海渡る願い   作:哨戒艦艇

57 / 64
ついに闇竹を倒しました。潜水艦ズに感謝。


第56話

 あれから色々と盛り上がって解散となった。しかし思った以上に被害は少なく、会計時に疑問に思っていると鳳翔が伝票で口を隠しながらふふっとほほ笑んでいる。

 

 

 「私からの気持ちですよ。いつも頑張ってくれている提督に感謝を込めてお安くしときますね。」

 

 

 鳳翔がこっそり耳打ちしてきた瞬間、感謝するとともに、内心ガッツポーズをしてしまった。我ながらこすい人間だと思うが、やはり人のご厚意には預かるべきだ。鳳翔には今度なにか違う形で返していければいい。酒保の前で解散し、自分の部屋に戻る。しかしそれなりの人数で飲み食いしたのでお財布は中破を免れることはできなかった。まぁ彼女達の数少ない娯楽だ。貢献できたのであればよしとしよう。そのまま寝る準備を終えて布団に入る。私は風邪をひかないようにと残っている理性を働かせて眠りについた。

 

 

 

 

 耳元が騒がしい。聞きなれてきた起床ラッパの音だ。何事かと起きると、いつもの妖精達が私のベッド近くの寝具の上でこちらに向けてラッパを吹いていた。いつもは時間になると頬をぺちぺちと叩いて起こしてくれる妖精達。しかし今回はなかなか起きない私に対して強硬手段をとったようだ。お前らが鳴らさんでもじきに鎮守府内にはラッパの音が響き渡るというのに。しかし気を使ってくれたのか、小さい音量のため、びっくりしておきることはなかった。私は朝の挨拶を妖精達と交わして身支度をする。全く器用なやつらだ。妖精達は私の肩によじ登ってくると、執務室の方向を指さしわめいている。艦長気分でも味わっているのだろうか。わかったわかったと返事をして執務室を目指す。

 

 

 「おはようございます。今日も一日宜しくお願いします。」

 

 

 「おはよう。少し遅れてしまってすまない。今日もよろしく頼む。」

 

 

 「いえ。いつも提督は早いのでこのぐらいの時間がちょうどいいと思いますよ。」

 

 

 大淀と挨拶を交わし、業務を始める。このところ大規模な戦闘の兆しがなく、平和といっていいぐらいの日常が続いている。しかし相手は深海棲艦。いつどこに現れるかわからない。週明けには第一戦隊と第二戦隊が漁船団の護衛任務に正式に就く。僚艦はメンバーのローテーションを多少行うものの、旗艦はしばらく吹雪と朝潮にお願いする予定だ。いずれは霞や長波にも務めてもらい、経験を積んでもらいたい。吹雪や朝潮達を休ませるという意味合いもある。いずれくるであろう戦線拡大に備えておかなければ。

 

 

 「提督。本部から建造の許可がおりました。工廠組と日程調整を行えばいつでも建造可能です。」

 

 

 かねてより申請していた建造の許可がでたようだ。やはり本部としてもまだまだ戦力を増やしたいという思惑があるようで、艦娘の部隊を主力にシーレーンの防衛強化、あるいは奪還作戦を考えていると谷上中将から以前連絡があった。今回はそのための建造だ。早めに建造を行い、できるだけ訓練を積んでもらう必要がある。善は急げだ。工廠の明石に建造を行いたい旨を伝えると、午後からばっちりいけますと返事があったので昼から行う事となった。相変わらず恐るべき仕事速度だ。とにかく午前中にやれることはやっておこう。かまってくれと訴えてくる妖精達の口に無理やりお菓子をねじ込んで黙らせると速やかに業務を終わらせていく。お菓子一つで機嫌がとれる妖精達。あいわからずちょろい。昼食をとったあとに工廠に向かう。艤装の点検整備を行っていた明石と夕張が挨拶をしてきた。

 

 

 「急な申し出ですまないな。予定を無理やり変えて建造を行うのではないのか?先に優先する業務があればそっちをやってもらいたいのだが。」

 

 

 「問題ありませんよ提督。艦娘の人数が増えたのに伴い、妖精達の数も最近増えてきたんです!おかげで業務が捗ります!」

 

 

 「ん?艦娘が増えれば妖精は増えるのか?」

 

 

 「いえ。そういうわけではありません。以前は艦娘の人数は多くてもここまで妖精の数はいませんでしたから。なにかやってくる条件みたいなのがあって、それが満たされているので増えてきているんじゃないですかね?私も妖精博士ではないので詳しいことはわかりませんが。」

 

 

 確かに最近やけに妖精の姿を見ると思っていたが、やはり増えていたのか。特にこの工廠はいたるところで妖精達がわいわいと騒ぎながら業務をこなしている。ああでもないこうでもないと言っているような感じだ。間宮も最近食堂に妖精達が現れたと言っていた。なんでも食事作りの手伝いをしてくれるらしい。どこからやってくるのかわからないが、助けてくれるというのならありがたいことだ。その分差し入れの数も増えていきそうだが。

 

 

 「まぁともかく、早速やっちゃいましょう!」

 

 

 夕張の掛け声を合図にいつも通り妖精達が取り掛かっていく。今回はギャラリーも少なく、静かに作業が進んでいく。後ろでそわそわし始める艦娘がいないので、〇〇型など詳しくない私は誰がやってくるのかわからないまま完成を待つことになる。

 

 

 「あぁ~!やっぱり!なんか建造してるとおもったんだよね!」

 

 

 後ろから声が聞こえる。振り向くと、入口付近に多数の艦娘がやってきていた。皐月がしゃべりながら一番に駆け寄ってくる。それに続く形で昨日の演習組がわいわいと駆け寄ってきた。艦娘には建造するタイミングがわかるとでもいうのか。艤装の点検と修理を兼ねて今日は非番になっていたのを思い出した。邪魔になるわけでもないので、私はこの子達と会話でもしながら気長に待つことにした。

 

 

 「ところで思ったのだが、建造は私がいなくても妖精達に指示さえすれば建造は行えるのではないか?」

 

 

 「いやぁ。それがどうもうまくいかないみたいで。普段の作業は問題ないのですが、建造となると、提督がいなくなったら妖精達がやる気を失うみたいで。なんか勝手な物作っちゃうんですよね。この前なんかいつのまにか内火艇つくってたりしてましたから。みんな提督に褒めてもらいたいんですよきっと。」

 

 

 ナイカテイがなにかはわからないが、とにかく私自身が立ち会ってないといけないことはわかった。まぁ何時間も立ち会うわけでもないので特に問題もない。

 

 

 「これは・・?霞これはきっと・・!」

 

 

 「・・・誰かがくるみたいね。」

 

 

 朝潮と霞が騒ぎ出した。この模型は朝潮の姉妹艦なのだろう。陽炎と不知火もざわついている。というとことはこの中に陽炎型もある、と。

 

 

 なにやら平べったい軍艦もある。これは恐らく空母だろうか?どちらも同じような形をしているのでこれは姉妹艦なのだろう。空母と聞くと誰とは言わないが、二人の美味しそうに食事をする眩しい笑顔がよぎってしまった私は思わず神頼みしてしまう。どうかなるべく燃費のいい子でありますように。その後も次々と完成していく模型。順に窯に入っていき、しばらく待つ。鳳翔のおかげで昨日の浮いたお金で買ってきたお菓子を妖精達と休憩がてらみんなで食べる。後ろの艦娘達にも配ると嬉しそうにわいわいと食べていた。しかし一体何故建造するタイミングがばれるのだろうか。不思議に思いながら待っていると、不知火が近づいてきてボソッと呟いた。

 

 

 「簡単ですよ。司令が建造するときは必ず間宮のお菓子を沢山買うでしょう。その様子を誰かが目撃すればそこからはあっという間です。」

 

 

 私の考えを読み取って代弁してくれた不知火。そういうことだったのか・・・不知火に感謝すると、いえ。と軽い返事をしてなお私の隣に佇む。私の行動パターンを読んでいたということか。まぁ非番の時であれば問題ないことだ。それに建造されて、でてきた艦娘達をすぐに案内してくれるので助かる。隣でなおも何か言いたげな不知火。何か近づいてきたのは訳があるのだろう。

 

 

 「何かあったか?」

 

 

 この一言だけで、私が何か察してくれたと感じたのか、不知火は私を見上げて少し間を置いたあと、話しかけてきた。

 

 

 「昨日の演習の後、川内さんと神通さんから総評がありました。陽炎は自ら囮役を買って出て弾避け役になりました。そのことで怒られてしまったみたいで。どうかここは司令から一声かけてもらえないでしょうか。」

 

 

 確かに昨日の酒保で時間がなかったので、駆逐の子達とはあまり話ができなかったが、川内と神通達が言っていた。

 

 

 「戦いは何が起きるかわかりません。敗戦となった時に殿を務めなければならないこともあると思います。ですが、ああいった役目をあの子達にやらせるわけにはいきません。そういう事は私達で十分です。」

 

 

 神通の台詞を思い出す。これは難しい問題だ。そう言った決断を下すのは勇気がいるだろう。私自身もその時になった場合、非情な決断を下すことができるだろうか。逆に言えばそうならないために日々訓練し、鍛えてもらうのだ。

 

 

 「わかった。建造が終わったら私から陽炎に話しておこう。」

 

 

 「ありがとうございます。」

 

 

 よくできた妹だ。建造されたばかりの姉のことが心配なのだろう。これで口まわりにお菓子の食べかすが残っていなければ完璧なのだが。

 

 

 「何でしょうか?不知火に落ち度でも?」

 

 

 真剣な眼差しで問いかけてくる不知火。私はそのギャップにふふっと笑ってしまいながら、自分の口まわりをつんつんと指さす。一瞬訳の分からない顔をした不知火だったが、やがて私の意図に気づくと、顔を赤らめて恥ずかしそうに口まわりをごしごしと拭いていた。

 




不知火は落ち度かわいい。しっかりとしていてもどこか抜けていそうなイメージが不知火にはあります。勿論凛々しい不知火も好きです。かっこいいですね。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。