海渡る願い   作:哨戒艦艇

5 / 64
休日だと執筆も捗りますね。


第4話

突然の事態に明石も困惑していた。姿を眩ませていた妖精達が突然現れたかと思うと、うぉーと雄たけびをあげながら一心不乱に開発し始めた。提督からの命令は届いてはいない。にもかかわらず勝手に作り出す妖精達。このままでは私が勝手に資材を使い込んだ罰を受けるかもしれない。しかし一体なぜ・・・?恐怖心と突然再び現れた妖精達への疑問が思考を妨げる。理由はどうあれ妖精達が戻ってきてくれたことは素直に嬉しい。妖精達がいなくなった後は私1人で整備を行っていたのだ。そして大型建造のために節約され、限られた資材の中での修理は私の仕事への誇りを失わせるには十分だった。疲労、資材不足、提督からの圧。国を守るために生まれてきた自分は一体何のために戦っているのか。もういっそのこと解体してもらい楽になったほうがマシだとさえ思うようになってきたところへまさかの妖精復活。希望がみえた反面、やはり提督からの罰が脳裏をよぎる。まずは報告しなければ。そう思った矢先にたまたま通りかかったのが長門であった。渡りに船とはこのことだ。急いで長門を呼び止めた。

 

 

 「長門さん!大変です!大変なんです!妖精たちが急に・・!」

 

 

 「妖精だと?これは・・!?一体どうしたというのだ?妖精たちは姿を消していたはず・・?」

 

 

 「そうなんです!つい先ほど急に現れたと思えば艦載機の開発を始めちゃって・・提督からの命令は出ていないのにもかかわらずです!どうしたらよいのでしょうか?」

 

 

 妖精達はさらに勢いづいてるようでよっしゃーうぉーとヒートアップしている。妖精達は無許可でいきなり物を作ったりしたことは初めてだったのでどうしたらいいのかわからなかったのだろう。しかしせっかく戻ってきてくれた妖精達。下手すればまたいなくなってしまう可能性もあり、止めるわけにもいかない。ここは提督に指示を仰ぐ必要があるな。

 

 

 「わかった。この長門が報告に向かうとする。明石は現状を見守りつつ、妖精達の動きに変化があれば使いを出して追って報告してくれ。では行ってくる。」

 

 

 こうして急いでやってきた長門を出迎えたのは、妖精と戯れている提督とその反応を見守っている大淀と赤城の姿だった。赤城は心なしか嬉しそうな顔をしている。提督が妖精の存在を認識している?どういうことだ?しかしまずは報告が先だ。

 

 

 「提督。先ほど工廠にいる明石から報告があった。妖精たちが現れ艦載機らしき物を作り始めた。開発を止めさせるように言うべきだろうか?」

 

 

 「いや。それには及ばない。先ほど赤城から打診があってな。艦載機の補充と予備の開発許可をだしたのだ。おそらく陰に隠れていた妖精たちがそのことを聞きつけて先駆けて作り始めたのだろう。妖精たちに任せておけ。」

 

 

 「・・・了解した。ではそのように明石に伝えてくる。ところで提督。貴方はいつから妖精がみえるようになったのだ?」

 

 

 いきなり墓穴を掘ってしまった。そうだった。佐賀山は妖精が見えなかったのだ。それは艦娘達も知っているはず。それがいきなり妖精の存在を認識しおまけに妖精とじゃれあっている姿も見られている。ここは無理やりにでも嘘をつき押し切るべきか・・・?いや・・おそらくばれるであろう。そうなった時に色々とややこしくなる可能性がある。ばれるとしても混乱を避けるために必要最低限の人数には私のことを話さなければなるまい。それに執務室に入ってきたときの会話はかたい言葉遣いではあるものの、こちらに完全にへりくだったな感じではない様子をみるとこの者も、鎮守府の中ではまとめ役的な上の立場なのだろう。

 

 

 「長門さん提督はその・・・」

 

 

 大淀が何とか場をつなげようとしてくれるものの、とっさの状況のためか言葉が続かない。赤城もどうしたらよいのかと悩んでいる様子だった。

 

 

 「長門と言ったな。この際だ。お前にも聞いてもらいたい話がある。ただし私が許可するまではこの話は他言無用にしてもらう必要がある。それを約束できるのであればすべてを話そう。約束できるか?」

 

 

 「・・・わかった。この長門、許可が下りない限り秘密を厳守すると誓おう。ただし今まで妖精が見えていたのであれば秘匿していたことに対する納得のいく説明を求む。」

 

 

 少し考え込んだ後ゆっくりと言葉を選ぶように、そして感情を抑えるようにつぶやく。長門としては妖精が最初から見えていたのであれば他にとれる選択肢がもっとあったはず。仲間も失わずに戦えたかもしれないという気持ちがあるのだろう。気持ちをくんで丁寧な説明をしてやらねばならない。そして提督の中身がいれかわったということもな。信じてもらえるかどうかはわからないが。

 

 

 「明石?も妖精の姿を再確認したのだな。ついでだ。明石もここに呼んできてはくれないか。」

 

 

 「了解した。明石をここに連れてくるとする。少しだけ待っていてほしい。」

 

 

 長門が執務室を後にした後に2人に相談する。

 

 

 「提督。秘密をばらしてもいいのでしょうか?信じてもらえるかどうかもわかりません。長門さんは人一倍責任感が強く、仲間が沈んでいく状況を嘆いていました。下手な説明の仕方では怒りを買う可能性も否定できません。」

 

 

 「心配するな大淀よ。いずればれてしまうことだ。ある程度この状況を理解できる者がいたほうが艦隊の指揮もうまくいくはずだ。長門の話し方をみるに、感情的にならず理性で抑えることができていたように思えた。納得はしてもらえぬかもしれないが理解はしてもらえるはずさ。第一ここで内輪もめしたところで誰も得をしないのだ。私のためにも、艦娘のためにも、国のためにも。」

 

 

 ピリピリした空気を感じ取ったのか手元にいた妖精は不安そうな顔でこちらを見上げている。大丈夫だと声をかけて優しく撫でてあげると少し緊張が和らいだのか、そのまま私の腕をよじ登って胸ポケットにスポッと入りそこから顔をだして収まってしまった。カンガルーかなにかなのか私は。

 

 

 「大淀、赤城、さっきから立ったままではつらかろう。椅子を用意して各々座るようにしろ。あと長門と明石の分も用意してやれ。内容によっては今後の展開についてしっかりみなで話し合いたい。」

 

 

 自分たちにも椅子を用意してくれる。たったそれだけの事かもしれないが、前任者が前任者だっただけに何気ない優しさが心に染みる。真船提督ならもしや。心にともった希望が少しずつ大きくなっていくのが2人にはわかった。

 




矛盾がないようにできるだけ頑張ります。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。