【完結】霊能チートのネタバレ事件簿   作:虫野律

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アンケートにご協力してくださり、ありがとうございました! 勉強になります!


涼宮ハルヒと白峰ありさのアクセントが、私の中で完全に一致しててテンション上がりました。




白峰ありさの憂鬱

「異議ありぃぃ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(;´Д`)ハァハァ

 

 

 広すぎて一部しか使っていない探偵事務所に電話の呼び出し音が鳴り響く。

 

──奴がルパ○だぁ! ○パン~♪ル○ン~♪

 

 なんて着信音、設定してんだよ。

 

 今は俺しかいない。つまり俺が無視を決め込めば何も起きない。完全犯罪だ。これぞQED(?)。隙は無かった。

 

 呼び出し音が止まる。

 

 諦めたか。よしよし。

 

 しかし人生そんなに上手くいかない。2分後、ウィーンと事務所の自動ドアが開く。

 

「失礼。電話に出ないから直接来たぞ」

 

 そう言ってやって来たのは、下の法律事務所の代表弁護士(ボス弁)を務める黒須(くろす)啓吾(けいご)さんだ。今日もビールっ腹が綺麗な曲線を描いている。

 

「実は折り入って頼みがあってな」

 

「ちょっと待ってください。いきなりすぎて何が何やらですよ」

 

 実はこの人のことは以前から知っている。

 黒須さんは父さんの古い友人らしい。昔からたまに──3年に1回くらいのペースで会っているから、全くの他人では無い。

 とはいえ友人とまではいかないし、年齢差もあるから(あきら)に接するようにはいかない。

 探偵業開始にあたり、挨拶に行ったらこのおっさんが出て来たのは、ここ最近の微妙な出来事ランキング1位である。

 

「まぁ聞け。ウチのイソ弁に白峰(しろみね)ってのが居るんだ」

 

 イソ弁ってのは居候(いそうろう)弁護士の略で、要するにボスである黒須さんに雇われた弁護士ってことだ。

 

「居ますね」 

 

 黒須さんが納得顔で頷く。

 

「やっぱり報告にあった結城検察官ってお前だったのか」

 

 やめて。黒歴史を掘り返さないで。 

 

「忘れてください(霊圧)」

 

「お、おう。分かった」

 

「……で、頼みってなんですか?」

 

「あ、ああ。実はよ。俺らは今、かなり忙しい。なのに厄介な依頼が来ちまったんだよ」

 

「何が来たんですか?」

 

「強姦殺人の私選だ」

 

 ワロタ。だいたい分かった。

 

「空いてるのは白峰さんだけってことですね」

 

 黒須さんが、昭和の任侠映画がよく似合う笑顔を見せる。

 

 ……白峰さんと街を歩くと職質されそうだな。

 

「正確には白峰に指名が入った形だな。刑事専門としてそこそこ名が売れてるんだよ」

 

「うわぁ。逃げ道無いじゃないですか」

 

「そうなんだよ。それなのに性犯罪となると、あいつ急にポンコツになっちまう。だから助っ人やってくれや」

 

 えー。ダルい。いいじゃん。ポンコツっぷりを撮影してよーちゅぅぶにアップしようぜ。

 

「報酬はそうだな……。お、いいこと思いついた」

 

 なんだ? 凄い悪どい顔して。

 

「浮気調査が来たら俺らがバックアップしてやる。そうすりゃ探偵としての売りになる。何よりお互い(・・・)ハッピーだろ?」

 

 ……な、なんてアコギなこと言うんだ!?

 

 黒須さんが言ってんのは、探偵が調査する段階から法的な解決法や知識を提供してやる代わりに、そのまま訴訟なりなんなりに誘導して、優先的に客を回せってことだ。

 つまり一種の事業提携をしようってことだ。人の不幸を効率良く金に換えようって魂胆を隠そうとすらしていない。

 

 ……まぁ断るんだけどね(笑)。

 

「いや別に探偵として成功したいとかは全くないです」

 

「なんだそうなのか。じゃあなんでこんな金の掛かるとこに事務所なんか構えたんだ?」

 

 それな! ほんとそれな!

 

「人生とはかくも奇妙な、まるで戯曲のように滑稽なものよ……」

 

「何を言ってるか分かんねぇが頼むよ。今度旨い漬物やるからよ。なんなら白峰も付けてやる」

 

 白峰さんはいらんが漬物は欲しい。

 

茄子(なす)もある?」

 

「あるぞ。蕪も白菜も沢庵(たくあん)もある」

 

 ふむ。

 

「ユウキ探偵事務所にお任せください!」

 

「お、おう。よろしく頼む(漬物で落ちるのか)」

 

「ん? 何か言いました?」

 

「い、いや何でもないぞ」

 

 油ぎっしゅなおっさんがアワアワしてるとこなんて見ても楽しくないな。早く漬物でさっぱりしたいぜ。

 

「あ! あと、○きたこまちも付けてくれ」

 

 おい。残念な奴を見る目をやめろ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(;_;)

 

 

「はぁー」

 

 やっぱりだめだ。

 えっちぃことを考えると頭がおかしくなる。それに、男の人からそういう欲望を向けられるかもしれないと思うと恐くてもうだめ。

 

 事務所の自動ドアが開く。黒須さんが戻って来た。青年を連れている。

 

 彼が助っ人か。どこの弁護士だろ──え?

 

「助っ人ってあなたなの!?」

 

 結城検察官が、前に会った時よりも気持ちヤル気の感じられる顔でやって来た。

 

 ……あ、やっぱりヤル気無いかも。死んで腐った魚を煮込んで作ったあら汁を冷ましてから一気飲みした後みたいな顔をしているわ。

 

「いやぁ、幽日君が快諾してくれてよかったよ。白峰が困ってると聞いて、是非力になりたいと意気込んでくれてるよ」

 

「……そうは見えないですけど」

 

 結城検察官(?)は全力で首を振っている。首が痛くないのだろうか?

 

「ハッハッハッ。じゃあ後は若いふた……2人に任せるとしよう」

 

「どうして口ごもったのですか? 私にも分かるように是非教えていただきたい」

 

 しかし黒須さんはハッハッハッと笑いながら事務所を出て行きやがった。

 

「……」

 

「……」

 

 ち、沈黙が痛い。

 私のせいで呼んでしまった手前、下手なことを言うのは(はば)られる。かといって私に気の利いたトークなんて無理だ。何を話せばいいんだ。

 

「とりあえず事件の資料を見せてください」

 

「そ、そうだな」

 

 よかった。それなら壊滅的なモテトーク力がバレないで済む。

 

 先ほど印刷した資料を渡す。

 

「ありがとうございます」

 

 結城検さ……結城君が資料を読み始める。

 この資料は警察内部の人間しか知り得ないようなことまで網羅(もうら)している。黒須さん曰く警察関係者の知り合いから得た物だそうだ。あの人はこういう手段も普通に使う。否定はしないが、全面的に肯定もできない。

 だけど黒須さんのお蔭で上手くいったことも多い。今回の事件も依頼された翌日には、警察と同レベルの情報をフォルダにまとめていた。私にはできないことだ。

 

 結城君が顔を上げる。

 

 読み終わったようね。

 

 目が合う。なんだか不思議な感覚。

 

「依頼人に会いに行きましょうか」

 

「……そうね」

 

 頑張ろ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 警視庁にある留置場の面会室で、アクリル板越しに見た依頼人──雨宮(あまみや)達也(たつや)氏(31)は良く言えば優男だ。私の印象では今回のような犯罪をするようには見えない。

 少し安心した。幾分か軽くなった気持ちのまま、雨宮氏に相対する。

 

「初めまして。この度はご依頼をくださり、ありがとうございます。虹色法律事務所所属弁護士の白峰ありさと申します。こちらは助手の結城です」

 

「結城です」

 

 結城君が軽く頭を下げる。

 

「雨宮達也と言います。刑事専門の弁護士さんが居るとお聞きしまして、依頼させていただきました。よろしくお願いします」

 

 気弱な見た目に違わぬ細い声質ね。

 

「こちらこそよろしくお願いします」

 

 結城君が頷く。

 ここに来るまで少し話したのだけれど、結城君には何か考えがあるみたいだった。だから雨宮氏とのお話は結城君が担当したいと言っていた。

 少し迷ったけれど、私はその申し出を受け入れた。

 なぜなら、結城君の法廷での立ち振舞いから考えて、一定レベル以上の法律知識やリーガルマインドを期待できるから。黒須さんの信頼を得ていることもそれを類推させる。

 

 ……くだらない言い訳ね。私だと冷静に事件と向き合えない。それだけだ。情けない。

 

 結城君が雨宮氏に言葉を投げ掛ける。

 

「早速ですが少しお話しましょう」

 

「はい。何からお話すれば……」

 

 雨宮氏が躊躇いがちにそう答える。

 

「何もそう硬くなることはないですよ。最初の質問は白峰についてです」

 

「「……え?」」

 

 何を言い出すつもり?

 

 結城君の目が怪しく光る。嫌な予感が……。

 

「白峰ってかわいいですよね」

 

 !?

 

「……そうですね」

 

 !?

 

 な、何が起きている? なんで急に褒められた(?)?

 

 結城君がしたり顔で頷く。

 

 ……なんかムカつくな。いやダメだ。落ち着け。今回は私の都合で来てもらったんだ。Be cool.大丈夫だ。私はまだ闘える。

 

「雨宮さん」

 

 結城君が表情を引き締める。

 

「この事件、勝負ありです。勝ちますよ」

 

 !?

 

「どういうことですか? 無罪を勝ち取れると?」

 

「違います。無罪ではなく不起訴処分にさせます」

 

 どこからその自信は来るんだ。……でもそうだな。法廷で見た君はそういう奴だった。敵にすると面倒極まりないけれど、味方だと……ふん!

 

「何かカードがお有りなのですか!?」

 

 雨宮氏の気持ちには全面的に同意する。

 

 また結城君が鬱陶しい顔になる。ムカムカ。

 

「勿論です」

 

 結城君が私の頭をポンポンする。

 

 何をするか!

 

「お、おい!」

 

 私の方が一回りは年上なんだぞ!

 

 どんどん顔が熱くなる。

 

 だ、だめだ。今回は私のワガママ。ワタシノワガママ。ワタシノワ──。

 

「白峰がかわいいなら勝ちパターン入ってます!」

 

「異議ありぃぃ!!!」

 

 意味分からんわぁぁあ!!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

( ✧Д✧) カッ!!

 

 

 雨宮さんとの面会を終えた俺たちは、死体with精液of雨宮さんがあった公園に向かっている。

 タクシーから降りて、現在は徒歩だ。

 

「おい! いい加減説明しろ!」

 

 白峰さんがぷりぷり怒っている。でも普段からつり目を極めてるから大して変化が無い。つまり慣れてしまえば恐くない。ふっ。勝ったな。

 

「無視をするな!」

 

 さて、今回の事件をざっとまとめる。

 

 4月25日の朝、山本(やまもと)美保(みほ)さん(27)の遺体が、雨宮さん宅の近くにある公園の女子トイレ個室内で発見された。

 背中や胸部に鋭利な刃物によるものと見られる傷があった為、刺殺と判断。

 また、美保さんは衣服を乱され、胸部と下腹部を露出していた。

 そして、膣内と外性器周辺から雨宮さんの精液を確認。加えて、死亡推定時刻(24日深夜~25日未明)の雨宮さんには明確なアリバイが無かった。

 以上から強制性交等致死傷罪で逮捕されるに至ったようだ。ただしローションの成分も膣内と外性器から発見された為、死姦の疑いもあるらしい。

 

 しかし雨宮さんは犯行を全面的に否認している。

 

 クイックイッ。春物のアウターの裾が引っ張られる。

 

 ん?

 

「どうして無視するんだよぅ……」

 

 ひぇ……。白峰さん、なんか闇の深そうな顔してる。恐い。

 

「ごめんなさい。ちょっと考え事してたんです」

 

 白峰さんの顔に明るさ(怒気(どき))が戻る。

 

「……そうか。でも無視は駄目だぞ! 分かったか?」

 

「ア、ハイ」

 

 微妙すぎる空気になってしまったけど、大丈夫! 犯人がトキメいちゃった公園に到着したからな! さ、お仕事をちゃっちゃっと終わらせよう。

 残留思念はあっるかなぁー。

 

 公園全体を見回すも見つからない。はい次。本命の女子トイレに行きますか。

 

「死体のあったとこに行きましょう」

 

「……わ、わわかった」

 

 え? これも駄目なの? めっちゃプルってるじゃん。頭の上に熱々のカップラーメンを載せてあげたいな。

 

 しかし俺は紳士なので本心は棚に上げて、優しい声で心配オーラを出してやる。

 

「塩ラーメンと塩ラーメン、どっちがいいですか?」

 

 あ、間違えた。

 

「し塩。ネギ抜き!」

 

 一瞬、同士かと思ったけどそんなことは無かった。「全て国民は拉麺(らーめん)において(ねぎ)を大量に入れる権利を有し、義務を負う。この権利義務は公共の福祉その他いかなる法理を以てしても制限されない」と日本国憲法に明記されている。つまり白峰さんは悪である。

 

 白峰さんを見る。

 

 意味不明な話題でちょっとだけ緊張が取れたかに見えたけど、すぐに難しい顔に戻っちゃった。うーん、うん。じゃあ白峰さんはとりあえずいらんわ。

 

「具合が悪いなら近くの○ックで休んでていいですよ。俺だけでもなんとかなりますし」

 

 しかしそうは白峰さんが卸さない。

 

「だだ大丈夫だ! わたわた私も行く!」

 

 これほど信用ならない言葉は「先っちょだけだからぁ!」と「あなたに迷惑は掛けないわ。だから今日も……」以外でそんなに知らない。

 

 ぷるぷる白峰さんが、顔を赤くしながら唇を噛んでいる。

 

 ……仕方ないなぁ。ちょっと魂にお邪魔しますよ。

 

 白峰さんの魂を覗く。

 

 んー? ちょい複雑だな。微妙に時間かかる。

 

「な何をしてている!? いい行くぞ!」

 

 今、集中してんだからチョロチョロしないで。

 

 白峰さんの両肩に手を置く。肩ほっそ。キッズそのものやん。

 

「すぐ終わるからじっとしてろ」

 

「!」

 

 ほーなるほどなー。

 

「ぁぁぁぁ……」

 

 ほーん。白峰さん予備試験ルートなんか。

 

「……めてゆ……て」

 

 オッケー把握した。

 

「ごめんなさいやだごめんなさいゆるしてやだやだやだ──!」

 

 あ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 記憶によると白峰さんは父子(ふし)家庭で育った。ただし性的虐待と監禁付きだ。

 どうやら出生届も長らく出されていなかったみたいだ。物心ついた時から狭い洋室に閉じ込められており、たまに許される風呂以外ではずっとその部屋に居たんだってさ。

 父親が事故で死に、白峰さんが保護されたのが18歳の時。

 その後の医師等の見解によると、ろくな食事を与えられなかったせいで身体的成長が小学4年生程度で止まっていて、また、暴行されながら犯され続けていたことが原因で心的外傷後ストレス障害になっているらしい。

 

 そこから何を思ったのか、猛勉強をして司法試験を突破し、弁護士になった。物好きやね。

 

 で、さっきの俺の「すぐ終わるからじっとしてろ」ってやつは、レイプに抵抗しようとした時に父親から度々言われてたみたいだね。勿論ぶん殴られて犯されるだけだった。

 ちなみに白峰さんから父親に呼び掛けても無視されていた為、無視されることもエロと合わせて苦手なことなんだって。

 

 しかもさらにキツいのが生理自体はあるものの、卵巣に異常がある為に排卵が起こらず、妊娠できないということだ。

 父親から避妊もされずにレイプされてきたのに妊娠していなかったことに疑問を持った医師が、検査した結果判明した。虐待によるストレスや栄養不足、幼児期からのレイプや腹部への暴行が原因である可能性が高いらしい。

 

 いい歳してロリっ子でエロいことが極端に苦手ってのは、こういうカラクリだったんだね。納得したわ。

 

 さて、すでに応急処置はした。つまり「恐くなーい痛くなーい」と念を込めた霊気を、白峰さんの魂のヒビに注いだんだ。

 

 これでパニックだかフラッシュバックだか知らんが、痛みと恐怖はかなり緩和されるはずだ。

 

 さっきまで顔だけでなく手も首も真っ赤に萌えてたけど、段々白い色が強くなってきた。

 

「ぅぅぅ……?」

 

 肩から伝わる震えも大分治まってきた。もう、こちらの言うことを理解できる状態だろう。

 

「すみません。乱暴な言葉で恐がらせてしまったみたいですね」

 

 無言の間。白峰さんが状況を把握するまで待つ。やがて白峰さんの目に知性の光が完全に戻る。

 

「……ごめんなさい」

 

 ワロタ。しおらしすぎる。普段と違いがありすぎて違和感がすごい。

 

「じゃあここで待っててくれますね?」

 

「……できれば私も行きたい」

 

 ですよねー。知ってたよ!

 

 白峰さん、まだトラウマを克服しきってないクセに、いきなり普通の人と同じように行動したがるみたいなんよ。

 黒須さんは白峰さんの事情を知ってるから、今回の依頼は断ろうとしたんだけど、白峰さんが「できらぁ!」とごねた。

 結果、やむを得ず白峰さんに担当させることにしたが、助っ人を付けるという条件を飲ませたんだってさ。当然、俺の知らないところで決まった話である。非常に納得できない。

 

「……分かりました。でも勝手に離れないでくださいよ」

 

 トラウマが刺激されまくって不測の事態が起きると、今の霊気だけじゃ対応できなくなるかもしれないからな。

 

 だが、白峰さんが全く無い胸を張って(のたま)う。

 

「了解。でもなんだか調子が良くなってきたから問題無さそうよ?」

 

 それは俺のお蔭だからぁ! あなたの実力じゃないからぁ! 病人のクセにいきなり無理して足引っ張るんじゃありません!

 

 霊気を一旦没収。

 

「!」

 

 白峰さんが不安そうに眉を寄せる。

 

「まだ安定していないです。分かりましたか?」

 

「……はぃ。ごめんなさぃ……」

 

 よしよし。霊気を与えてやる。絶妙に丁度いい位置に頭があるからついでに撫でておく。

 

「……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(*•̀ㅂ•́)و✧

 

 

 犯行現場の女子トイレ内で空中に手をかざしていた結城君が、閉じていた目を開く。

 

「真犯人が大体分かりましたよ」

 

「……なぜ分かったんだ」

 

 何がどうしてこれで犯人に繋がるんだ。私には全く分からない。探偵とは皆こういうものなのか?

 

「それは企業秘密です」

 

 それはズルくないか。それに、一応私が依頼を受けているのだけれど。

 

「納得できないわ。説明して」

 

 結城君が露骨に嫌そうな顔で「かわいくねぇ」と小さく漏らすのがしっかりと聞こえた。

 

 なによ。留置場ではかわいいかわいいって言ってたクセに。もう一回言いなさいよ。

 

「すぐに分かりますよ」

 

 睨み付ける。私、納得いきません。

 

「はぁ。じゃあヒントです」

 

「何?」

 

「白峰さんがロリかわいいからここに居るんです。これがヒントです」

 

 か、かわいいとか言うなぁ!

 

 顔が熱い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こんにちは。私は雨宮達也さんの弁護を担当する弁護士の白峰ありさと申します。こちらが助手の結城です。本日はお忙しい中、ありがとうございます」

 

 公園を出る前に、雨宮氏の奥さんに電話して訪問の許可を取っておいたから、スムーズに家に上げてもらえた。

 

 雨宮氏は都内の閑静な住宅街に2階建ての家を所有している。子どもはいないが既婚者だ。

 

 綺麗な人ね……。

 

 居間に通してくれた雨宮美鈴(みすず)さんは、私とは違って大人っぽい雰囲気。被害者と似ているわね。雨宮氏が好みの女性を強姦した可能性も一応は考えられる。

 結城君は大丈夫だろうか。

 

「今、お飲み物をお持ちしますね」

 

 結城君が夫人の後ろ姿を見ている。どこを見ているのだろう。

 

「おい。変態的な目をやめろ。失礼だぞ」

 

「……コーラが出される確率は何パーですかね」

 

 なぜコーラ? 普通、初対面の、しかも大人の客にコーラは出さないでしょ。やっぱり結城君ってすこ……結構変わってるわね。

 

「0%だ。コーラが好きなのか?」

 

「好きですよ。でも今、飲みたいわけではないです」

 

 そ、そうか。よく分からないけれど、夫人にセクハラしないなら別にいい。

 

 結城君が微妙な顔で「あきらェ……」と呟いている。あきらって誰だ。

 

 夫人が戻って来た。お盆に湯呑みを載せている。そして普通にほうじ茶を出してきた。

 

 結城君を見ると夫人に笑いかけている。

 

「早速、事件やご主人についてお聞かせください。先ずは──」

 

 メインで話を進めるのは結城君だ。

 

 はっきり言って黒須さんの資料にあったことの確認作業にしかなっていない。結城君はこれで何か分かるのだろうか。

 

「──です」

 

 夫人が一通りの情報を出し切る。

 

「なるほどなるほど」

 

 結城君が顎に手を当てて、うんうんとしている。

 少し思ったのだけれど、本当は何も分かってなくて、ただ雰囲気だけ出しているんじゃ……。だって、いくらなんでもこの話で新しい発見があるとは思えないもの。

 

 夫人が不安げに結城君の目を見つめる。

 

「主人は大丈夫でしょうか?」

 

「……全力は尽くします。ですが不利ではありますので、断言はできません」

 

 私に言っていたことと大分違う。けれどこちらの受け答えの方が常識的ね。

 

「……よろしくお願いいたします」

 

 夫人がしずしずと頭を下げる。

 

「尽力いたします。……それではそろそろ」

 

 私からすれば意味のあるやり取りではなかったけれど、何か分かったのかな。

 

 挨拶をかわし、雨宮氏のお宅を後にする。

 

「これからどうするんだ?」

 

「探偵ごっこですね」

 

「なんだそれは」

 

 結城君は答えない。でも頭をポンポンされる。恥ずかしいからやめて。……やめなくていいけど。

 

 あーもう!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*( ᐛ )و

 

 

 翌日。

 

「すみませんね、こんなところにお呼びして」

 

 旦那さんのことで大事なお話があると、美鈴さんを警視庁に呼び出した。へっ。ノコノコやって来やがって。

 

「いえ、主人の誤解が解けるのでしたらこれくらい構いませんよ」

 

 根岸さんと警視総監の佐藤さんに頼んで、小さめの部屋をひとつ貸してもらった。今は俺と白峰さんと美鈴さんしかいない。テーブルを挟んで美鈴さんと相対する形だ。

 

 さて。じゃあ始めますか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「美鈴さん。犯人はあなたですね」

 

 美鈴さんに動揺は見られない。

 

「意味が分かりません」

 

 まったく惚けやがってよ! けしからんなぁ!

 

「いいでしょう。では順を追ってご説明しましょう」

 

「美鈴さん、あなたは達也さんにあまり相手をしてもらっていませんでしたね?」

 

 美鈴さんが少し不機嫌な空気を出す。そりゃそうよね。

 

「……そんなことありません」

 

 美鈴さん、プライド高いみたいだからな。こう言うよな。

 

「そうですか? 私の調べたところによると夫婦生活、特にセックスに大変ご不満がお有りとお聞きしましたよ。お互いに、です」

 

 白峰さんがキョドる。仕方ないから霊気を少し貸してやる。

 

「……達也さんが言ったのですか」

 

 答えずに曖昧(あいまい)に笑うに留める。記憶を読みましたなんて言えないからな。

 

「美鈴さんはとてもお綺麗ですね。あなたのような美しい人にはなかなかお会いできません」

 

 痛! 

 

 白峰さんがテーブルの下で太ももをつねりやがった。大した力は無いからそこまでではないけど地味にうざい。

 

 痛い痛い。

 

 白峰さんの手を握って指を拘束しておく。なんとなく、指をすりすりすると白峰さんがびくっとする。おもしろ。

 おとなしくなったから話を続ける。

 

「様々な男性からアプローチされてきたことでしょう。粗雑に扱われたことなど無かったのではないですか?」

 

 美鈴さんが小声で「他人(ひと)より多少恵まれていただけです」と答える。

 多少って言ってるけど記憶を見た限りでは、フラれた経験が皆無で複数の男から貢がれまくっていた。特に水商売経験もなく、積極的に合コンに参加するわけでもマッチングアプリを利用するでもなく、ホントに普通に学生やOLをしてるだけでいつもそんな感じだったみたいだ。喪女に謝れ。

 

「大変恵まれていたあなたは、一流企業に勤める達也さんに出会った。達也さんは顔も悪くはなく、酒もタバコもギャンブルも女遊びもしない。セックスは女性の気持ちを尊重してくれて、仕事では1000万プレイヤー。総合的に見て合格基準を満たしていたのですね。だからあなたは結婚することに決めた。しかし結婚生活は予想外の問題を抱えていた」

 

 美鈴さんの霊気が波打つ。へっ。すました顔してても霊気は誤魔化せないよな。

 

「達也さんは──」

 

 チラっと白峰さんを見る。(うつむ)いて、耳を赤くしてるだけだ。特におもしろいことにはなってないな。すりすり。

 じゃあ、いきますか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「達也さんはガチロリコンだった」

 

 一拍置いて、白峰さんがバッと顔を上げる。ナイスなリアクションだ。

 ちなみに、白峰さんへ依頼したのも見た目がどストライクだったからだ。ぱねぇっす。

 

「結婚してから少しすると美鈴さんを積極的に抱こうとはしなくなった。だから結婚後はいつも美鈴さんから誘っていたようですね。これだけでもあなたは屈辱的だったでしょう。しかもそれだけでなく行為も問題だった。機械的に愛撫し、濡れてきたら挿入して、あなたのことなど気にしないでさっさと射精して終わり。結婚前とは雲泥(うんでい)の差です」

 

 不満なら離婚でも不倫でもすりゃいいって思うけど、美鈴さん的にそれは駄目らしい。

 なぜならプライドが高いから。相手にされないから別れるとか、仕方なく他の男に行くとかは認められない。そんな自分が許せないってことやね。

 あとは世間や知り合いに、結婚に失敗した女と思われるのも我慢ならなかったみたいだ。

 

 勝ち組も大変っすわ。負け組ニートでよかったぜ。断じて本業が探偵などという事実は無い。無いったら無い。

 

 ここで、数枚の写真を取り出し、美鈴さんに見せる。

 

「……まさか、あの人のコレクションですか?」

 

「その通りです。これは都内の貸倉庫内の写真です」

 

 写されているのは、10歳位の少女たちが表紙を飾る違法ポルノ雑誌やビデオ、さらに低年齢モデルのリアルラブドール数体だ。

 完全にギルティである。しかし悲しいかな、俺たちはギルティを回避させなければいけない。

 

「これが達也さんの性癖です。ご存知でしたか?」

 

「……いいえ」

 

 お気の毒(笑)。

 

「信じられないでしょうが事実です。達也さんがあなたとご結婚したのは、(ひとえ)に世間体と出世の為。だから全くヤりたいと思えないあなたを頑張って抱いてきた。達也さんからすれば相当大変だったのではないでしょうか。あなたは完全に趣味ではない」

 

 表情の無い綺麗な顔とは裏腹に、美鈴さんの霊気はどす黒いものが混ざり出している。

 

「しかし、プライドが高くて離婚を選択できそうにない美鈴さんは都合が良かったのです。結婚さえしてしまえば、あとはセックスしなくてもいいと思ったからです。しかし、あなたはそうはならなかった。自分が求められていないという事実を受け入れることができずに、冷たくされてもめげずに誘い続けた。皮肉にもそれが達也さんのあなたに対する嫌悪を肥大化させて、結果的にセックスはより冷たくなっていった。最近では濡らす手間を嫌って潤滑ゼリーを使い、いきなり挿入していたようですね」

 

 白峰さんがぷるってる。

 コンドームを使ってもらったことはないのに、ローションはよく使われてたみたいだから、いろいろ考えちゃうのかもね。ちなみに膣内に使うならローションはあまりよろしくない。親父さんからすれば白峰さんの安全はどうでもよかったんやね。

 一方、美鈴さんに表面上の変化は無い。

 

「当然、セックス以外の夫婦生活もギスギスしたものになっていった。辛かったでしょう。まさか自分がこんな扱いを受けるとは思わなかった。しかしプライドが離婚を認めはしない。そして、あなたの心は限界を迎える」

 

 美鈴さんは特に口を挟まないようだ。

 

「いつしかあなたは達也さんへ復讐することばかり考えるようになった。如何にして達也さんを苦しめるかに思考が囚われ、自分の魅力を認めさせるという当初の目的は重要ではなくなっていった。そこで思いついたのです。精液を使った強姦殺人の偽装を」

 

 疲れた。もう自白してくれんかな。ちょっと訊いてみよう。

 

「もうお話していただけませんか? 自首という形なら多少は有利になります。私たちはその邪魔をしませんよ」

 

 頼む! もう自首してくれ! 早く帰って漬物と白米でへヴンしたいんだ!

 

「……おっしゃっている意味がよく分かりません」

 

 くっそ。そういうめんどいとこがダメなんだよ! 仕方ないから続けるか。はぁ。

 

「そうですか。では続けます。達也さんが言うには、最近のあなたは使用後のコンドームを結んでから捨ててほしいと言っていた。ゴミ箱に精液が垂れるのが気になるからと説明していたようですね。達也さんは不思議がってましたよ。少し前まではそのまま適当に捨てても何も気にしていなかったのに、なぜ急に気にし出したのだろう、と」

 

 チラっと白峰さんを見ると、今一(イマイチ)ピンときていない顔をしている。

 ですよね。あなたは中出しが基本でしたものね。悲しみが深い。ついでに闇も深い。可哀想だから指をすりすりしておこう。

 ん? 白峰さんからもすりすりしてきた。……まぁいいけどよ。

 

 説明を再開する。

 

「その不可解な行動の理由は簡単です。先ほど申し上げた強姦殺人の偽装の為です。あなたは自宅近くの公園を深夜に毎日通る1人の女性に目を付けた。その時間の前に達也さんとセックスをし、眠りについた頃を見計らって、ゴミ箱からコンドームを回収。そして公園に向かい、目を付けていた女性である山本美保さんを包丁で脅し、公衆トイレへと連れ込んだ。その後、刺殺。衣服を乱し、外性器へ達也さんの精液を付け、膣内へはローションを使いつつ、手で押し広げて精液を入れた。これで普通の人間ならば、精液を放った男性が強姦殺人をしたと考えるでしょう」

 

 こちらも闇が深くて悲しいです。

 しかし一番のとばっちりは美保さんである。いきなり知らない女に殺され、○ンコに知らない男(ロリコン)の精液を入れられる。悪夢っすわ。

 さぁここまでバレてんだからもうゲロってくれ。遅漏はダルいだろ? 俺の気持ちも察してくれ。

 

 美鈴さんが(おもむろ)に口を開く。

 

「……私はそんなことしていません。証拠はあるのですか」

 

 絶望した。

 なんでこんなにめんどくさいんだ。いちいち納得しなくても、とりあえず股と財布を開くのが(都合の)いい女である。だから納得しなくてもとりあえず自白してくれ。

 

 しかし美鈴さんに自白の気配は無い。しゃーないなぁ。

 

「『明暗500』『は』『3341』。この意味がお分かりですね」

 

「!」

 

 ようやく美鈴さんの表情が崩れる。

 

「犯行時刻である深夜1時30分頃に、公園の入り口に居るあなたを見た人が居ます」

 

 明暗ナンバーの車の運転手だ。美鈴さんはその車のナンバーをしっかりと目撃している。

 顔を見られた可能性には思い至ったものの、タイミングが合う時や車が完全に通らない場合の少なさ、加えて精液を使った偽装への過信が、慎重な判断と行動を妨げた。

 結果、美鈴さんは一抹の不安を覚えつつも、犯行を続行した。

 その甘えが隙だ。警察の目を誤魔化したいなら甘えちゃいけない。

 ……甘えなくても魂は誤魔化せないけどな!

 

「先ほども申し上げたように、達也さんは真性(しんせい)のロリコンです。被害者のような成人女性と性交するメリットがありません。当然、殺す理由もありません。となると達也さんの精液を入手でき、かつ達也さんを(おとしい)れたい人間が犯人になります。最も妥当なのは、やはり妻である美鈴さん、あなたです」

 

 暫しの沈黙。

 アナログ時計の音がそろそろ耳障りになってきた時、美鈴さんが深い深いクソデカため息をつく。御愁傷様です(笑)。

 

「……そうよ。その通りよ。あの人がいけないんです。いつもいつも……」

 

 えぇ……。

 

 なんか急に愚痴り出した。

 

 どうすんのこれ。

 

 白峰さんを見ると目が合う。

 

──なんとかしてくれ。

 

──無理よ。あなたがなんとかしなさいよ。

 

 まっっったく不毛なアイコンタクトだな! なんとかってどうすればいいんだよ。

 

「ねぇ、弁護士さん。私ってそんなに魅力無いですか? もう29ですけどやっぱり若くないとダメなんですか?」

 

 知らんよ! 人によるんじゃねぇか。くっ、しょーがない。あんまりやりたくないけど言霊(ことだま)モードと、とある念を込めた霊気を使う。

 

「……そんなことないです! 美鈴さんみたいに綺麗な方は見たことがありませんよ。法律さえ無ければ、私だけのものにしたいと思ってしまいます」

 

 俺のやっっすい言葉に美鈴さんがうるうるし出す。

 

 うわぁ。なんだかなぁ。

 

 なんでこうなってるかっていうと、霊気に「めっちゃかわいいやん! ちょーヤりてぇぜ!」って念を込めて、美鈴さんの魂にぶっこんだからだ。

 人生の大半でこういう扱いを受けてきたのに、最近は全くそんなの無かったからね。いや、正確には達也さん以外からはあったと思うんだけど、視野狭窄(しやきょうさく)(おちい)っていたせいで気づけなかった。

 そんなわけで美鈴さんは自信を失っていた。

 で、俺はその傷につけ込んだわけだ。

 

 これで粉々になった自信とプライドが少しはマシになったかね?

 

「達也さんより先に貴方に出会いたかった……」

 

 やけにしっとりとした温い息に乗せられた妙齢女性の声……。

 

 なんという破壊力だろうか。まかり間違っても亮と白峰さんには無理やな。痛!

 

 白峰さんが小さい足で蹴りやがった。なんてチビッ子だ!

 

「……美鈴さん。自首しましょう。まだあなたの人生は終わっていません。罪を(つぐな)ってからまた……」

 

 意味深に言葉を切る。勿論、何も考えていない。あ、漬物のことは考えてるな、うん。早く茄子食べたいなぁ。

 

 美鈴さんが熱っぽい目を向けてくる。うわぁ。うわぁ。なんかやだなぁ。

 

「……分かりました。自首します」

 

 初めからそう言えばいいんだよ!

 

「ですが最後にひとつお願いがあります」

 

 え゛。なんやこいつ。確かに証拠は少ないから自白しないとなるとめんどくさいけど、だからってこれ以上俺がなんかしてやるのは、それこそめんどくさい。

 

「一晩だけ私を──」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(≖_≖)

 

 

 

 次の日、美鈴さんは自首をしたわ。それはいいのだけれど、問題は美鈴さんのお願いよ!

 

「本当に何もしていないの!?」

 

 虹色法律事務所で、もう何度目になるか分からない質問を結城君に投げ掛ける。だって全く信用できないんだもの。

 

「してないですよ。するわけないじゃないですか」

 

「じゃあどうして1日置いたのよ!?」

 

「俺に訊かれても分かりませんよ。いろいろと心の整理をしたかったんじゃないですか?」

 

 うぅ、そんな風に言われると私は何も言えないじゃない。ずるいわ。

 

「これで達也さんの不起訴は堅いんだから、よかったじゃないですか。起訴すらさせないってのは、弁護士の完全勝利ですよ」

 

 そうだけど、そうなんだけど! 

 

 モヤモヤする。でも結城君に教える気が無いならどうしようもない。諦めるしかない。

 

「……はぁ」

 

 ため息が出る。

 結城君は漬物がどうとか呟いている。私のことなんかどうでもよさそうだ。

 

 ふいに頭をポンポンされ、撫でられる。

 

「!」

 

 こうされるのが好きになりかけてる自分が嫌いだ。私は大人なのに……。あ、もうやめちゃうの?

 

「じゃあ、俺はこれでお役御免ですね。黒須さんに『一番良い漬物を頼む』って伝えといてください。では、お疲れ様でした」

 

「……うん、いろいろありがと。お疲れ様……」

 

 結城君が帰ってしまう。早く伝えないと。でも迷惑かな。でも……。

 

 結城君と居ると、なぜか私の心は痛みが弱くなる。不思議な安心感がある。こんな人には今まで逢ったことがない。

 だからもっと側に居たい!

 

「結城君!」

 

 ついキツイ口調になってしまう。こんな経験無いから、どうすればいいかなんて分からない。

 でも行動しないと何も得られない。

 

 結城君が足を止める。

 

 意を決して、言葉を絞り出す。

 

「こ、今度RINEしていい、ですか?!」

 

 声が上擦ってしまった。恥ずかしい。心臓がうるさい。

 

「……いいですけど仕事は寄越さないでくださいね」

 

 よかった。嫌がられたらどうしようかと思った。

 

「分かった! ありが──」

 

「あー! やっと見つけた!」

 

 え? 誰この子?

 

 突然、若くて可愛らしい女の子が事務所に入って来た。なんかどこかで見たことある気がする。

 

「げ、亮。今、仕事中だから駄目だって」

 

「ゆう、昨日も帰って来なかったじゃん。どこに行ってたの!?」

 

 ん? どういうこと……。帰って来なかった? つまり……。

 

 心が急速に冷えていくのが分かる。

 

「結城君」

 

 自分でも信じられないくらい冷たい声が出た。

 

「な、なんですか」

 

「こちらのお嬢さんは?」

 

「えーおさな「妻です!」……」

 

 は? は? は? ふーん。へー。そうなんだ。へー。

 

「昨日は外泊なさっていたのですね。どこにお泊まりになったのですか?」

 

 にっこりと笑いかける。

 

 どうして怯えるの? 私は何も怒ってないわよ?

 

「……ま、漫画喫茶です」

 

 ふっ。そんな嘘を信じるとでも?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「異議ありぃぃ!!!」

 

 ちくしょう!!!

 

 

 

 

 




強姦殺人と監禁レイプをネタにラブコメを書くクズが居るらしい。

真面目な話、読者の皆さんからすると白峰さんのこの設定はどうなのでしょう?
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