「よし。突撃する!全艦朝潮に続け!」
第二戦隊は朝潮を先頭に開幕一斉射の後、第一戦隊に突撃を開始した。訓練用魚雷も発射し、距離を一気に詰めて戦闘の早期終了を図るつもりだ。前日に作戦を皆で考えた結果、この作戦で行こうと決まったのだ。しかし朝潮の前に出がちな性格を読んでいたのか、第一戦隊は距離を取り、持久戦に持ち込もうという算段なのだろう。早々に作戦を見破られ、二つの戦隊の距離は詰まることはなかった。
「やっぱり突撃してきたね。白雪ちゃんのいう通りになった!」
「このまま距離をとって相手の得意分野に持ち込ませないようにしましょう。吹雪ちゃん指示をお願い!」
第一戦隊の皆は自分達の読みがあっていることに心の中でほくそ笑んだ。恐らく朝潮達は突撃してインファイトに持ち込んでくるであろうと予測しておいたのだ。僚艦の白雪と顔を見合わせ頷く吹雪。相手の思惑通りにさせない展開を続ければ心の焦りからミスが多くなってくるはず。そこをつく。そういう作戦だ。第一戦隊は吹雪をはじめ、白雪、綾波、敷波、皐月。第二戦隊は朝潮、霞、陽炎、不知火、天津風の五名ずつだ。特に陽炎と天津風は建造されたばかり。砲雷撃の精度が他の艦娘に比べて甘い。接近を許せば当然敵も味方も射撃精度は上がる。しかし高速で移動しながらの砲雷撃となると、経験がものをいう。第二戦隊は痛いところをつかれた形となった。
「流石に見破られていたわね。伊達に同じ釜の飯を食っている訳じゃないわ、ね!」
「上手くいけばオッケーぐらいの感覚でしたからね。どうします?このまま追いかけますか?」
「追いつこうにも追いつけない状況ね。このまま撃ち合いになると私達が不利。全艦!目標を敵旗艦の吹雪に一点集中を!旗艦を叩いて敵が混乱したところをそのまま勢いで破ります!」
「了解よ!私だってやるときはやるんだから!」
こちらの作戦を見破られたことに感心しながら砲撃する霞と冷静に落ち着いている不知火。朝潮はこのままだと不利だと考え、勝負にでることにした。短期決戦を挑んで決着をつけるという考え自体は変わっていないようだ。陽炎と天津風も自分達が足かせになっていることはわかっているだろう。しかしそれにのまれることなく、きびきびとした動きでくらいついていた。
「わわっ、なんか集中砲火うけてない?私。」
明らかに自分のまわりの至近弾の多さに慌てる吹雪。吹雪と必然的に距離が一番遠い最後尾の皐月は弾が飛んでくる気配がまるで感じられない。
「僕をなめないでよね!!」
怒りの声とともに放たれた皐月渾身の一撃は放物線を描き、敵最後尾の天津風に直撃した。両軍初めての直撃に歓声があがる。漁師達から大丈夫なのか。などの声もあがるが、ダメージを負いながらもこらえている天津風をみて、ギャラリーは思わず唾を呑み込む。水偵から中破判定が下された。まだまだ戦えるようだ。だが直撃したことによって明らかに動きの精彩を欠いている。そのわずかな変化を見逃すほど皐月は甘くなかった。
『よし!当たったぞ!装填急げ急げ!このまま武勲はこの皐月が貰うぞ!新参に目にものみせてやれ!』
『装填完了!発砲諸元はそのまま!いつでも撃てます!』
「よぉーし!これでとどめだ!」
皐月の掛け声ともに放たれた砲弾が再び天津風に襲い掛かる。先ほど受けた砲撃から態勢を整えられていない天津風は自分めがけて飛んでくる砲弾を見つめる。避け切れない。遠くから観戦している川内や神通もそれを感じていた。恐らくあれは当たるだろう。古参とルーキーの力の差を見せつける展開となった。そして皐月の放った砲弾は見事に命中した。ただし狙っていた目標とは違う相手に。
『皐月の放った砲弾が不知火に命中!不知火小破判定!』
「何をぼさっとしているんですか。早く体勢を整えてください。まだまだ負けていませんよ。」
水偵が被弾状況を報告する。放たれた砲弾を予知し、いつでも前に出ることのできる状態をとっていた不知火がかばった形で天津風への直撃を防いだ。当たり所もよく、一撃で持って行かれることはなかった。驚いている天津風を叱咤し、態勢を整えさせる不知火。激を飛ばしたおかげか、天津風は調子を取り戻したようだ。
「あら。かっこいいとこ見せてくれるじゃない。」
「ここで一人欠けると圧倒的不利になるのは確実です。全体を考えて動いたまでです。」
「さっすが!私の自慢の妹ね!」
「やられっぱなしは気が済みません!倍返しで仕返ししましょう!」
霞と不知火のやりとりを聞き終えた朝潮は士気が上がった今が攻め時と反撃を促す。旗艦としての使命。負けるわけにはいかない!朝潮の放った一撃は吹雪に見事命中する。あちらがざわついているのがわかる。
「よし!突撃する!」
速度を目一杯あげて突撃する第二戦隊。吹雪に中破判定がでた第一戦隊は慌ていた。上手くいっていた状況が突然ひっくり返りそうになる恐怖。吹雪は焦っていた。今までは指示通りに一生懸命戦うだけでよかった。しかし今は自分の被弾をきっかけに状況が変わろうとしている。しかも自分が的確な判断をくだし、持ちこたえなければならない。川内さんは何事もなくこなしていたというに自分はどうか。やはり自分は力不足だったのか。ネガティブな思考がよぎっている、このまま負けてしまうのか。
「吹雪ちゃん!!私が時間を稼ぎます。その間に態勢を整えてください!一人で気負う必要なんてないからね!後はお願いします!綾波、突撃します!」
「まぁここでいいとこみせてやらないとね!敷波も続きます!」
そう言い残し、突撃を敢行する綾波と敷波。我に返った吹雪がそれを止めようとするが、綾波の突撃についていける態勢を整えていない。
「吹雪ちゃん二人が頑張ってくれる間にこっちも態勢整えて反撃しよう。」
悔しそうに頷くことしかできない吹雪。自分の力不足を恨みながらも今やれることをせねば。素早く態勢を整え、白雪と皐月に二人を援護するように指示し、自分も砲撃を開始する。勝負が一気に動き始めた。
「相手も突撃してきたわよ。でも二人しかきてないわ。」
「吹雪の態勢を整えるために時間稼ぎにきたのでしょう。ここは確実に仕留めておくべきですね。」
「全艦魚雷発射用意!敵の動きを制限させて足が止まったところを叩く!」
朝潮の号令とともに魚雷が第二戦隊の面々から放たれる。訓練用とはいえ、やはり怖いものはこわい。当たればもちろん大破判定必須だ。吹雪から狙いを変え、綾波と敷波を叩く準備をする第二戦隊。しかし綾波と敷波は速度を落とさずこっちに向かってくる。そして二人はお返しと魚雷を放つとさらに速度を上げてくる。予想外の行動に驚く第二戦隊。その隙を二人は見逃さなかった。
「撃てるチャンスは少ないです。妖精さん踏ん張りどころです!」
『突撃こそが駆逐艦の本懐!もっていけるだけもっていきましょう!』
綾波の放った一撃が朝潮に命中する。後ろに続いた敷波が手負いの天津風に砲撃し、大破に追い込んだ。これにより天津風は脱落、たじろいだ朝潮は砲撃に参加できず一時的に人数差の不利を縮めることができた。そして向かってくる魚雷を綺麗にかわし、さらに前進する。訓練とは思えないほどの気迫に陽炎は気押されていた。
「ありえないわ!あれだけの魚雷をかわすなんて!」
「喋っている暇はないですよ!陽炎!機銃掃射を!」
不知火と陽炎の会話が終わった直後、互いに激しい機銃による銃撃戦がはじまる。ドドドドドドという複数の轟音の中、互いの艦娘はダメージを受け続ける。これだけの距離を互いに避けるのは不可能だろう。あとは主砲の装填速度次第。そして霞と朝潮の砲撃が綾波、敷波に直撃し、大破判定がでる。
『よぉぉーし!!日頃の訓練の成果がこんなとこで出るとはな!!古参組をなめてもらっちゃ困るぜ!』
第二戦隊の朝潮や霞の妖精達から大きな歓声が上がる。神通や川内の厳しい訓練を最初期からともにしてきた朝潮や霞に搭乗している妖精達。主砲の発射回転率でベテラン妖精の力を見せつける結果となった。
第一戦隊は二人脱落することになった。朝潮、陽炎が小破、不知火は中破、天津風は大破脱落したが、二人を大破脱落に追い込んだことに満足した第二戦隊。しかしその満足を一つの砲弾が吹き飛ばす。不知火の大破判定が間もなく下されると、飛んできた砲弾の方を振り向く。少しの油断を見逃さない。態勢を整えていた吹雪達がこちらをたんたんと狙っていた。
「忘れてましたか?敵は正面だけとは限りませんよ。」
白雪は呟くと妖精に再装填を促す。戦いはまだ終わらない。
白雪にも早く改二がきてほしいですね。