていた。この二人の姉妹艦が出てくるのは間違いないだろう。次々と模型が出来上がっていく。中には少し形が異なる艦もある。これは・・潜水艦だろうか?それらしき模型も次々と窯にはいっていく。第一陣すべてが窯に入り終えると興奮したようにあとどれぐらいでできるのかと不知火と長良が詰め寄ってきた。待ち遠しいのだろう。二人に焦らぬよう落ち着かせると二人は恥ずかしくなったのか、顔を赤くしながらしおらしくなった。妖精達も集中して疲れたのか一旦休憩をとっている。やがて先に投入した扉の灯が緑に変わり、窯からぷしゅーと煙があがる。さて。どういった子がくるのか。私ははやる気持ちを抑えながら窯の中から聞こえてくる足音がこちらに向かって来るのを待った。
どの艦娘も個性があっていいですよね。おかげでだれを作品にだそうか迷ってしまいます。