海渡る願い   作:哨戒艦艇

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相変わらず情勢を絡めて物語にするのは難しいです。


第59話

 「このままではいずれ物資が枯渇するのは時間の問題だ!早急に艦隊を派遣して東南アジアのシーレーンの安全を確固たるものにすべきだ!」 

 

 

 「しかしそうすると日本近海の防衛はどうなる!?今でこそ沈黙を保っているが、日本が手薄になるとみるや、大陸の国がけしかけてくる可能性は否定できないぞ!仮に艦隊を東南アジアに派遣したとしよう。そこで勝利できたとしても、こちらの艦隊の損害は免れないはずだ。戦闘でぼろぼろになった状態を黙って見過ごすほどお人よしではないぞあの国は!」

 

 

 「それにかの国は東南アジア諸国からの防衛要請を断っているみたいではないか。表向きは自分の領土の海域防衛で手一杯と言っていたが、そのようなことはあるまい。強引な手法であわよくば領土拡大をもくろむやつらがこの絶好のチャンスをみすみす逃しているのだ。もちろん自分の手札を切りたくないというのもあるだろうが、真の狙いは別にあるだろうな。」

 

 

 「それこそ艦娘部隊の出番ではなかろうか?佐賀山中佐率いる部隊を派遣すれば既存の艦隊で本土防衛を視野に入れつつ、シーレーンの確保も可能だ。連戦になるが、ここは頼るべきではないかね?」

 

 

 「しかし現状、敵の占領下にあるグアム方面からの防衛は佐賀山中佐の率いる艦娘部隊によるところが大きい。ここに穴が開けば太平洋方面からの敵の対処はどうするというのだ?先の決戦で勝利できたとはいえ、敵の戦力は未知数だ!東南アジアに部隊を派遣中に前と同じぐらいの艦隊がやってきたらひとたまりもないぞ!マリアナを抑えれば米軍との連携も視野に入ってくるのではないか?」

 

 

 海軍本部で行われている会議は紛糾していた。先の艦隊決戦の大勝利に勢いづく日本はこの流れを生かして更なる制海権の確保を狙っているが、そうは問屋が卸さない状況だ。海洋国家である日本は船による物流に頼っている面が非常に大きい。東南アジア方面からやってくるタンカーは深海棲艦の影響で数が少なくなっており、護衛を用意しなければ安全に輸送できない状態だ。護衛を付けたとしても、潜水艦などの通商破壊により被害がでることも珍しくない。ユーラシア大陸からの空輸なども行われているが、このままでは暮らしは困窮していくだろう。生活レベルの質を下げれば耐えることもできるだろうが、一度豊かになった現代人に果たして耐えることができるだろうか。

 

 

 

 

 

 

 「少なくとも資源が枯渇する前に戦わなければならない。世界が一丸となって戦わなければならないというのに、厄介なことだ。敵は深海棲艦だけじゃないというのが身に染みてわかったな。」

 

 

 「艦娘部隊を派遣するという案に前向きな方が多かったようですね。やはり先の決戦の結果が響いているのでしょうか。」

 

 

 「隣国との関係がよければ海軍を派遣しても問題なかっただろうが、そういう訳にもいかないのが悲しいところだな。本国をノーガードにするわけにもいかん。」

 

 

 結局会議で意見はまとまらず、次の会議に持ち越されることになった。政府の意向もくみ取らなければならないため、軍だけで方針を決めるのは流石に難しかったようだ。谷上は自分の部屋に戻ると、会議の結果を話しながらため息をつく。他の国には存在しない艦娘という存在。それだけに世界から日本に寄せられる期待も大きい。かといって艦娘は無限に存在するわけではない。それぞれの国は戦後のパワーバランスと、この大戦で勝利に貢献したときに手に入れるであろう発言力を天秤にかけているのだろう。政治はやはり難しい。谷上は自分には到底無理な話だ。と失笑しながら秘書に真船に連絡を入れるように命令する。彼も抜かりなく準備はしているだろうが、大規模作戦に備えて念入りに準備をしてもらおう。とにかく勝利しないことには始まらないのだ。

 

 

 

 

 

 

 「提督。海軍本部から入電です。」

 

 

 大淀から本部から連絡があったと報告を受けた。近いうちに大規模な反撃作戦が行われるらしい。その時に艦娘の部隊が前線に立つことになるだろうとのこと。昼食後、長門や赤城などの主要な面子を呼び、こちらでも話し合うことにした。

 

 

 「恐らく東南アジアかマリアナ、どちらかだろう。正式な通達は追ってくるらしいのでまだ詳細は分からないが、二つに一つだな。二方面作戦は流石に戦力が持つまい。」

 

 

 「北方領域の可能性はないのでしょうか?あそこを制圧すれば後方の憂いを完全に絶った状態で南に専念できます。」

 

 

 「南だと通商破壊にくる潜水艦の数も多くなってきそうですね。対潜装備の充実がさらに必要になりそうです。」 

 

 

 「北の可能性もなくはないが、現状の優先度を考えれば長門のいう通り恐らく南だろう。谷上中将も以前の視察の時にそのようなことを匂わせていたからな。あとは正式な日付と東南アジアか、マリアナか、そこだな。」

 

 

 「作戦規模にもよりますが、空母の数も必要になってくるはずです。パイロット養成も急がなければなりませんね。」

 

 

 「船団護衛の任務に当てるメンバーも多少の変更も必要になってくるんじゃないかしら?本格的な海戦になると、やっぱり手練れの数は多い方がいいわ。」

 

 

 長門や赤城、明石や加賀、陸奥などもそれぞれの意見を述べてくれる。用意は早いに越したことはないだろう。スクランブルのためにも戦力はある程度は残さなければならない。しっかりと考えておかなければ。

 

 

 その後話し合いが終わり解散となった。川内と神通も話し合いに参加させたかったが、訓練のため参加が難しかったので、夕食後に話すことにした。今回も彼女達水雷戦隊の力は必要になってくるのは間違いない。私も私のなすべきことをなすだけだ。

 




一筋縄とはいかない世界。平和な世の中になるのが一番ですが、現実でもこの作品同様になかなかうまくいかないのが悲しいですね。
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