「こんなきついとは正直おもわなかったわ・・・」
はぁはぁと息切れしながらなおも訓練を続ける陽炎。本来ならば香取が訓練を受け持つのだが、香取自身もまだ練度が足りず指導を行える立場ではないので、第二建造組はしばらく長良や妙高といった面子が訓練を行うことになった。初めは水上移動訓練と簡単な物から始まったが、日を追うごとに徐々に訓練内容が増えてきたのだ。不知火達は簡単に移動しながら砲撃や魚雷を行っていたが、実際自分がやってみるとそう簡単にうまくいかない。よくできるわねと心の中で感心していると長良達指導員から次の訓練内容を告げられた。一定以上のスピードで隊列を組みながら目標物に砲撃を当てるという訓練だ。勿論訓練用の弾を使うため威力はないが、移動している相手に当てるという訓練は難しそうだ。私の組は阿武隈さんを先頭に単縦陣となり訓練が始まった。
「再装填はまだなの?少し時間がかかりすぎだわ!」
『すみません!急いではいるのですがなにぶん不慣れなもので・・』
「ちょっと!弾着修正がずれてるわよ!見張り員はしっかりお願い!」
一緒に隊列を組んでいる天津風も苦戦しているようだ。配属されたばかりの妖精達も新人なため不慣れなのだろう。母艦となるそれぞれの艦娘達とのやり取りの中で連携がとれてないのがまるわかりだ。こんなんじゃ不知火に追いつけないわ。陽炎型ネームシップとしての意地が私にもある。すぐ追いついてみせるわと寝室で見栄を切った以上ここで躓いているわけにはいかない。焦る気持ちを抑えながら黙々と砲撃を続けていく。
「あいつら焦ってんなぁ。動きで丸わかりだぜ。」
標的目標となっていた摩耶や長良は遠くから撃ってくる新人達の方を見ながら華麗に砲撃を躱していく。勿論ある程度手加減はしているとはいえさっきから至近弾でさえない。実際の戦闘ではいかに敵の距離を正確に測り、そこから修正していくのが大事だ。しかも一方的に撃てることなどそうそうありえない展開だ。敵を野放しにし続けると当然味方に被害が出る確率もあがってくる。なるべく速やかに敵を倒すのが一番だが、今の彼女達には酷な話だろう。長良はどうしようかと考えていると摩耶とは少しにやっとした顔で長良に話を持ち掛けてきた。
「あいつらこっちが撃ってこないと思って胡坐かいてるんじゃねぇか?こっちも抜き打ちで砲撃してやろうぜ!かつて神通たちにやられたようにさ!」
後ろに続く北上や長波もいいねぇと摩耶の考えに賛同しているようだ。大井に至っては北上さんがそうしたいのなら・・と決定権を北上に委ねている。判断するのは私なんだけどなぁ・・と長良は思いながら考える。確かに自分達も同じような訓練をしたときに川内、神通たちに同じようなことをされたあの日々を思い出す。今思えば地獄の日々だった。少しだけ身震いしながらもこれはこの鎮守府で配属された以上通られなければならない道なのだ。と思い直しそれぞれに砲撃準備を指示をだす。待ってましたとすでに砲撃用意していた長波はいつでもいけると砲を構えている。念のためこちらも訓練弾を用意しておいたかいがあったというものだ。
「私の合図で一斉射撃します。最初は警告の意味をこめて必ず外してください。徐々に当てていく感じで行きましょう!」
了解!と統一された返事をもとにカウントしていく。そして轟音とともに新人達にむかって山なりに多くの訓練弾がとんでいく。自分達の近くに着水し、次々と水柱が上がっていく様子に新人たちはあっけにとられていた。
「ちょ・・ちょっとそんなこときいてないんですけど!?」
旗艦の阿武隈さんがあわあわと慌て始めてた。訓練はこちらが砲撃をあてるという内容だったはず。あっちも砲撃してくるなんてきいてないわよと陽炎も焦っていた。飛んでくる砲弾の恐怖と戦いながらこちらも応戦するが、一方的に殴る展開と実際に打ち合ったのではやはり違う。これが実戦だとしたら私達はとんだお荷物ね。
「突然ですが、訓練内容を少し変更します。これから私達も反撃を行いますのでこちらの攻撃をさけつつ、私達に砲撃を当ててください。ちなみにふがいない結果で終った場合、追加で訓練しますのでしっかり当てるように。」
とんでもない内容にかわってしまったようだ。えぇっ!?と慌てる阿武隈さんの表情は困惑していた。勿論私だって同じ気持ちだ。だがそんなことはお構いなしにどんどんと砲撃がとんでくる。こちらも応戦するも、あちらの方が手数が圧倒的に多い。重巡クラスともなれば装填にも時間がかかるはずだがそんなのお構いなしだ。長波にいたっては、ぼんぼんと絶え間なくうってくる。やがて清霜や照月といった後続が次々と相手からの砲弾に命中していく。そして私も相手にあてることができず、集中砲火をあびてしまった。訓練用なので威力はかなり抑えられていると言っていたがそれでも痛い。実際の砲弾はもっと痛いのだろう。これが実弾だと思うとぞっとする。結果的にこちらの艦隊は数発当てることが精いっぱいだった。
訓練が終わり、各々艤装を外して長良が総評を行う。実際の戦場では新兵など関係なく敵は狙ってくる。特に動きの悪い艦は真っ先にやられてしまう。少しでも上に近づけるように日々努力してほしいと言われ、解散した。日々の訓練なんか楽勝と思っていた自分に情けなさを感じつつもなんとか今日の訓練を乗り切った自分を褒めたいとクタクタになりながらひとまず自分の部屋に戻ろうとする面々。しかしその願いはかなわない。がしっと後ろから肩を何者かにつかまれ振り返ると、長良が笑顔で話しかけてきた。
「お疲れ様~!じゃあ追加訓練で走り込みやろっか!」
満面の笑みの長良。【ちなみにふがいない結果で終った場合、追加で訓練しますのでしっかり当てるように。】昼のことを思い出した陽炎と他の面々。追加訓練て今からなのか・・・断れるはずもない。しばらくして鎮守府に長良の元気な掛け声とともに生気を感じられない顔をした新人達が長良の後に続く。みんな元気ないよ~!ファイト!と一緒に走り込みをする仲間?を手に入れた長良はいつもより楽しそうに走っていた。
ときおり聞こえる長良の声を聞きながら大淀と共に執務する私は新人達の気持ちを考えると可哀そうで仕方ないが、これもまた必要なことなのだ。そう思うだろう?と自分の机にいる妖精達に問いかけるとうんうんとうなずきながらお茶をすすっている。
「一体どういうポジションなんですか・・」
呆れながら大淀がツッコミを入れるとははっと私は長良達が新人の時を思い出す。まさに伝統というべきものだろう。そしてコンコンと執務室のドアを叩く音が聞こえ入室を促すと、走り込みを終えたのか、長良が今日の訓練終了しましたと報告してきた。少し雑談をした後、長良はうれしそうに私に話しかけてきた。
「そうだ!提督も今度から一緒に走り込みどうです?」
「悪いが遠慮させてもらう。色々とやることがあるのでな。」
えぇ~そんなぁ。と長良は残念がっている。お前の走り込みに付き合っていたら私はマラソンの代表選手になってしまうくらい絞れてしまう。冗談じゃない。せめて仕事終わりぐらいゆっくりさせてくれ。
更新速度がぁ・・・