「全く。五航戦は相変わらずなってないわね。」
午前の訓練から引きあげてきた空母達の会話はやはり加賀と瑞鶴が話の中心になっていた。以前の力を取り戻した加賀はこれ幸いと後輩たちへの指導に日々、精をだしている。その後ろにはぐったりとした翔鶴と瑞鶴が続いていた。とはいえ前回の海戦で五航戦の航空部隊は戦果とひきかえに被害も出している。補充パイロットの育成には少し時間がかかりそうだ。パイロットの育成はそう簡単にできるものではない。模擬戦など、とうの先のお話となってしまった。
瑞鶴は本来の力の加賀に模擬戦を挑みたかったが、今は焦らず力をつける時。口うるさいけどしっかり教えてくれるべきところは教えてくれるこの憎たらしい先輩を超えるまで訓練あるのみだと今日のしごきの憂さ晴らしに食堂に向かうのであった。
「そういえば夕張さんが新しい艦載機を開発したから是非試してほしいといってましたよ。今日のお昼から試してみますか?」
「提督から依頼を受けていた機体が完成したのね。でも紫電改二もなかなかの機体です。これ以上の物ができたのでしょうか。」
あいかわらずおかしい量のご飯を食べながら二人は夕張の完成報告を思い出していた。現在空母に配備されている戦闘機は紫電改二。この戦闘機はかなり優秀な機体でパイロット達からも好評だ。しかし夕張が自信満々に報告してきた以上それなりの物が出来上がったのだろう。楽しみですね。と赤城が阿賀に微笑むと加賀は食べ終えたらすぐに行きましょう。と顔の表情に似合わず乗り気になっている。おかわり控えめで今日の昼食を終えると、工廠に向かっていく。工廠では新しい戦闘機のお披露目会なのか、すでに戦闘機の周りをパイロット妖精達が囲んでわいわいと話し合っていた。
「あ!赤城さん、加賀さん、新型の戦闘機の開発に成功しました!妖精達も頑張ってくれたんですよ。是非パイロット達に試し乗りしてもらって後で感想聞かせてね!」
夕張が嬉しそうに報告してくる。赤城と加賀は早速矢と形を変えた戦闘機を備えて演習海域にでる。自分に収まっている妖精達に出撃準備可能かと問いかけるといつでもいけるという元気な返事を確認した後、矢をとり弓を力いっぱいしならせ空にめがけて放つ。矢から戦闘機へと姿を変えたその機体の名は烈風。大空を切り裂くように駆けていく姿はとても様になる。
『これは・・・完全に零の上位互換だな。こいつは量産できたら是非赤城航空隊に優先配備してほしいもんだ。』
『今は前よりも艦娘が増えて艦載機だけの整備や製造だけに手をかけられるわけではないからな。作れるうちにつくってほしいもんだ。』
試乗を終えたパイロット達とともに工廠へ戻る。どうでした?と夕張が興味津々でパイロットや赤城、加賀に聞いてくるその姿に少しだけ二人はふふっ笑ってしまった。
『正直いうと悪くはない。だが機体によって性能にブレがあるみたいだが何故だ?上昇性能がまるでなっちゃいねぇやつもある。』
『翼面荷重も紫電で感覚も慣れているから問題ない。格闘性能については文句なしだ。ただ機銃については三十ミリも必要かと言われれば少し疑問だな。装甲の固い敵爆撃機を襲撃するならともかく、戦闘機同士の格闘戦に重点を置くのであれば、弾数問題や安定性を考え二十ミリでいいじゃないかと俺は思うね。』
夕張はメモを取りながらふむふむとうなずいている。機体性能のぶれについては数種類のエンジンをためして載せており、相性のいいものを採用するためテストをしていたとのこと。最初から言ってくれればよかったのに。と誰もが思ったことだろう。武装については協議した結果、二十ミリを採用することに決まった。
「みなさんありがとうございます。この意見を参考にさらに烈風を改良していい機体にしあげますよ~!」
夕張と妖精達はテンション高く張り切っていた。若干マッドエンジニアっぽい気がするが自分の仕事に情熱を注げるのはいいことだ。また完成したら報告しますね。と言い残し改良作業にもどっていった。反対側では明石が水雷戦隊の装備の開発やメンテナンスを行っていた。またきてくださいね~と笑顔で手を振り赤城と加賀を見送る。二人は工廠を後にし報告がてら執務室に向かった。
「なるほど。思いのほか開発が早かったな。興味深いデータがとれてあいつらも今頃満足しているだろう。」
「ええ。とても喜んでいました。」
私は赤城と加賀の報告を受けながら考える。以前の海戦で現れた赤いオーラに包まれた深海棲艦とその敵艦載機。こっちもいい機体をそろえておかねばな。赤城や加賀のパイロット達の腕を存分に引き出せる機体ができるのであればさらに戦力向上になる。現状の強さに慢心しているとあっという間に足元をすくわれかねん。私もできることをやっていかねばな。報告が終わってもなお居座る二人と雑談をしながら業務を終わらせる。明日は待ちに待った給料日だ。艦娘達は例のごとく手渡しになるため、今日のうちに整理しておいたのだ。まぁ主に大淀がやってくれたのだが。その話に食らいついた二人は明日は酒保で提督にごちそうになりますね。と笑顔で問いかけてくる。なぜ艦娘という存在はたかってくるのであろうか。そして三人衆とは別の意味でやばいこの一航戦。以前の水雷戦隊に奢ってしまったので、ここでお前達はだめだと差別するわけにはいかない。こんなに待ち遠しくない給料日などかつてあっただろうか。間宮に明日は二人の好みの料理をつくってもらい、いつもより多めにおかわりしてもらうよう祈るのみだ。
烈風・・誉エンジン・・ウッ頭が・・・