【完結】霊能チートのネタバレ事件簿   作:虫野律

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いつもより長い。


トリック・オア・トリック

──満月の夜、魔王の涙を頂く。 怪盗ジョーカー

 

 

 

 

 

 

(((^_^;)

 

 

「うっす。来ちゃ」

 

 俺はインターホンに映された淫乱女を見て、すぐに通話を切った。

 当然だろ。前回はいつもの倍は疲れた。そんなのまたやらせられたら、堪ったもんじゃない。

 

──ぴこんぴぎぃぴぎゃあ!

 

 頭のおかしいRineの通知音が鳴る。

 

──解理(かいり)さんからメッセージが届きました。

 

 無視無視。

 

──解理(かいり)さんからメッセージが届きました。

 

 イラっ。

 

──解理(かいり)さんからメッセージが届きました。

 

 ……。

 

──解理(かいり)さんからメッセージが届きました。

 

 だぁぁあ! もう分かったよ! 出りゃいんだろ出りゃあよ!

 なんだよ! いい大人がメンヘラ彼女みたいなことすんなよ!

 

 玄関のドアを開けると、無表情の据わった目で、スマホを一定リズムでタップするエロい身体をした女が居た。

 こっわ!

 

「!」

 

 こっち見んな。おい止めろ抱きつくな止めろ。胸を押し付けんな。……力つっよ!? 痛い痛い痛い痛い!

 

「……痛い死ぬ」

 

「いいっすよ。ウチの中で死んで」

 

 やかましいわ! 腹黒クソビッチが! 数学の授業をやらせた怨みは向こう3年は忘れないからな!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 10分後、冷静になった俺達はマイルームで向かい合っていた。勿論、飲み物など出さない。そんな気遣いはムカつくのでやるわけがない。

 

「で、何の用だよ」

 

 どうせろくでもないんだろ?

 解理さんが、ジャケットの内ポケットに手を入れる。ただ、ちょっとスーツサイズが合ってないせいで、ぎゅむぎゅむと押し潰されてる……。

 解理さんが俺の視線に気づき、ニンマリと笑う。

 

「な、なんだよ」

 

「逮捕するっすか?」

 

 うっっっざ。

 

「帰れば?」

 

「ふヒヒ、サーセンっす」

 

 そう言ってから、スマホの画面を俺に向けてきた。

 

──満月の夜、魔王の涙を頂く。 怪盗ジョーカー

 

 !?

 

 解理さんが取り出したスマホには、前回と違い、手紙の画像ではなく、何処かの壁に記された文字の画像が表示されている。

 

「流石に知ってるみたいっすね。あの怪盗ジョーカーから犯行予告が届いたんすよ」

 

 い、いや、ちょっと待て。解理さんは捜査一課強行犯係、つまりは殺人事件がメインの人。今回のこれは担当ではないんじゃないか? 

 俺の疑問を察したのか、解理さんが教えてくれた。

 

「本当は捜査三課の担当なんすけど、ウチら一課の課長が結城君を気に入っちゃってて」

 

 嫌な汗が背を伝う。

 マジなんなん? 詰んだの? オワタの?

 

「是非とも、一課の(・・・)懐刀に任せてほしい! て三課のオフィスで啖呵切ったんすよ。ぱねぇっすよね?」

 

 オワタ。人生詰んだんちゃう?

 

「それで、たまたま聞いていた部長が興味を持っちゃったんす」

 

 待って! まだあるの?

 

「すかさずウチが頭脳明晰で高い倫理観を持つ名探偵なんす! てアピールしたら……」

 

 ねぇ? なんでそんなに「いいことしたぜ!」て顔なの? ねぇ? なんで?

 

「部長の鶴の一声、特別捜査本部を設置し、三課と一課の合同で捜査に当たることになったんす!!」

 

 解理さんは爽やかな顔でサムズアップしてる。ぶち○ろしてやろうか!? 俺はしがないニートだっつってんだろうが!

 

「いろいろ言いたいことはあるけどよ……」

 

「うん!」

 

 まずは二ッコニコで嬉しそうにしてる解理さんの頭に優しく手を乗せる。

 

「!」

 

 そしてガシッと解理さんの霊体を掴む。

 

「え、あれ」

 

「一回死んでこい!」

 

 説明しよう!

 俺は生きてる人間の霊体を身体から強引に引っこ抜くことができる! それをやられた奴はショックのあまり、一時的な仮死状態に陥る。なんでも、三途の川でスイカ割りをしたり、水切り合戦をしたりして、遊んで来ることになるらしいのだ!

 

 パタリと解理さんが倒れる。霊体の方も意識を失い薄くなっている。

 よし。今の内にすっぽんぽんに脱がして油性ペンで全身に落書きしてやろう。

 

「ゲヘへへ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 例のブツが展示されてる博物館にやって来た。外堀を固められてるしね。しょーがないね。納得はまっっったくしてないけどな!

 

「お、結城君。お疲れー」

 

「お疲れ様です」

 

 ……。

 

「結城さん、お疲れ様です」

 

「お疲れ様です」

 

 ……。

 

「お疲れー」

 

「お疲れ様です」

 

 ……おい! なんで当たり前のように受け入られてるの!? おかしいだろ!? 日本警察の腐敗だ! 

 

「結城君待っていたよ」

 

 一課の課長がにこやかに迎える。

 ……いやいやいや! お前が一番おかしいからね!? なんなん? バカなの?

 

「って! おい、吉良君! その顔どうしたんだい?」

 

 解理さんの顔にはガーゼがペタペタと張られている。俺が書いた芸術を隠す為だ。

 課長がそれを訝しんだんよ。ざまぁ。

 

「いえ、ちょっと彼氏のプレイが過激で……。でも大丈夫っす」

 

「お、おう」

 

 若干引かれてやんの。あと彼氏言うな。

 館内ではスーツ姿の連中が何やらしている最中だ。ご苦労なこった。

 と、ここで俺達の下へ1人の少年が近づいてきた。

 見た感じ中学生くらいか? 随分場違いだ。この子はいったい……?

 

「あなたが一課の秘密兵器……?」

 

「いいえ。人ちが」

 

「そうっす! どんな事件も秒で解決と豪語する強者っす!」

 

 なぜ解理さんの口はスラスラと虚偽の事実を言えるのだろうか?

 それにしてもこの少年眠そうだな。やる気をまったく感じさせないその顔! とても共感できる。きっといい子に違いない、俺には分かる。 

 

「僕も探偵……」

 

 それだけ言ったら、クルっと反転してフラフラと現場の調査に戻ってしまった。

 

「解理さん、あの子は?」

 

「あの子は三課の課長がウチの課長に対抗して連れてきた子っすね。シャイだけどイイコっすよ。五月雨(さみだれ)(はる)君す」

 

 お、おう。そうか。頭が痛い。

 

 さて、ボチボチ始めますか。でも、もう真相は分かってるんだよねぇ。

 だってさ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 犯人、俺なんだよね。

 

 ことの発端はやっぱり亮だった。

 

 いきなり亮が「トランプやろう! 罰ゲームもありだよ!」と言い出した。

 それで神経衰弱をやったんだけど、亮はまぁ強い。どういう運をしてんのか、初見でも結構当ててくる。しかも一度見たやつは絶対外さない。

 当然完敗した。その時だ。怪盗ジョーカー特集がテレビで流れたんだ。

 

──怪盗ジョーカーの人物像に迫る!

 

──5年前の最初の……。

 

──ジョーカーは今まで誰も傷つけておらず……。

 

──判明しているだけで、72件……。

 

 そしたら亮が、私もこれやってみたい! とはしゃぎ出した。勿論できるわけがないから止めたけど、罰ゲームは「怪盗ジョーカーっぽいことをする」に決まってしまった。

 

 そこで俺は幽体離脱して、霊体になり、マジックペンを持ってフラフラとこの博物館に向かった。

 よっぽど強い霊でないと物質的な影響は与えられない。でも、俺はチート級だから、軽いものなら持てるんだ。結構凄いと思う。

 

 深夜2時。

 通気孔を通り展示スペースへ移動。ご丁寧なことに途中数ヶ所、鉄格子が溶接されてた。

 でも大丈夫! 物理的にはマジックしか影響ないから! それが通る隙間さえあればいいから! てな具合で楽々突破。

 一緒に着いてきた華さんに監視カメラの回線に侵入させて、映像を乱してもらい、準備完了。

 霊体の物理不干渉原則にも例外が少しある。その一つが電子機器。テレビの映像が乱れて、てのが有名だ。

 ま、そんなわけで比較的簡単だから華さんにやらせたんだけど、なんか華さんならもうちょい難易度高いこともいけそうな気がしたよ。

 

 その後、例のブツの近くの壁にマジックで「満月の夜、魔王の涙を頂く。 怪盗ジョーカー」と書いて、任務完了。

 その後、俺のイタズラを見学していた石川さんって幽霊と意気投合して、楽しくお喋りしながら帰ったんだ。

 石川さんと怪盗ネタで盛り上がってちょっと気が緩んだせいか、マジックはどっかに落としたみたい。ま、100均の3本入りのやつだからいっけどね。

 

 帰ってから、俺がやってきたことを亮に教えてやると「すごいすごい」とアホっぽく喜んでた。

 後日、俺の言った通りの予告文がニュースになってるのを見た時は、テンション上がりすぎてコーラを溢してた。俺の部屋で。

 

 と、まぁ今回は完全な自業自得なんよね。マジどうすっかなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「結城君、何か分かったかい?」

 

 一課の課長──根岸幸太郎(ねぎしこうたろう)さんが、期待に満ちた目を向けてきた。

 うん。ヤバイね。何か分かるも何も、全部分かってます。だから帰してくださいって言っても帰してくれなさそうだ。むしろ、逮捕されかねない。

 

「すみません。今回はなかなか難しくて……」

 

 いや、何にも難しくないんだけどね! ものすっっごい簡単なんだけどね!

 

「そうか。結城君でも怪盗ジョーカーは手強いか……」

 

 しょんぼりしてらっしゃる。見た目は高身長、ソース顔のナイスミドルなのに、言動が残念すぎる。

 微妙な空気の俺達の下へ、今度は小太りの中年男性が近づいて来た。パッと見、風呂敷持ってる泥棒がスーツに着られてる感じ。

 誰だこの不審者?

 

「おやおや。これが噂の懐刀君ですか? 手掛かりは見つけましたかな?」

 

「すみません、泥棒の方ですか?」

 

 俺の言葉に周囲の警察官達が吹き出す。汚ない。DNA鑑定的に大丈夫なんかねぇ。

 

「誰がこそ泥顔だ! 失礼なガキだな!」

 

 小汚ない顔を赤くしたおっさんを眺める苦行をこなしている俺に、解理さんが、三課の課長っす、と耳打ちする。

 

「根岸さんよぅ。懐刀がナマクラなら、帰ってもらったらどうだ?」

 

「それを言うのなら、そちらの探偵さんも何も見つけていないではないですか」

 

 なんか2人で口喧嘩始めちゃったよ。何してんだろ。もう帰っていい気がしてきた。

 ところで、課長クラスがこんな現場に居ていいのだろうか? それが一番気になるわ。

 

『結城さん! 大変です!』

 

 華さんが慌てて飛んできた。

 なんだ?

 

『あのマジックが通気孔に落ちてます!』

 

「……え、ガチで?」

 

 華さんが、こくん、と頷く。

 ヤッバ。もし見つかったらかなりめんどくさいことになるよ。ちょっとトイレに行って、サクっと幽体離脱して回収しないと。

 

「話……」

 

 うお! びっくりした。晴さん、気配薄すぎぃ!

 

「どうやら我らが懐刀は名刀のようですなぁ」

 

「違う……」

 

 え、なんかあるんじゃないの?

 

「どういうことだい?」

 

 俺と同じキモチの根岸さんが優しい声音で訊ねる。

 

「今回は不能犯に結果が伴ったような不可能犯罪の可能性が高い……」

 

 ぶわっと嫌な汗が一気に出る。

 何でガチの名探偵呼んでんだよ! 泥棒みたいなナリで意外と優秀じゃねぇか! 良い意味で見かけ倒しとかふざけんな!

 

「……ん? ちょっと分かりづらいな。詳しく教えてくれないかい」

 

 いや、根岸さんマジでイケオジだな。冷静だわ。

 

「この展示会場は監視カメラの映像が乱れた時……二重に施錠された無人の空間だった……」

 

 うん、知ってる。そうだね。

 

「鑑識の人も言ってたよ。カギに何も不審なところはないって……。僕もそう思う……」

 

 でしょうね。触ってすらいないもん。

 

「それにカメラ映像が乱れてたのは……ほんの2、3分……。仮に方法があっても密室を偽装するのは難しい……。カメラが乱れた理由も分からない……」

 

 霊能力無しじゃあ、俺には出来ないわ。

 

「怪しいところ……。壁に書いたにしては凄く普通に書けてる……。大きい字で横だから大変そうなのに、まるで紙に書いたみたい……」

 

 ひぃぃ! そりゃあ、そうでしょうよ!

 俺が霊体でマジックを操作する時は手で持つ感覚じゃなくて、頭の中のイメージをそのまま投影する感じなんだ。つまり、俺が普段、紙に書いている時と同じ文字の形になる。

 この眠たげな少年がそこに気づいたということは……。

 

「だから筆跡鑑定を特に優先してとお願いした……。僕もここの職員の字を書類で調べた……」

 

 うわぁ。やめてよ。やめてよぅ! ヤバイって。優先とかさせないでよ! 何かの間違いで俺の字ってすぐに気づかれたらどうすんだよ!?

 

「でも、ここの人のじゃなかった……。犯人は外部の人間……」

 

 はい。無関係です。ここに来たのは今日で2回目です。だからお家に帰して下さい。 

 

「施錠された部屋が外と繋がっているのは……」

 

 おいやめろてください。変なこと言わないで。

 

「扉と通気孔だけ……。通気孔を調べたら変な物を見つけたって……。多分、どこかの土と黒のインク……」

 

 ひぃぃぃぃ! 何なの君! なんで俺を虐めるの? ニート虐めて楽しいかよ!? 多分その土、俺が外でマジックを落とした時のやつだよ! インクはマジックの蓋が鉄格子に引っ掛かって開いちゃった時のだよ!

 

 晴さんが言い淀む。ここでやっと晴さんの言葉が止まってくれた。

 あ、やっぱまた話出した。もうやだ。

 

「でも、通気孔は鉄格子が溶接されてる……。人は通れない……」

 

 そうそう。だからそこからは目を離そうな?

 

「できるだけ中も調べてもらうつもりだけど……」

 

 死ぬ。やめて。でも、このタイミングでトイレとかおかしいよね。怪しいよね。死ぬ。やっぱり死ぬ。

 

「僕はこれ以上調べても意味ないと思う……。現実的にあり得ない……。超能力でもないと無理……」 

 

 ひぃぃぃぃぃ! かすってる! かすってるからぁ! なんでそんなに柔軟で鋭いの! どんな育ち方したらそうなるんだよ!

 

「それで不能犯と不可能犯罪か。確かに現時点ではそうなんだがね。うーむ」

 

 ざっくり説明すると、不能犯とは「呪いとかで人を殺そうとしても、科学的常識的に考えて不可能だし、実際それで人が死ぬわけないんだから、呪い殺そうとした人は無罪です!」っていうやつね。日本では明文化はされてないけど、刑法学では普通に出てくる。

 一方、不可能犯罪は、普通に考えて無理そうな(・・・)状況とかでの犯罪。こっちは実際に殺人とかの結果が起きてから、言われ出すやつ。密室殺人とかで「あり得ん! ふつー無理なのになんで殺されてんの!?」って時に「不可能犯罪だ!」って言ったりする。

 

「うん。だから不能犯の不可……あれ……?」

 

 !!! 来た! よしよしよしよーし!

 

「何だ!? おい、灯りを点けろ!」

 

 急に電灯が消えたんだ。にやけるのを止められん。間に合ったみたいで何より。ケケケ。

 ジジ、という音がして明るくなる。この展示会場の最奥、魔王の涙展示ケースの横に、でかいピンクダイヤを手にした仮面の人物が……。

 はい。ご本人様ご登場。盛り上がってまいりましたぁー!

 

「! ジョーカー!? クソ! 逃がすな!」

 

 素早い軌道で警察をかわし、そして、え、え、ちょ、跳躍……?

 え、飛びすぎじゃない? パルクールかな……いやいや、やり過ぎだって。そんなレベルじゃないっしょ。

 なんか非人間的変態駆動で男達を翻弄してる。楽しそうですね。

 

「探偵さん!」

 

 やめろ。俺を見て、手を振るな!

 

「女!? 女だったのか!?」

 

「マジっすか!? かっけぇ」

 

 そして、怪盗ジョーカー──変態(駆動)仮面は警察から逃げながらなんか言い出しおった。

 

「私を、追い詰めた、よっと! あなたに免じて、ほいほい、一個で、ほいっと、勘弁して、あげる!」

 

 ひぃぃぃぃぃぃぃぃ! 余計なことを言うな! 

 

「まったね! バイバイ幽日(ゆうひ)君!」

 

 また電灯が消える。

 帰ったか。てか、流石に俺を調べたのね。他の奴の心を覗いたんだろうな。ホントに余計なことしやがってよ!

 

「懐中電灯っす!」

 

 解理さん、意外と優秀だわ。最初に電灯が消えて直った時に、すぐ懐中電灯を探してたもんね。よくこのカオスな状況でそういう行動取れるなぁ。

 

 灯りの先には怪盗ジョーカーは居ない。会場をぐるっと照らしても居ない。天井の電灯が点く。やはり、居ない。

 

「逃げられた……やっぱり不能犯みたいな不可能犯罪……」

 

 少年探偵五月雨晴が呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 遡ること2時間。

 俺は念の為、というか、妙な胸騒ぎがしたから博物館に居た全員の記憶を見たんだ。そしたらさ、居たんだよね。ご本人様が。

 怪盗ジョーカーは、博物館に事務員として潜入してた女だった。偽名と特殊メイクばりの変装で本来の姿は隠しているみたいだったけど、俺には無意味だね。だって彼女の中に本当の姿の記憶があるんだもん。

 彼女の素っぴんは極めて無個性だ。個性がないのが個性みたいな奴。個性、つまり欠点らしい欠点もないから美人ではあるんだけど、なんつーか華がない。うん、そんな女だった。

 ただ、容姿的にはそんな感じなんだけど、中身は個性的過ぎて引くレベルだった。彼女──石川桜子(いしかわさくらこ)さんは超能力者だった。うん、初めて見たよ。

 でも、俺は凄く納得したよ。いつも思ってたんだ。探偵ものに出てくる怪盗ってあり得ないよなって。だって現代であんなに目立つことして、特定されないわけないし、毎回毎回超人的な逃走をかますなんて無理やて。おかしいわ。

 そんなアニメみたいな活躍をしてる怪盗ジョーカー。異常過ぎる。それこそ不能犯のような不可能犯罪犯だよ。

 でもさ、高レベルの超能力者ならそれができる。念力に瞬間移動、テレパシー。桜子さんがどこまで可能かは正確には分からないけど、記憶を見た感じ怪盗ごっこをやるには困らなそうだった。

 しかも、だ。都合が良いことに桜子さんも元々『魔王の涙』──1対のでかいピンクダイヤを狙ってたらしいんだ。ただし、決行はもう少し後のつもりみたいだった。

 超能力でサクっと盗めばいいのになんでそんなことしてんのかっていうと、盗んでもそんなに困らせないで済むか調べてたんだってさ。変わってるわ。

 

 で、だ。俺は桜子さんにメッセージを送った。

 やり方は、まず幽体離脱して、桜子さんに取り憑く。桜子さんの意識が切れないようにしつつ、身体の操作権だけ奪って喋る。

 そんだけ。簡単だろ?

 

「はじめまして、怪盗石川桜子さん」

 

 桜子さんの精神はすっごくびっくりしてたんだけど、恐ろしいことに念力で俺を追い出そうとしてきた。

 だが、甘い。こちとらガッチガチのチート霊能力者よ。確かに桜子さんも相当ヤバイけど、憑依が決まってしまえば完全に俺の土俵。負けるわけない。

 

「無駄な抵抗はやめろ。お前の大事なあの子達がどうなってもいいのか?」

 

 なんか桜子さん、世界各地の孤児院に匿名で寄付しまくってるみたい。完全に怪盗義賊ごっこマンである。あ、ウーマンか。レディも可だな。

 ここら辺から桜子さんは大人しくなったから、俺も大分楽だったよ。

 

「悪いようにはしない。俺の要求を飲んでくれればいいだけだ」

 

 そんな感じで俺は桜子さんに、早く! とにかく早く盗むようにお願いしたんだ。快諾してくれたんだけど、何時やるかは具体的には指示してなかった。俺に繋がる証拠を見つけられる前にやってくれて、本当に良かったよ。

 

 ま! そんな訳で今回も一件落着……ではないよなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「結城君どういうことだい!?」

 

「いや、うん。企業秘密です」

 

 この後めちゃくちゃ事情聴取した。

 あと、『魔王の涙』は2つで一つの作品なんだけど、片方は桜子さんの言う通り残してあった。そのせいで、怪盗ジョーカーに唯一対抗出来た探偵として、三課にまで変な誤解が広まってしまった。もうおしまいだぁ。

 

『すまぬなぁ。ワシの子孫が迷惑掛けた』

 

 石川さん……。

 

 なんてーか知らないけど時代劇で見るような服を着た幽霊が慰めてくれた。

 

 ……。

 

「ところで、下のお名前は……?」

 

『前にぃ五右衛門てぇ言うたじゃねぇか』

 

 血は争えねぇなぁ!

 

 

 

 




新キャラ出スギィ!
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