【参加者募集中】読者参加型SS スーパーロボット大戦 無限戦争 作:ダス・ライヒ
皇帝ラインハルトの首を巡っての各勢力の代表者たちによる乱戦にて、正義の帝国にもう勝機は無いと見たバウムガルデンは、敗北を想定した計画であった
相手が帝国再建委員会とワルキューレ、アルシエルだけなら勝利の可能性は高かったが、アガサ騎士団とメイソン騎士団が突如として攻撃を開始し、戦況は混乱。更に両騎士団は最高戦力を投入しており、積年の恨みもあってか士気も高く、その圧倒的戦闘力を前に、親衛隊と正義の軍団は大損害を被り、これ以上戦えば全滅は確実であった。バウムガルデンは再編を図るために撤退を決断し、生き延びた配下の者たちに撤退命令を出した。
この撤退は、主君である皇帝ラインハルトと大帝国軍の将兵等は含まれていない。正義の軍団と親衛隊の生き延びた者のみが撤退を許される。味方諸とも攻撃を始めた主君に対し、遂にバウムガルデンは見限ることを決意したようだ。
『聞こえるか東条武夫。我らの勝機は皆無と判断。直ちにプランBを実行せよ』
「フン、傲慢が過ぎたか。了解した、少し待っていろ」
勇者と戦っていた武夫はバウムガルデンから伝達された撤退命令を聞き、不安定要素である目前の相手の足止めを行う。武夫もこの撤退作戦の事を知っていたようだ。
「貴様、何をする気だ!?」
「貴様には関係ない! この戦いも、そろそろお開きだ!」
「なにっ!? うぉぉぉッ!!」
交戦中の勇者に問われた武夫は、それに答えることなく彼が騎乗しているライオン型の飛行ユニットを破壊した。ライオン型の飛行ユニットを破壊されては、勇者は飛行することも出来ず、地面に落下していく。それを確認した武夫は軍刀を鞘に戻し、落下する勇者を追撃することなく集結ポイントへと向かう。
「プランB発令だ! 総員、直ちに実行しろ!」
「まさか、俺たちは負けたのか!? 勝てる戦いじゃなかったのか!?」
正義の軍団のみならず、バウムガルデンの私兵同然だった親衛隊も当然ながら熟知していた。命令が下れば、直ぐに撤退の準備を始める。何処へ逃げるかは、正義の軍団と幹部以外は知らないようだが、集結場所は聞かされていたようだ。
この命令が来たことで、親衛隊の将兵等は敗北を知り、数名が動揺を覚えた。撤退は行われたが、北部から侵攻してくるワルキューレのVA部隊にその隙を突かれ、クルスとハーレムアーミーが戦線を勝手に放棄して撤退した事も重なり、尚も数十名が死に続けていた。
「おや、撤退ですか? なら僕も行きましょう。でっ、何処に撤退するんです?」
「はぁ。戦線を放棄した挙句、どの面を下げて戻って来たか。この愚か者め」
「貴様…! 戦線を放棄しておいてなんだその態度は!?」
北部で撤退中の親衛隊の被害が増す中、その原因を作り出した張本人であるクルス来夏が、何食わぬ顔でハーレムジェネラルとお気に入りたちを伴ってバウムガルデンの元へ戻って来た。これにバウムガルデンは呆れた表情をしながら溜め息をつき、背後から何処へ撤退するのかと問うクルスに対し、振り返ることなく眉をひそめる。
これを代弁するかのように、マースルが激怒するが、バウムガルデンは無言で手を翳して抑え、質問に答えることなくミレイナの事を問う。
「貴公か。あのお気に入りの守護天使はどうした?」
珍しく機嫌を悪くしたバウムガルデンの反応からして、皇帝ラインハルトと同じくクルスも撤退するメンバーに含まれていなかった。そればかりか、撤退すら聞かされていなかったようだ。
バウムガルデンからの問いにクルスは、自分が悪いのではなく、ミレイナの所為で撤退したと答えた。
「あぁ、あの三次元女ですか。捨てましたよ。せっかく見付けて強化してやったのに、敵にこの僕を傷付けることを許したんですよ。まぁ、罰として自爆させましたがね。でも、数年もすれば劣化して、皺くちゃになって醜くなる。全く、これだから三次元女は身も心も醜いったらありゃしない。やはり女性は、二次元こそが至高ですよ」
命令に従ったミレイナを散々扱き下ろした挙句、リアルの女性ですら扱き下ろすクルスに、バウムガルデンは失望どころか、呆れ果てていた。
「失望を通り越して呆れたわ。元より取り上げるつもりであったが、少しばかり踏ん張っていれば、褒美として貴公のお気に入り全員を実体化させようかと思った物を。クラウンにYAP、死んだ正義の軍団の者たちは役割を果たしたと言うのに、貴公と言う奴は…!」
「僕の花嫁たちを実体化? それは素晴らしい。次の機会にも…」
「貴公、次があると思ったか? 貴公に
ギリギリまで耐えていれば、ハーレムアーミーのお気に入りを実体化させるとバウムガルデンが呆れながら口にすると、クルスは自分の都合の良い所だけを聴き取り、次の機会であればと自信気に言った。
無論、北部一帯を敵に明け渡した挙句、ここまで逃げて来たクルスに次の機会を与えるバウムガルデンではない。彼はクルスに能力を与えて転生させた神に怒りを覚えつつも、考える価値も無いと切り捨て、その能力を取り合えるために近付く。
「はっ? 何を言ってるんです? ハーレムアーミーは僕の物ですよ? 誰が渡す…ッ!?」
「貴公の人形遊びはこれまでよ! 貴公の能力、余の軍団の復活の為、貰い受ける!」
自分の物にすると言うバウムガルデンに対し、クルスは絶対に渡さないと後退りしながら口答えするが、相手は有無を言わさずに右手を腹に突っ込み、ハーレムアーミーこと
クルスよりマイ・アーミーを取り上げた後に腕を引き抜けば、隣に立っていたハーレムジェネラルとその他のお気に入りたちを含め、ハーレムアーミーは残らず消滅する。能力を取り上げられたクルスは尻もちを着いて倒れる中、周囲を見間渡して自分を守る者たちが消えてなくなったことに気付き、激しく動揺する。
「えっ!? あぁぁっ、僕の花嫁たちが!? か、返してくれ! それは僕の物なんだぞ!!」
「フン、能力に依存し過ぎたようだな。それにこれも見るが良い。貴公の真の姿よ」
「ひっ!? ワァァァッ! なんだこの姿は!? も、戻してくれぇ!! こ、こんな醜い男なんて、僕じゃない! 理想の女の子たちに愛される僕じゃないんだ!!」
返せと喚くクルスに対し、バウムガルデンは更なる残酷な事実を告げ、懐から出した鏡に彼の姿を映す。その姿は小柄で肥満体系の中年の日本人男性であり、元の美形で手足も長かったクルスとは程遠い容姿であった。これがクルスの正体であり、前世の姿だ。
その姿を見たクルスは更に追い込まれ、元の転生した姿に戻してくれと泣きじゃくりながら懇願するが、バウムガルデンはそれが本来の姿であると相手を説き伏せた。
「何を言う、貴公の本来の姿では無いか。外面だけ綺麗したところで、心まで美しくなるよう心身ともに己を磨かねば、醜いままぞ。それに気付かず、与えられた能力を己の力と勘違いし、生まれ変わっても心を改めなかった己の結果が、その姿よ」
「そ、そんなァ…! ぼ、僕にはハーレムアーミーが無ければ…それが無ければ主人公になれないんだ! 何でもする! あんたの命令は何でも聞くから! だから返して! お願い!!」
能力に依存し、それを自分の力と勘違いして増長した自分を恥じろと説き、転生と同時に心を改めなかった結果であると告げるバウムガルテンに、前世の姿に戻されたクルスは恥じらう事もせず、ただハーレムアーミーを返せと喚くばかりであった。それに呆れ果てたバウムガルデンは、当然返すことなく突き放す。
「諄いぞ! ここまで能力を育て上げたことに免じ、生かしておいてやろう。今度は己の力だけで生きて行くのだな。直ちに余の前から消え失せよ! 余の気が変わらぬうちにな!」
今のクルスはバウムガルデンにとって殺す価値も無い人間だった。自ら手を下す価値も無いと判断したバウムガルデンに、凄まじい剣幕で消え失せろと言われたクルスは泣きじゃくりながら西の方へと逃げていく。マースルも殺す価値も無いと思っており、その逃げるクルスの後姿を嘲笑っていた。
「た、助けて! 殺される! 殺される!!」
泣き喚き、助けを求めて逃げ惑うクルスであるが、誰も助けはしない。そればかりか、味方であるはずの大帝国軍の兵士に銃を向けられる。
「おっ!? 貴様、なんで戦わない!? 武器を持て! 戦うんだ!!」
「な、なんで!? 僕は民間人だ! 戦えないんだ! 保護してくれぇ!」
「戦えないだと!? 我々正義の帝国に戦えぬ男など要らん! 食料と場所の無駄だ! 死ねぃ!!」
兵士に呼び止めれたクルスは、民間人だから保護してくれと請うが、男尊女卑である正義の帝国こと大帝国に戦わない男の居場所どころか、生存権は無かった。大帝国軍の兵士からも狙われることになったクルスは、彼らからも逃げる羽目になる。
「ワァァァ! なんで!? お前ら軍隊なのか!? 民間人を殺すなんて犯罪だぞ!?」
「我々正義の帝国に、弱い男の居場所なんて無いんだよ! ましてやお前のような奴が、なんで今日まで生きてたか不思議だぜ! いい加減に死ねってんだ!」
弱い男の居場所など無い。
その言葉は、今のクルスに当てはまる物であった。転生してからは自分が強者の立場となり、弱者の立場など考えもしなかったが、今のクルスの立場は後者の弱者だ。直ぐにクルスは自分目掛けて飛んでくる銃弾から逃れつつ、メイソン騎士団の方へと逃げる。
「た、助かった…!」
追っていた大帝国軍の兵士らは、メイソン騎士団が保有するゾイドであるレッドホーンの攻撃を受けて吹き飛ばされる。
「あ、ありがとうございます! ど、どうか助け…っ!?」
これに安心し、近付いて来る弓兵を含める歩兵らに感謝したが、彼らもまたクルスを助けようなどとせず、ボウガンの矢を彼の胸に撃ち込んだ。胸を矢で射られたクルスは固い地面の上に横たわり、血反吐を吐き、どうして射られたのかと動揺する。
「ど、どうして…? 僕は民間人…」
「気を付けた方が良いぜ。爆弾を隠してる可能性があるからな」
「この国の男の民間人は、みんな便衣兵だからな。気を付けなきゃ、一緒に心中されちまうぜ」
「女子供にも気を付けろ。そいつ等も爆弾を隠してるかもしれんからな。それに死体にも迂闊に触れるな。爆弾が仕掛けられてるかもしれん」
「全く、何が正義の帝国よ。悪の帝国じゃねぇか。俺たちを送る前に、街ごと吹っ飛ばしちまえば良いもんよ!」
とどめの二射目を撃ち込まれたクルスは、まだ息があったが、メイソン騎士団が民間人を殺す理由は直ぐに分かった。どうやら、保護を求めるフリをして自爆する民間人が多いらしく、かなりの被害が出ている為、メイソン騎士団は無差別攻撃を行っているようだ。
それを知ったクルスは、納得して息を引き取った。その死体は埋葬されず、歩兵隊の後にやって来たグレイズ等のMSの手により、他の死体と一緒に乱雑に脇へと退かされた。
かつては数万の軍勢を召還する能力を持つ男にしては、呆気ないどころか惨い死に様であった。もっとも、与えられた力で己に酔い痴れ、他者を見下して蔑んできたクルスには、相応しい死とも言える。
「少しばかり未成熟ではあるが、余の心の中で生きる二百万の復活は可能だ。試しに、余の頭脳と手足たちを復活させてみよう」
クルスよりハーレムアーミーことマイ・アーミーを取り上げたバウムガルデンは、能力がまだ未成熟なままに気付くが、それでもかつての自分の軍隊を復活させるには十分であると認識し、試しに自分の記憶の中で生きている重鎮らを思い浮かべつつ、能力を発動する。
マイ・アーミーは使用者の魔力量が高ければ高いほど、召喚できる
召喚された十名の男たちはどれも武人であり、バウムガルデン以上の高身長であった。無論、この男たちは当の昔に死んでおり、バウムガルデンの記憶と心の中で生きている存在にすぎない。だが、それでも自身の野望に殉じた男たちとの再会を喜ぶ。
「おぉ、四百年ぶりの再会だ…! アイヒンガー、バッヘム、ボイムラー、バインル、ビンターナーゲル、コリント、デーナー、アイヒマン、ザルデルン、ツムシュテーク、四百年前のままだ! 実に久しい、久しいぞ貴様たち…!」
決して忘れなかった重鎮らの復活に、バウムガルデンは全員の顔を見ながらそれぞれの名を口にし、再会を喜んだ。隣に立つマースルも合流した親衛隊の者たちと共に、自分らの野望への完遂が一歩前進したと確信して笑みを浮かべる。
「
「我らがこの命、皇帝陛下の為に!」
「だが、全員は当の昔にイヴ人共によって殺された。この者らの妻子らはイヴ人共に凌辱され、彼奴等の子を身籠らされた。その血統を受け継ぐ者は、今のイヴ人の中に何人居ようか」
かつて共に戦った者たちの復活に喜ぶバウムガルデンであるが、全員が自分の記憶の中を実体化させただけだ。それに気付き、バウムガルデンは今の彼らの子孫が、自分らを滅ぼしたイヴ人であることを嘆いた。
「では、次は将軍に体長たちを含めるかつての余の軍団の復活だ。この者らと同様、余の記憶の中を実体化させるのみ」
記憶の中の旧友らの再会を喜べず、悲しげな表情を見せるバウムガルデンは、イヴ人に滅ぼされる前の自分の軍隊を復活させる。
バウムガルデンの記憶の中で生きる二百万の軍隊は、黒い軍服と甲冑を身に纏った屈強な男たちであった。手にしている銃火器はマスケット銃だが、それが小さく見えるほど歩兵が大柄だ。騎兵が駆る軍馬も大柄で、それを駆る騎兵もかなりの重量があるランスを片手で振り回すほどに大きい。まさに最強の軍隊と言えるが、その装備では戦列歩兵時代の軍隊だ。
「大帝国軍の陣営より高魔力反応! こ、これは…!?」
「奴ら、自爆する気か!? ハシュマルはまだ再起動できんのか!?」
「い、いえ…! 召喚です! に、二百万の使い魔の反応が!」
その規模、クルスの数百倍以上。一挙に現れた二百万の軍勢の出現に、皇帝ラインハルトの首を巡って争うワルキューレに帝国再建委員会、アガサ騎士団、メイソン騎士団の面々は思わず戦闘を止めてしまう。これにスミス等はただ驚愕し、思わず対応が遅れた。
マイ・アーミーにより復活したかつての自分の軍隊を見て、バウムガルデンは自分の帝国が復活したも同然と宣言する。
「実に壮大なり! 余の帝国は復活したと過言ではない! 撤退中の親衛隊と正義の軍団の残存兵力に告げる! 余とその軍団が殿を務める! 各自はこの世界より直ちに脱出し、再起に備えよ! 繰り返す、撤退し、再起に備えよ!!」
自分の軍隊と自身で殿を務めると宣言すれば、親衛隊の残余らの士気は高くなり、次元転送装置がある場所へと撤退し始める。思わぬ大群の出現に、相手が戦列歩兵レベルの軍隊にも関わらず、首都の深部に進行していたワルキューレと乱戦状態の三勢力は混乱し、押し戻された。
無論、正義の帝国である大帝国軍と、その皇帝であるラインハルトは含まれていない。それに気付かず、反撃を行う四百年前のバウムガルデンの軍隊を見て、救援が来たと喜んでいた。
「敵の増援だと!? 何処から来たと言うのだ!?」
「ゲヘヘヘッ! 流石バウムガルデンだぜ! 俺の為に援軍を召還しやがった! これで形勢は逆転だァ!!」
テッカマンドッグ、結芽、アガサ・ライガーと交戦しながら皇帝ラインハルトの首を狙うグエンスも、味方を含める敵軍を押し戻す復活した軍隊に気付き、地上へ視線を向ける。自分が当に捨てられたと気付かず、ラインハルトは勝利を確信して歓喜する。
「シルバリー合金が!? 一体ずつの魔力は計り知れんと言うのか!?」
更に古い装備でも、防御力では遥かに凌駕する甲冑を身に纏うアガサやメイソンの両騎士団も応戦するも、バウムガルデンの魔力で召喚された騎兵と歩兵等は、その装甲を容易く貫いてしまう。四百年の時を得てこの世界に復活した軍隊は、バウムガルデンによって更なる強化を受けており、機動兵器ですら止められず、撃破されるばかりだ。
「ち、地上の味方が!?」
『このままでは全滅するぞ! 援護を!』
「っ、空からも来るのか!?」
地上の味方が蹂躙されるのを見て、救援に向かおうとした小型飛行ゾイドのプテラスに乗る者たちと魔導騎士たちであったが、空からもバウムガルデンが新たに召喚した四十万の航空魔導士等も来ており、強力な術式で次々と空の敵軍も蹂躙し始める。
「敵の増援だと!? くそっ、こいつ等! どっから湧いて出て来た!?」
当然ながらキャシャーンレディとバナナと交戦するターニャの方にも来ており、その強大な術式による攻撃に晒される。ターニャは四方八方より来る魔弾攻撃を防ぎ、キャシャーンレディとバナナは冷静に対処し、使い魔である航空魔導士等を撃破していく。
「新手なの? どうやら、強力な召喚士が居る見たいね」
『クソっ、今度はなんだ!?』
機鬼神マゴートを使役するモンジェルナ侯爵とアンティーク・ギア・カオス・ジャイアントとなったアルシエルの方には、巨人と化したバウムガルデンの軍隊の兵士六名が迫っていた。当然の如く、六体の巨人もバウムガルデンが新たに召喚した使い魔である。向かってくる六体の巨人に対し、両名は交戦するのを止めて対処する。
ここだけでなく、首都各地で戦う者たちも召喚された使い魔の軍隊による攻撃に晒されており、その対応に追われていた。ニコレにアモン、パールらを初めとするガンダムチームに押されていたハイゲールを駆るバルトルトは、使い魔の軍隊の援護を受けて撤退する。アードリアンも交戦しているレッドホークに押され気味であったが、軍隊の救援を受けて撤退に成功した。
「正義の軍団で生き延びたのは、貴公とマースルのみか」
「他が弱過ぎたんだ。それで、まだやらせる気か?」
「フン、十分な程に働いてくれて感謝の言葉しかない。それに免じ、報酬としてこれを貴公に渡す。貴公の祖先に侵攻を掛けるのだろ? なれば軍隊が必要になるな」
最後に勇者を振り切って撤退した武夫が本陣までくれば、バウムガルデンは協力した見返りとして手切れ金である物を渡す。バウムガルデンは武夫が祖先の故郷がある世界に侵攻すると知り、その手段を渡す条件に協力させていたのだ。ある物はアタッシュケースの中に入っており、それを受け取った武夫は空けて中身を確認した後、ふたを閉めて立ち上がる。
「まさかあの日本の恥の戯言を実現させるとはな。まぁ、俺は祖先の国を再建させるのが目的だ。実現できればどんな物でも構わん」
「もう二度と会うことは無いだろう。達者でな」
「そちらも、無事に家に帰れると良いな」
「元よりそのつもりよ」
手段を手に入れた武夫は別れの挨拶を交わした後に次元転移装置へと入り、別の世界へと転送された。
「余は少し野暮用を済ませてから向かう。先に行け」
「はっ!」
バウムガルデンはマースルと幹部らを先に転送させた後、皇帝ラインハルトの元へ向かった。
「おっ、来たかバウムガルデン! お前が召喚した軍隊が、奴らを圧倒しているぞ! これもお前のおかげなんだろ!? 流石はバウムガルデンだ!」
当に見限られているにも気付かず、ラインハルトは召喚された軍隊が自分をコケにしていた者たちが苦戦していることに大いに喜び、バウムガルデンに感謝の言葉を告げる。
「さぁ、これから反撃開始だ! 共に
侵攻軍に反撃を行い、世界帝国を建国しようというラインハルトに対し、バウムガルデンは答えることなく、見限った事を告げる。
「余の存在を敵に悟らせぬための陽動、誠に大義であった。報酬として、
「な、何を言ってるんだ…? お前は俺の部下だろ? なら言う通りにしろよ。殺されたいのか?」
自分を見限ったバウムガルデンの言葉に理解できないラインハルトは脅しをかけるが、相手は怯えるどころか、嘲笑うかのような表情を見せて続ける。
「お主は良い道化であったぞ。お主を世に生み出し、ここまで歪んだ人間に育て上げた両親に感謝せんとな。余の帰還の為、働いてくれたことも感謝しておるぞ」
「お前ェ…! 俺を、俺を騙したのかァ!?」
「そうだとも。余がお主を騙していた。余りにも信じ過ぎて、笑いを堪えるのに必死だったわ。己の耳に心地よい事ばかりを囁く者こそ、真に警戒すべき相手だと言うことを理解しておらんようだな」
その言葉で、バウムガルデンに対する殺意は芽生えた。直ぐに殺意を込めた拳を自分を嘲笑う目で見るバウムガルデンにぶつけようと振り下ろすも、常人なら跡形も無く消えるような拳は、容易く左手で受け止められてしまった。
「なっ!? なんでだァ!? お前は俺より弱いはずなのにィ!!」
「やれやれ、お主もクラウンやPAY、クルスと変わらんな。与えられた力を己の物と誤解しておる。まぁ、余の脱出の為の時間稼ぎをしてもらわなくてはな…!」
自分の攻撃を容易く受け止めるバウムガルデンに対し、ラインハルトは激しく動揺する。これにバウムガルデンは彼の腹に右手を突っ込み、膨大な力を与える。
「うっ!? ウゴォォォ!? な、なんだこれァ!? 身体が、身体がァァァッ!?」
「お主が欲した力よ。その力を存分に振るい、余の脱出を援護するが良い。余の脱出後は、好きに暴れるが良い。この世界が崩壊し、その身を滅ぼすまでな」
「アヒャヒャッ! 力だ! 力が溢れ出て来るぞォ! チートだ! 無敵だ! 俺は最強だァァァ!!」
バウムガルデンが脱出するため、力を与えられたラインハルトの身体は膨張し、能力を暴走させたクラウンと同じく巨大な怪物となり、内から溢れ出る力に支配された。
「ヒヒヒッ! もうどうでも良い…! こんな俺の思い通りにならない世界なんて壊してやる…! 俺の気に入らない奴や物、全部! 全部だ! 何もかもぶっ壊してやるッ!!」
湧き出る怒りと力に支配され、巨大な怪物と化したラインハルトは暴走し、自分の気に入らない物全てを破壊すべく、無差別攻撃を開始した。
「では、頼んだぞ。それがお主の最期の務めだ。存分に暴れるが良い」
暴走するラインハルトに向け、バウムガルデンは脱出の為にそこから離れ、次元転移装置の方へと戻って行った。
バウムガルデンが取り上げた能力で復活させた十名の名前、募集しようかな。
次回からは大決戦だぜぇ!