【参加者募集中】読者参加型SS スーパーロボット大戦 無限戦争   作:ダス・ライヒ

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「僕が新世界の神となる!」


新世界の神 佐奇森神矢

 織斑一夏対アトリオックス、織斑千冬対佐奇森神矢と戦いで最終局面を迎える中、ジェーン・コンティがグレイズの改良型であるアードラを駆ってグール隊のザクⅢを次々と撃破していた。

 

「クソっ! たかが一機のMSに!!」

 

 ただ一人ヘキサ・フレームのMSであるユーゴーに乗るグール隊の隊長であるクロードは、僚機を次々と120ミリライフルや特殊合金で出来たシールドクローで撃破するジェーンのアードラに向け、大型ビームライフルを乱射する。

 無論、全く当たらず、逆に接近されてアードラが腰より抜いたナイトブレードを頭部にあるコクピットに突き刺されて戦死した。

 

「うごぁ!?」

 

 上面から来たブレードの刃に圧し潰され、クロードは圧死する。

 

「味方は!? 味方は何処だ!?」

 

 盾にしている部下を探しているスコープドッグライトアーマーに乗るヌメリコフであったが、その盾は既に全滅していた。

 単独となったヌメリコフは逃げる他無く、新しい盾となる味方を探している内に、ラウラの専用ISであるシュヴァルツェア・レーゲンによる攻撃で機体諸共始末される。

 

「う、うわぁぁぁ!?」

 

「今の奴、仲間を盾にする奴だったな。いい気味だ」

 

 部下を盾にするヌメリコフにラウラは何の同情をすることなく、次なる標的を探して上昇する。

 次の犠牲者はクローディア・オセロットとベン・ウッダーであった。先に後者であるウッダーの方が犠牲者となった。彼が乗るアヘッドが、セシリアのブルーティアーズMkⅡや鈴の甲龍、シャルルのラファールリヴァイブⅡの連携の前に苦戦していた。

 

「えぇい、たかが子供如きに!」

 

 子供が纏っているISに、一方的にやられるウッダーは苛立ち始める。連携を取って攻撃している三名は相手の動きをよく読み、火力が貧弱ながらも一機のMSを追い込んでいた。

 

「的が近過ぎて当たらん! ビームサーベルすら当たらんぞ!」

 

 右手にビームライフルを持ち、左手にビームサーベルを持って応戦するウッダーであるが、ISが速く動いて的を絞らせず、挙句にサーベルを振るっても距離を取って攻撃してくる。

 彼女らの連携で更にウッダーが苛立つ中、マルアリアのダヌム・アルゴンが接近し、手にしている高出力のビームライフルを彼のアヘッドに向けて放つ。

 

「学生たち、邪魔だ!」

 

『なにっ!? うわぁぁぁ!!』

 

 マルアリアが叫べば、交戦していた三人はウッダーのアヘッドより離れる。三機のISに翻弄されていたウッダーはマルアリアの接近に気付かず、そのまま彼女が放ったビームによって乗機を撃墜されて戦死した。

 ウッダー機を撃墜したマルアリアは、動じているセシリアに鈴、シャルルを放って続けて様にクローディアのシナンジュに僚機を伴って攻撃する。

 

「牽制射撃!」

 

『了解!』

 

 サブフライトシステムに乗ってこちらを檄檄してくるシナンジュに対し、マルアリアは僚機らに牽制射撃を命じ、接近戦に長けた面々と共に突撃を行う。

 だが、相手はアトリオックスのサザビーを超えるとも言える高性能機のシナンジュだ。一瞬にして接近したマルアリアを含めたダヌム・アルゴンが、シールドにマウントされたままのビームアックスの薙ぎ払いによって撃破される。

 

「あぁぁ!」

 

 唯一生き残れたのはマルアリア機だけであった。敵機数機を纏めて振り払ったクローディアは、シナンジュの拡張性に過ぎれるビームライフルの下部にバズーカを装着し、左側面より襲い掛かるVF-11Cサンダーボルトに向けて撃ち込んで撃破した。

 続けて別の敵を倒そうとするクローディアのシナンジュの背後より、箒の紅椿の空裂(からわれ)の斬撃が迫る。

 

「いやぁぁぁ!!」

 

 声を上げながら斬り込んできた為、気付いたクローディアはシールドで防いだ。だが、相手は純正の、それも篠ノ之束が妹の為に作ったISであり、模造品のVAとは訳が違う。シールドは避けてしまうが、クローディアの判断は早く、直ぐに距離を取ってライフルを腰のラックに装着し、即座にビームサーベルを抜いて反撃に出る。

 

「うわっ!?」

 

 流石にビームサーベルを受け切れないのか、箒は思わず避けてしまった。これを逃さず、クローディアは追撃の一手を箒に向けて振り下ろさんとしたが、ここに同じ第四世代型のISである青騎士が迫る。

 

「まだ終わらん!」

 

『っ!?』

 

 そのISを纏うエルネスティーヌの声に、直ぐにクローディアは標的を彼女に変えたが、刺突は避けられ、両手剣のアガサを胴体に叩き込まれた。

 アガサの切れ味はナノ・ラミネート装甲を容易く切り裂くほどであり、クローディアのシナンジュは両断される。コクピット近い部分を斬ったために脱出は間に合わず、クローディアは最期を悟りながら機体と運命を共にした。

 

『お父様、お母様…』

 

 ガスマスク越しで親の名を口にしながら、クローディアはシナンジュの爆発の炎に呑まれた。

 クローディアの敗北と同時に、軍事施設方面や学園付近に展開していたメイソン騎士団の部隊は撤退を開始する。残るは学園方面に居るバニッシュトとゴットアーミーのみだ。

 

「学園に侵入した賊がまだ残っている! 行くぞ!!」

 

『了解!』

 

 エルネスティーヌの指示で、まだ戦闘可能な部隊は学園に居る敵部隊の掃討に向かった。

 

「一夏が心配だ。私も…」

 

『いや、お前は我々と来てもらおう』

 

「っ!?」

 

 最後となった箒も他の者たちと共に向かおうとしたが、何者かに専用機の紅椿諸とも拉致されてしまった。近くには味方は居らず、それにやや守備隊は混乱しているので、誰も箒が攫われたことを気付かなかった。攫ったのは無論、メイソン騎士団の手の者である。

 束の妹が攫われたことも知らず、戦闘可能な部隊は学園への掃討に向かってしまった。

 

 

 

 IS学園における戦いの最終局面となっている千冬対神矢、一夏対アトリオックスの対決は、学園側の不利となっていた。

 

「ハハハッ! どうした、どうした? 初のIS適正者はその程度の実力か?」

 

「グッ…! こいつ、近付けん!」

 

 GAの開発者である神矢との戦いでは、アガサ騎士団より譲渡された代用品のVA「青武者」を纏って戦う千冬であったが、開発者が直々に纏うGA「新たなる神」に近付けずにいた。

 そのGAを纏う神矢はひたすら刀を持って斬りかかって来る千冬を全く動くことなくあしらうだけで、余裕を浮かべながら攻撃に対処している。まるで自分が負けるとは思っても見ない様子だ。

 

「やはり代用品では…!」

 

「言い訳か? たくっ、どれほど強いかと思ったらこの程度か。遊びにもならん。もっとも、人形如きがこの神に敵うとは思ってもないがな」

 

 ISの模造品であるVAでは、神矢のGAには歯が立たぬと千冬は判断する。対する神矢はあの千冬が自分に敵わぬと知れば、自惚れたような言葉を吐いて彼女を苛立たせる。

 

「イラつく奴だ…! 何が神だ? 聞いていて反吐が出る。お前のGAとやらが採用されないのは、お前自身の所為じゃないのか?」

 

 自分を神だと思い、全てを見下すその態度に我慢できなくなった千冬も本音を漏らしてしまう。同時にGAが採用されなかったのは、開発者自身に問題であったことを指摘すれば、自意識過剰の神矢の癪に障ったのか、彼の表情が殺気立った物に変貌した。

 

「貴様…! この神を愚弄したな…!? 道楽で生かして置けば付け上がりおって…! 神罰を下してやる!」

 

「自意識過剰過ぎる神様だな!」

 

「ほざけ! この神が創造する新世界に、貴様の居場所は無い!!」

 

 更に煽り立ててやれば、神矢は怒り心頭に千冬に突っ込んでくる。これが千冬の狙いであったが、彼が纏う新たなる神の力は想像を上回る物であった。

 

「何だこのパワーは!? ISとは比べ物にならない!?」

 

「フハハハッ! 身の程を知れ! この人形風情め! 貴様はこの神の前で敗北する運命(さだめ)なのだッ!!」

 

 恐ろしいパワーに苦戦する千冬に対し、神矢は彼女を人形と表しながら恐るべき連撃を放ち、自分に敗北する運命と告げる。

 無論、千冬はその運命に従ってやる義理は無い。抗うために刺突による一太刀を神矢に振るう。

 

「そんな運命、私は認めない!」

 

「うぐっ!?」

 

 運命に抗う千冬の一太刀が、GAのクレイジーバリアを貫通して神矢の身体に届いた。傷は浅かったが、彼のプライドを傷付けることは成功した。

 人形風情と見下していた千冬に、神である自分の身体に傷を付けられた神矢は激怒し、倍返しの反撃を行う。

 

「この神の、この神の身体に傷を付けたなァ!? 人形の分際でこの神をぉぉぉ!! 許さん! 許さんぞ貴様ァァァ!!」

 

「かはっ…!?」

 

 怒りを燃やす神矢の倍返しの手刀はVAの絶対シールドを貫き、千冬の腹に届いた。手刀を突き刺された千冬は血を吐き、神矢が突き刺した右手を引き抜けば、床に崩れ落ちるように倒れる。倒れた彼女の身体より、血だまりが広がり始める。

 千冬を倒した神矢は高笑いし、自分が最強であり、神であると動かない彼女に告げる。

 

「どうだ!? この神である佐奇森神矢こそが最強なのだ! 貴様は人形の分際でこの神に逆らい、敗北したのだ! 俺に逆らうこと事態が間違いであり、悪なのだ!!」

 

 彼の勝利を祝福する者も居なかったが、自分を愚弄した千冬に勝った神矢は上機嫌であり、碌に生死を確認せずに学園を後にし始める。

 

「さて、残りは篠ノ之束だ。この人形の出来損ないの弟の方は、あのアホなエイリアンが始末するだろう」

 

 一夏の方は見下しているアトリオックスが始末するだろうと胡坐をかき、自身の計画遂行の為に自分のアジトへと帰投する。

 

「どうした!? それでもISを初めて動かし、世界を変えた女の弟かァ!?」

 

「くぅ…! 本当に生身かよ!?」

 

 姉である千冬が神を自称する悪魔のような男に負けたことも知らず、一夏はアトリオックスと死闘を繰り広げていた。

 第四世代型までアップグレードされた白式を纏う一夏であるが、相手のアトリオックスは生身でありながらISを上回るような戦闘力で追い込んでくる。もしISを纏っていなければ、一夏は体格で勝るアトリオックスに捻り殺されていた事だろう。そのアトリオックスも自分の世界の古代宇宙科学文明であるフォアランナーの科学力の恩賞が無ければ、ISに無惨に敗北していたはずだ。

 両者には超科学的な恩恵があり、それでこの戦いは成立している。どちらにそれが無ければ、僅か数秒ほどで終わっていた事だろう。

 

「小僧! 俺が生身だから手を抜いているのかァ!? 踏み込みが甘すぎるぞ!!」

 

「あんたが強過ぎるだから!」

 

「そんな言い訳をするな!」

 

 余り攻めてこない一夏に苛立ったアトリオックスは、自分が生身だから手を抜いているのかと問えば、相手の少年はそちらが強いからだと答える。

 その答えを無茶苦茶にも言い訳と判断したアトリオックスは、グラビトンメイスを恐ろしい速さで連続で叩き込む。この尋常でない機関銃のようなメイスによる打撃を一夏は受け切るのは不可能と判断し、ISと白式の機動力を持って躱し続ける。

 今度は避けてばかりの一夏に、アトリオックスは更に苛立ち始める。

 

「貴様、戦う気が無いのか!? 反撃せんか!」

 

「無茶を、言うなァァァ!!」

 

 自分より遥かに強く、挙句に無茶苦茶なアトリオックスに一夏も怒りを覚えたのか、もしもの時に備えて温存していた白式の第二形態へ移行させた。その光で目晦ましを行い、相手が怯んだ隙に反撃の一撃を見舞う。

 この一連の一夏の流れを、アトリオックスは一旦距離を取った後に褒める。

 

「ほぅ、変身の光で目晦ましを行い、体勢を立て直す前の一撃。見事だ。四年か五年ほど鍛錬すれば、姉貴を超えるような最強の戦士になれるぞ、小僧。この俺が保証するんだ、誇るが良い!」

 

「ありがとよ、エイリアンのおっさん。でも、なる気は無いぜ!」

 

 四年か五年ほど修行を行えば、最強の戦士になれると言うアトリオックスに対し、一夏はなるつもりは毛頭ないと突き返した。いま戦うのは、大切な日常を守るため。それを捨てて戦士になるなど、今の一夏には考えられないことだ。だからこそ、自分に戦うことを強制するアトリオックスが許せなかった。

 

「ちっ、褒めてやった物を! その才能、ここで潰してくれる! だが、最後にお前の全力をこの俺にぶち込むことを許可してやる! 殺すつもりで来いッ!!」

 

「殺す気で…? 俺に人殺しをやらせるのか!?」

 

 殺す勢いで全力を叩き込めと言うアトリオックスに、殺人に対する抵抗がある一夏は動揺した。この間に一夏は戦闘行為を行ったが、誰一人殺していない。

 

「そのつもりで言っている! やらんと言うなら、部下に命じて貴様の身内や仲間全員を殺すぞ!!」

 

「千冬ねぇや箒、セシリアや生徒会長たちを殺すだと…!? そんなの、させるかっ! 絶対に!!」

 

 殺人に対する抵抗を覚える一夏に対しアトリオックスは、やる気を出させるために部下に命じてこの学園の者たちを殺すと脅した。大切な者たちを傷付けることに怒りを覚えた一夏は、白式の単一仕様能力である零落白夜(れいらくびゃくや)を発動し、雪片弐型を変形させてエネルギーの刃を形成させた。そのエネルギーの刃を、一夏はアトリオックスに向けて振り下ろそうと、雄叫びを上げながら斬り込む。

 

「うぉぉぉ!!」

 

「来いッ!!」

 

 振り下ろされんとするエネルギーの刃に、アトリオックスはバリア機能を持つフォアランナーの遺産で出来た希少金属を使用したシールドを構えた。

 やがて刃が振り下ろされれば、シールドを前に出して防ごうとした。だが、零落白夜の力は想像を上回り、フォアランナーの科学力とめったに取れない希少金属で出来たシールドが切り裂かれたのだ。これにはアトリオックスは驚愕するしかなかった。

 

「シールドが!?」

 

 シールドが破壊されれば、直ぐに回避行動を取ろうとするアトリオックスであるが、既に一夏は弐撃目の体勢に入り、逃すつもりは無いようだ。既に間に合わない距離に入られているので、アトリオックスはグラビトンメイスを打ち込んだが、一夏の二撃目で弾かれてしまう。

 盾と武器を失ったアトリオックスはとどめの一撃を入れ込まんとする一夏の斬撃に対し逃れられないと判断、何をどう考えてか、真剣白刃取りで受け止めようと両手を構えたのだ。

 怒りで冷静さを失っている一夏は容赦なく斬撃を叩き込む。これをアトリオックスはエネルギーの刃を両手で受け止めた。アトリオックスの両手がエネルギーの刃に触れた瞬間に爆発を起こし、辺り一面に爆風が巻き起こる。

 

「殺した…?」

 

 脅しに怒り、諸刃の剣とも言える零落白夜の一撃をアトリオックスに見舞い、殺してしまったと思っていた一夏であったが、煙が晴れた途端に見えた光景に絶句する。

 それは、血塗れのアトリオックスが生きて零落白夜の一撃を真剣白刃取りで防いでいたのだ。

 

「っ!?」

 

「貴様…踏み込みが…甘いぞ…!」

 

 並の人間、否、ジラルハネイなら死んでもおかしくない出血量であるが、このジラルハネイは異常であり、生きている。意識は朦朧としているが、まだ立っている。

 そんなジラルハネイであるアトリオックスは、最後の力を振り絞ってか、渾身の頭突きを殺すことに無意識に躊躇した一夏の白式に叩き込んだ。

 

「躊躇したなァァァ!!」

 

 この怒りの頭突きは絶対防御を貫通し、それを受けた一夏の白式は吹っ飛んで壁に激突する。一夏は何が起こったか分からないまま、アトリオックスの頭突きで気絶した。傍から見れば死んでいるように見えるが、ISのおかげで生きている。その頭突きを食らわせたアトリオックスも気を失い、床に倒れ込んだ。一夏とアトリオックスの対決は、相討ちと言う形で幕を終えた。

 倒れ込んだアトリオックスの元に遅れてやって来た親衛隊たちが近付き、倒れている自分らの総帥を見て驚きの声を上げる。

 

「嘘だろ! 総帥が血塗れで倒れているぞ!?」

 

「刺されても撃たれてもピンピンしてた総帥だぞ!? ありえねぇよ!」

 

「一体どうなってんだ!?」

 

「担架を持ってこい! 早く運び出せ!」

 

 不死身とも言える自分らの総帥が、倒れていることに親衛隊の者たちは動揺を隠せない。直ぐに担架を持ったジラルハネイたちが急行し、瀕死のアトリオックスを載せて運び出そうとする。

 付近に倒れている一夏に対しては、バニッシュトの面々は既に死亡していると判断して気にも留めなかった。今は自分等の総帥をここから運び出して脱出する事が優先であるからだ。

 

「あそこでぶっ倒れてる人間の餓鬼は!?」

 

「ほっとけ! どうせ死んでるだろ! 今は総帥を治療するのが先だ!」

 

 その言葉通り、一夏を放ってバニッシュトは倒れたアトリオックスを連れて撤退した。

 

 

 

 千冬と神矢の戦いは後者が圧勝し、一夏とアトリオックスとの対決は相討ちと言う形で幕を終える中、自分の拠点へと帰ろうとする攻撃軍に、守備隊の追撃が行われる。

 

「こちらが退けば、追撃か。後は任せるぞ」

 

「はっ!」

 

 神矢は追撃を掛ける学園守備隊に対し、カーネルに食い止めるように指示を出した。これに応じ、カーネルは応じて配下の部隊に撤退の支援を行わせる。つまり迎え撃つのだ。

 

「おっ、丁度いいぞ! 目標は達成したんだ! この隙に乗じて撤退するぞ!」

 

 瀕死のアトリオックスを護送するバニッシュトは、カーネルのゴットアーミーが守備隊と交戦している間に先に撤退を始めた。メイソン騎士団も目標を達成しているので、協力するレダニア軍と共に撤退を開始している。

 対する追撃を行う守備隊を指揮するエルネスティーヌは、専用の第四世代型IS「青騎士」を駆って、迎え撃とうと展開してくる赤い肩のスコープドッグとM9A2ガーンズバック、GAを次々と撃破していく。

 

「ここまでしておいて、ただで逃げられると思うな!」

 

 そう言って自分を止めようと向かってくる敵機を斬り斃すか、左腕に装着したクロスボウ型ビーム砲で仕留めつつ、撤退しようとする連合攻撃軍を追撃する。

 

「なんて強さだ! うわっ!?」

 

 M9に乗るレッドベレーのパイロットは余りのエルネスティーヌの青騎士の強さに驚き、思わず下がってしまう。この臆した行動が裏目に出て、後続のセルベリアのドライ・シュテルンに撃破される。

 後続を得て損耗しきった連合攻撃軍に更なる損害を与えるエルネスティーヌの追撃隊であったが、勢いはここで止まってしまう。

 

「来たぞ! 捕えろ!!」

 

 少佐階級を持つレッドベレー隊員が纏うGAは、銅製の鞭を持って傘下の同様の武器を持つGAに指示を出してエルネスティーヌの青騎士を捕えて動きを止めた。

 

「しまった!?」

 

「電流攻撃、やれぃ!」

 

 銅製の鞭で捕らえられたエルネスティーヌは振りほどこうとするが、六機による拘束は中々解けない。相手を拘束している内に少佐は高圧電流を流すように指示を出し、エルネスティーヌに高圧の電流を流し込む。

 

「グァァァっ!」

 

「そのまま感電死させろ!」

 

 高圧電流による痛覚で叫び声を上げるエルネスティーヌをそのまま感電死させようとしていた少佐等であったが、後続を止めるはずの部隊は予想よりも早く壊滅し、ルリのマギア・コリツェのビットで高圧電流を流していたGA数機が一機に撃破された。

 電流と拘束が解けたところで、逃げようとする少佐のGAを、エルネスティーヌは逃さずに両手剣を振るい降ろす。

 

「うわぁぁぁ!?」

 

 敵に背を向け、撤退する味方に追いつこうとした自分に迫る両手剣の刃に少佐は叫び声を上げながら盾に両断されて絶命した。

 続けて追撃を掛けようとしたが、少佐の時間稼ぎが功を奏したのか、味方の撤退は成功した。長時間の戦闘で披露していた彼女らも、これ以上の追撃は戦力を減らすだけだと判断し、追撃を断念する。

 

「くっ、限界か。だが、私の領地からは逃しはしないぞ!」

 

 撤退する連合攻撃軍に向け、エルネスティーヌは補給と再編を済ませた後に、彼らの集結地点を叩くと言ってから、他の者たちと共に撤収した。

 

 

 

 IS学園での戦闘が終わり、数時間後、メイソン騎士団やレダニア軍、バニッシュトとゴットアーミーの連合攻撃部隊は集結地点にされている神矢の秘密研究所に集結していた。

 ここに探ろうと付近を捜索していたテメリア軍の部隊を一人残らず抹殺し、今は逆襲の為に仕掛けて来るアガサ騎士団に備えて再編を行っている。勝手に自分の部屋として使っているモーリック王の元へ、特殊工作員の同志が戦闘の混乱に乗じて攫った篠ノ之箒を連れて来る。なぜ箒を攫ったかは、束に対する人質である。

 尚、バニッシュトは総帥アトリオックスが瀕死の重傷を負ったため、再編と治療の為に元の世界へ帰り、戦列を離れる事となった。もう任務を全うしたので、残る必要も無いのだ。

 

「も、もモーリック王よ…た、た束のい、妹、箒を連れて参りました…」

 

「ご苦労、もう休んでよい。貴公の働き、誠に大義であった」

 

「あ、ありがたき…幸せ…」

 

 玉座に座るモーリック王の前に拘束した箒を差し出した同志は戦闘の際にかなりの損傷を負っていたのか、自分の命じられた任務を全うした後に機械の身体から煙が吹き始める。

 自分の身を挺してまで任務を全うした同志に対し、モーリック王は真に大義だと労いの言葉を掛けた。この大義に全てを捧げてきた同志は嬉しかったのか、今まで無感情だった表情に笑みを浮かばせ、幸せそうにこの世を去った。

 その後、王の護衛部隊が同志の残骸を片付け、代わりに箒の拘束を実行する。その箒に対し、本人であるかどうかをモーリック王は確認の為に問う。

 

「貴様がIS職人、タバネ・シノノノの妹君か?」

 

「姉さんに用があって私を攫ったのか!? ならば姉だけを狙えば良い! 私、いや、私たち家族はあいつとは関係ない! 巻き込むな!!」

 

 姉の所為で自分が攫われたことを理解した箒は怒り、自分とその家族を巻き込むなと訴えるが、モーリック王は聞くことも無く、専用のISである紅椿をやり玉に挙げ、あの束に家族愛があると指摘した。

 

「本人であるかどうかその態度で分かる。貴様は姉を嫌っているようだが、彼奴には身内に対する愛がある。貴様の専用IS、紅椿が何よりの証拠。違うか?」

 

 自分の誕生日プレゼントとして紅椿を貰ったことを指摘された箒は今までの束の行動を思い出し、助けに来ないと言うが、モーリック王は兵器を作らせるために人質として攫ったと答える。

 

「くっ…! だが、姉さんが私を助けに来るなど、万に一つだ。助けになど…」

 

「否、我がメイソン騎士団は貴様を人質として捉えたのだ。貴様を人質として、彼奴に我が騎士団に兵器を作らせる。アガサの者共を血祭りに上げる兵器をな。彼奴は条件を呑むしかあるまい。貴様に紅椿とやらを渡した後、一連の行動を見る限り、姉君は貴様を余程大事にしているようだ」

 

 更に一連の行動による情報で、束が箒のことを気にしていると見抜いた。これを箒は実験にされていると否定する。

 

「実験の間違いだ!」

 

「頑なに否定するか。だが、大事な実験体を救うために、従うしか無かろう」

 

 例え実験体にされているとしても、大事なのは変わりないので、要求に従うとモーリック王は断言した。これに近くで立ち聞きをしていた神矢は異議を唱える。その異議は自分のGAが、ISよりも優れていると言う至極簡単な理由だ。彼にとっては、自分のGAを認めさせるこの上ないチャンスだ。

 

「少し失礼。あんな欠陥品に拘るより、この神のゴットアーマーこそが格段に優れている! 破壊力はGAが上だ! あんな欠陥品のISに拘る必要はない! そこの小娘など、輪姦して殺してしまえば良いんだ!!」

 

 いきなり出て来て、自分のGAこそが最強だと言う神矢に対し、メイソン騎士団の面々は腰の剣を取ろうとする。これにモーリック王は無言で手を翳して黙らせ、GAを採用しないことを伝える。

 

「貴公、かなりGAに拘っているようだが、あれは危険だ。虫も殺せぬ気弱な者が、狂暴な殺人鬼に変貌する。それに一連の戦闘記録から見るに、冷静な判断も取れず、ただ破壊欲求に駆られ、全てを破壊し尽くすまで暴れ回るまさに狂戦士の鎧よ。そんな物を、我がメイソン騎士団に採用するわけには行かんな。そればかりか、何処も採用せぬとは思えぬわ」

 

 このモーリック王の意見は最もであった。GAはまさに狂戦士の鎧だ。ISより生産性と火力が優れているとはいえ、自我を保って戦い続けられる者などそうは居ない。いずれかは暴走し、味方にも被害を及ぼす嫌悪される存在となることは確実である。

 そのモーリック王の指摘に対し、神矢は適性率が低い者が悪いと答える。そればかりか、低い者は消耗品だと言い始め、自分の選民思考を語り始める。

 

「黙れ! 適性率が低いからそうなる! 低い者は消耗品なのだ! この神が認めた選ばれた者だけが生き残ればいい! それがこの世界のルールなのだ!!」

 

「…呆れて物も言えんわ」

 

 神矢の偏った選民思考を聞き、モーリック王は呆れた。同時に自分の陣営においておけば、何を仕出かすのか分からないので、この一件が終わり次第、神矢を排除することを検討しておく。これにはメイソン騎士団の者たちも同様であった。神矢は紛れもなく危険すぎる男である。

 

「まぁ良い、アガサの者共がいずれ逆襲に来るであろう。貴様のGAとやらの性能、その戦で示して見せよ」

 

「良い判断をしたな、あんた。なんたってGAこそが最強だからな!」

 

 一旦は検討するフリをして、神矢をあしらってこの部屋から自主的に退出させた。無論、神矢もモーリック王の態度で自分を抹殺する気であると見抜いている。だが、彼は最初からことが終わり次第にメイソン騎士団を排除するつもりであった。今までは利害が一致していたから協力していたのだ。

 

「あいつ等も同じか。ならば、神として神罰を下してやるまでよ!」

 

 そう自分の研究所に我が物顔で居座るメイソン騎士団に向け、ことが終わり次第に始末すると決め、決戦の為に残していた例の三名の調整に向かった。




何ともジェラル星人なみに回りくどいやり方になってるモーリック王ェ…!

取り敢えず、後一話で終わると言ってましたが、この分だと二話分が必要になりそう…。

でも、頑張って終わらせてきます。
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