「提督。長門だ。明石を連れてきた。入室の許可をもらいたい。」
コンコンと軽快なノック音の後に長門の声が聞こえる。入室を許可すると桃色の髪の色をした女性ともに入ってきた。
「失礼します提督。工作艦明石。只今参りました。」
そういうと長門ともにビシッと敬礼をしてきた。私も立ち上がり敬礼を返す。海軍の返礼の仕方はよくわからないが、とりあえずこの方法でいいだろう。・・・よく見るとコイツも大淀と同じようなスカートをはいているではないか・・スケベスカートとでも呼ぶべきか。非常にけしからん。私が返礼をしたことに驚いたのか大淀と長門は少しばかり驚いた表情をみせていた。そして自然と胸ポケットの例のヤツのところに目線が動いている。気になって仕方ないようだ。ここはあえて気が付かないふりをしてやろう。後々に話題にでるであろうからな。しかしそんな考えとは裏腹に長門は単刀直入にきりこんできた。もっと会話を楽しむべきだなこいつは。
「提督よ。先ほどの私の言葉は覚えているだろう。妖精が見える件についてきっちりと説明を求む。」
長門の言葉に明石は驚きを隠せない。提督には妖精がみえていたのか?ならばなぜ秘匿していたのか?疑問が浮かぶがその言葉を直接提督にぶつけるわけにはいかない。その件については長門さんが問いただしてくれるだろう。自分が呼び出された理由を考えるだけで手一杯だった。そして大淀と赤城さんがいるのだが違和感を感じる。そう。2人は座っているのだ。普段は執務以外では席を与えられずこういった時、私たちは立ったままだ。どうして座っているのか。しかし提督の様子をみると怒った様子もない。だとすれば提督の指示なのか。事の成り行きを見守っていくべきだと判断した。
「長門、明石よく来てくれた。そして明石よ。先ほど長門には話したのだが今から君たち2人にも話を聞いてもらう必要があると判断しここに呼ばせてもらった。ただし条件がある。それは私が許可をするまでこの話を秘匿してもらうということだ。もちろん先に着席している2人にはこのことを了承してもらっている。長門にもだ。君にも聞いてもらいたいが、できないというのであれば執務室を去ってもらいたい。判断は君に任せる。」
「・・いくつか質問をしてもよろしいでしょうか?」
「かまわん。」
「ありがとうございます。この話というのは妖精再出現と関係あるのでしょうか?」
「もちろんだ。大いに関係がある。」
「話を聞いた後に仮にこの話を漏らした場合はどうなるのでしょうか?」
そこまでは考えていなかったな。私自身が秘密を守ってもらう前提で話をしていたことに気が付いた。勝手に物事を決めつけて話を進めていく癖は悪い癖だな。おかげで長門にもすぐにばれてしまった。この癖は直していく必要がある。特に私いはこの世界で身内とよべるものがいないのだ。佐賀山の家族や親族がいたとしても真船洋太郎としての親族は存在しないはず。敵はつくらないにこしたことはない。がしかしここは強気にでて事の重大さを匂わせるべきだ。
「この秘匿情報がもれた場合はその原因をつくった者を解体処分とする。これは絶対だ。」
「ありがとうございます。・・・・・この話を内密にとどめることを誓います。私も会議に参加させてください。」
よくわからないが話を聞いてみるべきだ。ちらっと見てみると心なしか赤城さんと大淀の表情は明るい。そして提督の近くには何故か妖精がいる。なにか変化があったはずなのだ。それもいい方への。けれど期待して裏切られたらどうしようとう不安な気持ちは私からは完全には消えなかった。怖いのだ。でもここで踏み出せなければ変わらない。
「わかった。では2人とも着席してくれ。大淀が用意してくれた飲み物は自由に飲んでいいので落ち着いて聞いてくれ。」
提督の着席許可がおりると2人は席につく。どういうことだ?明らかに提督が私たちに気を使っているのがわかる。作戦や展開について具申をしても突っぱねてきた同じ人とは思えない。この前は陸奥とともに諫言を行った時は怒鳴り散らして癇癪をおこしていたのだ。それがこうも短期間でかわるものなのか?長門は思考を巡らしながらもせっかく与えてくれたのだ。ここは素直に好意を受け入れることにした。
「ここは単刀直入に話すべきだな。実はな。」
私は自分におきた状況を説明した。ある日家で頭痛に襲われ眠ったらいつの間にかここにきたこと。大淀と赤城からこの世界、この鎮守府の現状のことを聞き自分でも未だに信じられていないこと。人間には妖精がみえないはずなのだが何故か私にはみえるということ。赤城からの要望により艦載機の開発を許可したら妖精がすぐに行動を起こしたので恐らく工廠に出現したのではないかということ。
その話を終えた後の2人は何も話さずただただ茫然としていた。違う世界から来ただと?では佐賀山は一体どこに行ったというのだ?そして素人同然の者に中身が入れ替わったと思えば妖精が見え意思疎通ができる。信じられない。目の前の人間は佐賀山だ。間違いない。しかしよくみると顔つきが心なしか、どこか憑き物がおちたかのような顔をしている。最近の佐賀山は顔色も悪く、やつれたような顔をしていた。が、今目の前の彼はどこか不安そうだがこちらをしっかり見つめ、なおかつ大淀や赤城も会話に交え、真摯に説明してくれたことが伝わってきた。どういうことなのか。まさかおとぎ話のような展開が目の前であったとでもいうのか。
長門が明らかに動揺しているのがわかる。にわかには信じられないのだろう。当たり前のことだ。無理もない。が、長門はこの鎮守府のリーダー的存在であり、明石は工廠と呼ばれる工場のようなものの責任者らしい。この2人の協力なくしては物事は上手く進まない。なんとか理解して協力してもらわなければ。どうやったら信じてもらえるか。そう悩んでいるといつのまにか胸ポケットから移動していた小さな怪獣がつんつんと私の肩から頬をつついてきた。長い話に飽きたのだろう。少しの間は無視したがあまりにしつこい。こっちは大事な話をしているのだ。それでもなお、つついてくるのを止めないことに腹を立て、妖精を捕まえ机の上におろしほっぺをぐにぐにぺしぺしと軽くたたいてやった。このっ。このっ。こっちは今大事な話をしていてお前にかまっている暇はないのだ。遊んでもらえてうれしいのか嬉しそうな顔をして妖精がはしゃぐ。ふふふ。可愛い奴め。
「本当に見えていたのか・・・」
やりとりを見ていた長門はつぶやく。どうやら話は嘘ではないようだ。