【参加者募集中】読者参加型SS スーパーロボット大戦 無限戦争 作:ダス・ライヒ
「なんで、なんで死なねぇんだよ!? 親父ィ!!」
「貴様、何を言っている!?」
海上でテノジア軍の多数のウオディックと交戦しつつ、スパルタン・ルシファーと死闘を演じていたターニャは、相手の異常さに翻弄されていた。
全身ボロボロで血塗れのルシファーであるが、戦闘継続の為に何らかの薬物が投与されているのか、未だ疲れを見せていない。その副作用なのか、ルシファーは幻覚を見ており、ターニャを自分が憎む相手だと思って猛攻を続けている。
ミニョルアーマーには着用者の戦闘意欲を上げるため、幻覚剤を混ぜ込んだ興奮剤投与機能があるようだ。その幻覚剤は敵を着用者のもっとも嫌悪する対象にするようで、ターニャの姿はルシファーが最も嫌悪している父親になっているようだ。
「俺が、俺が殺したはずだ! なんで、なんで生きてるんだァ!?」
敵を自分が一番嫌悪している父親に見えているルシファーは怒りで自分の痛みを忘れ、ターニャに攻撃を続けている。興奮剤の効果が切れるか、死ぬまでターニャを狙い続けるだろう。
「スパルタンのミニョルアーマーに、こんな機能があるとは!?」
スパルタンが登場する作品を知るターニャは、ミニョルアーマーに自分の知らない機能が搭載されていることに驚いていた。もっとも、それは羽翼正義やその背後に居るヴィンデル・マウザーの命で搭載された物だが、今のターニャはそれを知らない。
「死ねぇ! 死ねェェェッ!!」
相手が死ぬまで攻撃を続けるルシファーの猛攻に、ターニャは防御に徹するしかない。そんなターニャの背中を、狙う狙撃者が居た。スパルタン・クロウであり、大型スナイパーライフルの二脚を展開してファイテックスを身に纏うターニャの背中を狙っていた。
「風速ならび湿気も問題なし。相手はトチ狂った奴のおかげで止まっている。撃つなら今だ」
狙撃には絶好の状況で、ターニャはクロウの狙撃には警戒しているようだが、ルシファーの猛攻でそれどころではない。そんな絶好の機会を逃さまいと、スコープの照準に対象を捉え、引き金に指を掛けたクロウであったが、ターニャを狙うもう一人の存在が居た。
「こいつを倒せば…」
「駄目だ。それは俺の獲物だ」
「っ!?」
それは背後に立っており、クロウは獲物を捕らえたスコープから目を離して拳銃を向けた。銃口の先に居たのは、ターニャを狙うガルム・マッドアイであった。背後に立って獲物を取るなというガルムに、クロウは拳銃の引き金を引いて三発ほど発砲する。だが、ガルムが身に着けるアーマーに弾かれる。
「クソっ、俺としたことが!」
「狙撃に集中し過ぎたな。背後の警戒を怠った狙撃手は、終わりだ」
拳銃の銃弾が効かないと判断すれば、大型狙撃銃を持って逃げるクロウであったが、ガルムが逃すことなく追い、ブレードやブラスターを使うことなく強烈な蹴りを食らわせた。
「ぐへぁ!?」
その蹴りはシールドを貫けるほど強力であり、それで蹴られ、壁に激突したクロウの手足はあらぬ方向に折れた。全身骨折であるが、クロウは羽翼元帥に知らせずにミニョルアーマーにナノマシンを仕込んでおり、大事には至っていない。それでも、完全に回復するには数週間を要するが。
「さて、奴なら死ねるな」
クロウを戦闘不能に追い込んだガルムは、ルシファーの猛攻を受け続けるターニャの姿を見て、自分が追い求める死がそこにあると悟り、その高度まで浮遊した。
ターニャを狙うのはガルムだけではない。あのテノジアの最強戦士であるダリュン・ヴァフリズも狙っているのだ。
「あれか! 幼子の皮を被った怪物は!!」
ルシファーと交戦するターニャを見付けたダリュンは、そこへ全力で向かう。先客であるルシファーが居るが、先に倒してしまえば良いだけだ。それを理解しているダリュンは闘気を纏わせた槍の矛先をルシファーへ向け、そこに向かって速度を上げた。
「死ねぇ! 死ねぇやァァァッ!?」
自分の父親に見えるターニャを殺すのに夢中なルシファーは、背後から全速力で迫るダリュンに気付かず、闘気を纏う槍の矛先にアーマーごと身体を貫かれた。
「な、なんだ!?」
執拗なまで自分に攻撃を続けていたルシファーがバラバラになったことに、ターニャは驚きの声を上げた。ダリュンの速度が速過ぎ、その衝撃でルシファーはアーマーごと砕かれたのだ。肉片となったルシファーの物が海上へと落ちていく中、ダリュンはその場で止まり、警戒するターニャに視線を向ける。
「幼子と言う情報であるが、背丈が二メートルはあるな。その鎧で背を伸ばしているのか」
「あ、新しい敵か!」
ルシファーを文字通りに粉砕したダリュンは、ターニャを見て写真とは違うこと驚きながらも、ファイテックスの所為で身長が伸びていると判断する。新しい敵と判断したターニャは、右腕のガントレットから高周波ブレードを展開し、自分に視線を向けるターニャに斬りかかった。常人では既に切り裂かれるほどの速さであるが、ダリュンは人知を超えた存在であるためにそれを見切り、柄を短く持った槍で突き刺してくる。
「やはり能力者を送って来たか!」
繰り出さる突きを躱しつつ、ターニャはダリュンと交戦を開始する。だが、ターニャを狙うのはダリュンだけではない。ガルムもターニャを見付ければ、射線上に味方であるはずのダリュンが居るにもかかわらず、即座にブラスターを発砲した。
「貴様、やはり…!」
「そいつは俺の獲物だ。そいつと戦うのであれば、お前も殺す!」
「そうか。なれば、お前とも集ってやろう!」
「お前たち、何を!?」
自分ごと発砲したことをダリュンに問われたガルムは、ターニャが自分の獲物であると告げ、戦うのであれば殺すとブラスターを発砲した。これにダリュンも、ガルムとも戦う覚悟を決め、撃ち続けられるブラスターを避けながらターニャとも交戦する。これにターニャが驚くも、二人は無視しながら戦闘を続ける。
「フハハハッ! 悪党どもめ! この正義の化身たるスパルタン・デラックスマンが皆殺してやる!!」
「クソっ、今度はスパルタンがお出ましか!」
ダリュンやガルムのみならず、自分のことを正義の化身と宣うあのスパルタン・デラックスマンまでもが、ターニャを殺しに来た。放たれる内蔵ビームを交戦中の両者と避けつつランチャーを撃つが、デラックスマンはルシファーとは比べ物にならないほど強く、シールドで防ぎながら向かってくる。
「俺の邪魔をするか!」
「お前は奴より強いが、こいつは譲らんぞ!」
「ほざけ悪党ども! 貴様ら残らず殺してくれる!」
「クソっ、存在Xめ!」
三名の危険な男たちに狙われたターニャは、自分を二度も転生させた存在Xに対する悪態を付きながら、生き残るために乱戦に応じた。
ターニャに襲い掛かる三人の戦闘力は、今まで戦ったどの者たちを同等か、それを上回る物だ。連携を取らず、交戦しながら攻撃しているのが幸いであるが、気休めほどにしかない。ファイテックスを身に纏っていても、この猛攻に後どのくらい持つことやら。
「(早くこの乱戦から抜け出さないと!)」
恐るべき三名との乱戦から抜け出そうとするターニャであるが、抜け出すことも出来ず、背後からデラックスマンの打撃を受け、海岸線まで吹き飛ばされた。
「フフッ、まずは一人!」
「逃がさん!」
「譲らんぞ!」
デラックスマンの打撃で地面に叩き付けられたターニャを追撃しようとするダリュンであるが、ガルムに胸倉を掴まれ、強烈なパンチを顔面に叩き込まれた。常人なら頭が砕かされている所だが、ダリュンは超人なので殴られた程度で済み、お返しの一発をガルムに叩き返した。そこにデラックスマンの乱入もあり、三人は周囲を巻き込んでの激闘を繰り広げる。
事実、三名が気にも留めず戦うために、周辺に居たテノジア軍の水中部隊や連邦軍とUCA軍の艦艇は巻き込まれ、吹き飛ばされるか撃沈されていた。周囲を飛んでいる機動兵器は、三名が戦う余波で吹き飛ぶか破壊されており、巻き込まれないように急いで離れていた。
「奴ら、互いに殺し合うのに夢中で気付いていないようだな」
デラックスマンに吹き飛ばされたターニャは、三名が自分に構うことなく殺し合っているの見て、逃げようとしていた。ダリュン、ガルム、デラックスマンは余りにも強烈だ。真面に戦えば、神の恩恵を受けているターニャとで、一溜りも無く殺されてしまうだろう。だが、今の三人は連携も取らず、己の目的を果たすために殺し合う始末だ。
「逃げるなら、今だ」
三人が殺し合っている隙に、逃げようとしたターニャであったが、もう一人彼女を狙う者が居た。
「あ、アーマーが!?」
「ちっ、アーマーを斬っただけか!」
ターニャを狙うも一人の刺客、それはガズ・メックスことカーネルだ。南斗無音拳で自身の存在に気付かないターニャに奇襲を仕掛け、葬り去ろうとしたが、幸運か悪運か、ファイテックスを破壊した程度であった。暗殺が失敗したカーネルは下がり、待機している配下のレッドベレー隊に射殺を命じる。
「奴は丸裸だ! 撃て!」
鉄の爪を着けた指でターニャを指差しながら、M4カービンやM249分隊支援火器は各々の配下らは手にしているそれを発砲する。凄まじい弾幕であり、普通ならこれで原形を留めぬ肉塊と化しているはずだが、銃声が止んで煙が晴れた頃には、彼女の肉片一つも転がっていなかった。
「い、居ません!」
「な、何ッ!?」
部下の一人がその状況を知らせれば、カーネルはターニャの姿を探したが、何処にも姿が無い。
「
『うわぁぁぁっ!!』
レッドベレー隊員らの足元からターニャが地面を突き破って現れ、空へ向けて飛び蹴りを放ち、放たれる衝撃で身体を切り裂いて纏めて葬り去った。
あの銃撃を受けている最中に、ターニャは地面へと潜って銃撃を躱し、カーネル配下のレッドベレー隊員らの足元まで移動したようだ。
「あ、あれは南斗聖拳!? き、貴様! 何処でそれを!?」
ターニャが繰り出した技が、どのような物質でも切り裂く拳法である南斗聖拳であることにカーネルは驚き、それを何処で学んだのかと問う。
「フン、少しかじった程度だ。お前の真似事の拳では、この私は殺せんぞ?」
「減らず口を! 俺の気配は卓越した魔導士でも捉えられぬ! 見えぬ恐怖に晒されながら、死ぬが良い!」
かじった程度だと答え、自分の南斗無音拳を真似事と蔑んだターニャに、激怒したカーネルは気配を消し、奇襲攻撃で葬り去ろうとした。
だが、その手の敵と交戦したことがあるのか、ターニャは両目を閉じ、カーネルが発する僅かな殺気を感じ取り、背後から仕掛けようとした暗殺者に振り返った。
「な、何ッ!?」
自分の存在に気付いたことに驚いたカーネルは、直ぐに気配を消そうとしたが、ターニャの拳の方が速かった。
「
「ヌァァァッ!?」
無数の拳を放ち、それら全てをカーネルの肉体に叩き込んだのだ。幼い少女とは思えない力を連続で受けたカーネルは吹き飛び、地面に倒れたが、再び立ち上がって気配を消した自分に気付けたことを問う。
「お、俺は気配を完全に消していたはずだ…! なぜ気付けるのだ…!? ま、魔法を使っても気付かれない程なのだぞ!」
南斗聖拳による連続の突きの所為か、カーネルの身体はひび割れていた。後一撃でそのひび割れた身体は粉砕されるだろう。問い掛けるカーネルに対し、ターニャは経験の差であると答える。
「お前とは経験が違うのだ。何せ、二回目だからな」
「に、二回目だと…!? あ、ありえん! そのような年齢には…!」
経験の差と答えるターニャに、カーネルは信じられず、年齢的にあり得ないと否定する。そんな答えが信じられない男の頭上に、デラックスマンが投げたのか、駆逐艦が飛んで来た。飛んでくる駆逐艦にターニャは即座に退避したが、カーネルは動くことも出来ず、ただ絶叫するだけであった。
「うわぁぁぁっ!! アァァァッ!? はべべっ!!」
その後、カーネルは落ちて来る駆逐艦に圧し潰された。
駆逐艦をそこへ投げた正体は、ダリュンとガルムと交戦していたデラックスマンであり、ターニャを見付けて少し驚いていた。
「見付けたぞ…! おや? 子供の姿をしているが、悪魔の子に違いない! そう言う餓鬼は、必ず大惨劇を引き起こすのが決まりだ! そうなる前に、ここで殺す!!」
「無茶苦茶な奴だ…!」
だが、歪んだ正義感で知りもしないでターニャを悪魔の子と決め付け、殺そうとしてくる。放たれるビームを躱しつつ、ターニャは死亡したUCA軍の歩兵からライフルを拾い、魔力で強化した銃弾を浴びせたが、デラックスマンのシールドで防がれる。
デラックスマンの執拗な追撃が始まろうとする中、望みもしない二人もターニャを見付け、殺し合いを止め、対象を切り替えて一目散に飛んでくる。
「逃さん!」
「逃がすかァァァッ!」
「こいつ等も来るのか!?」
凄まじい速さで迫るダリュンの槍の突きを躱し、続けざまに来るガルムのブレードの斬撃を躱したターニャは距離を取り、デラックスマンの突進をも躱して左手から魔弾を放って反撃した。
「貴様らぁ! 悪の分際でェ!」
「邪魔をするなァ!!」
ターニャの元に集まった三名の強者であったが、互いが協力するどころか、誰が一番に彼女を殺すか競い合っているので、デラックスマンが偶然にも近くに居たダリュンを殴り付ければ、彼もまた反撃して交戦が始まる。これでガルムとターニャの戦いになったわけだが、ダリュンは歴戦錬磨の戦士であり、殺意丸出しで迫るデラックスマンの拳を避けた数秒後、標的を殺そうとするガルムの背中に槍を突き刺した。
「背中から突くとは、偉大な戦士じゃないのか!?」
「奴は渡さん!」
「今の隙に…!」
ダリュンの卑劣とも言える突きに、ガルムは激怒して反撃を行う。これを切っ掛けに再び三人が殺し合いを始めたところで、ターニャは逃げようとしたが、逃げる前に背中を掴まれ、恐ろしい乱戦に引きずり込まれた。
四人の強者が互いに殺し合い、周囲を巻き込む恐ろしい乱戦を繰り広げる中、スタールアームズ支社を守る民間軍事会社のファントム・タロン社とユグドラシル社は、ミニョルアーマーの適合者ではないスパルタンⅤを援軍を加えた連邦軍の猛攻に耐えていた。だが、そう長くは持たず、支社の目前まで後退を余儀なくされた。
「た、隊長! もう耐えられませんよ!」
『ぬァァァッ!!』
量産型ヒュッケバインMk-Ⅱを駆って押し寄せる連邦軍機を迎撃するカルティエ・サイは、上司であるアンダース・ベノワにこれ以上は持たないと告げる。そんな彼女のヒュッケバインに、スパルタン・バッシュ2が駆るMA形態のレイダー制式仕様の猛攻を受ける。ビームを連射して襲い掛かるレイダーに、カルティエは後退しながら躱しつつ、プラズマライフルで反撃する。
「ヒィヤァァァ!!」
一方で水中に居るバッシュ1が駆るフォビドゥンヴォーテクスは、ダーメン神父のウロッゾを執拗に追撃していた。
「こうなれば、陸上に!」
機体全ての搭載火器を乱射して追撃してくるバッシュ1にダーメン神父は、相手の不得意とも言える陸上で戦うと決め、支社の近くにある港に上陸した。普通なら下がるところだが、相手を殺すことしか考えていないバッシュ1はあろうことかダーメンのウロッゾを追撃し、フォビドゥンヴォーテクスが不得意な陸へと上がってしまった。
『ヒャァーッ!』
「へへへっ、間抜けめ!」
誘いに乗って水中から飛び出し、スラスターを吹かせてトライデントで突き刺そうとしてくるバッシュ1のフォビドゥンヴォーテクスに、ダーメンはその突きを当たる寸前で躱した。一撃が躱されたことで、バッシュ1は直ぐに会場へと逃げようとする。
『ひゃお!?』
「逃がさんわ! 死ねっ!!」
それからウロッゾ胴体に内蔵されたビームキャノンからビームブレードを発振させ、慌てて海上へと戻ろうとするバッシュ1のフォビドゥンヴォーテクスの胴体を切り裂いた。
「ヒョァァァッ!?」
ビームソードで機体ごと切り裂かれたバッシュ1は、ビームの刃に呑み込まれて消滅する。胴体を切り裂かれたフォビドゥンヴォーテクスは爆発し、周辺に破片を撒き散らす。
「まさか、ガンダムタイプと交戦することになるとは…! さて、支社の撤収は進んで…っ!?」
博打のような策でバッシュ1のフォビドゥンヴォーテクスを撃破したダーメン神父であったが、油断して索敵を怠ったためか、スパルタン・ブライトのペーネロペーのビームライフルを胴体に撃ち込まれ、爆散して機体と運命を共にした。ダーメン神父のウロッゾを撃破したブライトのペーネロペーは飛び去り、別の敵機と交戦を開始する。
「クソっ、敵がここまで来たぞ!」
「もう撤収は殆ど終わっている! 俺たちも速いとこずらかろう!」
ダーメン神父のウロッゾの大破は、支社で撤収作業をしていたスタールアームズ社の作業員たちの赤い二つ目のゴーグル先から見えており、敵がここまで迫っていることに動揺を覚えたが、撤収は殆ど終わっており、持ち帰れない物を放棄すれば、直ぐに逃げられる状態だ。
「あれは、あれはどうするんだ!? ガンダムだぞ!」
「んな物は良い! 何機か奪われてる! ほっとけ!!」
「どうせニ十機くらいは作ってんだ! 速く逃げようぜ!」
一人の作業員が赤い眼のゴーグルを輝かせながら、立っている一機のガンダムタイプのMSを指差しながら問う。これに他の作業員らは、持って帰っても意味が無い物と返し、十数機は製造されていると言って退避を促した。
そのガンダムタイプはインパルスガンダムであり、撤収中に攻撃された際、いつでも迎撃できるように出撃準備を済ませていた。だが、今は必要は無いので、換装用のシルエット共々この支社の施設内に放棄される運命だ。一人の作業員の言ったことに寄れば、インパルスの何機かは連邦軍に奪われているようだ。
「な、なんだ!?」
そう支社から逃げようとする三人の作業員であったが、三人が見えぬところで、次元の歪みが発生し、そこから人の姿をした何かが落ちて来る。それが直ぐに次元の歪みは消え、元に戻る。音に気付いた三人は足を止めてそちらへ振り返り、手にしているライフルの安全装置を外し、落ちて来た物に銃口を向けて近付く。
「そんなものほっとけ! 速く逃げよう!」
興味本意で近付こうとする二人に、一人は逃げることを優先するが、二人は耳を貸さずに次元の歪みから落ちて来た死体のような物に近付いた。
「女の死体だ…」
「よし、戻ろう。何処からか落ちて来たか知らんが、どうせ何も…」
近付いた一人が、それを蹴って物体が死体であることを知らせた。死体は長い金髪の女性であり、百七十三センチとやや高身長で人種は北欧系だ。胴体が大きく抉れ、手足があらぬ方向に曲がっており、蒼い瞳は完全に死者の物だ。傍から見ても、完全に死体である。
落ちて来た物が死体だと分かれば、自分らを待っているスタールアームズ社の撤収船へ向かおうとしたが、別方向より手薄な防衛線を粉砕しながら来たスパルタン・ゴウダに、一人の作業員が踏み潰された。
「ひっ! す、スパルタン!?」
「逃げ…」
「ヒグス共め。何を持ち帰ろうとしていた?」
同僚が一人踏み潰されれば、二人は戦いもせずに逃げようとしたが、ゴウダは右腕のバルカン砲を撃ち込み、無惨な挽肉へと変えた。それからスタールアームズ社が何を運び出そうとしていたのか調査すべく、周囲を見渡す。
「殆どの物を持ち出したか。だが、ガンダム擬きを置いていくとはな! ガンダムは連邦の物だ! 貴様ら
重要な物は優先的に持ち出されたのか、残っているのは、どうでも良い物や迎撃用に用意されたインパルスガンダムとその換装用の装備であるシルエットだけだ。ゴウダはインパルスを見るなり、偽物と激怒して破壊しようとする。そんなゴウダの背後で、金髪碧眼の女性の死体が起き上がり、睨み付けながら折れ曲がった左腕を元の位置に戻して向ける。
「んっ、身体が動かん!? だ、誰だ!?」
ミニョルアーマーの全火器を展開し、まだ起動していないインパルスガンダムを破壊しようとゴウダであったが、金縛りを受けたかのように動けずにいた。ゴウダに金縛りを仕掛けたのは、死者から生者へと再生途中の金髪碧眼の女性だ。左手を相手に翳し、魔法で相手を金縛りにしている。
「おのれ、この私を動けなくするなど! 直ぐに解かねば、貴様を殺すぞ!?」
女性を脅して金縛りを解かせようとするが、聞く耳を持たず、そればかりかアーマーを圧縮し始める。音を立てながら徐々に圧縮されていく状況に、中に居るゴウダは恐怖に駆られる。
「う、ウワァァァッ!? わ、私はこんな! こんなつまらん死に方をする男ではない!! あのお方の、羽翼元帥殿の右腕として活躍し、この戦争で我らに勝利をもたらすのだァ!! この私が圧殺されるなど、あってはならんのだ!!」
徐々に狭まっているスーツ内で、自分はこんな死に方をしない男であると言うが、圧殺しようとする女性は気にも留めず、その力を強めるばかりだ。
「ギャァァァッ!? アァァァッ!!」
抵抗するも、無駄な足掻きであり、そのままゴウダは自分の鎧武者のようなミニョルアーマーに圧殺された。外側から無理やり強い力で圧縮されたゴウダのミニョルアーマーは、まだ残っている弾薬が誘爆し、動力源と共に大爆発を起こした。
アーマーの爆発を魔法防壁を張って身を守れば、女性の身体は完全に再生しきっていた。その女性の正体はマリ・ヴァセレートであり、何かの原因か、この世界へ殺されてから送られていた。身に着けているボロボロの服を見て、直ぐに新しい服が必要と思い、付近に置かれていたパイロットスーツ一式を見付け、それに着替え始める。インパルスがザフトで製造された機体であるのか、パイロットスーツはザフトの赤服用の物であった。
「とにかく、あれに乗ろう」
赤いパイロットスーツに着替えた彼女は、付近に待機状態のインパルスに目を付け、そこへ向かって昇降機に乗り、コクピット近くまで上がってハッチを開けようとする。当然、ロックは掛かっていたが、マリはハッキング技術を持っており、何処からともなく取り出した端末でハッキングを仕掛け、ハッチのロックを解除してコクピットに乗り込んだ。シートに座り込めば、インパルスを自分用に調整するため、端末を取り出して操作を行う。
「外は戦闘状態。あいつ、殺してからこんな所に送って! ここで戦う奴らには悪いけど、八つ当たりに付き合ってもらうわ」
いきなり戦場へ送り込まれて機嫌が悪いのか、マリはインパルスでこの戦場で戦う者全てに八つ当たりを行おうとしていた。だが、機嫌の悪さではなく、別の怒りを晴らす為のようだ。
「調整完了。直ぐにここから脱出して、ルリちゃんを探さないと」
そんな怒りを抱えながら、マリは機体を自分用に調整し終えれば、インパルスガンダムを起動させた。起動すれば、二つの緑色の眼が光り、ヴァリアブルフェイズシフト装甲を展開させれば、灰色から白と青を基調とする色合いへと変わった。
続きは来年っす。