漁師や市長の会談を終えて私と工廠組は鎮守府に戻ってきたのだが、その時に案の定皆からのお土産の催促があって笑ってしまった。予想通りというべきか。といってもお菓子ぐらいしか思いつくものがなかったのでみんなで分けて食べるように渡した。非番の吹雪達は箱を受け取りお礼を言い終えるとわいわいとはしゃぎながら食堂に向かっていった。普段間宮のお菓子を食べなれている彼女達を満足させる品物ではないとは思うが、お土産という新鮮なイベントも相まってきっと美味しく食べてくれるだろう。明石と夕張と別れ、私は執務室に向かう。部屋では大淀が手を止めて私を迎えてくれた。
「お帰りなさい。出迎えに行けなくて申し訳ありません。」
「かまわない。いちいち出迎えをしていてはキリがないからな。業務最優先でいい。それに大勢に出迎えしてもらったからな。まるでスーパースターかというぐらいに。」
「提督が返ってくるとわかったらみんなそわそわしてましたよ。人気者はつらいですね。」
「まぁ本当の目的は私じゃなく別だっただろうからな。」
私はおそらくあの子達の出迎え目的のお土産本体を大淀にわたすとありがとうございます。と笑顔で嬉しそうに受け取ってくれた。いつのまにか集まっていた妖精達も揉み手をしながら笑顔でそわそわしている。商人かお前達は。お土産を渡すと興奮しているのかきゃいきゃい言いながら中身を物色している。いいリアクションをしてくれるのでついつい物をあたえてあげたくなってしまう。癒し生物?だ。
「会談の結果、当鎮守府に漁師の方々が視察に来ることになった。やはり実際に艦娘の戦闘の様子をみないと不安だそうだ。無理もない。普通の見た目をしている女性が海の上で戦うなんて想像もできんだろうからな。視察エリアは機密事項もあるので、ある程度限定しつつ、艦娘達の模擬戦を見てもらうつもりで行きたいがどうか。」
「それで問題ないかと。あとは日程の調整と艤装の調整ですね。演習に参加する者については護衛船団を務める者達で行いますか?」
「それがいいだろうな。川内、神通を呼んで選抜メンバーを相談して決めよう。演習とはいえ、旗艦を務めるのだ。そしてそこからそのまま船団護衛の旗艦にという流れだからな。視察の日程が決まるまでそういう訓練も取り入れてもらおうか。」
大淀と軽い打ち合わせをした後に工廠に向かう。工廠では夕張と明石、そして代理の北上が談笑していた。私は挨拶をすると三人は敬礼をして出迎えてくれた。
「遅くなってすまないな。今日は代理を務めてもらってありがとう。ささやかだがこれはお礼だ。後で食べてくれ。」
「えぇ~もらっていいの?いやぁ~悪いね~提督。役得ってやつだねこれは。」
笑顔で受け取る北上。北上はところどころ油で汚れていたが、それが妙に様になっている。つなぎも似合っていて工廠組に混ざっていても違和感がなさすぎる。こいつもしかして適正でもあるのか?そして工廠の妖精達にもお土産を渡すと喜んでいた。明石と夕張にももらっていたようで、これでしばらく休憩時間の茶菓子が豪華になることだろう。
「いやぁ提督!北上さんも配属かえて工廠で働いてもらいましょうよ!私達の手直しが必要ないぐらい完璧ですよ!いてくれたらたすかるなぁ~」
ちらちらと北上と私を見ながらおねだりする明石。北上に聞くと、面倒くさいと却下された。まぁこいつの性格ならそういうだろうと思っていた。笑いながら、そういうことみたいだ。と明石に告げると非常に残念がっていた。こういう助っ人時にだけお願いするという形ならいいよという事だったので、これからお願いすることもあるだろう。
「あっ。そうだ提督。そういえば自分の艤装をいじってて思ったんだけどさぁ。この前伊勢さんと日向さんの艤装大幅に改装したじゃん?あれみてなんつうの?なんか私もびびってきちゃってさぁ。私自身の艤装の改装設計案をざっくり考えてみたんだけどどう?ぶっちゃけ軽巡としては火力も低いし一点特化型にしてみようと思って。」
はいこれと設計図を渡されたのだが、あいにく私にはよくわからない。夕張に見てもらうと、ふんふんと言いながら明石と二人でなにやら話している。どうなんだと聞いてみると、夕張が代表して答えてくれた。
「簡単にいうと浪漫ですね。」
何を言ってるんだお前は。思わず唖然としてしまった。説明不足にもほどがある。しかし夕張は目を輝かせていたので、恐らくなにかとんでもないことになるのだろう。ロボットでいうと、ロケットパンチやドリルという男の浪漫をわかる数少ない艦娘なのだが、興奮すると止められない性格でもある。私は細かな説明をすると、落ち着きを取り戻したのか詳しく説明してくれた。要は主砲の数を減らして魚雷をてんこ盛りにしてしまおうとのこと。となると、運用方法が大きく変わってくる。これはよく考えて判断しないといけなさそうだ。どうしたものか。悩んでいる私に北上が話しかける。
「ぶっちゃけ川内や神通みたいに旗艦を務めるのもなんかあれだし、そういうのは任せて私は好きにできたらなーって。あっ、もちろん旗艦の指示には従うよ?ただ私はそういうのは他の人に任せたいなって思ってさ。多分木曾もそんな感じだと思うよ。あの子水偵邪魔邪魔っていつも訓練の時言ってたし。」
要は戦闘に集中したいということか。確かに性格的に面倒なことは避けたいというタイプだからな。木曾もそんなことを言っていたのか。今度話してみようか。
「わかった。こちらの艦隊の調整もあるのでここで返事はできないが、前向きに検討して早めに決断しよう。早めの方がいいだろうからなこういうことは。」
「さっすが提督。話が分かる男だねぇ。」
北上はもう決まったも同然みたいな言い方で私も持ち上げてくる。まぁ恐らく改装はすることになるだろうが、確約はできないからな。言葉は濁しておかないと。
その後視察の件や、今後について色々と話し合った後、私は工廠を後にした。執務室に戻り、大淀と供に執務を終わらせる。鎮守府に帰ってきたのが昼すぎだったので一日があっという間に終わってしまった。今日もお疲れ様と大淀と机を片付けて自分の部屋に戻る。椅子に座りながら、しばらくゆっくりとして時間を過ごす。川内と神通も訓練から終えて戻ってきているだろうから打ち合わせをしなければ。風呂に入りながら考えていると重大なことを忘れていた。今日の外出時に色々な店に寄ったことを口止めすることだ。あいつらのことだ。鼻高々にどや顔でまわりに自慢するに違いない。他の子達には他の場所にも寄るとは言ってはいるが、あの二人の語りを聞けば自分達も外にでて色々とみてみたいという憧れの気持ちを増幅させることは間違いない。あの二人の話は妙に聞き手に集中させる話術があるのがさらにまずい。ただし語彙力は小学生並だが。特に夕張。
私は急いで風呂から上がると、寮に向かって明石や夕張を探す。どうやらいないようで、食堂に向かったのだろう。急ぎ足で食堂につくと、すでに席について食事をとっている姿を目撃した。明石の前の席には大淀いる。遠くにいるので会話は聞こえないが、明らかにドヤっている明石。遅かった。それを羨ましそうな顔でみている大淀。早めに他の秘書艦を探さなければ。
夕張と明石の性格は明るくて愛嬌があっていいですよね。