ギャルゲーの世界に転生したけど、メインキャラじゃなくてモブと付き合いたい   作:ドン・コルレオーネ

1 / 4
第一話 困惑

 

 

 

 

 

「…………て、ほら……」

 

「……起きて、ねえあき……」

 

「明くんってば!起きて!」

 

!?

 

なんだ……これは?

 

何が起きている?

 

俺はさっきまで、病室にいたはずなのに……。

 

今は……自室?のベッドに寝転がり、ピンクの髪をした美少女に起こされようとしている。

 

ブレザーを着ていることから察するに、恐らく高校生。

 

まてよ、この子の顔、どこかで……?

 

「やっと起きた明くん……。ほら!もう準備しないと、学校遅れちゃうよ!」

 

「あ、あの……なんで俺の名前知ってるんですか?」

 

「え?」

 

何を当たり前のことを……と言った表情で、彼女は俺を見つめてくる。

 

「もう……その冗談はあんまり面白くないよ!ほら、1階で明ママが呼んでるよ!」

 

明~!早く起きなさーい!

 

 

……母、さん。

 

母さん、なのか?

 

いやでも声が違うし、何より俺の母さんは二年前に……。

 

「明くん!」

 

「あ、うん」

 

とにもかくにも、今は1階に下りてみよう。

 

彼女に連れられて階段を下りた先には、リビングがあった。

 

四角のテーブルを、椅子に座って囲む人々。

 

「明、いつまでもさやかちゃんのお世話になってちゃダメよ?瞳はとっくに学校へ向かったというのに……」

 

呆れた顔で小言を言うこの女性は、おそらく俺の母さんなのだろう。

 

「まあまあ美智子、俺も昔はこんなもんだったさ」

 

中年なのにすごく爽やかな笑顔を見せるこの男性が、俺の父さん……?なんだろうか?

 

「……おはよう、ございます」

 

なんだか、気持ちが悪い。

 

誰かも分からない人たちに、家族として挨拶をしないといけないなんて……。

 

「明くん!一緒にご飯食べよ?」

 

「う、うん」

 

俺は彼女とともに席につき、バターを塗られたトーストを食べ始めた。

 

それにしても、この女の子どこかで見たことあるんだよな……。

 

そうだ、さっき“さやかちゃん”がどーのこーのって言ってたな。おそらく、この子のことなんだろう。

 

……さやか。さやか。

 

「!?」

 

え!?まさか……。いや、本当に?

 

「あ、あのさ……」

 

俺は隣に座っている彼女に、おそるおそる尋ねた。

 

「君、もしかして……“桃谷 さやか”、さん?」

 

「……?そうだよ?」

 

……ああ。

 

やっぱり。

 

やっぱりそうなのか。

 

「何?明くん、まださっきの遊び続けてたの?」

 

さやかが苦笑混じりに答えてくる。

 

「あ、ああ……実はそうなんだ。さやかがノってくれるの待ってたんだけどなー」

 

俺はなるべく笑顔を作って、彼女を安心させた。

 

「もー、明くんったら」

 

さっきの苦笑混じりとは違う、心底明るい笑顔を、彼女は見せてくれた。

 

でも俺は、心の中では少しも笑えなかった。

 

(桃谷 さやか……)

 

この子は、ギャルゲーのキャラクターだ。

 

『僕の純愛日記』というゲームに出てくる、キャラクターの一人だ。

 

つまり、俺は今……

 

「………………」

 

俺が独り、その事実にうちひしがれている時、さやか達三人は、楽しそうに食事をしながら談笑していた。

 

彼女達の笑い声が、俺にはなんだか遠く感じた……。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。