「ダンブルドア校長、それは?」
「これはの、健全な肉体を作る魔法薬じゃよセブルス」
校長が私に見せたのは、どうみてもプロテインだった。
「お言葉ですが校長、それはどうみても」
「セブルス。健全なる魂は健全なる肉体に宿る。
お主も一口どうじゃ? 百味ビーンズフレーバーもいいが、やはりプレーンが一番じゃな」
そう言って、誰も頼んでもいないのに上半身を裸にしてポーズを取り出す上司。
その鍛えられ過ぎた肉体が担う杖は、魔法を出すよりは、鈍器として殴るのに適していた。
そもそもあのニワトコの杖は、芯を鉛と入れ替えてからダンベル代わりにしか使われてない。
実戦で重さ15kgの杖が生み出す破壊力を語るボディビルダーが、高名な魔法学校の校長とはとてもでは無いが思えない。
ヴォルデモートの死の呪文など、この男のフロントダブルバイセップスポーズの前では効きそうにもない。
「筋肉は良いぞ?
ケルベロスは目を背けるし、女性は目を輝かせる。
セブルスよ、お主が学生時代に筋肉に目覚めていたのなら、きっとモテモテだったじゃろうて」
研修という名目で、他の学校長達とフィリピンあたりで豪遊して来た男は、灼熱の太陽の様なキラキラとした目をして、南国で日焼けしてきた肌にオイルを塗りながら鏡の前でポーズを取って、写真を撮っていた。
私がボディビルダーだったら、もしかするとリリーと…。
いや、ジェームズはボディビルダーを目指そうとして、リリーに止められていたな。
シリウスやダンブルドアが秘密の守人に選ばれなかった理由は、案外校長もブラック家もボディビルダーであった事に起因するのかも知れない。
では、あのネズミ男はボディビルとは無縁だったから選ばれたのか?
…その可能性は否定しきれない。
残り一人の狼男も、わざと筋肉を落としているだけで、放っておくとすぐにムキムキになる体質だった。
狼男だから仕方ないねと言うあいつは、陰キャぶっても本質は隠し切れない陽キャだと、体質レベルでアピールしていた。
ヒョロヒョロの狼男ではサマにならないのはわかる。
本人も筋肉には興味が無いとは言っていた。
だが、あの男は脱狼薬のビンにプロテインを入れていた事がある。
つまりダウトだ。
あの時は、一瞬で全てのプロテインが分解・再構築されて、飢えた目で
確か先代の暴れ柳をへし折ったのはその時だった。
「ハリー。あの子は期待のビルダーになるぞ?」
『筋肉が付きやすい体質』と書いて、選ばれし予言の子と読むとは知らなかった。
だからその話題はスルーさせて貰うことにした。
「セブルス、次の魔法薬の授業はワシにさせて貰えんかの」
「それは私では不足という意味で?」
魔法薬よりも闇の魔術に対する防衛術を教えようと思った事が無いかと言われれば微妙だが、それでも魔法薬については、それなりの自負があった。
あのダンブルドアが相手では形無しかも知れないが。
「いやいや、それは考え過ぎというものじゃよ。
ところでセブルス、コカトリスの卵を37度で2分間温めるとどうなるかわかるかの?」
M.O.M.分類で最上級であろうコカトリス。
極めて希少かつ危険であるが、この私が知らないものと考えるのは早計だ。
「蛇が抱卵しなければ不完全な状態として誕生し、未熟児のまま死産するか、少し大きなだけの鶏として生まれます。
ですが大蛇が朝を告げる声をパーセルマウスが──────」
「流石じゃよセブルス。
ホグワーツは良い教師に恵まれておる。
いやいや、まさにその通りかも知れん。
じゃがそうでありながら、大事なのはそこではないのじゃよセブルス」
では何だと言うのだ。
「温泉卵は、最高のタンパク質。
生卵よりも筋肉が喜びの声を上げるのじゃ。
蛇の声よりも先に、筋肉の声に耳を傾けなければ、闇に傾いてしまう。
愛じゃよセブルス。
大切なのは筋肉への愛じゃ」
そう言いながらサイドチェストポーズを取る校長を見て、私は仕事を辞めようと思った。
プロテイン
プロテイン
プロテイん