海渡る願い   作:哨戒艦艇

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六十話まできました。そして最近気が付いたのですが、お気に入り登録をしてくださる方がいつの間にか千人を超えていました。ありがとうございます。


第60話

 大規模作戦が行われる。そのことに鎮守府の面々は張り切っていた。特に実戦経験のない艦娘達は活躍する時がきたと張り切っていた。しかしこちらが強くなっているように相手にも手強い敵が発見されたのも事実。赤いオーラをまとった敵は要注意だ。赤城と加賀も、空母組とともに訓練に励んでいく。特に翔鶴隊と瑞鶴隊のパイロット達の消耗が激しかったため、再編成を急いでいた。

 

 

 『何とか様になってきたようだな。だがまだまだと言わざるを得ない。実戦では敵は待ってはくれんぞ。それにこれぐらいでねをあげていたら、一航戦の先輩達と合同訓練なんかしたあかつきにはとんでもないことになるぞ。』

 

 

 『隊長達が厳しいというぐらいのレベルなんて想像ができません。今でさえ自分は訓練をこなすのに精いっぱいですよ・・・以前模擬戦をやった時には、コテンパンにやられたとお伺いしましたが、本当の話なのですか?』

 

 

 『ははっ。恥ずかしい話だが本当だ。しかもハンデ付きでぼろ負けだったからな。あそこの隊は精鋭ぞろいだ。故にあそこに入った新人はそれこそ血反吐を吐きながら訓練しているのではないか?お前ら優しい先輩がいるここに着任で良かったな!』

 

 

 これで優しい?冗談じゃないと笑っている隊長を見ながら翔鶴隊に配属された新兵達は思っていたが、口には出さない。触れぬ神に祟りなしの精神で休憩時間を全力で体力の回復に努める。先輩たちのように華麗に空を飛ぶようになるのだと意気込みながら再び訓練を再開する。

 翔鶴隊の隊長は訓練をしているであろう海域方向を見つめる。今頃新しくやってきた二航戦の訓練に一航戦の二人はついているはずだ。新参にぬかれてはたまらない。こちらも死線を潜り抜けてきたプライドがある。散ったいった仲間達のためにも、こいつらと生き抜いてみせるのだ。訓練に熱が入る五航戦のパイロット達。来たる日に備えて万全の準備。その顔触れには慢心のひとかけらもない。

 

 

 

 

 『流石というべきか。新人ながら所々光るものがある。これは俺らもうかうかしてられないぞ。』

 

 

 訓練の様子を眺める一航戦のパイロット達はやるもんだと感心しながら空を見上げていた。五航戦の訓練場から少し離れた別の場所で蒼龍と飛龍は赤城、加賀とともに合同訓練をしていた。慣れるまでは合同訓練で徹底的に基礎を鍛えていく。しかしそこは二航戦。おぼつかないところもあるが、持ち前の才能を活かしてどんどんとコツをつかんでいく。初めての海上にでたとは思えないほどの動きだ。パイロット達も全員が新兵ではまずいので、各空母からすこしずつベテランを回してもらっている。とはいえそれでも新人の割合は多いのは否めない。赤城は蒼龍を、加賀は飛龍を指導していく。

 

 

 「いいですか?蒼龍。空母は直接撃ち合う機会はほとんどありません。故に艦隊の指揮を任されることも多いです。私達の働きが前線で戦う水雷戦隊の戦いに与える影響は計り知れません。事前の索敵や航空隊による攻撃。数少ないチャンスで確実に敵を仕留められるように頑張っていきましょう。」

 

 

 「あなたには私の航空隊からもパイロットを回しているので心配ありません。みんな優秀な子達ですから。しかし戦力として計算されるようになるまでの期間。徹底的に鍛え上げます。ついてらっしゃい。」

 

 

 赤城と加賀は、それぞれ熱心に指導していく。戦線が広がって行けば、現状の空母の数だと足りなくなってくる可能性がある。龍驤や飛鷹などのベテランもいるが、軽空母なため、艦載機の数を考えると、どうしても主力にはなりえない。空を支える数は多ければ多いほどいいのだ。後々のことをしっかり考えていかなければならない。指導のかいがあってか、翔鶴と瑞鶴は前の海戦でも立派に戦力として働いてくれた。その経験を糧にさらに成長をしているので、そろそろ手が離れる時が来たのかもしれない。しかしエースの座を譲る気はない。指導するとともに、自分達も負けてられないと気合いをいれて訓練に励むのであった。

 

 

 

 

 

 

 「提督、失礼するぞ。哨戒任務についていた部隊がこのような写真を撮ることに成功したみたいだ。」

 

 

 私が業務をこなしていると、急ぎ足でやって来て、長門が複数の写真を私の前に広げた。中々の数だ。しかしよく撃墜されなかったものだ。彩雲の性能を活かしてぎりぎりまで活動をおこなったそうだ。私としては危険を感じたら速攻で帰ってきてほしいのだが。

 

 

 「硫黄島よりさらに南東に三百キロ程度のところで確認されたそうだ。敵の艦隊の再編成が思ったよりも早い。そして以前とはことなる姿の深海棲艦が多い。恐らく北太平洋方面から増援がやってきたのだろう。撮影はできなかったが、人型や、赤いオーラをまとった奴もちらほらといたみたいだ。気を引き締めなければならないな。」

 

 

 「こちらが勝利に油断していた所を叩くためか、はたまた防備のためによこした部隊なのか・・・判別はまだつかないが、敵も戦える戦力をまだまだ持っているのは確実なようだな。大淀、この件を本部に急いで通達してくれ。」

 

 

 大淀は了解しましたと返事をすると、業務を後回しにして急いで取りかかり始めた。じきに本部から返事があるだろう。きな臭くなってきたな。しかし仮にマリアナ諸島の攻略に乗り出せば上陸のために陸軍の協力も必要となってくる。それについては上の方達に任せるほかない。

 

 

 「前回のような相手による二手に分かれての奇襲作戦も考えて動かねばならないな。長門よ。まだマリアナとはきまったわけではないが、恐らくはここで決まりだろう。対マリアナを想定した部隊編成を一緒に考えてくれないか?」

 

 

 「勿論だ。陸奥も呼んでこよう。この長門の知恵と経験を存分に活かしてくれ。」

 

 

 頼もしい返事とともに長門が一旦執務室を去ってゆく。通達を終えた大淀も作戦参謀として役に立ってもらわなければ。以前は妖精のおかげで加賀が救われたが、今回は充電期間のため、妖精の力による復活の奇跡は起きないと思ってていい。一人も沈むことなく帰ってきてほしいという考えは甘いのだろうか。私はほろ苦いコーヒーを口に入れ思考をリセットすると、気合いを入れる。戦うのは彼女達だ。ならばせめてできることはしてやらねばならん。




物語を面白くするためにも一度ゆっくりと勉強する時間が欲しいと思う今日この頃。
当時の艦載機や艦に詳しい方に色々と教えてもらう機会があればうれしいですが、周りにそういった方がいないので残念です。
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