海渡る願い   作:哨戒艦艇

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誤字報告システムというものがあることにたった今気が付きました。ご報告していただいた方に感謝です。


第8話

 残る主だった視察するべき施設は艦娘の寮と工廠となった。全ての部屋を視察するわけではないが、うら若き乙女達が住んでいる部屋を視察するのだ。流石に準備をする時間を与えるべきだろう。隠したい秘密も一つや二つあるはずだ。尤も、この環境で隠すほどの物があるとは思えないが。長門と赤城に寮に向かい皆に私が視察にくるので準備をするように伝えろと命令をだすと、2人とも綺麗な敬礼をすると足早に向かっていった。では今のうちに工廠の様子をみてみるとするか。大淀を供に連れて私も歩き出す。

 

 

 カーンッ、カーンッ!とけたたましい音が近づく。工廠につくと聞いてたよりも綺麗で広い空間だ。何に使うのか分からない重機まである。この設備では足りないというのか?一体明石の奴はこれ以上何を求めているのか?巨大兵器でも作ろうというのか・・・疑問に思いながらバチバチと火花を散らして作業を行っている明石を呼び止める。

 

 

 「思った以上によい設備じゃないか。この設備でも装備の開発はできないのか?」

 

 

 「提督!お疲れ様です!実は私が戻った時にはすでにこの状態になっていて、驚いているんです!執務室に呼び出される前はこんな重機もなかったし工廠自体も狭くて汚れていたのですがいつのまにか新しい状態になっていました。明らかにグレードアップしています!」

 

 

 どういうことだ?こんな短時間で設備環境を変えることなど普通ではどうやっても不可能だ。妖精の仕業か?・・・と思ったが実際にこの世界では妖精がいることを思い出した。まさかこいつらが?明石の後をトコトコとついてきた彼らを見る。私を見上げてピシッと敬礼をした後はひそひそと話し合っている。あいつが例の・・みたいな感じで会話しているのかもしれない。ここの妖精達はヘルメットらしきものや火花対策のゴーグルなどの防具やハンマーやレンチを身に着けていた。部屋に現れていた妖精とはまた違った雰囲気だ。妖精達に向かって感謝の言葉をかけ、後で選別の菓子をもってこさせようと言った途端にやったやったと歓声があがっていた。どうやらお菓子が好きなのは共通のようだ。

 

 

 「ではもう装備の開発に移っているのだな?となれば今作っているのは赤城が言っていた艦載機なのか」

 

 

 戦闘機らしきものがすでに何機か完成しており、私は近づいて見てみる。サイズこそ小さいがその作りはしっかりしていて、何分の1スケールという言葉がしっくりくる。戦闘機がそのまま小さくなっただけだ。これにパイロット妖精が乗り込んで戦うと考えればちょうどいい大きさなのかもしれない。

 

 

 「艦載機の他にも駆逐艦や軽巡洋艦が使う一式装備の開発を頼む。」

 

 

 「了解しました!妖精達はやる気に満ち溢れていてとても作業が早いです。私も負けてられません!」

 

 

 ガッテンポーズをする明石に頼りにしてるぞ。と返事をし、しっかり休憩をはさんで作業をするように指示をだすと工廠を後にした。工廠を去ろうとする時に妖精達がきゃいきゃいと大きな声で見送ってくれた。真の目的は見送りではなくお菓子をちゃんと約束通りもってくるのだぞという念押しだろうな。その様子をみていた明石と大淀も互いに困ったような顔をしながら互いに手を振って別れていた。しかしその顔は決して嫌な顔ではなかったように思える。少なくとも私にはそう見えた。

 

 

 「期待に応えなければなりませんね。」

 

 

 期待されているのは戦果ではなく甘味だな少なくとも今の感じでは。フフっと大淀が笑いながらも次に向かいましょうと寮に案内をしてくれた。

 

 

 長門が寮の部屋の前で出迎えてくれた。気を利かせて艦娘に部屋で待機するように指示してくれていたそうだ。非常に助かる気づかいだ。これで視察に集中できる。ここが私たち艦娘が暮らす部屋です。と紹介された部屋は殺風景。まさにその言葉しかでてこない。今は誰も割り当てられていない空室の部屋に入ってみると小さなタンスに壁にハンガーがあるだけだ。何より布団がない。たまたま見た部屋が和室でこのような感じなのかと大淀に尋ねると洋室、和室の2種類があるようで基本的には和室とのこと。そして備品はタンスと少しのハンガーのみだという。となると畳に雑魚寝しているのか?流石にあんまりではないか?食事もまずい、命を落としかねない無茶な命令、そして温かく寝ることができないこの環境。よく反乱起こされなかったな。

 

 寝具の発注をしておいてくれ。と大淀に指示を出す。あとはエアコンもほしいところだがこれはどうなのだろうか?もし作れるのであればお願いしたいところだ。悩んでいるとつんつんと頬をつつかれた。ちょうどいいところに現れてくれた。肩に手のひらを広げるとわずかな重みを感じ、目の前に持ってくる。執務室に現れた妖精だ。エアコンお願いできるか?ときくと胸をトンっと叩きフンスっと鼻息を荒くしていた。頼もしいやつだ。これについては資材の応用でできるみたいなのですぐに導入できるみたいだ。布団は流石に作れないようだ。鉄から羽毛は作れまい。後は艦娘を食堂に集めてご飯を食べてもらっている間にエアコンの工事を頼むとしよう。大淀も長門もエアコンが部屋で使えるようになると喜んでいる。その分しっかり働いてもらうぞ。とくぎを刺すと勿論だ。と力強い返事が返ってくる。よしよし。いい方向に話が進んでいる。ごはんについては今日は材料の納入が間に合わないのでレーションで我慢してもらうが明日のお昼にはご飯をたべれるようになるはずだ。明日の朝から間宮は忙しくなるだろう。頑張ってもらわねば。何より私もおいしいご飯を食べたい。毎日レーションなんてごめんだ。

 

 

 寮がこんな感じであるのであれば風呂ももしやと思い大淀に尋ねると案の定こんな感じに廃れているらしい。思わず頭を抱えてしまいながらも、案内してくれと声をかける。長門はこの場に残り艦娘にエアコン設置と布団の支給の件を伝えるように指示をだし別れた。風呂はあまり使っていないのか、それとも掃除をしていないのか汚い印象をうける。佐賀山は部屋のシャワーで済ませていたのだな。流石にここに入りにくる勇気は私にはない。

 

 

 「艦娘は艤装を外した後に特別な効能のある風呂に入ることによって傷を癒します。故にここをおろそかにしては損傷の修理が行えないのです。」

 

 

 何っ!?何故それを先に言わなかったのだ!艤装を修理すれば戦えるようになるのではないのか・・・?大淀いわく、艦娘は体が丈夫にできてはいるが、自然治癒することはないのだという。ではどうやって今まで損傷した分はどうやって直してきたのだ?と思ったが奴がいるのを忘れていた。明石は工作艦と自分で言っていた。ある程度の修理はできるのだろう。艤装をつけたまま修理をすれば艦娘本体の怪我も回復するのだという。が致命傷となると修理はもうできない。つまりそういうことだ。この風呂が復活すれば艦娘が致命傷を負って帰投したとしても艤装と艦娘に分離し、明石は艤装を、艦娘は風呂で入渠という形をとればいいわけだ。この特別な効能というのは妖精おらずして成り立たないらしい。いかに妖精が重要な存在かがわかる。

 

 

 「ここはエアコンよりも最優先で補修を行うべきだ。妖精たちには苦労をかけるがここも何とかお願いできないだろうか?」

 

 

 胸ポケットにいつのまにか収まっていた妖精から任せてっと心強い返事が返ってくる。どうやら間宮特製甘味第一号の試食者は私でも艦娘でもないらしい。

 

 




予想よりも多くの方にこの小説を読んでくださっているのに驚きを隠せません。朝の通勤時間の合間や、夜寝る前にお休みのお供といて見ていただければいいなと思っております。できるだけ更新できるように頑張っていきます。
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