【参加者募集中】読者参加型SS スーパーロボット大戦 無限戦争   作:ダス・ライヒ

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名前:メッツ・マンネルヘイム
性別:男
年齢:56歳
階級:大佐
所属:装甲師団「ファルツ」第503MS連隊
乗機:連隊本部車両
概要:第503連隊の隊長を務めている大佐。早い話、バルトルトの手下である。
元UCAの将校であり、議員資格も持っている。

名前:ウラジミール
性別:男
年齢:38歳
階級:元大尉
所属:第503MS連隊 連隊本部付き小隊
乗機:クスィ・パンツァー
概要:ギャンブルでの借金返済を条件に、バルトルトの汚れ仕事をしていたUCAの元大尉。
数々の汚れ仕事をしていたため、それをネタにバルトルトを脅迫しようとしたが、脅してくることを予想しており、返り討ちにされる。その後、クスィの生体ユニット兼戦闘用サイボーグとして改造され、有効利用された。
早い話、遊戯王に出てくるデュエルマシンなセルゲイである。
キャラ提供はG-20さん


戦争貴族ファルツ 後編

 ファルツ家。

 その二つに交わった剣の家紋を持つドイツ系貴族の誕生は、十一世紀まで遡る。

 一介の傭兵であったファルツは、戦争で多大な功績を上げ、時の神聖ローマ帝国皇帝が、彼に領地と貴族身分を授けた。それがファルツ家の始まりである。

 

 それ以降、ファルツ家はドイツの戦争に関わり、必ずと言っていいほど参戦し、その度に戦勲を上げていた。戦争以外にこれと言った功績を上げていないため、他の貴族からは「戦争貴族」と揶揄されていた。

 その名が、ファルツ家を象徴する名前になるとは、その時代の誰もが思わなかったことだろう。

 それと同時に時代の流れと共に潰える家であると思われていたが、数々の貴族が潰えたにも関わらず、ファルツ家は神聖ローマ、ドイツ連邦、ドイツ帝国、ナチス・ドイツ、西ドイツ、ドイツ連邦共和国と長きに渡って続いていた。

 

 戦争以外に何の活躍もしていないにも関わらず、ヴィンデル・マウザーが支配する時代でも潰えることなく、ドイツ系移民と共に入植した惑星オーファンの地に存在し続けている。

 

 時は現在に戻り、惑星ヘルガーンの宙域で連邦軍や同盟軍による大規模な艦隊戦が展開される中、惑星オーファンでは、ファルツ家が治める土地の建てられた城があった。

 ファルツ家の城の警備は歩兵や装甲車のみならず、スコープドッグなどのATやMSのウィンダムが警備として配置されており、更には前線で投入されている新型のクスィも数十機も配備され、厳重な警備が敷かれている。

 

「おいおい、しっかりしろよ。クソ思想の奴にそんな装備までもらっておいてよ」

 

 城の居間にて、現ファルツ家の当主であるバルトルト・ジルヴェスター・フォン・ライン・ファルツは、上着を脱ぎ、タンクトップ姿で高価なソファーに腰を下ろし、机の上に置かれた酒が入ったグラスを片手に、都市部で行われている反乱軍や市民軍の連合軍と、羽翼正義元帥の息が掛かった極右民兵組織、通称羽翼の手先による市街戦を中継ドローンから送られている映像で眺めていた。

 軍の払い下げの装備ばかりの市民軍と、同盟軍の供与品や連邦軍の横流し、ありあわせの装備の反乱軍相手に、装備で優れているはずの攻撃側の羽翼の手先たちが苦戦しており、決死の抵抗の前に膠着状態が続いている。これを見ていたバルトルトは、苦戦している装備面では勝る羽翼の手先らを嘲笑う。

 

 彼の左肩には、かつて存在していたナチス・ドイツの武装親衛隊で有名な師団の一つ、第1SS装甲師団の師団マークの刺青が刻まれていた。先祖が属していた部隊の一つなようで、数々の戦勲を上げ、いくつかの勲章を受章したが、戦後に戦争犯罪人として裁かれ、家の名から抹消された。バルトルトはその先祖を気に入り、こうして自分の左肩に所属していた師団のマークの刺青を彫った。

 そればかりではない。上着掛けに掛けてあるバルトルトの上着を含め、城の居間に設置された本部に努める将兵ら着用している軍服は、武装親衛隊の物に似たデザインである。襟元に付けている階級章も、武装親衛隊の物である。

 

「そろそろ、やりますかな?」

 

「ん、もうヴィクトールを投入するのか?」

 

「えぇ、そろそろ頃合いかと」

 

 背後に立つ将校であるメッツ・マンネルヘイムに、待機中のヴィクトールらが駆るシュヴァルツリッターを投入するのかと問われた。これにバルトルトが一口飲んでから問い返せば、メッツは頃合いであると答える。

 

「まぁ、頃合いだな。聞こえたか、ヴィクトール。独立機動大隊ファルツの出撃だ。都市部で戦闘を行う全ての者を攻撃し、排除しろ」

 

了解(ヤヴォール)

 

 それに応じたバルトルトは、机の上に置いてある無線機を取り、待機中のヴィクトールたちに出撃を命じた。

 主君であるバルトルトの命に応じ、戦闘が行われている都市部の近くで待機していたヴィクトールとヴィクトリアが駆るブラックナイトスコードことシュヴァルツリッター数十機が起動し、単眼を光らせる。

 ヴィクトールの搭乗機はシュヴァルツリッター・ロード。ブラックナイトスコードカルラの改造機である。ヴィクトリアの搭乗機はシュヴァルツリッター・カピテーン。こちらはブラックナイトスコードシヴァの改造機であった。他のクローンたちは、通常のブラックナイトスコードの改造機であるシュヴァルツリッターである。

 ロードがバックパックの両翼を大きく広げ、空高く飛翔すれば、カピテーンを含めるシュヴァルツリッターらも背中のビームマントを展開し、後へ続くように飛翔する。

 

「あれが、わしの反乱軍(取りこぼし)を始末する貴様の隊か?」

 

「えぇ、私の姉上のクローンたちだ。戦闘用に強化してある」

 

 バルトルトと同じく、ソファーに腰を下ろしている初老の巨漢である連邦軍の将軍であるアレクサンダー・アイアンザック大将は、映像に映るヴィクトールらシュヴァルツリッターの編隊を見て、都市部に居る反乱軍や市民軍、羽翼の手先を排除する部隊なのかと問う。これにバルトルトは、格好には似合わぬ貴族の様な振る舞いで答えた。

 

 現在進行している都市部での戦闘のそもそもの原因は、連邦軍のアイアンザック大将の反乱軍掃討作戦であった。

 大将と言う高い階級でありながら、スパルタンⅤとなったアイアンザックは、ミニョルアーマーの適性があり、スパルタン・ミサイルを名乗った。その力を試すべく、配下の軍を指揮して惑星オーファンの衛星に息を潜める反乱軍の掃討作戦を展開した。

 衛星には反乱軍の拠点があり、一個宇宙艦隊程の戦力があったが、スパルタン・ミサイルの異常な力と物量で衛星の拠点は陥落する。拠点を破壊され、戦力をずたずたにされた反乱軍は、散り散りとなって各地へ逃亡した。その逃亡した反乱軍の敗残兵らが逃げ込んだのが、現在戦闘が行われている惑星オーファンのあの都市である。

 スパルタン・ミサイルとなってその力の虜となったアイアンザックは、加減することなく攻撃を行い、衛星に居る民間人らも巻き添えにしていた。配下の将校の何名かが抗議したが、鬱陶しさを覚えたアイアンザックことミサイルに首を圧し折られるか、頭を握り潰されて全員始末された。

 

 そんな危険な将軍は、スパルタンⅤ用のミニョルアーマーを脱いで同じく危険なバルトルトの近くに腰を下ろして座っている。それを気にすることなく、バルトルトは普通に接していた。

 

「全員束になって掛かっても、わしのアーマーに勝てるとは思えんがな」

 

一対一(さし)の勝負ならともかく、彼らにはアコードの力があります。いくらスパルタンⅤの閣下と言えど、手を焼くことは必然でしょう」

 

「ファルツ大将、この生意気な小僧は何者だ?」

 

 バルトルト自慢のヴィクトールらを見ても、アイアンザックはスパルタンⅤである自分の方が勝っていると思っていた。これに異議を唱えたのは、同じく居間にいた薄く青みがかった白髪で、刃物のように鋭い相貌を持つ好青年だ。青年は不機嫌なアイアンザックに謝罪しつつ、自己紹介を始める。

 

「これは失礼いたしました、アイアンザック閣下。私、シュラ・サーペンタインと申す者。ファルツ家の客将として、仕えております」

 

「貴様も、そのアコードとかいう力が使えるのか?」

 

 自らの名を名乗った青年であるシュラ・サーペンタインに、アイアンザックはアコードの力が使えるのかと問う。これに応えるべく、シュラはアコードの力を使った。

 

『はい、これがアコードの力です。私は今、あなたの心の中を読んでおります』

 

「うっ!? わ、分かった! 止めてくれぇ!!」

 

 シュラはアコードの力で高い精神官能能力でアイアンザックの心に入り込み、直接頭の中に語り掛けてきた。自分の心の中を勝手に覗かれていることに嫌悪感を覚えたアイアンザックは、シュラに止めるように頭を抱えながら怒鳴った。

 

「全く、気色悪い能力だな。人の頭ん中を勝手に覗くなんざ」

 

「中々便利な力ですよ。使い方次第では、人を操ることも可能です」

 

「それが気色悪いんだよ。俺の頭ん中、覗くなよ?」

 

「えぇ、善処します」

 

 アイアンザックの苦しむ様子を見て、バルトルトも嫌悪感を抱き、アコードの力を気色悪いと評した。これにシュラは、使い方次第では人を操ることが出来ると言うが、バルトルトはそれが気色悪いと告げ、自分の心の中を覗くなと脅すように告げる。それを冗談にとらえたシュラは、礼儀正しく礼をする。

 表では客将として振舞って従っているが、内心ではバルトルトもアイアンザックもただの人として見下しており、アコードであり、圧倒的な力を持つ自分こそ正しいと思っていた。

 

『フン、強い力を持つお前たちは正しいさ。だが、俺の方が強い力を持っている。そうだろ? 次期当主殿)』

 

 バルトルトやアイアンザックに悟られないように、内心で実力などを認めつつも、自分の方こそが強いと断じ、アコードの力で同じ力を持つヴィクトールに語り掛けた。

 

『そうだな、サーペンタイン殿。では、私の力を見せるとしよう』

 

 

 

 ヴィクトリアたちを率いて市街戦が行われている市街地へと向かうヴィクトールは、アコードの力でシュラの問いかけに答え、自分の力を見せるため、市街地へと救援に現地軍であるISAオーファン陸軍の部隊に標的を定めた。

 定めた理由は、自分らの目撃者を抹殺するためと、アコードであるシュラに自身の実力を示すためである。市街地の市民軍と反乱軍、羽翼の手先では、手応えが無いと判断し、装備と練度が充実している正規軍にしたのだ。

 味方識別反応装置(IFF)は正体を隠すために切り替えており、現地軍からは謎の勢力(アンノウン)にしか見えない。接近してくるアンノウンのシュヴァルツリッターの編隊に、オーファンのISA陸軍の大隊分のジェットスライカー装備のウィンダムは、即座に警告を行う。

 地上にも装甲車を初め、歩兵戦闘車とバギーに汎用軍用車両と言った車両部隊を初め、グスタフカールやドートレスHM、ソードストライカーやランチャーストライカーを装備した105ダガー数十機、ATのスコープドッグなどの混成機械化大隊が含まれていた。

 

『そこのアンノウン、止まれ! 止まらない場合は、威嚇射撃を行う!』

 

「三十八機、二機が本部で三個中隊編成の大隊か」

 

 コクピット内の無線機から、ウィンダムのパイロットによる警告が聞こえてくるが、ヴィクトールは無視してこれから攻撃するウィンダムを数え、アコードの力でバルトルトに確認を取る。

 

『当主殿、ISAの部隊は攻撃しても構わないので?』

 

『おい、頭ん中に入ってくんな。まぁいい、どうせ鉢合わせするなら、ここで潰しちまえ』

 

はい(ヤー)

 

 アコードの力を使ったためにバルトルトは怒ったが、攻撃の許可は取れた。それが分かれば、相手に攻撃の口実を与えるべく、手近なウィンダムに火器をロックオンする。

 

『だ、大隊長殿! ロックオンされました!』

 

『貴様、威嚇射撃だけでは済まさん! 全機、奴は敵だ! 火器使用自由! 破壊しろ!』

 

「そうだ、来い!」

 

 ロックオンしたことに激怒したウィンダムの大隊は、狙い通りに攻撃してきた。これに喜んだヴィクトールは、攻撃を躱しつつ、一機のウィンダムをライフルで撃墜した後、ヴィクトリアの一人であるアインスに指示を出す。

 

『アインス、お前の中隊は予定通りに都市部へ向かえ。シュヴァルツリッター六機なら、旧型や素人共の制圧は容易いだろう』

 

『ヤヴォール。兄さまも、油断なさらぬように』

 

 ウィンダムの大隊と交戦しつつ、アコードの力でヴィクトリアの一人で中隊を率いるアインスに指示を出せば、彼女は応じて油断しないようにと告げ、都市部へと向かった。

 

「油断するな? この程度の、相手にか?」

 

 自分にとっては、心を読むまでも無く撃墜できるウィンダムら相手に、ヴィクトールは鼻で笑い、次々と的のように撃破していく。

 

『大隊長殿! 第2中隊壊滅しました!』

 

「なんだと言うのだ!? 第3中隊、地上部隊を守れ! 我が大隊本部と第1中隊は奴の足止めをするぞ! 何としても、街に地上部隊を辿り着かせるんだ! それと基地に増援を要請しろ!」

 

 十機以上のウィンダムが落とされた後、大隊長はヴィクトールの圧倒的な強さを知り、無傷の中隊を地上部隊の守りに着かせた。基地に増援を要請しつつ、ヴィクトールのロードを止めに向かうが、圧倒的技量と性能を前に、撃墜されるばかりだ。そればかりか、ウィンダムの攻撃は全く当たらない。

 

『残りは地上をやれ。上空の奴らも含めてな』

 

『ヤヴォール』

 

 ウィンダムを片付けながら、ヴィクトールは残りのヴィクトリアたちが駆るシュヴァルツリッターらにも指示を飛ばす。これに応じ、シュヴァルツリッターらは上空のウィンダム中隊を掃討しつつ、地上部隊を一方的に蹂躙していく。

 

「さて、ファングを試すか」

 

 圧倒的に勝り、余裕のヴィクトールは、ロードの両翼に装備されたファングを試すために全基展開した。ロードの両翼より展開されたファングは、ヴィクトールが標的に定めたウィンダムへと向かっていき、オールレンジ攻撃を行ってハチの巣にするか、ビームの刃を展開して目標に向かって飛び、串刺しにする。

 

「こ、こいつめ! ウォォォッ!!」

 

 地上のグスタフカールは、ビームサーベルを抜いて自分らを蹂躙するシュヴァルツリッターに斬りかかるが、あっさりと躱され、右手に持つ重斬刀で切り裂かれた。次に対艦刀を持つ105ダガーも斬りかかるも、斬撃を躱され、ビームマントで切り裂かれて撃破される。

 

『だ、大隊長ォーッ!!』

 

「そんな馬鹿な…!? たったの数十分で二個大隊が…!」

 

 無線機から部下の断末魔が響き渡る中、自分の大隊を含め、地上の混成大隊を合わせた五十機のMSが、僅かな時間で壊滅した事実に大隊長は受け入れられず、茫然としていた。そんな大隊長のウィンダムに、ヴィクトールは容赦なく右手に持つビームソードで切り裂いた。

 

「時間は、十二分か。かなり掛ったな」

 

 二個大隊以上の戦力と交戦したにも関わらず、ヴィクトールとヴィクトリアのクローンたちは全く息を切らしていなかった。掃討に十二分も掛かったことに、ヴィクトールは不満気であるが、増援の接近を知らされる。

 

『兄さま、ISAの増援です』

 

『ふっ、鬱憤晴らしにはちょうどいい』

 

 アコードで迫る増援を知ったヴィクトールは、レーダーを見て増援が来る方向を見れば、バリエント二個大隊がこちらに向かってくるのが見えた。これにヴィクトールは鬱憤晴らしにはなると思い、ヴィクトリア等と共に迎え撃つ。

 

「な、なんだこいつは!? ウワァッ!!」

 

 救援部隊を壊滅させられた現地のISAのみならず、駐屯しているUCA陸軍の部隊も都市部に救援部隊を送っていたが、バルトルトが送った刺客により、壊滅状態に陥っていた。

 

『こちらUCA陸軍第91機甲部隊! アンノウンに襲われ、壊滅状態! 至急、応援を乞う!!』

 

 上空でジェットストライカーを装備したダガーLが次々と撃ち落とされ、地上のジェムズガンやジェノアスⅡが引き裂かれていく中、部隊の指揮車に乗る指揮官は基地に応援を要請するが、間に合わずに襲って来た刺客が駆る機動兵器が護衛機を潰しながら迫ってくる。

 

「う、うわっ!? 至急増援を! 増援を!!」

 

 指揮官は自分の指揮車に迫る機動兵器を見て、無線機の受話器に向かって付近の基地に増援を要請し続ける。

 その機動兵器とは、ジムⅣクスィ、ではなく、クスィの外見を持つグレイズ・アインに近い全高三十メートルの大型機動兵器であった。

 

『オレ、ダタチィ…!』

 

 備え付けられた拡声機より、パイロットと思われる声が聞こえていたが、正気を失っている物だ。それもそのはず、このクスィの外装を使ったグレイズ・アイン、その名もクスィ・パンツァーは生体ユニットを使った非人道的な大型MSである。

 生体ユニットにされたのは、ウラジミールと言う元UCA陸軍の士官であった。ギャンブルの借金の代わりに返済してもらうことを条件に、バルトルトに汚れ仕事を持ち掛けられ、それを実行してきた。欲深いウラジミールは、それをネタにバルトルトを脅迫しようとしたが、脅迫してくることは明白であり、逆に返り討ちにされた。

 ただで殺すのは勿体ないと思ってか、バルトルトはウラジミールを生きたままクスィの生体ユニット兼戦闘用サイボーグに改造した。反乱を予期してか、自我まで消し、チンピラの軍人を自分に忠実な戦闘マシンへと作り変えたのだ。

 

『オレ、タダチィ…!』

 

 改造されてその言葉しか口にできなくなったウラジミールは、ただ指示通りに標的にしたUCA陸軍の指揮車を踏み潰した後、残る救援部隊の機動兵器を蹂躙し続けた。

 

 

 

 ヴィクトールらがISAの救援部隊を壊滅させる十分ほど前、戦闘が行われている市街地では、市民軍と反乱軍の必死の抵抗により、羽翼の手先たちの進軍は停滞していた。

 

「ちっ、莫迦なリベラル風情に手こずりやがって」

 

 スローターダガーを駆る羽翼の手先のリーダーは、装備で劣る市民軍と反乱軍相手に苦戦する配下の隊に、苛立ちを覚える。当初は装備とリーダーの技量で圧倒していたが、敵がさらに数を増やしてか、今では膠着状態となっている。

 

「ISAとUCAはまだ来ないのかい!?」

 

「連絡が取れない! もう来てもいい頃なのに!」

 

「それでも守るんだ! 奴らをこれ以上近付けるな!」

 

 ロケットランチャーを構えるニッテ・イェンセンは、他の仲間から装填を受けながら無線機を背負う通信兵に、ISAとUCAの救援部隊がまだ来ないことに文句を言っていた。これに通信兵は、受話器を耳に当てながら、大声で連絡が取れないと返答する。市民軍は、ヴィクトールらがその救援部隊を排除していることを知らないのだ。

 それを知らず、ニッテは街を守るため、装填が完了したロケットランチャーを構え、ビームライフルを撃ちながら突撃してくるストライクダガーに向けて撃ち込んだ。彼女に合わせてか、他のロケットランチャーを持つ市民兵らも同じストライクダガーに向けて放ち、集中砲火で撃破に成功する。

 

「クソっ、弾薬はあとどれだけある!?」

 

「もう残ってない! 反乱軍の方から借りれるが、そんなに残ってないと言ってる!」

 

 市民軍と反乱軍が善戦しているように見えるが、装備で勝る羽翼の手先相手にこれ以上は長く持たない。それに弾薬も不足しており、市民軍よりかはマシの反乱軍も持ちそうも無かった。

 

「万事休すか…!」

 

 これで終わりかと思っていたニッテであったが、そんな時に、アインスのカピテーンが率いるシュヴァルツリッター五機が市街地の上空に現れた。アインスが乗るカピテーンを含めるシュヴァルツリッター六機は、市街地に居る羽翼の手先たちに襲い掛かった。

 現れた五機のシュヴァルツリッターとカピテーンに対し、羽翼の手先らが乗るストライクダガーと105ダガーは、持っているビームライフルで応戦するが、全く当たらず、次々とビームライフルで撃ち抜かれていくだけだ。ISAやUCAのパイロットたちとは違い、民兵に過ぎない羽翼の手先らの技量はたかが知れている。もはや、虐殺であった。

 

「く、来るなぁ! ワァァァッ!?」

 

 迫るカピテーンにビームライフルを乱射するストライクダガーのパイロットであったが、全く当たらず、重斬刀で真っ二つに切り裂かれた。

 

「こ、降伏する! 降伏するから撃たないで!」

 

 105ダガーが続けて撃破され、戦意を喪失したストライクダガーのパイロットは、機体の武器を捨てて降伏したが、抹殺命令を受けているヴィクトリアクローンは応じず、直ぐにライフルを撃ち込んで撃破した。

 

「ま、待て! 俺はリーダーに言われただけで…!」

 

 あの副隊長も投降したが、有無を言わさずに乗機のコクピットを重斬刀で貫かれて死亡する。

 

「この、フザケルナァァァッ!」

 

 味方を蹂躙され、自分一人だけとなったリーダーは、スローターダガーのエールストライカーの機動力を活かして高速で接近し、カピテーンに攻撃を仕掛ける。羽翼の手先らとは違い、元軍人であるリーダーの技量は高かった。だが、シュヴァルツリッターは原型機のブラックナイトスコードと同じくフェムテク装甲を備えており、ビームは全く通じなかった。

 

「俺を、俺を愚弄するのかァァァッ!?」

 

 ビームが通じないことが分かれば、ビームライフルを捨て、絶叫しながらビームサーベルの二刀流で斬りかかる。凄まじい斬撃の数だが、カピテーンを駆るアインスは特別な訓練とアコードの力を持っており、リーダーの心を読み、何処に斬撃を振るうか分かっていて、容易く躱すことが可能だ。

 

「馬鹿な!? こいつ、まるで俺の動きを読んで…!?」

 

 自分の動きが読んでいるように躱すカピテーンに、酷く動揺していたリーダーは混乱していたが、その答えを知ることなく、カピテーンのビームサーベルでコクピットを切り裂かれ、ビームの刃に焼かれながら消滅した。

 

「な、何だか知らないが…」

 

『助かったぜ!』

 

 リーダーのスローターダガーが撃破されたことで、羽翼の手先らは全滅した。戦車などが居たが、ヴィクトリアクローンらに残らず殲滅された。敵が残らず殲滅されたことで、市民軍と反乱軍は助かったと思い、安堵する。

 

『一体、どこのグループだ? 俺たちは…』

 

 気軽に無線機で話し掛けてくる反乱軍のジンのパイロットは、シュヴァルツリッターの形状でザフト系に近いことから、味方であると思ってどこのグループに属しているのかと問うてきた。それにヴィクトリアクローンらは答えることなく、ビームライフルを向けて撃った。

 

『こ、こいつ等!? 味方じゃねぇ!』

 

『なんで!? あいつらをやっつけたのに!』

 

『クソっ、一体何だってんだ!?』

 

 敵を倒したアインスらを味方だと思っていた市民軍と反乱軍は、自分たちを攻撃してきたことに戸惑いながらも反撃した。が、羽翼の手先らと交戦して損耗しており、瞬く間に六機の高性能MSに的撃ちのように破壊されていく。

 

「も、モビルスーツは全滅だ! モビルワーカーもやられた!」

 

「ATもだ! クソっ、奴ら俺たちを皆殺しにする気だ!」

 

 市民軍のジェノアスにドートレス、反乱軍のジンやシャルドール改、モビルワーカー、スコープドッグなどの機動兵器が全て破壊されたが、アインスらは破壊活動を止めず、市民軍と反乱軍双方の雑多な戦闘車両のみならず、固定兵器、歩兵に標的を定めた。歩兵の対処を行うためか、シュヴァルツリッターには対人火器が備わっており、アインスらヴィクトリアのクローンらはそれを躊躇なく使用し、生身の市民兵や反乱兵らの殺傷を行う。アインスのカピテーンは、胸部の武装であるガトリング砲二門を展開し、それを掃射して市民軍と反乱軍にとどめを刺す。

 

「我が中隊以外の反応の途絶を確認。市民軍並び反乱軍の歩兵に、複数の生命反応もあるが、心拍数からして放棄しても問題なしと判断」

 

 それと同時刻に行われていたヴィクトールたち他のクローンによるISA、戦闘マシンのウラジミールによるUCA救援部隊の排除が終わったと同時に、市街地に居た市民軍と反乱軍の掃討も完了した。

 

「ぐ、この…悪魔どもが…!」

 

 惨たらしい光景が広がる中、機銃掃射で左腕を引き裂かれてもまだ息のあるニッテは、腰のホルスターに収めてある拳銃を抜き、安全装置を解除してからカピテーンに向けて撃った。それも何発もであり、息絶えるまで引き金を引き続ける。MSには全く意味もない攻撃であるが、搭乗者であるアインスの気を引くことに成功した。

 

「こいつ、そんな無意味なことを…! うっ、頭が!?」

 

 何度も自分の機体を非力な拳銃で撃ち続けるニッテに、アインスはとどめを刺そうとしたが、血塗れの彼女の姿を見た瞬間、脳内にある記憶がフラッシュバックしてくる。

 その記憶は、アインスのオリジナルであるヴィクトリア・フリーデリーケ・フォン・ライン・ファルツの物だ。同じ遺伝子を持つクローンであるアインスにも、その記憶は引き継がれていた。記憶では、ニッテを初め、他の二人の少女と談笑を交わすヴィクトリアの視点が写っている。それに戦闘に巻き込まれる前の都市部の光景が広がっており、この都市はヴィクトリアにとって幸せな思い出の地であるようだ。

 

「い、いや…! いやァァァッ!!」

 

『中隊長殿、どうしました!? 中隊長殿!』

 

 その記憶を思い出し、今の都市の廃墟ぶりと親友であるニッテが力尽きた姿を見て、アインスは絶叫した。このアインスの状態に、他五名のヴィクトリアのクローンたちは動揺した。

 

 

 

『わ、私…私、なんてことを…!? ワァァァッ!!』

 

『どうしたアインス!? 混乱しているのか!?』

 

「あぁん? 記憶まで受け継いんでのか。ちっ!」

 

 アインスが絶叫しながら錯乱し、カピテーンが持っているビームライフルを乱射すれば、ヴィクトリアを初めとするヴィクトリアのクローンらと白の居間にいる者たちが動揺する中、シュラと同じくバルトルトは冷静に記憶を受け継いでしまったことに、腹を立てていた。

 

「か、閣下…?」

 

「こいつは後で、ゆりかごにぶち込んで余計な記憶を消しとかないとな」

 

「なるほど、オリジナルの記録を見て混乱したか。弱いな」

 

 メッツが理由を問えば、バルトルトは余計な記憶を消す必要があると答えた。それにシュラは、自分より弱いと判断した。

 

「こうなるなら、反乱軍の奴らがあの街に逃げ込んだ時点で、核ミサイルでも撃ち込んでおくべきでしたな。放射能で汚染されているとなれば、ISAを初め、連邦の誰しもが近付きはしないでしょうに」

 

 アインスがヴィクトリアの記憶を思い出して錯乱したことで、メッツは回りくどいやり方で都市部を戦場にせず、反乱軍が逃げ込んだ時点で、核ミサイルを最初から撃ち込んでおくべきだと異論を唱えた。

 そう、秘密の計画のため、都市部にわざと反乱軍を逃げ込ませ、戦場にしたのはバルトルトの仕業であった。これにメッツは、反乱軍を都市部に追い込んだ時点で、核ミサイルを撃ち込むべきだと主張したのだ。放射能で汚染されているとなれば、都市部の跡地に近付くものはおらず、秘密の計画も進めやすくなる。バルトルトの行いも最悪だが、メッツの核ミサイルは過激にも程がある。ある意味、羽翼の手先らを上回る悪魔の所業である。

 その異論に対し、バルトルトは睨み付けながらそれでは面白くないと答えた。

 

「てめぇ、それじゃあ面白くねぇんだよ。俺はな、姉貴のクローンが、姉貴の思い出の街を破壊するのが見たかったんだよ。ただ核ミサイルで吹っ飛ばすなんて、味気無いだろ? 一人ぶっ壊れたが、おかげで良い物を見せてもらったわ。死体蹴りってのは、面白いもんだな」

 

 バルトルトが回りくどいやり方で街を戦場にした理由は、姉のクローンたちが姉の思い出の街を破壊するのが見たかったから。その返答に、シュラを除くメッツを初めとする者たちは唖然とした。その理由が余りにも、姉であるヴィクトリアに対する憎悪からである。

 

「おいおい、ドン引きかよ。前当主の糞親父は俺を次期当主として虐待染みた教育しておいて、お前は危ないからだのクソ見てぇな理由で、どっかの馬鹿とセックスして餓鬼まで孕んだ姉貴を、俺を差し置いて次期当主にしようとしたんだぞ? その可哀想な俺が、死体蹴り見てぇな仕返しをして良いだろ?」

 

 姉のヴィクトリアに対するバルトルトの憎悪は、常人には全く理解できない物であった。それをバルトルトは、虐待染みた教育を受け、歪んでしまった自分が可哀想だと宣い、当たり前の権利であると主張した。




アレクサンダー・アイアンザック/スパルタン・ミサイル
連邦軍大将にして、スパルタンⅤである将軍。
反乱軍を攻撃して壊滅させ、惑星オーファンの街に追い込み、羽翼の手先の攻撃を誘発させた張本人。
キャラクター原案は、オリーブドラブさん

シュラ・サーペンタイン
劇場版機動戦士ガンダムSEEDFREEDOMに出てくるアコードの一人。
力こそ正義だと言う非常にプライドが高いバトルジャンキー。この作品では、ヴィンデル・マウザーの手先となっている。

このバルトルトの異常さは、過去編を書かねばならないな…
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