ダンベルドア先生と秘密のプロテイン   作:蕎麦饂飩

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元気爆発薬の作り方
『アルギニン+シトルリン+亜鉛+鉄分+カフェイン+硫化プロペニル』


ダンベルドアと師の秘法

 ダンブルドアが現役を引退する!?

 日刊予言者新聞のスキーターの記事は、どうせいつものゴシップだと切り捨てるには、あまりに衝撃的に過ぎた。

 

 ダンブルドアと言えば、過度なダイエットと高負荷なトレーニングを全魔法族に強制しようとしたグリンデルバルドと、闇の魔術(ステロイド)を世に広めたヴォルデモートを打ち倒した英雄だ。

 魔法界の運命を賭けた筋肉デスマッチで、ダンブルドアが優勝しなければ、今の穏やかな魔法界は存在していなかった。

 

 また何かの危機が起きようと、ダンブルドアなら何とかしてくれると多くの者が思っていたし、コネと根回しでMMM(マジカルマッスルマジェスタ)のトップに居座るコーネリウス・ファッジは、タプタプのお腹で人気が低い小物だった。

 

 多くの者がファッジよりも、ダンブルドアの方がMMM総帥に相応しいと思っていたし、ファッジ本人もその自覚から、自身の地位を脅かすものとして、ダンブルドアを恐れていた。

 

 

 ファッジは自分で物事を自由に動かせないお飾りの総帥である事に不満があった。

 ダンブルドアは目の上のたんこぶであったし、屋敷しもべ妖精を働かせる事で、圧倒的なコストパフォーマンスを誇るプロテインシェアNo.1のフォイフォイプロテインを販売する、ルシウスも態度がデカい。

 最近適正賃金を屋敷しもべ妖精に与え始めて値上がりしたのだが、それでも未だグラムあたりの値段でフォイフォイプロテインよりも安いプロテインなど存在しないのだ。

 

 だが、どうやってもダンブルドアやルシウスよりも強い態度には出られない。

 貧弱な脂肪しかない肉体では、筋肉で覆われた相手には無意識な怯えから尻込みしてしまうのだ。

 

 ならばどうすればいいのか?

 そうダンブルドアに聞いた時、ミスターダンベルは答えた。

 最初は何も考えずに鍛えれば良い。

 その内に、筋肉と会話する筋禅が可能となる。

 そして筋肉の名前と意思を知り、一体として成長するだけで良いと。

 

「嘘だ、信じられない。そんな簡単に言われても、できる訳が無い。

それはダンブルドアだからこそ出来た事だ」

 

 ファッジはそう否定した。

 

 

「筋肉は全ての者に存在するのじゃよ。

魔法族にもマグルにも巨人にも、全ての者に筋肉がある。

筋肉は世界共通の言語じゃからな」

 

 ゴーストに筋肉が無い事は、ファッジは空気を読んで突っ込まなかった。

 

 そんなファッジに、ダンブルドアはある男達を引き合わせた。

 トム・リドルの生きた日記帳を元に生産された、『私は筋肉』という、「疲れは忘れろ(オブリビエイト)時間の無駄だ、取り敢えず熱くなれよ」とチャーミングスマイル賞の常連ギルデロイ・ロックハートが毎日応援してくれる本。

 それを著者本人が素敵なスマイルをしたまま持って来た。

 

「一人目は、我がホグワーツ魔法魔術学校の教授じゃ」

 

 その次にやって来たのは、科学トレーニングに打ち込み過ぎた結果、闇の魔術(ステロイド)に傾倒した経験を持つセブルス・スネイプ。

 

「二人目も、我がホグワーツ魔法魔術学校の教授じゃ」

 

 そして、最後にやって来たのは、マグル学を修める内に、マグルトレーニングにのめり込んだ気弱なマッチョ。

 ヴォルデモートにシンジュク大会で負けて以来、更に自信が無さげだが、ニンニクで血流を良くするやり方を証明するべく、リベンジに燃える熱さを秘めている。

 血液を溶かす作用があるニンニクを、どうにかして吸血鬼にも使えるようにしたいと、ロックハートの本『バンパイアとバッチリ船旅』に出て来たバンパイアのモデル、その妹と共同研究を行っている。

 マグル式トレーニングとニンニクサプリの雄。

 その名はクィリナス・クィレル。

 

「三人目も、我がホグワーツ魔法魔術学校の教授じゃ」

 

 2セットやってギリギリのところに3セットを組み込むDADA(Do And Do Another)のやり方は、ここでも発揮されていた。

 

 3人のトレーナーをファッジに与えたダンブルドアは、現役ビルダーを引退して、後進の育成に専念すると告げた。

 

 ファッジは、面倒な事を押し付けられたと思った。

 忙しくない訳でもないのに、余った時間はヘトヘトになるまで追い込まれるのだ。

 いや、ヘトヘトになるその先まで追い詰められている。

 

 やってられるかと思った事もあるし、言った事もある。

 だが、それでもトレーニングは続いた。

 ジャンクフードなんてもうずっと食べて無いし、お酒なんて全く飲ませて貰えなかった。

 

 もう懲り懲りだ。

 そんな思いは、少しずつ薄れていった。

 少しずつ、少しずつだったが、身体が軽く感じるようになった来た。

 不思議な事に、後少しの頑張りが必要な時に、そのエネルギーを絞り出すハードルが低くなって来たのだ。

 

    体が軽い…。

 

 

  こんな幸せな気持ちでトレーニングなんて初めてだ…

 

 

       もう何も恐くない━━━!

 

 

 ファッジは変わった。

 暇があれば身体を動かし、暇があれば身体を動かした。

 今ではジャンクフードを暴食しても、それ以上のエネルギー消費が可能な肉体に仕上がっている。

 それを見る教授陣(トレーナー)達も満足そうだ。

 彼は久しぶりにダンブルドアにあった。

 

「ファッジ、見違えたの」

 

「ようやく気が付いた。

筋肉そのものは魔法じゃない。

筋肉を鍛える喜びが魔法だと」

 

 ファッジは彼なりの結論を見付けた。

 

 

 そして、ファッジは全魔法界統一ボディービル選手権を開催した。

 そして、負けた。

 一年間、ひたすらに鍛え上げ続けたのに負けた。

 優勝したのは、ハリー・ポッター。

 努力した天才だった。

 

 だが、ファッジは晴れやかな気持ちだった。

 やれる事はやった。

 まだ上に行く途中であるならば、まだ先がある。

 悔しさが無い訳でも無い、強がりが無い訳でも無い。

 それでも、筋肉は裏切らない。

 何時だって裏切るのは自分で、筋肉は裏切られる被害者だから。

 

 

 ファッジは一人の参加者として専念する為に、ルーファス・スクリムジョールにMMM総帥の座を譲った。

 

 スクリムジョールなら、精力的にボディービル大会や各種イベントを開催して、運営者として魔法界を引き上げてくれると確信して。

 

 結局、スクリムジョールも自分が参加者側になりたくて10年後辞任する事になるが、その時代にはスネイプ教授と実家から筋肉科学を学んだドラコ・マルフォイが登場している。

 

 それから時が過ぎた。

 

 大会の優勝以降、トップを譲ることのなかったハリー・ポッターと、トレーニー達を全力で支援するドラコ・マルフォイ。

 彼らがいる限り魔法界は安泰だ。

 

 

 それから更に時が過ぎた。

 

 ハリーはクィディッチにおいても、自慢の筋肉で大活躍した。

 ブラッジャーなど当たっても痛くはなく、スニッチは一睨みで青くなって静止する。

 もはやハリーには敵はいない。

 その強靭な握力が無ければ振り落とされるという、特注の箒と共にチームの勝利に貢献している。

 

 

 ロンはクィレルと共にファッジを後ろ盾にマグル界に乗り出して、魔法の危険性は筋肉でどうにかなると、マグルの不安と劣等感を解す旅を続けた。

 マグル出身の妻がいる事が彼の強みにもなっている。

 唯一の悩みは、健康的なバランスの良い食事しか食卓に並ばない事だ。

 これはマーリンの髭。

 

 ハーマイオニーは、歯並びと筋力の引き出し方を研究して、センセーションを引き起こし、義妹や義兄の嫁と共にウィーズリージムの広告塔になっている。

 マグル界では、彼女達のインスタグラムはとても人気がある。

 魔法界でも、マグル学のインスタグラムは必修科目になった。

 

 ネビル・ロングボトムは、マッチョになって一発逆転という陰キャへの希望となった。

 聖マンゴ病院でリハビリの先生をやっている。

 

 ルーピンは、ついに適度な細マッチョである事を諦め、プロテインに手を出すようになった。

 結果、プロテインの大量摂取が外に種を増やす衝動を抑え、己の肉体の筋肉細胞を増やす衝動を引き起こすのみに作り変える事で、狼人間としての衝動を抑える事を突き止め、今世紀で新たに噛まれた者は存在しなくなり、噛み付きにより生まれる新狼人間は自然に世界から姿を消した。

 

 ハグリッドは、一時期過渡なトレーニングをやり過ぎて体脂肪率が1%になってしまっていた。

 痩せていると普通に爽やかではあったが、不健康という事で、再び体脂肪率を回復した。

 

 ヴォルデモートは、最後までステロイドを止めることは無かった。

 しかし、彼は宇宙から飛来する巨大隕石を打ち砕く為に、ありったけのステロイドを使い、飛び立って人知れず世界を救った。

 

 

 

 それから長い長い時が過ぎた。

 

 ダンブルドアという一人の選手と、一人の教育者により支えられてきた時代はとっくに様変わりした。

 

 ダンブルドアの周りには、教え子達とその子供達がいる。

 

 ダンブルドアが一人でやらなければならない事など、もうどこにもない。

 

 既に未来は若者達に開かれた。

 

「おお、そこにいるのはハリーかな」

 

 そう問われた少年ではなく、その隣にいる巨漢が答えた。

 

「ダンブルドア先生、それは僕の息子です。

ハリーは僕ですよ」

 

「そうか、時が経つのは早いものじゃ」

 

 霞む視界に映るのは、いずれもスーツをパツパツに着たマッスル達。

 ダンブルドアがかつてグリンデルバルドと願った未来は現在(そこ)にあった。

 

 いずれ来たるマグル界との衝突も、筋肉と筋肉と筋肉が解決した。

 誰もが笑顔で筋肉への厳しくも優しい愛(ワークアウト&プロテイン)を分かち合う世界。

 そんな夢見た世界が現実(そこ)にあった。

 

「そろそろお迎えが来たようじゃ。

忘れるでない、大切なのは愛じゃ────」

 

 

 

 

 アルバス・ダンブルドア。

 伝説がまだ存在する時代に生まれた、最後の伝説。

 彼は世界(筋肉)を救い、世界(筋肉)を育て、世界(筋肉)を託した。

 享年135歳。

 その魂は天に飛翔した。

 

 

 その筋肉そのものである肉体が朽ちようと、その意志は永遠に消える事なく、不死鳥の如く永久に、騎士の如く高潔に謳われ続ける。

 

 その理念は筋肉(愛)。

 秘密に覆われたものではなく、誰もが持ち得るもの。

 秘法でありながら、誰もが最初から持っているもの。

 

 始まりはシンプルに、ダンベルとプロテインがあればいい。

 そして終わりもまた、ダンベルとプロテインなのだ。

 

 筋肉は有限であるが、筋トレは無限。

 全ては愛のなせる業である。

 

 世界中のトレーニー達の永遠の師匠として、その理念は語られ続ける。

 

 

 そう、師の秘法として。

 

 

 

 

 ダンベルドアと秘密のプロテイン(完)




シビル・トレーニーというネタも浮かんだが、蛇足になるので終わる。
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