平グモ&楽ちゃん!GO!<両取り戦国平定ルート編> 作:カメル~ン
堺の町に住む、若き松永久秀は、妻が駆け落ちしていなくなったことで鬱になり、友人の『道(どう)さん』の家へ転がり込んで1年も引きこもっていた。
ある日、そんな自分を心配する、周りの人間が画策した強引なお見合いが、商業都市・堺の大商人、武野紹鴎(たけのじょうおう)の家で、知人の大店の魚問屋の倅である田中与四郎と共に行われた。
久秀の相手にはこの家の娘で、数年前から顔見知りの可愛い楽ちゃん。
そして…田中与四郎には……トンデモ・バツ2出戻り娘の平グモちゃんということに…。
平グモちゃんは、無理やり出戻り即見合いということで、父ちゃん、ふざけんな。やってられるかと紹鴎と大喧嘩&大立ち回り。
久秀は、自分の相手ではないのに、斜め上な感覚・感性のそんな平グモちゃんに強くひかれてしまった。
お見合いは…最終的に4人散歩して…解散終了。
---数日経過。
そして…、今、お見合いの返事をするために、再び、武野紹鴎の家を訪れていた。
5人が和室の一部屋にいる。
前回、平グモちゃんと強引なお見合いをさせられていた、前座扱いの田中与四郎は平グモちゃんからすでに縁談を拒絶されていた。
そのあとに真打ちとして、紹鴎は久秀に返事を迫っていた。紹鴎も数年前から、道さんとともに久秀を何かと気にかけて面倒を見ていた。そして、堺の大商人である、自分のこれほどの好意を袖にすれば、堺にもいられなくなるというのは、久秀にも分かるはず。それもあって、最後は久秀も『お受けします』と言ってくれるだろうと考えていた。
ところが…。
「申し訳ありませんが、この度の縁談、お断り申し上げたく……」
紹鴎は絶句した。
特に楽ちゃんは数年前から、家を訪れていた久秀をずっと内心好き好きと慕って、ついて回っていたのだ。待ちに待っていた言葉ではなかったことに衝撃を受けていた。
久秀の断りの言葉に、愛娘のその表情も横目で見つつ、紹鴎は、断ればどうなるか分かっているのなと脅しをかける。しかし、久秀は首を横に降る。自分ひとりなら、お好きなようにしろと。
紹鴎も娘のことや、やはり目をかけていた久秀の為をあり、ここは引けない。
「好きにしろというのなら…楽と結婚させ……、おまけに平グモも付けてやろうか?」
紹鴎は、まさか久秀がこの縁談を断ってくるとは予想せず、なんとか縁談をまとめようと混乱したのもあって突拍子の無いことを言い出した。
きっぱり断ろうと決めていた久秀だが……えっ?…気になってる、平グモちゃん…も……?
久秀は、ついに考え直し、言い出そうとしていた、あくまでも『お断り』の言葉をぐっと飲み込んだ。
「父ちゃん、何言ってんの?!」
平グモちゃんはこいつ、本気かよ?おまけなのかよ、私?と驚愕の表情で父親の紹鴎をみる。
楽ちゃんは…うふふ、うふふ…と…内心を全く読み取れない笑顔で左右に体全体が揺れていた…。
久秀は、謝罪の手を付くため、下を向きかけて目を畳へ落としていたが、体ごと目線も起こす。
そして、紹鴎へ改めて姿勢を正し向きなおって、紹鴎へ目を一度合わせるとはっきりと言った。
「この…ご縁談、受けさせていただきたく…よろしくお願いいたします」
久秀は、手を畳に付けて平伏する。
「「えーーー?」」
平グモちゃんと楽ちゃんの驚愕の声がハモって聞こえた。紹鴎は自分で言い出したこともあり引っ込みがつかない混沌とした表情であった。同席の田中与四郎は…内心好意を寄せていた楽ちゃんを取られ…ガックリとかわいそうな目と表情をしていた…。
ここに、平グモ&楽ちゃん!両取り戦国平定ルートは開幕する。
堺、長屋--
久秀一人に、嫁二人が部屋にいる。
ここは、久秀が居候している道さんの部屋。見合いの席から即、二人は久秀に付いてきていた。
楽ちゃんは、嫁として付いていくのは当然ですと。
そして、平グモちゃんはというと…こんな狂った提案をする、父ちゃんの家になんか居られるか!久ちゃんや楽ちゃんといる方がまだましだ!と、縁談に納得していないが、紹鴎宅から飛び出てきていたのだ。
楽ちゃんは、早くも嫁らしく、来て早々、ご近所へのあいさつや、部屋の掃除、近づく夕餉の準備と忙しく動いていた。
一方、平グモちゃんは部屋に大の字でふて寝していた…。
久秀もそれに背を向けるように『これからどうするか…』と考えながら目をつぶって横になっていた。
すっかり夕方になり、辺りが赤く深く染まってきだしたころ、道さんが鯛を持って部屋へ帰ってきた。
「やぁやぁ、これはえらいことになっているねぇ」
「お世話になります。おかえりなさいませ」
鯛までありがとうございますと、それに笑顔で答える楽ちゃん。
久秀は背を向けたまま、黙ってそれを受け流していた。
平グモちゃんは不動の大の字状態で寝たままだ…やはり大物かも…。
道さんは、すでに平グモ&楽ちゃん両娶りの話を聞いているらしい。その顔は完全に面白がっていた。
そして間もなく久秀の弟の松永長頼も鯛を持って部屋へやってくる。弟の松永長頼は近畿の大名、三好家に武将として仕えている。すこし距離があるが、播磨から船で堺まで豆に引きこもっていた兄の様子を見に来ていた。
「おう、兄さん!おめでとう!」
久秀は、道さんはともかく、長頼まで知ってるのか?ちょっと早すぎないかと勘繰る…。
すると、背中ごしから声が聞こえた。
「父ちゃんだな…。完全に逃げ道を塞ぐ気かよ…。」
どうやら紹鴎が、いろいろ手を回して、平グモちゃん込みでも結婚の規制事実として広めているらしい。内容はどうゆう形なんだろうか…。
「大方、楽ちゃん嫁、私、妾ぐらい…か?意地になった父ちゃんならやりかねないね…。」
父親の大商人としての実力は知っている平グモちゃんは、紹鴎がその気になれば手段を選ばないことを良く知っていた。
そんなことを横で聞きながら、親しい二人の『俺が結婚を決めたこと』への笑顔に、素直に喜んでいいのか不安になる久秀だった。
「で、ヒデは、これからどういう形で生きていくんだ?」
道さんは自然な感じで、笑顔ながら痛いところをズバリと聞いてきた。長頼も、楽ちゃんと話していた顔をこちらに向けている。もちろん楽ちゃんも。
背中越しの平グモちゃんは…関心としてどうなんだろ?と久秀はふと思った。
わずかに沈黙するが、久秀は横になっていた体を起こす。すぐそばに楽ちゃんが、いつの間にか入れてくれていたのか置かれていた…そのお茶の椀を取り、少しそれを飲んでからポツリポツリと話出す。
「…俺も……家族が出来た以上は…」
この段階で、平グモちゃんの大の字で目をつぶったままの表情がピクン!となり、楽ちゃんの笑顔が『パァァーと輝いている!!!』のが…目に入るがそのまま話を続ける。
「…出来た以上は……働きます!」
「「「おおーーーーーー!」」」
平グモちゃん以外からは、喜びの声が上がった。
ふと目線を感じたので下方を見ると、仰向けの平グモちゃんとチラりと目があった。それは、何する気?と訴えてる気がした…。目線を前に戻し、具体案を披露する。
「とりあえず…、以前やっていた油を扱って商いをしようかと。」
目の合った楽ちゃんが小さく早く2、3度頷く。
「とりあえず、資金やお店の手配と難しいところから始めないといけませんが、みんなよろしく。」
弟の長頼は早くもいくらか投資する旨の話を初めてくれた。道さんは人手は当てがあるよと。まあ、資金も少し出させてもらおうかなとも。楽ちゃんも…何かと悦に入って策謀を巡らせているような笑顔を向けてくれていた…。
しかし…そこで、むくりと起き上がってきた平グモちゃんが不満顔で一言。
「久ちゃん…。ちょっと、つまんないなー。天下もついでに取るぐらい言っちゃいおうよ。いろいろ教えてあげちゃうよ?」
な、なんという無茶振りか…と、久秀は平グモちゃんを見ていたが、どうも…本気で言っている模様…。
「じゃあ、そのうちに…いろいろ教えて貰おう…かな…?」
と久秀は思わず、平グモちゃんに返してしてしまった。すると、平グモちゃんは、ぱっと機嫌を直してくれた。
「おっ、いいね!それぐらいでないと、人生面白くないよ?」
とニコニコとしていた…。
その晩は鯛を焼いて、久秀らはワイワイと過ごすのだった。
宴は終わると、この部屋の主であるにも関わらず、道さんは、別の女のところで寝るよと言い残し、長頼も兄さん、また!と共に去って行った。
残された三人…そして初夜。
しかし、早々と、平グモちゃんは言う。
「まだ私、そんな気分じゃないよ?久ちゃんのことよく知らないし」
そういって一番に寝てしまった…しかも大の字。やはり、大物だなぁ…。
久秀も考える。今は他人の部屋に居候な上、結婚式もあげてない。本能全開で好き勝手にやってる場合じゃないよな…自嘲しないとな。楽ちゃんには当面、普通に寝ようねと言おうとした久秀だった。
「楽ちゃん、俺は…」
しかし、楽ちゃんは違った…。この娘は…精神的なモノが違うんだ…!久秀は全然そのことに気付いていなかったが…。
「…私は…、喜んで…(ぽっ)」
いろいろと想像しているのか、楽ちゃんは頬を染めている…。
え?何に、喜んで? …久秀は、深く考えず…とりあえず聞き流すことに…。
「楽ちゃん、俺は疲れたから…もう寝ようね。楽ちゃんは平グモちゃんの横で寝て。俺は土間の近くで横になるよ。じゃあ、おやすみ。」
「…おやすみなさい。」
楽ちゃんの返事が非常に残念そうだったことは言うまでもない。
この2日後…、ひと月後に結婚式をまとめて紹鴎宅で開くと有無を言わせない紹鴎から知らせがきた。
平グモちゃん曰く…まとめてって…父ちゃん、どんだけやっつけなんだよ…と。
さらに3日後の朝…紹鴎宅から遣いが道さんの長屋部屋へきた。その遣いは久秀らを堺の町中に連れて行き、一つの店の前で止まった。暖簾も出ているし、すでに営業中の店なのだろう。
こじんまりしているが、人通りも悪くない、良い構えの店だ。すると、一緒に付いてきていた楽ちゃんが、久秀に嬉しそうに話しかけてきた。
「これが、久秀さんの新しいお店ですよ」
楽ちゃんは嬉しそうな顔で、久秀の袖を引き、店の方へと招く。
久秀はまだ、独自で資金や、人手を集め始めたばかりだった…が、えっ?どうなってるの?状態だった。招く合間に楽ちゃんは後ろに残る面々の方向をちらりと見る。
その久秀と楽ちゃんの様子を見ながら平グモちゃんが、だれも気付かない小声でボソリと呟いていた…。
「楽ちゃん、やるね♪…本妻はあくまでも私…ということかな?」
静かに女の戦いも?…始まろうとしていた。
通り中央から数歩歩きだし、店の入口が近づく。
久秀は、今、気が付いた。店前の暖簾等には『楽』という字が大きく刻まれていた…。微妙に背中に寒いものが走るのは気のせいかな…。久秀はこの…危険な臭いのする難しい雰囲気については考えないことにした。
ついに、久秀はお店、『楽』をここ堺に開く!
(某女史による策謀により開かされたとは言わない…)
つづく
2014年3月23日 投稿