食堂は新しい艦娘達の存在もあってか、いつにもまして賑わっていた。訓練から帰ってきた艦娘達と建造された艦娘達の顔合わせも兼ねているみたいだ。私も列に並び食事の配膳を待つ。
「お姉ちゃんがきたからには任せておきなさい!いっちばんになってやるんだから!」
「ふふっ。期待しておくよ。でもまだまだ白露には抜かれない自信があるな。」
「そーそー。まだまだあたし達にはかなわないっぽい。百回やっても百回勝つよ!」
「夕立も時雨ちゃんもなんか強そうだもの。村雨もいいとこ見せれるように頑張ろっと。」
白露型や睦月型など今回は多くの艦娘が増えた。姉妹同士でわいわいと食事をとっている姿は微笑ましい。
「やぁ提督ではないか。今日新しく着任した海防艦達だが。あれはなかなかにみどころがある。何なら私が指導係としてついてもいいぞ。」
後ろから伊勢と日向が声をかけてきた。何でも寮の見学に来た時にたまたま鉢合わせたらしく、その時に着任祝いとして瑞雲のぬいぐるみや模型をプレゼントしたそうだ。海防艦達はいたく気に入ったらしく、特に択捉と佐渡はものすごいはしゃぎっぷりだったようだ。一体どこから調達としたというのか。
「いや。だめでしょ。そもそも主要任務が根本的に違うんだからさ。」
冷静な伊勢。非常に助かる。むむむと唸る日向。何がむむむだ。
「まぁ、いつでもこの日向に任せてもらっても構わない。いつでも門戸は開いているぞ。」
謎の台詞を笑いながら自然に流し、お盆に今日の料理を受け取る。今日はカレーだ。そういえば今日は金曜日だった。そういえば間宮が娯楽として今度、艦娘達の料理コンテストをしてみたらどうかと提案してきたのを思い出した。カレーコンテストでもいいかもしれない。
「提督こっちこっち!」
誰かが私を呼ぶ声が聞こえる。蒼龍と飛龍だ。せっかくなので一緒に食事をとることにした。それに偵察も兼ねなければならない。彼女達のお手並みを拝見させてもらわなければ。
「建造されて少し不安だったけど。ここはいいとこみたいで安心した!昔はひどかったってさっき聞いたけど綺麗な内装でびっくりしちゃった!」
「杞憂だったね!そして何よりご飯が美味しい!しかも間宮特製のお菓子も食べられるんでしょ?サイッコーだね!」
嬉しそうでなによりだ。やはり空母というのは食事の量がどの子も多いみたいだ。これは艦娘としての特徴なのだろう。しかし赤城や加賀以上に食べるわけは流石にあるまい。この時そう思っていた。
「おかわりし放題ってすごいね!お昼ももちろんおかわりできるんだよね?」
これは・・・凄まじいの一言につきる。赤城以上の逸材が現れるとは思ってもいなかった。飛龍いわく、訓練で体を動かせば恐らくもっと食べるかもしれないとのこと。蒼龍も結構食べたが、飛龍の比ではない。食事を終え、飛龍たちとお盆を返しにいくと、間宮が嬉しそうにおいしかった?と飛龍に尋ねていた。自分の作った料理をあれだけ美味しそうに沢山食べてくれるというのは料理人冥利に尽きるというものだろう。美味しい物を食べて元気をつけてもらいたいと食費には多めに予算を割いているが、この調子だと予算を増やさなければならなさそうだ。
食事を終え、自分の部屋に戻ろうと思ったが、酒保から声が聞こえることに気が付く。今日も誰かが一杯やっているのだろう。藪をつついて蛇を出す必要はない。しかしたまには自分自身のために甘いものが食べたい。いつもは配ってばかりなので、自分好みのお菓子を食べたいという衝動に駆られてしまった。さっさと甘味を買って部屋に戻ろう。酒保に入っていくと、そこには珍しい人物がいた。妙高と足柄だ。足柄は私に気が付いたのか、すごい勢いで手招きしている。そばには寄っていくが、絶対に私は席につかないぞ。絶対にな。
「ちょっと提督!妙高姉さんを慰めてあげて!いつになく落ち込んでいるのよ!」
「すみません提督。このような情けない姿をみせて。」
いつも凛々しく、面倒見のいい妙高が落ち込むなんて何事だろうか。私は二十秒前に心の中で宣言した誓いがあっさり破られたことに気が付かず、席につく。
「実は・・今日建造された艦娘の中に初風という子がいましたよね?あの子に妙にさけられてるみたいで。初めて挨拶してくれた時に目が合ったかと思うと、顔が青くなって首を抑えながらささっとどっかにいってしまったんです。他の子は普通に挨拶してくれたのに・・私じつは皆に嫌われているんでしょうか?」
「そんなことないわ妙高姉さん!きっとなにか事情があったのよ!姉さんはいつも優しいじゃない!嫌われることなんて絶対にないわ!ね?提督?」
「ああ。妙高はよくやってくれていると私も思う。悪いうわさも聞いたことがない。というより艦娘同士で口喧嘩しているところをみかけたことはないな。たまに瑞鶴が川内に怒っているところをみるぐらいだ。それでも本気で怒っているという感じではなかったな。足柄の言う通り何か事情があるのだろう。今度私からも聞いておくとする。だからそんなに気にすることはないぞ。せっかくだからたまにはパッと飲んで気分転換でもしてリフレッシュしよう。な?」
「さっすが提督!話が分かるじゃない!ね?提督もこういってくれてるんだし今日は飲みましょ姉さん!」
「提督、足柄。ありがとうございます。じゃあ今夜はちょっとだけ飲ませてもらいますね。 」
二日続けて飲むことになったが、これは不可抗力だ。仕方がない。その後も三人でゆっくりと飲みながら会話を楽しんだ。なんて穏やかな飲み会だ。いつの日もこんな感じでお酒を楽しみたいものだ。財布の心配をすることがない幸せをかみしめながら私は会計を済ませる。二人が自分達も出すと言ってきたが、いつもに比べればなんてことはない金額だ。酒保を後にし、二人と別れて部屋に戻る。歯磨きなど寝る準備を整えて眠りにつく。なにか忘れているような気もするがまぁいいだろう。特に急ぐことでもないことだろうしな。
気持ちよく眠りにつく真船。今日の出費の少なさにたいそう喜んでいた彼自身は気づかない。、度重なる飲み会で自分の金銭感覚が破壊されつつあることに。 大出費の原因はひとつしかないのですが・・・そして忘れる秘書補佐募集。