「にしても今回の演習は漁師さん達もすごいすごいと言っていた。大好評だったぞ。」
目の前で映画撮影顔負けの戦闘シーンを目撃できたのだから興奮するのも無理はないかもしれない。実際の戦闘だと火薬の量が違うのでもっと炸裂したりするが、それでも十分だっただろう。わいわいと話し合う艦娘達。なんだかんだ空母達と駆逐艦の子達が一緒に食事をするのは初めて見たかもしれない。こういった交流の機会は定期的に設けてもいいかもしれない。そう思ったが、空母達の食事の勢いを確認すると素早く撤回した。とても美味しそうに食べるのがこれまた・・・しかしあれだけ美味しそうに食べるならこちらももはや笑顔になってしまう。美味しいかと赤城に尋ねると、満面の笑みで返事をしてくる。思ってた通り、つられて笑顔になってしまう。彼女にはそういった魅力があるようだ。
「あの・・提督。本当にすみません。ですがこういった機会がなかなかないもので。」
「そうなんだよね。提督さん水雷戦隊の子達や酒飲みの子達とはよく飲みに行くけど私達とはあまりこういったところこないじゃん?だから内心うれしいなーって思ってたり。」
翔鶴と瑞鶴が困ったような笑みを浮かべながら話してくる。彼女達もこういった交流を心待ちにしていたそうだ。遠慮ない一航戦と比べて控えめな所が新鮮に映ってしまう。思えば赤城もであった頃はこんな感じだった。今は・・・本心をさらけ出してくれるとポジティブに考えよう。
「お前達は変わらないでくれよ・・・」
「な・・何よ急に・・私はあんな大喰らいにならなっ・・・」
「いい度胸ね。是非その続きのセリフを聞いてみたいものだわ。」
瑞鶴の肩にポンと手を置いて哀愁が漂っていたのだろうか。私に少し同情しながら返事をする瑞鶴。途中で気づいて慌てて口を閉じるが、向かい側からの返事にしまったという顔をしていた。そこからはおなじみの光景が繰り広げられることになった。加賀と瑞鶴が口論で揉め始めたのだ。あわあわする翔鶴。赤城はまた始まったと言わんばかりの様子で食事をしながらこっちを見ていた。しかし今回はお酒が入っているため、いつもよりヒートアップしているようだ。私は自分のグラスをもって立ち上がり、加賀の隣に席を移す。立ち上がったことにより一時的に空母達の視線を集めることに成功した。これで口論に夢中になっていた二人の争いが一旦止まったので目論見的には成功した形だ。そして加賀に優しく語り掛ける。
「まぁなんだ。加賀も瑞鶴のことが憎くて怒っている訳じゃないだろうしな。この前執務室でお前たちの話になった時に褒めていたぞ?最近は実力をつけてきたから空母部隊の旗艦として任せていいぐらいに成長しているって。」
「提督。そんなことは私は言っていませんが?」
私の腕を軽くつかみながら私を軽くにらんでいる加賀。しかしその顔は酒のせいか、はたまた恥ずかしさからなのか、赤くなっていた。
「そういえば加賀さんそんなこと言ってましたね。」
「赤城さんまで!」
笑顔で裏切る加賀の相方。きっと赤城自身に悪気はない。純粋にそんなこと言ってましたねぇという感覚なのだろう。
「えっ?本当に?ほんと?あっ、なんか泣きそう。」
「よかったわねぇ瑞鶴。加賀さんも瑞鶴のことちゃんとみてくれてたのよ。」
少し涙ぐむ瑞鶴と励ます翔鶴。二人をみて笑顔になっている私をじとーとした目で見てくる加賀。
「余計なことを言ってもらっては困ります。」
「ははっ。だがあんまり厳しすぎるのもよくないぞ?川内神通も訓練は厳しいみたいだがこの前ここで食事をした時に駆逐艦の子達と話し込んでな。互いの気持ちをぶつけあってというか・・意見交換だな。こういう思いで指導しているというのを話した翌日からの駆逐艦達の訓練の動きがよくなったそうだ。もちろんそれまでの動きが悪いわけじゃない。ただ川内や神通のこういう風に育ってほしいという思いがモチベーションにつながったのだろうな。この訓練はこういった想定。これはこういった想定。しっかりと目標を示して導いてあげるようになったおかげだろう。特に新造艦の子達は古参の子達みたいに二度と悔しい思いをしたくないという経験をしていないだろうから。ただただきつい訓練をこなす毎日だとモチベーションを維持するのは難しいよな実際。」
「・・・しかし誰か一人ぐらいは規律を守る者がいないといけません。誰かが手綱を握らなければ組織というのはあっという間に瓦解します。私は憎まれ役でも構いません。私は一時的とはいえ、沈んでしまった経験があります。暗くて、冷たい海で一人ぼっちでした。あのような思いを他の子達にしてほしくありません。なので私は自分にも他の子にも厳しくあるつもりです。」
私と空母組四人。そしてその隣にいる川内と神通は神妙な面持ちになっていた。そのさらに奥で騒いでいる駆逐艦達の騒ぎ声が気にならないぐらいに。
「確かにな。そういった気持ちで普段の訓練を取り組んでいたんだな。加賀のいう通りしっかりした子がいないと組織というのはグダグダになってしまうだろう。気持ち的には今のままでいいと思う。けど実際今のお前の気持ちを聞いた瑞鶴や翔鶴はきっとお前の本音を聞けて嬉しかったと思うぞ?なぁ二人とも。」
私が問いかけると二人とも力強く頷く。
「加賀さんが悪い人じゃないっていうのはわかっているけど。やっぱり自分でいい感じの動きができた時とかはやっぱり褒めてもらいたいかなって。もちろんだめだったらだめって言ってほしいけど!ダメ出しするときでもただだめっていうんじゃなくてこれはこういう理由だからこうしたほうがいいみたいな感じで・・オネガイシマス・・」
何故か最後は片言になる瑞鶴。
「瑞鶴もあんな風に言っているし、基本的には今まででいいんだ。だが試しに今までのやり方を少し変えてみたらどうだ?これで二人がさらにのびたら指導している加賀からしても嬉しいだろう?色んなやり方を模索してみたらどうだ?」
「・・・わかりました。提督がどうしてもというのであれば。私はあなたに救われましたから。私もこういった形でしか恩を返すことしかできませんので。艦隊のお役に立てるのであれば。」
「ふふっ。新生加賀さんの誕生ですね。ささっ。こういっためでたい時には美味しい物を食べてお祝いするのが一番です!一緒に食べましょう!」
赤城の絶妙な合いの手により和やかな空気を取り戻した。赤城、私はお前ができる子だと信じていたぞ。翔鶴瑞鶴もいい目をしている。やる気に満ち溢れているのだろう。これでさらに艦隊に磨きがかかりそうだ。赤城達と久々にこみいった話ができてよかった。これで食事量が並になれば定期的にここに連れてきたいのだが。
わだかまり?が解消できてよかったです。軍である以上規律はとても大切だと思います。ですが艦娘達には基本のびのびとしていてほしいですね。瑞鶴もやる気をアップすることに成功したのでここから更なる飛躍が期待できそうです。