「では行ってくる。何かあったら私に連絡をしてくれ。」
私は大淀に鎮守府のことを頼むと車に乗り込み、夕張と明石を連れてこの〇〇鎮守府がある〇〇市の市長と会談に向かった。かねてから上層部と市側と書類や電話などで細かい日程調整を重ね、今日ついに会談となった。そこで誰が私の補佐としてついていくかという話になり、揉めに揉めた。外に出る機会などめったにないから気持ちはわかる。結局以前、二人を外に連れていく約束をしていた明石と夕張になった。しかし片方ずつ連れていく暇はあいにくない。かといって二人連れていくとなると工廠の作業に支障が出る可能性があったが、簡単な作業ならできるとピンチヒッター北上の申し出により外出が可能となった。マイペースな性格とは裏腹にメカに詳しい意外な一面だ。はしゃぐ二人を連れて車を走らせる。見る物すべてが新鮮なのか、二人はあれはなんだのよってみたいだの車内は黄色い声が途絶えることはなかった。事故ってしまったらどうするんだ。危ない。
「ね~提督ぅ~。パパっと会談終わらせてさっさといろんなとこまわってみましょうよ~。」
「そうですよ提督!ちゃちゃっと終わらせて工具見に行きましょ!この日のためにお金をこつこつためてきたんだから!」
「馬鹿野郎。本来の目的は市長や漁協関係者との打ち合わせだ。仕事で行くんだよ仕事で。そのあとは業務に必要ということで〇-クマンに連れていくんだ。必要な工具は経費で落とすから金も持ってこなくていい!」
二人の目がきらりと光ったような気がした。あくまで業務に必要なものだけだからな。絶対へりくつこねてあれもこれもという未来がみえる。だがここで折れると怒られるのは私だ。大淀というボスがいる以上私も逆らえないのだ。上官は私なのだが・・・とにかくこういう関係のことは逆らえない。悲しいことに。
「ようやくつきましたね。しかしスーツって普段着ないからなんか違和感あるな~。」
夕張が自分の姿を確認しながら私についてくる。確かにいつもはみなセーラー服みたいな感じの物を着ているので違和感はあるかもしれない。というより私が慣れすぎてしまったせいか、逆にスーツ姿の二人に違和感を感じる。馴れとは恐ろしいものだ。市役所に入り、案内係に要件を伝えると少々お待ちください。と言われ少し待つと再び戻ってきた方に市長室に案内された。二人に失礼のないようにな。と小声で確認するとさすがに二人も少し緊張しているのか、顔をコクコクと小さく頷いてくるだけだった。いつもの明るさはどこに行ったのやら。扉をコンコンとノックし、どうぞ。と声が返ってきたので入っていく。
失礼します。と入室すると、お待ちしておりました。と眼鏡をかけた優しそうな方が出迎えてくれた。その隣には肌が黒くやけた数名の方がスーツをきてこちらをみながら同じく頭を下げてきた。おそらく漁協関係の代表者だろう。テーブル席に案内され簡単な自己紹介をしていく。
「本来ならば私達が出向かなければならないところを、ご足労頂きありがとうございます。〇〇市の市長を務めさせていただいている飯田と申します。こちらは〇〇市の漁協組合の会長の富岡さんと漁師代表の宇野さんと野村です。」
三人の挨拶をうけて私も自己紹介をする。明石と夕張の紹介をしているときは四人とも興味深々の様子だった。これが噂に聞く艦娘か。そう言いたげな表情だった。
「まずは先の海戦の勝利、誠におめでとうございます。深海棲艦との戦いであれほどの大勝利は初めてだったのでみな湧き立っていました。」
「佐賀山さんのおかげで海にも少し平和が戻った気がします。この調子でどんどん倒してほしいですな。」
「いえ、私の力など微々たるものです。この子達艦娘が前線で頑張ってくれたからこその戦果なので。この子達のおかげです。」
市長と組合長が笑顔で話しかけてくる。私はお礼を言いながら明石と夕張の様子をみると二人は照れていた。これが工廠内だったら絶対どや顔してくるというのに。外面モードなのか、あるいは慣れてないだけなのか。
「では本題に入りましょうか。単刀直入で申し訳ないが今後のことについてなるべく多くお話したいと思っていますので。」
私は談笑の流れを断ち切り、本題に入ろうと空気を換える。このことに漁師の二人はありがたいとしゃべりかけてきた。
「俺達漁師は戦争が始まってから海で漁ができない状態が続いている。市や国の特別補助金で何とか食いつないでいるが、このままだと廃業も考えていたところだ。だが最近の海軍さんの活躍で再び漁ができるかもしれないと聞いてここにやってきたんだ。それは本当なんですかい?」
「もちろん必ずできるというわけではありませんが、おそらく漁を再開できるかと思います。先の海戦の勝利後、制海権が格段に広がり、〇〇市の漁師の方が使われる漁場付近のところまで安全が確保されている状態です。場所と時間は限らさせていただきますが、我々の戦隊が複数護衛任務として派遣をすることが可能です。」
私は目の前に広げられた地図で場所を説明しながら四人に話しかける。野村さんと宇都さんは食い入るように海図を見ている。
「場所はおそらく問題ねぇ。ここに住んでる漁師達はおそらくこの圏内の中で十分漁は行える。」
それから話を詰めていき、内容や方針が固まっていく。多少危険はあるが今は戦時中だ。漁師達は危険を冒してでも漁に出たいという。根っからの海の男たちみたいだ。市長も漁業再開のめどが立ったことに嬉しそうな顔で成り行きを見守っていた。市としても補助金による財源の流失や魚が上がらないことによる経済的損失を食い止めたいという気持ちもわかる。経済と安全の両立は厳しいものがあるが、この市には○○鎮守府というアドバンテージがあるのだ。それを生かさない手はない。私自身としてもなんとか市民に還元できないかと思っていたのでまずはその一歩が踏み出せたことに嬉しく思った。
「漁が再開できるのは非常に嬉しい話だ。待ち望んでいたといってもいいんですが・・・どうもな・・」
宇野さんはそう言いながらちらちらと明石と夕張を見ながら申し訳なさそうにしゃべる。なるほど。もし不測の事態で戦闘になった場合艦娘達に守ってもらえるのか心配なのだろう。私だって実際にこの目でみてなければ普通の見た目の女性をしたこの子達があんな風に戦っているとは思いもしなかっただろう。
「いやぁ、疑っているわけじゃねぇんだ。ただどうしてもこの目でみなきゃ信じられねぇというか・・申し訳ない。守ってもらう立場なのに。」
「宇野さんのお考えはごもっともです。私だって配属されて実際に目の当たりにするまでは信じられませんでしたから。お互いの信頼関係をより強固にするために一度鎮守府で訓練の様子を見学されますか?そのうえで最終判断をしていただいても構いません。艦娘達もいきなり知らない人たちや船を護衛するよりも顔見知りになっていた方がやりやすいでしょうし。」
まさかこのような返事が返ってくるとは思わなかったのだろう。複数の漁師達と後日見学に来る予定をとりきめ、この日の会談は終了となった。挨拶を終えて市役所をあとにする。思った以上に疲れた。早く帰って色々と準備をしなければ。
「提督。約束・・忘れてませんよね?」
「このまま帰る流れみたいな感じになってますけど行くべきところがあるじゃない提督!」
私の雰囲気で察したのか、二人が圧をかけてくる。すっかり忘れていた。私は約束通りお望みの場所に連れて行こうと進路を変える。満足そうな二人は終始ご機嫌だった。他の子達にずるいずるい言われるのが容易に想像できて帰った後が大変そうだ。
実際戦時中の漁は大変そうですよね。制海権とれてないと潜水艦などに怯えながら漁をしないといけないでしょうし。平和な世の中が続くことに越したことはないですね。
北上もコンバートで工作艦になったりしたら面白そうですね。艦隊これくしょんというタイトルである以上そういった北上の一面も見てみたいです。