ギャルゲーの世界に転生したけど、メインキャラじゃなくてモブと付き合いたい 作:ドン・コルレオーネ
「…………て、ほら……」
「……起きて、ねえあき……」
「明くんってば!起きて!」
!?
なんだ……これは?
何が起きている?
俺はさっきまで、病室にいたはずなのに……。
今は……自室?のベッドに寝転がり、ピンクの髪をした美少女に起こされようとしている。
ブレザーを着ていることから察するに、恐らく高校生。
まてよ、この子の顔、どこかで……?
「やっと起きた明くん……。ほら!もう準備しないと、学校遅れちゃうよ!」
「あ、あの……なんで俺の名前知ってるんですか?」
「え?」
何を当たり前のことを……と言った表情で、彼女は俺を見つめてくる。
「もう……その冗談はあんまり面白くないよ!ほら、1階で明ママが呼んでるよ!」
明~!早く起きなさーい!
……母、さん。
母さん、なのか?
いやでも声が違うし、何より俺の母さんは二年前に……。
「明くん!」
「あ、うん」
とにもかくにも、今は1階に下りてみよう。
彼女に連れられて階段を下りた先には、リビングがあった。
四角のテーブルを、椅子に座って囲む人々。
「明、いつまでもさやかちゃんのお世話になってちゃダメよ?瞳はとっくに学校へ向かったというのに……」
呆れた顔で小言を言うこの女性は、おそらく俺の母さんなのだろう。
「まあまあ美智子、俺も昔はこんなもんだったさ」
中年なのにすごく爽やかな笑顔を見せるこの男性が、俺の父さん……?なんだろうか?
「……おはよう、ございます」
なんだか、気持ちが悪い。
誰かも分からない人たちに、家族として挨拶をしないといけないなんて……。
「明くん!一緒にご飯食べよ?」
「う、うん」
俺は彼女とともに席につき、バターを塗られたトーストを食べ始めた。
それにしても、この女の子どこかで見たことあるんだよな……。
そうだ、さっき“さやかちゃん”がどーのこーのって言ってたな。おそらく、この子のことなんだろう。
……さやか。さやか。
「!?」
え!?まさか……。いや、本当に?
「あ、あのさ……」
俺は隣に座っている彼女に、おそるおそる尋ねた。
「君、もしかして……“桃谷 さやか”、さん?」
「……?そうだよ?」
……ああ。
やっぱり。
やっぱりそうなのか。
「何?明くん、まださっきの遊び続けてたの?」
さやかが苦笑混じりに答えてくる。
「あ、ああ……実はそうなんだ。さやかがノってくれるの待ってたんだけどなー」
俺はなるべく笑顔を作って、彼女を安心させた。
「もー、明くんったら」
さっきの苦笑混じりとは違う、心底明るい笑顔を、彼女は見せてくれた。
でも俺は、心の中では少しも笑えなかった。
(桃谷 さやか……)
この子は、ギャルゲーのキャラクターだ。
『僕の純愛日記』というゲームに出てくる、キャラクターの一人だ。
つまり、俺は今……
「………………」
俺が独り、その事実にうちひしがれている時、さやか達三人は、楽しそうに食事をしながら談笑していた。
彼女達の笑い声が、俺にはなんだか遠く感じた……。