海渡る願い   作:哨戒艦艇

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職業柄どうしても年末は忙しいので更新途絶えがちになります。


第47話

 「ついにこの時がきたか・・・これこそ私が追い求めていた理想なのかもしれない・・・!」

 

 

 何を言ってるのかよくわかんない。伊勢はボルテージが最高潮になっている日向を横に冷たい目線を向ける。が、本人は気づいていないのか、きらきらとした目で完成した艤装をを見つめている。

 

 元々はそのまま修理するはずだった艤装。しかし運命の出会いが伊勢と日向の運命を変えてしまった。あの日瑞雲にであってからというものの、日向の性格ががらりと変わってしまったような気がする。クールな感じだと思っていた日向がここまで熱い心をもっていたとは思いもしなかった。談判にいったあの日、日向から改装の提案をうけていた提督も後半は若干ひいていたような気がする。こうして私と日向の艤装は航空戦艦として生まれ変わった。もっとも私は巻き込まれる形となったのだが。だが夕張の説明を受けていると私も何だが乗り気になってきてしまった。だってなんだか面白そうだもの。ちょっとだけ日向の気持ちがわかった気がするが、ああなってしまったら取り返しがつかなくなりそうなのでほどほどにしなければ。

 

 

 「もはや我慢ならん。早速試してみようではないか伊勢よ。」

 

 

 そう言いながらすでに艤装の装着にとりかかろうとしている日向に続くように伊勢も準備を始める。テスト用に少数の瑞雲とともに演習海域に繰り出す。主砲の数は減ったが、その分航空機を積めるようになったため制空権の争いでは期待できそうだ。

 

 

 「ふむ。やはり瑞雲はいいものだ。」

 

 

 瑞雲を空に放ち、それを眺めている日向。瑞雲は確かにいいものだが、そこまで執着するものかと言われたらそうでもない気がする。少なくとも私にはそれほどの愛着はない。せっかくなのだがら私は彗星とか積んでみたいと思うのだが日向はどうやら瑞雲一筋のようだ。そのほかにも修理された艤装を確かめながら試し運転していく。一通りのチェックは終え、問題がないことを確かめると私達は帰投し、艤装を外し工廠に戻った。工廠には提督がいつのまにかきており、明石や夕張と何やら話をしていた。装備開発の打ち合わせでもしているのだろう。私達に気が付くと、話しかけてきてくれた。

 

 

 「二人とも聞いたぞ。艤装の改装が終わって航空機もつめるようになったんだな。あの時の話が現実になるとはな。」

 

 

 「私にかかれば改装ぐらいおちゃのこさいさいですよ!」

 

 

 どや顔で自慢している夕張を提督がお前の力はたいしたもんだ。と褒めていた。褒められた夕張はうれしかったらしく、嬉しそうに褒美をねだっていた。何やら提督が今度外出をするときに一緒に連れて行ってもらって夕張が希望していた場所につれていってもらえるようだ。喜んでいる夕張を羨ましく思う。私達もなにか機会があったら外の世界をみてみたいものだ。

 

 

 

 

 「ところで航空戦艦として本格的に運用する際に問題点があるのだが・・・」

 

 

 私は伊勢と日向に現状の問題を訴えかけた。二人はその問題がわからないようで首をかしげている。明石や夕張もなにかありましたっけ?みたいな顔をしている。伊勢。日向はまだしもこいつら二人後先考えずつくりやがったな。まぁ最終許可をだしたのは私なのだが、ここまで早く完成するとはおもわなかったのだ。

 

 

 「というのも、瑞雲を搭載するにあたって機体はあってもパイロットがいない。予備兵や補充兵は優先的に空母部隊に配属していくので現状パイロットが足りないのだ。」

 

 

 夕張と明石は衝撃をうけたような顔をしていた。伊勢、特に日向に至っては、かなりショックを受けている。艤装が直って出撃できるとおもっていたらまたお預けになるのだ。それは確かにショックだろう。だがいきなりぶっつけ本番で出撃させるわけにもいかない。

 

 

 「そんな・・瑞雲がここにあるというのに・・私はなにもできないのか・・」

 

 

 日向が力なく膝から崩れ落ちた。そんなにショックだったのか・・伊勢が焦りながらフォローするも元気を取り戻す様子がない。提督、何とかしてくださいと小声で明石が耳打ちしてくる。そんなこと言われても足りないものはしょうがないのだ。

 

 

 「日向よ。であればお前自身もパイロットの育成もできるよう訓練してやればどうだ?訓練のノウハウは空母組や鳳翔、瑞雲にいたっては千歳や千代田にも私から要請してやることもできるぞ。よその部隊で訓練され転属されてきたパイロットよりも一から訓練されたパイロット達の方が瑞雲に愛着をもってくれるのではないか?」

 

 

 「確かに・・その方がパイロット達にも瑞雲の良さを分かってもらえる可能性が高くなる。流石提督だな。」

 

 

 私の苦し紛れの説得で再び力を取り戻した日向。こいつもしかしておもしろいやつなのではないか?一つの疑問が思い浮かぶも、それを口に出さずまた正式に連絡をするよう言うと、満足した様子で日向は寮に帰って行った。

 

 

 「なんだかすみません提督。日向あんな感じになっちゃって。」

 

 

 伊勢も謝りながら工廠を去って行った。私としては面白かったので問題ない。だが酒が入った時の日向の爆発力は計り知れない瑞雲パワーがあるのでそこだけは遠慮願いたい。忘れないうちに空母部隊や千歳達に指示を出していかなければ。負担は増えるだろうがこちらとしても伊勢達を遊ばせているわけにはいかない。千歳にいたっては飲みに誘ったところでお願いすればなんとかなるはずだ。勿論対価となるのは私の財布だが。

 




師匠関係は文章を書いていて本当に楽しい。
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