「全選手入場です!!!!」
リー・ジョーダンのアナウンスと共に、炎のゴブレットスクワット杯が開催された。
リー・ジョーダン自身もかなりのマッチョマンだが、それでも選手にはなれないというのが、今大会の層の厚さを物語っている。
ゴブレットスクワットとは、ゴブリン達により開発された、最強のヒップアップエクササイズである。
分かりやすく言えば、ウェイトを持って行うスクワットだ。
炎のゴブレット杯は、魔法界のいくつかの学校が合同で行うマッスルショーであった。
如何に美しいフォームでどれだけ重いウェイトを持ち、それでいて完璧なゴブレットスクワットが行えるか。
それを競い、時には死人も出る危険な競技だ。
「まず紹介するのは説明不要の人気選手。
ストラング?いやストロング!!
自身が宣伝を務めるパッドを付けるだけの腹筋ギアの効果がまさにここにある!!ビクトール・クラム!!」
爽やかなイケメンが、腹に付けるだけで筋肉が増えるという、薄い蜂の巣型の器具を片手に爽やかに手を振る。
彼の販売する高額商品『シックスパワー』を買ったという生徒と、女子生徒達が熱い声援を送った。
「ボーンとマトン…もといボーバトン校の最強ヒロイン。
遺伝子レベルで完璧な顔とキュートなお尻だけでなく、天才のエイトパックを魅せつけてくれ、フラー・イザベル・デラクール!!」
ボーバトンではプロテインは使われない。
ナチュラルフードのみでの筋肉こそ至高とされる。
校長である女性ビルダーのカリスマ、マダム・マクシームは、ノープロテイン・ノーステロイドで、その鋼鉄の肉体を作り出したのだ。
鋼の錬金術師とは、バランスの良い料理を徹底する彼女の二つ名である。
そんな学校からやって来たのは、天然素材のまま完成品である美女。
美女がスクワットする姿を思い浮かべた男子生徒達が熱狂し、そんな男子を見て冷めた視線を送る女子生徒もいれば、フラーの腹筋に憧れるストイックな女子達は、突き抜ける様な視線を送っている。
フラーは狂乱と嫉妬と羨望の眼差しには、もはや慣れたように軽く手を振り、手に持った重りを落とす。
ヴィーラの血を引く彼女が持っていた重りは、約20kg。
地面に凄まじい音を立てて激突し、観客を一瞬で黙らせた。
「3人目は、名前を言ってはいけないあの人!!
ヴォルデモート!!」
Booooo!!
会場のムードが一気に悪化した。
魔法界でステロイドが流行る原因になったヴォルデモートは、近年ではかなり叩かれている。
ステロイドの材料が枯渇して、ターバンの中に隠れられそうなほどの貧弱モヤシになっていたヴォルデモートは、この日新作ステロイドを片手に復活を宣言した。
「最後は、衣服の重さは30kg!! 杖に新たな重りを仕込んで30kg!! 更に重力魔法で140kg!! 合計200kgでスクワットに挑むはこの男!!
ミスターダンベル!! ダンブーーールドーアッッ!!!!」
「「「「「D.A.!! D.A.!! D.A.!!」」」」」
ホグワーツ魔法魔術学校の学生と教師が熱いコールを連唱する。
「おいおい待ってくれ、5人目だって?
予定に無いぜ、なになに?
おいおい嘘だろ?
5人目は──────デカァァァァァいッ説明不要!! ルビウス・ハグリッド!!」
ハリーポッターの名前と間違えて、ハグリッドの名前を投票させてしまったドビーは、誤魔化すように下手な口笛を吹いたが、ハーマイオニーに悪い子悪い子されてしまった。
もうマルフォイ家のプロテイン工場から開放されたというのに、ハリーポッター推しなところは変わらないドビーだが、彼のおっちょこちょいもまだまだ変わらない。
戦いは白熱した。
まず最初にクラムがスクワットする際に持つ重りであるシックスパワーが軽過ぎるという指摘が入った。
クラムは待っていたかのように笑うと、自身がプロデュースする新作トレーニングアイテムと、同じくプロデュースしているプロテインを両手と頭上に乗せながら、先程と変わらない速度でスクワットを続けた。
フラー・デラクールは、身体の向きやポーズを変えて、色々な角度からスクワットを見せるサービスをしていたが、途中で余裕が無くなって来たのか、ヴィーラの力を部分開放した。
腕と太腿が僅かに変化したが、そんな事はルール違反でも何でもない。
しかし、ヴォルデモート卿はそんなフラーに対してルール違反ではないかと抗議した。
そうやって印象操作をしようとする闇の帝王に対してブーイングが入ったが、他ならぬフラー自身がそれを止めた。
再びヴィーラの力を封印してスクワットを続けたが、彼女が一番最初に脱落した。
しかしその健闘は全ての観客によって称賛されたのだ。
ヴォルデモート卿に真っ先に抗議した
初めて口にしたプロテインの味は、初恋フレーバーだった。
筋肉が多幸感で埋め作られる。
ビルと見つめ合い、フラーはニコリと微笑んだ。
これで今後は最高のトレーニング環境が手に入るのだから。
「わたし2人分トレーニングするから大丈夫よ」
筋肉エリートな家族にコンプレックスを持つロンは、それを見て少し落ち込んだが、ハーマイオニーに「私はあなたの筋肉を信じてるわ、これからよ」と言われて気を取り直していた。
ハーマイオニー・グレンジャーもまた、ウィーズリージムを愛する女子であった。
その後、クラムがギブアップして、ハグリッドも動きが鈍くなった。
ハグリッドの動きが鈍ったのは疲れたからではない。
ヴォルデモートの手下達が連れて来た、ドラゴン(フランス産マッスル種)に意識が飛んでしまっていた。
手には1トンを超える重りを、全ての指の隙間に挟んだままだが、それでも既にスクワットは続けていなかった。
それは流石に失格だ。
例え、思い出したようにドラゴンの足を抱き抱えて持ち上げてスクワットを再開していても、ステージから降りた時点で、そのスコアは0となる。
ついに
ヴォルデモートはスクワットを続けながら妨害呪文を唱えるが、鍛えられた肉体には魔法は通用しない。
だが、ダンブルドアは服を脱いだ。
凄まじい総重量の服は、床を痛めるが如き威力で落ちた。
「こっこれは、2年前にクィレル教授が魅せた、超重量ターバン落としのリスペクト!?
ダンブルドア先生、貴方っていう人は!!
ヴォルデモート卿にシンジュク大会で敗北して引退した、マグル式トレーニーの雄、クィレル教授の敵討ちだーっ!!」
リー・ジョーダンは涙を流しながら絶叫した。
「「「「「「「D.A.!! D.A.!! D.A.!! D.A.!! D.A.!!!!」」」」」」」
会場中に響き渡る
此処に
マクゴナガルやムーディさえ腕を振り叫ぶ会場には、もはや制止する者などいようはずもない。
バチバチとプラズマさえ生み出すオーラを出し、髪を逆立てたダンブルドア。
彼は唐突に降ってきた隕石を両腕で掴むと、そのままスクワットを始めたのだ。
隕石を頭上に掲げながらスクワットするダンブルドアと、会場を埋め尽くすD.A.コール。
「ダンブルドア、お前がナンバーワンだ」
闇の帝王もこれを見ては、サレンダーする他は無かった。
「優勝は!! アルバーーース、ダンブルドーーーア」
炎のゴブレットスクワット杯は、歓喜の中閉幕した。