海渡る願い   作:哨戒艦艇

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第50話

 「私が業務に励んでいる間にずいぶんと楽しんでいたようで。」

 

 

 すました顔で大淀がご飯を食べている。明石は少し気まずいのか、こちらを見ながら両手を合わせて謝っている。こいつこうなると分かっていながら私を隠れ蓑に使おうと席に呼んだのか。なんて奴だ。それよりも今は大淀の機嫌をとらないと。街めぐりが〇ークマンだけで終っていれば。

 

 

 「本当は当初の予定通りのはずだったのだが、明石と夕張がどうしてもというので仕方なくな。明石と夕張とかねてから約束していたしちょうどいい機会だったのだ。」

 

 

 「では私がどうしてもとお願いすれば提督は街につれていってくれますか?」

 

 

 非常に困った。私と大淀が抜ければ業務が滞ること間違いなしだ。大淀の業務の捌く量は半端ない速度でなおかつ正確だ。もちろん毎週休暇があるとはいえ、現状どちらかが不測の事体に備えて鎮守府に待機しないといけないため、二人でとなると厳しい。せめてあと一人補佐がいれば。

 

 

 「結論から言うと現状では無理だ。君もわかっているとは思うが、今はデスクワーク係の人数が少なすぎて動くに動けん。なのでこれを機にもう一人くらい補佐官を探してみないか?適正がありそうな子がいたら、業務を覚えてもらえばそう遠くないうちに街に出かけることも可能だぞ。」

 

 

 「わかっています。無理を言って申し訳ありませんでした。補佐官については検討したほうがいいかもしれませんね。私自身も出撃する可能性も零ではありませんから。」

 

 

 どうやらわかってくれたようだ。しかしそれでも大淀の雰囲気はかわらない。近いうちにでも外出したいのだろうか?どうやら私は彼女を満足させる回答ができなかったようだ。何かちがうのか。

 

 

 「何言ってるんですか提督!大淀は提督と一緒に街に出かけたいんですよ!道も場所もわからないところにいきなり行っていいよと言われても困るでしょう?せめて最初は案内ぐらいしてあげるべきです!」

 

 

 思い悩み始めた瞬間、隣の明石が肘をくいくいとさせて小声で耳打ちしてくる。こういう事に関しては気づくのが早い。確かに私は現代人として一通りわかるが、彼女は艦娘。そういった知識は疎いだろう。いきなり知らないところへ放り出すというのも酷というものだ。配慮が足りなかった。改めて今度時間をつくり街へ一緒に行ってみようと誘うと、嬉しそうに笑顔で返事をしてくれた。なんとか正解がでたようだ。そのあとのご飯は食べ始めた時よりも数倍おいしく感じられた。

 

 

 

 

 次の日、執務室には川内と神通を呼びだし、昨日の会談の内容を話した。昨日の夕食の帰り際に二人を見かけたので事前に明日話があると伝えておいたのだ。話を一通り聞いた二人は椅子に座りながら悩んでいた。後ろの席で大淀は相変わらず業務を進めているようだ。

 

 

 「なるほどね。私達が旗艦を務めずに駆逐の子達に任せるって訳か。前もって言われてた件が実現するってことだね。」

 

 

 「旗艦となるとそれなりに経験を積んだ子達がよさそうですね。となると私達の戦隊の子達から選ぶのが妥当ということですね。」

 

 

 川内と神通は鳳翔のところで前もって話をしていたので、ある程度目星はつけているようだ。後は本人達に聞いて受けてくれるかどうからしい。候補の名を聞くと、吹雪、朝潮、霞、長波。この四人がよいかもしれないとのこと。船団護衛部隊を増設するにあたり、益々駆逐艦の数が必要になる。今度建造を行わなければ。しかし余りに大所帯となると、統率がとれるか心配だ。私のような若輩者にみんながついてきてくれるだろうか。ともかく今はその四人に話を聞いてみるとするか。

 

 

 ほどなくして呼ばれた四人が執務室にやってきた。挨拶もほどほどに着席させ話を持ち掛ける。

 

 

 「突然の呼び出しですまないな。話というのは他でもない。以前鳳翔のところで皆で飲んだだろう。その時に旗艦を務めてもらう可能性があるという話は覚えているか?というのも昨日の会談の結果、漁師と市からの要請がかねてからあり、漁船の護衛をすることが決まってな。その護衛船団の旗艦を君達の中からまずは二名、つまり二部隊手始めに作ろうと思っているのだ。誰がいいかと川内と神通に尋ねたところ、君達四人を推薦してくれた。我こそはと思うものはいないか?」

 

 

 四人は互いに顔を見合わせてきょとんとしている。まさか本当にこの話がこんなに早くくるとはおもっていなかったのだろう。

 

 

 「確かにいきなりすぎたかもしれんが、いずれはやってもらわなければならないことだ。それに漁師の方々が今度視察にくることになってな。君達の実際に戦う姿を見てみたいとのことだ。その時の模擬戦もそのまま旗艦を務めてもらう。」

 

 

 さらに四人は驚いていた。霞にいたっては何を言われてももう驚かないとでも言いたげな様子で落ち着いていた。相変わらず肝が太いというべきか何というか。そして霞が一番最初に話し出した。

 

 

 「ありがたい話だけど、私は今回辞退させてもらうわ。理由としては私が旗艦を務めてもいいけれどまずはネームシップの朝潮に努めてもらうのがスジな気がするわ。別に嫌で押し付けてるわけではないのよ?私自身もやれと言われたらやる覚悟はあるわ。」

 

 

「私も今回はパスでお願いしたいね。あたしも別に構いはしないけど練度という面で不安が残るというのと、あたしは後追いの建造でここにきたから最初は先輩にやってもらいたいってのがあるね。こういう名誉なことはやっぱり頑張ってきた者に与えられるというべきかなんというか。まぁそんな感じだ。ただこういった話がまたあった時は優先して回してくれよな!」

 

 

 霞と長波は立て続けに辞退する。となると残されたのは二人、吹雪と朝潮。二人ともネームシップ艦であるとともに、この鎮守府の古参組だ。回りからも文句がでないだろう。

 

 

 「吹雪、朝潮。お前達に努めてもらいたいと思うがやってくれるか?」

 

 

霞と長波の意見ももっともな理由があるし、無理やりやらせるわけにはいかない。しかし吹雪と朝潮には 半ば半強制的な感じになってしまう矛盾。はたして受けてくれるだろうか。

 

 

 「私でよかったら喜んで引き受けさせていただきます!一生懸命頑張ります!」

 

 

 「この朝潮、旗艦という名誉ある役目を頂き大変うれしく思います。最後まで全力でやりぬく覚悟です!」

 

 

 どうやら思った以上にやる気になってくれていたようだ。なんとか決まってよかった。

 

 

 「あとは漁師の方々と視察の日程を決めていくだけだ。それまではそれを想定した訓練をしてくれ。川内、神通。よろしく頼むぞ。」

 

 

 二人は立ち上がり敬礼をすると、後に四人も続いて立ち上がり敬礼をする。私も返すと、六人は執務室を後にし、この結果を水雷戦隊で共有するためにまずはミーティングをするといって集まるそうだ。吹雪と朝潮。二人にとってもいい経験となるだろう。程なくして漁師の宇野さんから連絡があり、視察の日程が決まった。あとは市にも連絡をしておかなければ。その後も業務をこなしつつ、お昼過ぎに訓練を終えた空母組の話を聞いてパイロット妖精達からなにか要望が上がってないかなどを確認する。漁師の方々が視察にくる件を伝えると、赤城はお魚が今後はもっと食べられるようになるのですねと嬉しがっていた。確かに魚が気軽に食べられるようになるのはうれしい。間宮をはじめとする食堂組もきっと喜ぶだろう。盛り上がりをしり目にぼさっと誰かが呟く。瑞鶴だ。

 

 

 「でもこれってさ。旗艦を吹雪と朝潮がつとめるんでしょ?その訓練をそれぞれ川内と神通が教えるんでしょ?代理戦争みたいにならないかな?」

 

 

 一瞬の静寂が執務室に漂う。確かに。これはひょっとしたら大変なことになるかもしれない。あの二人ならと思わせる何かがあるのがさらに怖い。

 

 

 「では旗艦朝潮に一週間分の間宮デザートを。」

 

 

 「赤城さんといえどここは譲れません。私は旗艦吹雪に賭けます。」

 

 

 鎮守府闇賭博が開催されようとしている。このままでは不健全なことになる。二人に急いでやめるように指示すると少し残念な顔をしていた。流石にそんなことにならないとは思うが・・

 

 




神通先生と朝潮。そして川内先生と吹雪。決戦の日は近い。
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