海渡る願い   作:哨戒艦艇

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あきつ丸と神州丸が正式に着任。


第63話

 妖精達の騒ぎを治めた後、あきつ丸と神州丸の艤装のチェックもかねて工廠に向かう。二人を引き連れていくと、明石と夕張が笑顔で迎えてくれた。やはり整備妖精達の中にも見慣れない妖精がちらほらといる。あいつらと違ってここの妖精達は上手くやっているようだ。技術屋として色々見慣れない物に対する探究心が勝っているのだろう。

 

 

 「預かっていた艤装なんですが、実に興味深いですね! バラしてじっくり解析してみたいです!」

 

 

 ばらさないでくれ。あきつ丸が戸惑っているじゃないか。困り果てたあきつ丸をフォローしつつ、装備などの確認をする。すると倉庫の角に置いてあった戦車らしき物に目を付けた神州丸がほほぅと珍しそうに戦車に近寄っていく。

 

 

 「これは特二式内火艇と呼ばれる物でありますな。これと我らが八九式中戦車による上陸部隊でマリアナを奪還するわけですな」

 

 

 この戦車はどうやら内火艇というものらしい。そういえばこの前明石が内火艇を勝手に作ったとか言っていたな。これのことだったのか。なんで戦車みたいなのものがここにあるんだと思っていたが、ようやく謎が解けた。この内火艇というもの、簡単にいうと水陸両用戦車みたいなものらしい。

 

 

 「ではこれをある程度量産しなければならないということか。だが戦車の操縦の訓練が作戦までに十分に取れないとは思うが大丈夫だろうか?」

 

 

 「それについては我々陸軍の妖精にお任せください。今回は時間がないと思われますので、恐らく上手く扱うのは難しいでしょう。訓練時間が何分たりません。しかし我々陸軍に預けていただければ使いこなしてみせます」

 

 

 今後は恐らく島々に対する上陸作戦が増えてくるはず。妖精達にも陸戦隊なるものを編成してもらうべきだろうか。

 

 

 「厚かましいとは思いますが、我々も手柄がほしいであります。餅は餅屋精神でここはどうか一つお願いするのであります。」

 

 

 

 あきつ丸が私の思考を読み取って発言をしてくる。谷上中将や延岡少将からも言われているのでここは任せてみるとするか。

 

 

 「わかった。上陸部隊に関しては君達に一任しよう。しかし他の戦車はどこにあるのだ?見当たらないようだが」

 

 

 少将と面談中にすでに運び込まれていると思っていた戦車が見当たらない。あきつ丸に尋ねてみると、少し気まずそうにしている。これはもしや。

 

 

 「恥ずかしながら、戦車自体はないのです。というのも、陸軍には妖精達が使える工廠が存在していないのです。我々もここにきて妖精の多さに驚きました。陸では私達の身の回りにしか妖精は存在しておりませんでしたので」

 

 

 急な転属で用意できているのかとは思っていたがやはりそうなるか。少将が陸からも資材を回すと言っていたが、恐らくそういうことなのだろう。色を多めにつけると言ってたので、何かあるなと思っていたが・・・

 

 

 「わかった。幸いここの工廠は設備が充実しており、拡張の余地もまだある。余っているラインをつかって生産するといい。ただし資材管理はしっかりしてくれよ。あとねじなどの共通部品については規格を合わせるように。そこは妖精達に徹底させてくれ。」

 

 

 「感謝であります。では早速妖精達にお願いしてくるであります。」

 

 

 「戦車かぁ~。腕の見せ所ね! 張り切って作るわよ!」

 

 

 「お前はまず海の方の装備を作ることに専念しろ」

 

 

 張り切っていた夕張をいさめると、えぇ~、と悲しい顔をしながらうなだれていた。お前まだ新艦載機の開発とか残っているだろうが。後はネジなどの部品の規格の統一だ。先の大戦では陸海それぞれのネジの向きが逆だったというのは有名な話だ。そういう面倒くさいことはごめんだ。合わせて戦車を載せて上陸させる船も必要だ。大発動艇というらしい。これも量産しなければならない。作戦展開に応じて本部からも資材は送られてくるのでそれを上手くつかっていかねば。

 

 

 

 

 執務室に戻った私は大淀に先ほどの工廠のでき事を伝える。仕事がさらに増えてしまうことに申し訳なさを感じるが、大淀は嫌な顔一つせずこなしてくれる。ありがたいことだ。マリアナ奪還に合わせて船団護衛の任務もあるが、ここはメンバーの変更が必要だろう。練度の高い艦娘にできるだけ作戦に参加してもらいたいが、丸々新人という訳にもいかない。旗艦はそのまま吹雪と朝潮に任せて、残り半分ぐらいを入れ替えるとしよう。海防艦の子達に護衛任務に参加してもらう必要がありそうだ。

 

 

 その後もそつなく業務をこなし、一日が終わった。自室で風呂にはいった後に食堂に向かう。食堂では二人の新人が注目の的となっていた。

 

 

 「ねーねーあきつ丸さんはどんな食べ物が好きなの? カレー?」

 

 

 「神州丸さんなんか戦車開発してるって聞いたんですけど本当ですか!?」

 

 

 こういった雰囲気になれていないのか二人は駆逐艦にかこまれながらあわあわしている。そのうちなじんでくるだろう。私は一人席につくと、黙々とご飯を食べる。その後鳳翔の酒保に置いてある甘味を買うと、囲みからようやく解放されたあきつ丸と神州丸をみつけ、着任祝いとして渡す。二人は大層喜んでいたので、私も嬉しくなった。部屋でゆっくり食べるという。

 

 

 「しかしここの鎮守府の設備には改めて驚かされます。その恩恵に預かれて感無量であります。」

 

 

 「落ち着いたら鳳翔の酒保でゆっくりと飲みたいでありますな。その時は提督殿もご一緒に」

 

 

 二人と会話を楽しんだ後、作戦に備えて私も深酒はさけ、夜更かしはしないようにしなければ。食事後、通路でうっかり千歳と会おうものならお終いだ 彼女は口が上手く、ついつい飲みたくなってしまう。お酌も進んでしてくれるため、気持ちよく飲んでしまうのだ。誰にも会わないよう急いで部屋に戻る。今日は突然の来訪者に驚いたがなんとかなった。早く二人が艦隊になじんでくれるよう私も努力していこう。

 




内火艇は本来海軍所属の海軍陸戦隊が運用していたようですが、今回は陸軍に任せる形になりました。

そして戦車もマリアナ奪還作戦に参加。見事活躍してほしいものです。

史実で旧日本軍の戦車はというと・・まぁ・・そうねぇ・・。
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