【完結】霊能チートのネタバレ事件簿   作:虫野律

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蛇足的後日談的第二章です。ガチで暇な時にどうぞw



第二章 ノックスさん、ごめんなさい
【悲報】ニート終了のお知らせ【朗報】 [ネタ編]


『私が死んでしまった理由を教えてほしいのです』

 

 

 

 

 

 

(ーωー)

 

 

 いつものように父さんが残してくれた家で怠惰を極めていたら、そいつがやって来た。

 

『親分! お客さんをお連れしやした!』

 

 ひょうきんな顔に妙に馴れ馴れしい声。空器村の事件で知り合った小野小太郎(おのこたろう)さんだ。

 

 この人、まだ成仏してなかったのか。

 

「お客ってなんだ。俺は客など取って「いっらしゃいませー! ようこそユウキ探偵事務所へ!」

 

 しかし(あきら)が無慈悲に被せてきた。亮は生き霊歴が長かったせいで、普通に霊感がある。もの凄くナチュラルに霊と会話してらっしゃる。怖いとか無いんか。別にいいけど。

 

 そんなことよりも、だ。探偵事務所とはいったいどういうことなのか? 俺は聞いていないし、聞きたくもない。

 

『お、姉御! 今日もかわいいっすね! 紹介しやす。じゅんちゃんです』

 

 ……。

 

『は、初めまして。じゅんと言います。本日は依頼があって参りました。よろしくお願いします』

 

「はーい。今、お茶をお持ちしますね」

 

 ……。

 

『? どうしたんすか親分? 漸く口説いた女が実は男だったと知った時の俺と同じ顔してやすぜ?』

 

 ……は! あまりの奇っ怪な展開に思考があの世に行ってしまっていた。

 幽霊が知り合い(幽霊)をお客さんとして紹介するってなんだよ。どんな幽霊ネットワークがあるんだ……?

 

 気を取り直してお客さん(?)を見る。年の頃は17、8位だろうか。肩まで伸ばされた髪に小さく、すっきりとした輪郭の顔。なかなかの美人だ。

 ちなみに幽霊だからって足が無いわけじゃない。

 

「えーと、何がなんだか分からんが、とりあえず話を聞くよ。それから判断する」

 

 決して美人に負けたとかいうことではない。

 

『ありがとうございます。実はですね……』

 

 ここでじゅんさんは言いづらそうに言葉を止める。時間はあるので急かさずに待つ。ニートの特権だ。

 

『私が死んでしまった理由を教えてほしいのです』

 

 んー。なるほど。それ系ね。ま、そんくらいならいいっしょ。記憶を読めば一発よ。

 

「……分かりました。ご依頼をお受けします」

 

『ありがとうございます!』

 

『流石親分! 相変わらず(バカで都合の)良い男っすね!』

 

 そこはかとなく小太郎さんから(よこしま)な気配を感じるが、まぁいい。

 

「お待たせしましたー。お茶です!」

 

 そう言って亮が差し出したのは、黒い液体にシュワシュワとした気泡が踊る例のアレである。お茶って言いながらコーラ出す奴、初めて見た。

 なんという恥ずかしさだろうか。

 普段から俺がコーラとかスナック菓子とかジャンクフードばかり食べているせいで、亮の中で「飲み物=コーラ」という図式が成立してしまっているようだ。

 

『まぁ! コーラですか』

 

 うわぁ。恥ずかしい! 「お茶です(ドヤぁ)」からのコーラはそりゃ驚くよな。すまん。今度から亮にはオレンジジュースを出すように言っておくから許してくれ。

 

 じゅんさんがコーラに宿る霊気を持ち、口を付ける。基本的に物にもそれ本来の霊気がある。お供え物とかはその霊気を捧げてるんだ。

 だから霊も普通に食べ物を食べられる。ちなみに霊気を抜かれた食べ物は、当社比2倍くらいの速さで腐る。

 

 さて、今の隙に記憶を読むか。

 

 ……んー。あちゃー。この人、魂が崩れてきてるよ。たまに居るんだよなぁ。

 

 魂が崩れ始めてると、記憶を上手く読めなくなる。崩れている程度によって、読める記憶の量が決まってくるんだ。

 で、じゅんさんの場合は……。

 

 大きな柿の木の近くで青年と話してる。東京オリンピックがどうのとか、仕事がどうのとか、好みのタイプがどうとかといった話だ。

 今度は女性との会話だ。あー映像が壊れてる。音声だけだ。こちらも下ネタとファッションとメイクの話ばっかで大した情報じゃないな。

 あ、カップに入ったミルクティ(?)か何かを飲んだら意識が朦朧(もうろう)としてきて、記憶が終わってる。多分、睡眠薬かな。眠くなり方が突然すぎる。……これだけか。

 

 ……え。ヤバくない? これだけでどうやって探すのよ。無理やん。

 申し訳ないがお引き取り願お……。

 

「う゛」

 

 なんで皆、期待に満ちた目を向けるんだ。やっぱり分かりませんでしたって言い辛い。凄く言い辛い。

 くっ、仕方ない。やるだけやってみよう。

 

「ちょっと電話させてください」

 

 そう言ってからスマホを操作する。お目当ての人物へと電話を掛ける。

 3コールで出てくれた。

 

「もしもし、根岸(ねぎし)です。どうしたんだい? 結城(ゆうき)君から掛けてくるなんて珍しい」

 

「突然すみません。睡眠薬が使われていて、人が死んでいる事件は、最近だとどれくらいあるかお訊きしたくてお電話しました」

 

 明らかに不自然な睡眠薬。加えてじゅんさんの年齢での死亡。どうにも他殺くさい。そこで捜査一課の課長さんに訊いてみようってわけだ。

 

「……結城君から事件のことを訊いてくるなんて、本当に珍しいね。どういう心境の変化だい?」

 

「まぁそれはいいじゃないですか。それより事件はどうです?」

 

「……そうだね。本当はよくないんだけど、他ならぬ結城君の頼みだからね。仕方ない」

 

 いやいやいやいや! あんた自分から頼むときはペラペラ捜査情報をゲロするくせに、なんで俺から頼むとそんなに恩着せがましいんだ!? 納得いかねぇー!

 

「現在、一課が担当している事件で、睡眠薬が使われ、かつ最近起きたとなると実は1つしかない」

 

 ほぅ。それはそれは。

 

「日本の大手アパレルメーカーであるユニグロ、そこの経営を牛耳っている御子柴(みこしば)財閥本家の次女の練炭自殺事件だ」

 

「自殺……ですか」

 

 捜査一課は基本的には自殺を担当しない。当たり前だ。それなのに根岸さんたちが出張ってるってことは何かあるのか。いよいよキナ臭くなってきた。

 

「一応名目上はそういうことになってる。だが明らかに他殺を匂わせる様な要素があるんだ。ただ、他殺を立証する明確な証拠も無くて、犯人も特定できていない。怪しい奴は居るんだがな」

 

 なるほどな。

 

 (など)と考えていると、根岸さんが(おもむろ)に鬼畜のようなことを言い出した。

 

「……結城君に期待してもいいのかな?」

 

 ニートを働かせようとする奴は極悪人である。異論は認めない。

 

「……一課だけで解決できないと、結局俺に依頼が来るんですよね?」

 

「勿論!」

 

 ですよねー! 知ってたよ畜生!

 

「……ちなみにその次女のお名前は?」

 

「御子柴潤。潤うと書いて『じゅん』だよ」

 

 ほーん。当たりじゃねぇか!

 

 こうして御子柴財閥令嬢自殺事件への参戦が決まってしまった。

 俺は働かずにお菓子を食べて、定職に就かずにゲームをして、引き込もってアニメや漫画を見ながら楽しく生きていきたいだけなのに、どうしてこうなってしまうのか。

 

 吾輩(わがはい)はヒキニートである。就職する気はまだ無い。どうして探偵の真似事をするハメになったのか、とんと見当がつかぬ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 はいやって来ました、御子柴さん()。都内の高級住宅街にあるバカデカイお屋敷がそれだ。とんでもなく金が掛かってやがる。

 

「ほぇー、おっきぃ……」

 

 亮がお(のぼ)りさんのように屋敷を見上げる。気持ちは分かるけど、俺たちも一応都会育ちなんだから、田舎者みたいな雰囲気を出すのはほどほどにしてくれ。

 

『ここは……』

 

 潤さんが思案顔を浮かべてる。何か思い出したのかな。

 

「何か憶えているか?」

 

『……ごめんなさい。何となく来たことがあるような気はしますが、塀を見ただけでははっきりとは分かりません』

 

 それもそうか。じゃサクサク行こうか。

 

 インターフォンを押す。すぐに繋がった。

 

「……探偵の結城幽日(ゆうきゆうひ)様と奥様の亮様ですね」

 

「いいえ、違います」

 

「……え?」

 

 いやいやいやいや! なんだよそれ。いつの間に俺は結婚していたんだ。だいたい嫁連れて事件現場に来る探偵なんて聞いたことないよ! 

 

 なんかインターフォンの向こうからガタガタガヤガヤした雰囲気が伝わってくる。何してんだ?

 

 あ、根岸課長の声だ。

 

「ハハハ、ほんの冗談だよ。鍵は開けてもらったから入ってくれ」

 

 根岸バ課長に促され、門を開けて敷地に入る。

 

「えぇ……」

 

 広い庭に愕然としてしまう。

 

 よく手入れの行き届いた庭、石畳に高い塀。そしてデカイ屋敷。完全に住む世界が違う。やばぁ。やばぁ。

 

 ぐるりと観察がてら見回す。

 

 ん? あれは……。

 

 俺が気になったのは屋敷の玄関横にある大きな木だ。全体的に洋風なテイストの建造物なのに、些か悪目立ちしている。

 気のせいでなければ、潤さんの記憶で見た柿の木と似ている。ただ、記憶では柿の実が付いていたのに対し、今は柿が()っていないからあまり自信は無い。

 

『……あの木は知っています』

 

 しかし潤さんは俺とは違ったようだ。

 

「ビンゴか。じゃあ犯人を探しに行きますか」

 

『……はい』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あなたが名探偵を自称するニートですか」

 

 !?

 

 なんということでしょう。メガネを掛けたパンツスーツの女性が、俺をニートと呼んだではありませんか。しかも俺を名探偵と認めていない(ふし)まである。

 

貴女(あなた)女神(かみ)か」

 

「は? 頭がおかしいんですか」

 

 くっ! なんという常識的な意見。こんなまともな人に出会えるとは、嫌嫌事件に首を突っ込んでよかったぁー!

 

「ちょっとゆう! 浮気はダメ!」

 

 亮が騒ぎだしたがどうでもいい。それよりこの女神だ。

 しかし女神を遮るように高身長のおっさん──根岸さんが割り込んで来た。

 

「こらこら。結城君に失礼じゃないか。結城君は確かな実績のある優秀な探偵だよ」

 

 おい。根岸さんや。余計なことを言うでない。

 

「紹介するよ。この子は今年度から一課に配属になった如月(きさらぎ)(ひかる)君。この事件で君のサポートを担当する。如月君」

 

 根岸課長に呼び掛けられ、渋々といった感じで喋り出した。

 

「……如月よ。せいぜい足は引っ張んないで」

 

 あくまで俺が気に食わないみたいだ。普通に考えて、一般人が特別扱いされて事件にしゃしゃり出て来るのは、刑事からすればムカつくことだと思う。

 だから如月さんの態度に俺がイラッとなることはない。だって当たり前すぎるんだもん。

 

「はぁ。すまんな。これでも名門大を出て、警察学校を主席で卒業したデキル子なんだ。悪く思わないでやってくれ」

 

「大丈夫です! 悪く思うわけないっすね!」

 

「お、おう。そうか。それならいいんだ。私は所用があるのでこれで失礼するよ。ではな」

 

「「お疲れ様です」」

 

 あ、如月さんと被っちゃった。ばっとお互いを見る。すると当然目が合う。

 

 ひぇ……。野獣の眼光やめぇや。現役一課刑事だけあって、ぱねぇ威圧感だわ。恐いわぁ。つい今までの悪行をゲロっちゃいそうだわぁ。

 

「……ちっ」

 

 舌打ち(笑)。流石にそれは社会人としてちょっとどうなんだ? ニートにそう思われるって結構凄いと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「先ずは今回の事件をざっと教えてください」

 

「……当該事件は──」

 

 やたらと堅い言い回しで如月さんが説明し出した。サクッとまとめる。

 

 事件は今から1週間前の4月13日に起きた。御子柴(みこしば)(じゅん)さん(18)が、姉に処方されていた睡眠薬を服用した上で自室にて練炭自殺をした。

 第一発見者の家政婦の佐久間(さくま)みどりさん(32)により通報を受け、警察が到着。部屋にはパソコンで作成された遺書のようなものがあり、一見自殺のようだったが、所轄の警部補はドアや窓の外側に粘着テープの跡のようなものを発見したことで判断を保留。

 また、直近の当主であった御子柴秀明(ひであき)さんの死亡にかかる相続で、遺書が存在しなかったことから多額の法定相続分が見込まれるにも関わらず自殺している点にも不自然さを感じた所轄刑事課強行犯係及び鑑識係は、他殺の線が有力と判断。

 そして如月さんたち警視庁捜査一課を巻き込み、捜査本部が設置された。

 屋敷の関係者は兄の大地(だいち)さん(24)、姉の月子(つきこ)さん(21)、庭師の加藤(かとう)さん(27)、家政婦の佐久間(さくま)さん(32)、宇野(うの)さん(36)、安藤(あんどう)さん(40)の計6名だ。捜査本部はこの中に犯人が居ると見ているようだ。

 しかし捜査は決め手となる証拠に欠け、犯人の特定には至っていない。

 で、今に至る。

 

 ってな具合らしい。ふむ。

 

「如月さん」

 

 説明を終えてブスッとしたままつっ立っていた如月さんへ声を掛ける。

 

「なんだ?」

 

「関係者に聞き込みに行きますよ。先ずは被害者の兄姉(きょうだい)からです」

 

 さぁサクッと行くぜ。フヒヒ。

 

「構わないが、私たちもさんざん話はしてきた。それでも有力な手掛かりは得られなかったんだ。今更何ができる?」

 

 いや、マジで常識人やな。尤もだわ。でも世の中には常識外れもたまーにあるんだぜ。

 

「まぁまぁそう言わずに。別に悪いことをしようってんじゃないんだから、大目に見てくださいよ」

 

「そーだ! そーだ!」

 

 亮がヤジを飛ばす。キッと睨まれて俺の後ろに隠れる。

 

 亮の奴、もう飽きてきてるな。どうしても付いて来たいって言うから連れて来たけど、失敗だったかなぁ。

 

『旦那さんはお忙しいみたいだから、亮ちゃんは私とお話しましょうね』

 

 !?

 

「わかった」

 

 !?

 

 潤さんから母性溢れる提案が出される。そしてなぜか素直に従う亮。

 ここで注意したいのは潤さんの方が2つ3つ年下ってことだ。なんというかちぐはぐ感がある。非常に助かるからいいんだけどさ。だけど旦那って言うのはダメだ。

 

 眉間にシワを寄せていた如月さんが、重々しく口を開く。

 

「……仕方ないな」

 

 よしよし。じゃあ行こうか。

 

 屋敷の客室から移動を開始する。ついでにちょっと確認。

 

「繰り返しになりますが確認させてください。兄の大地(だいち)さんと姉の月子(つきこ)さんにはアリバイがあるんですよね?」

 

 如月さんの話では、被相続人(ひそうぞくにん)(財産を残し死亡した人)である秀明さんの奥さんは、数年前に亡くなっている。その為、秀明さんの莫大な遺産は、遺言が無ければ、法定相続分通り三分の一ずつ子どもたちが相続するはずだった。

 つまり潤さんが死んで最も得をするのは、大地さんと月子さんだ。相続分が二分の一ずつになるからな。

 当然、警察も2人を疑った。

 

「そうだ。2人はガイシャの死亡推定時刻には関西の○○県に旅行に行っている。一応、旅先の商店街などでは目撃情報がある」

 

 らしいのだ。

 ちなみに滞在先はラブホテルである。そこで大地さんは自身の本名で登録した利用者用のカード(所謂メンバーズカード)を使っている。カメラにもそれらしき人物が映っている。

 ただなぁ、ラブホのメンバーズカードってわざわざ本名で登録するか? 偽名にするくらいはするんじゃないか。いかにもこれ見よがしにアピールしようとしているようだ。

 それにもう1つ。

 

「目撃情報って言っても大地さんはマスク姿なんですよね?」

 

 これなんだよな。

 終息宣言が出されたものの、某感染症の名残(なごり)でマスクを付けている人は未だ多い。従って不自然ではないんだが、如何せん証言としては弱い。

 

「……その点は私たちも納得はしていない。しかしマスクで隠れた箇所以外は特徴が一致している。更に屋敷で働く人間の証言も複数得られている」

 

 屋敷の人たちの証言を簡単にまとめると「大地さんと月子さんに肉体関係があるのは公然の秘密で、2人が旅行に行ったのも事実です」というものだ。

 別にこれらの証言単体がおかしいわけではない。

 ただなぁ……。違和感は拭えないよな。

 

 如月さんの表情を見るに、内心忸怩(じくじ)たるものがあるんだろう、その苦々しい気持ちが滲み出ている。

 

「で、建前や理屈抜きに如月さんはどう考えてるんですか?」

 

 俺のざっくばらんな訊き方に、如月さんが苦笑いを見せる。初めて見る笑った顔が苦笑いか。

 

 俺も苦笑いを浮かべてしまう。

 そして、如月さんは声を潜めて告げた。

 

「……高い確率で兄と姉が犯人だ」

 

「……ふ」

 

 今度は苦笑いではなく、普通に小さく笑ってしまった。俺を如月さんが睨み付ける。 

 

「何がおかしい?」

 

 随分と刺々しい言い方だ。

 

「いや、気が合うなぁと思っただけですよ」

 

 うわぁ。めっちゃ嫌そうな顔してる。

 

「ふんっ。着いたぞ。ここが大地氏の部屋だ」

 

 事件が発生してからは関係者はなるべく屋敷に居るようにお願いしているそうだ。元々、大地さんや月子さんは御子柴財閥系列の企業で形式的な取締役をしているだけだから、仕事に支障はほとんどない。羨ましい限りだ。

 

 如月さんがノックする。

 

「一課の如月です。少しお話をお伺いに参りました」

 

 声のトーンが俺の時と段違いでウケる。

 

 少しの間、ガタガタコソコソとしてからドアが開けられた。

 出て来たのは短髪のやや太り気味の若い男だ。この人が大地さんかね。

 チラっと見えた部屋の中には女性の姿もある。ナニをしていたんですかねぇ。

 

「またですか。何度訊かれても同じことしか言えませんよ」

 

 不機嫌さが如実に表れている。

 

「申し訳ありません。しかし大地さんだけではなく、皆様にも何度もご協力をお願いしております故、どうかご容赦ください」

 

 多分、わざと大地さんという名前を出して、この人がそうだと伝えてくれたんだな。意外と気が効くじゃねぇか。

 

「……はぁ、そうですか。……入ってください」

 

「ありがとうございます。失礼します」

 

「失礼します」

 

 何食わぬ顔で如月さんの後に続き中に入ると、大地さんが俺を見て疑問を呈してきた。

 

「えぇと、あなたも刑事さん? 随分と若いようだが……」

 

 ギクッ。

 

 しかしここでまさかの、如月さんからのフォローが入る。

 

「結城は警察官採用試験を飛び抜けた成績で合格した天才です。特例的に早い段階から捜査一課への配属がなされた為にこの若さです」

 

 !?

 

「……そうですか」

 

 納得してなさそうだけど、引き下がってくれたよ。

 

 さて、すでに大地さんと部屋に居た女性の記憶は読んだ。ぶっちゃけもう訊きたいことは無い。次に行きたいが、多分それには皆、特に如月さんが納得しない。

 

「それではおふたりに事件についてお伺いします。お手数ですが、お相手してください。最初に──」

 

 ありきたりな質問をして、それに2人──大地さんと月子さんが答えていく。

 如月さんの話と同じ内容の繰り返しだね。

 

「──なるほど。よく分かりました。以上で終了です」

 

 2人がため息をつく。ついでに如月さんもため息をつく。味方が居ないとはたまげたなぁ。

 

「お忙しい中、ありがとうございました。それでは失礼いたします」

 

 さっさと部屋を出る。入室する前にはすでに用事は済んでたからね、仕方ないね。

 廊下に出てドアを閉めてから、如月さんが目で「何か分かったか」と訊いてきた。大地さんたちに聞かれるのを警戒しているんだろう。

 

 ニヤリとしてから頷いてやる。

 

 如月さんが目を見開く。が、すぐに眉間にシワを寄せる。

 俺の判断を疑い出したんだろうな。警視庁内部での俺の評判は聞いている筈なのに、冷静に常識的な疑いを持てる点は確かにかなり優秀やな。

 嫌いじゃないよ、そういうの。

 

「次は屋敷の従業員の皆さんにお話を訊きましょう」

 

「……了解」

 

 廊下を進みながら少しだけ教えてやる。当然小声だ。

 

「真相は分かりました。あとは如何にして崩す(・・)かです」

 

「……なるほど。勝算は?」

 

 俺のしたいことをある程度は察したんだね。

 

「申し訳ないですが、それは従業員たち次第。まだはっきりしたことは言えないです」

 

「……まさか……そういうことなのか」

 

 おー! もしかしてこの事件の全体像に気づいた!? やるやん。何処ぞのバ課長とはエライ違いだ。

 

「それはもう少ししたらお教えできますよ」

 

 冷静に疑いつつも、頭ごなしに否定せずに一旦は飲み込んで検証する。

 言葉にすると簡単だが、ムカつく奴を相手にこれができる人間がどれくらい居るだろうか。少なくとも俺にはできない。

 しかも如月さんは思考も速い。態度は悪いが総合的に見ると、大当たり人材じゃん。一課にとってはな。

 俺にとっては微妙にやりにくいです。

 

 そうして庭師1名、家政婦3名からも話を訊いて回った。ふふふ。

 

 さて、久しぶりに俺の探偵ごっこ、なんちゃって推理劇場を開幕しますか!

 

 

 

 

 

 

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