【参加者募集中】読者参加型SS スーパーロボット大戦 無限戦争   作:ダス・ライヒ

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名前:シュルツ・オットー・リップシュタット
性別:男性
年齢:56歳
階級:アガサ騎士団幹部兼リップシュタット連合盟主
所属:アガサ騎士団&リップシュタット連合軍
武器:片手剣
概要:アガサ騎士団の幹部であり、リップシュタット連合の盟主。
この世界のダイヤモンド鉱山を所有しており、そこで採掘したダイヤを別の世界に売って多額の利益を得ている。
帝国再建委員会が自分のダイヤモンド鉱山がある世界に攻めて来たと分かると、懐であるダイヤモンド鉱山を守るため、人脈を使ってリップシュタット連合軍を結成した。

ベルンブルク公ロイター
JKハルの世界を陰で支配するベルンブルク家の当主。銀英伝的にはブラウンシュヴァイク公なポジ。六十五歳。
フルネームはロイター・ウィルヘルム・フレーゲル・フォン・ベルンブルク。
史実で言うならハプスブルク家に当たる。世界中の王家がベルンブルク家の血族とも言え、例え大帝国の皇帝であろうと、ベルンブルク家には逆らえないと言われている。
リップシュタットより世界の支配権の継続を条件に、彼の連合軍を自分の世界に迎え入れた。
私利私欲で自己中心的な人物であり、世界がどうなろうが自分さえ良ければそれで良いと言う絵に描いたような悪役君主である。

フランツ・ルーク・アンス・テレジア
ベルンブルク家に代々仕えて来た男。銀英伝的にはアンスバッハなポジ。四十歳。
利権欲しさに異世界勢力に世界を売った君主に絶望しつつも、長年仕えて来たテレジア家のしきたりに従い、敢えてそれを受け入れる。
諜報スキルも高く、独自の情報網を有しており、ハルの秘密を知っているが、敢えてそれを明かそうとしていない。
それにテレジア家は世界の秘密を持つ一族として知られ、それを知る者は君主のロイターとフランツだけである。
あの世界で珍しく良識人で愛人を持たず、妻も同い年。二十代の長男、十八歳の次男、十五歳の三男、十歳の長女、五歳の次女の五人の子持ち。
実は原作のバフネスの腹違いの弟。性格どころか外見すら微塵にも似てない。

版権キャラ

ゲオルグ・ダモン
戦場のヴァルキュリアに登場する無能将軍。
リップシュタット連合軍に参加したガリア軍の指揮官で、どういうわけか階級が元帥になっている。元帥になっても無能であった。

ヘルマン・フライジンガー
コールオブデューティーの新作で登場したナチスの将官。
この作品では第四帝国より来た親衛隊上級大将であるが、軍の指揮権は持っていない。


リップシュタット連合

 帝国再建委員会がミドルド要塞に手こずる中、この世界の人類の主要拠点に空軍の偵察機と陸軍の偵察隊が偵察行動を行っていた。

 空軍の偵察機は敵側に対空兵器が無いと思い込んでおり、その空を我が物顔で飛んでいる。一方で陸軍の偵察隊は車両を使わず、現地の住民になりすまし、徒歩での偵察を行う。

 流石に女性だけの種族であるイヴ人では、男尊女卑の世界での現地住民のなりすましには無理がある。この世界で女性一人で街の外を歩くなど、信じられないことだ。よって、陸軍は帝国再建委員会に協力する人間の男に偵察させている。

 その世界には無いはずの車の走る音が聞こえて来るので、街道に偵察隊が足を踏み入れようとすれば、青い塗装をした甲冑を身に纏うハルバートを携えた兵士に止められる。

 

「おっ!? 貴様! そこで止まらんか!!」

 

 現地民に扮した偵察隊を見た青甲冑の兵士は怒鳴り声を上げ、彼らを街道から遠ざける。怪しまれぬように、偵察隊は兵士の言うことを聞いて街道から遠ざかった。偵察隊がその兵士の格好を見れば、アガサ騎士団の兵士であると直ぐに分かる。

 街道を通っている車列はワルキューレの車両部隊であり、荷台に兵士を満載したトラックや装甲車などが帝国再建委員会との前線へと向かっている。遠くには人型機動兵器が見えた。

 ようやく気付いてか、対空砲が唸り声を上げ、我が物顔で飛んでいた空軍の偵察機は一目散に飛んできた方向へと帰っていく。

 

「一体、この馬車のような物はなんで?」

 

 現地民に扮している偵察隊は、この世界の言葉でアガサ騎士団の兵士に問えば、彼は自慢げに答えた。

 

「お前ら、この辺の奴らだな? 噂には聞いておろう、異世界より野蛮な女たちが攻めてきたと言うことをな。我々アガサ騎士団はその野蛮な女たち、イヴ人の武装集団を退治しに同じく異世界より遥々来たのよ!」

 

 あっさりと自分らの正体を吐いてしまったことに、偵察隊は知っていながら驚いたが、目前の兵士は自慢話のように続ける。

 

「我らが来たにはもう安心だ! それに貴様らの格好、少し貧相であるな? だが、大丈夫だ。この世界全体が、我が主君のリップシュタットの領地となられるのだ。正確には、この辺り一帯がな。他は我が主君の招集に応じ、連合軍に参加した者たちの領地となる。まぁ、貴族に取っては寝耳に水の話であるが、貴様らの暮らしも少しは豊かになるのは確かだ」

 

 兵士の話を聞いて偵察隊は、アガサ騎士団のリップシュタットのその仲間、経営仲間と言うべきか、自分らと同じく侵略しに来ているのだと判断した。

 彼らは侵略軍を打ち倒し、元の支配者に代わって自分らが土地を治めると謳うが、帝国再建委員会とは変わらない。違うとすれば、武力を持たずして支配する事か。どちらにせよ、この世界は異世界の勢力によって支配されることだろう。

 それを自慢気に語る兵士は、偵察隊の表情を見て不味いと思ってか、個々の領主や貴族には話すなと周りを気にしながら告げる。

 

「おっと、少し熱になり過ぎた。お前たちの領主や、貴族にはこの事は話すんじゃないぞ」

 

「えぇ、どうもです。ご領主さまや貴族の方々には言いませぬ」

 

「そうだ。自分らの身の安全の為にな」

 

 偵察隊は兵士からの約束を守れば、その場を去って行った。

 直ぐに偵察隊は、馬車に積んである無線機を使ってそれを帝国再建委員会の侵攻司令部に報告した。

 

 

 

「以上、偵察隊の報告となります」

 

 かつては国の王の城であったが、今では帝国再建委員会の侵攻軍の司令部として使われ、その司令部の玉座の間で、偵察隊からの報告を受け、情報将校は司令官にアガサ騎士団とワルキューレの陸軍の軍集団が来ていることを報告した。

 それを受け、参謀らがざわめく中、司令官は予備として控えている主力軍の投入を決定する。

 

「なれば、主力軍を投入するしかあるまいな。機動兵器も投入している可能性があるな。予想はしていたが、まさかこんなに早く介入があるだなんて…公女様もご視察に来ていると言うのに」

 

 報告書を読み、アガサ騎士団とワルキューレの介入が事実であると分かった司令官は、早期に終わる予定の作戦が長期化する懸念を抱く。

 一方で帝国再建委員会に占領されたミドルド要塞では、前線司令官や空軍参謀らが生け捕りにしたウィッジクラフトと面談を行っていた。

 

「せっかく生け捕りにして、公開処刑でもするかと思ったら…何をさせる気なんです?」

 

「そんな事、後で分かる事だ」

 

 未だ返り血塗れのターニャは、上官であるアーデルトラウトことアーデにウィッジクラフトに何をさせる気なのかと問えば、彼女は後で分かると機嫌が悪そうに答える。

 自分が選抜に選ばれなかったことに怒りを覚えているのだろう。ターニャに取ってはいい迷惑だが。

 

「若い頃は良い男のようだね。でも、この世界の男は嫌いだよ。小さい頃のあたしを虐めてた男共を思い出しちまうよ。殺せて清々しちゃうけどね」

 

 同じくウィッジクラフトを見ているフェリーチェ・バルボッサは彼が若ければ美男子だろうと言ったが、彼の態度で幼少期の頃を思い出したようで、苦虫を噛み潰したような表情を浮かべながら、あの頃は辛かったと語り始める。

 そんな彼女らが上層部の決定に疑念を抱く中、ミドルド要塞の庭では大きな穴が掘られ、そこに降伏した要塞の捕虜たちをテキサス軍の将兵等が蹴り落としていた。

 

「あれは止めなくて良いので?」

 

「フン、この世界の獣共など生かす価値が無かろう。それに連中も何十人も死んでいる。憂さ晴らしくらいさせてやれ」

 

「あーぁ、男女平等運動でも起こしてりゃあ、殺されずに済んだのにね。まっ、そこまで脳みそが発達してなさそうだけど」

 

「(こいつ等、何気に酷いな)」

 

 友軍の蛮行すら止めず、挙句にこの世界の男たちは殺されて同然だと思う両者に、ターニャは心の中で咎めた。

 止める者すら居ないテキサス軍の虐殺は始まった。掘った大穴に投げ込まれた捕虜たちに向け、一人の将兵が白燐手榴弾を投げ込んだ。これに続き、他の将兵等も白燐手榴弾の安全栓を抜き、次々と投擲していく。

 たちまち地獄絵図と化し、炸裂した白燐で焼かれる捕虜たちの阿鼻叫喚が周囲に木霊する。その様子をテキサス軍や陸軍、空軍の将兵たちも含め、ただ見下ろすばかりだ。

 焼かれて獣のような叫び声は、新兵たちには応えたのか、両耳を塞いで聞こえないようにその場から離れる。ウィッジクラフトと攻略司令官、参謀が居る仮設の尋問小屋は特殊な防音処理が施されているのか、全く聞こえていないようだ。

 全員が焼け死ぬ頃には、ウィッジクラフトはいつの間にか来ていた男性兵士三名に何処かへと連れて行かれた。気になったターニャは、何処へ連れて行くのかとバルリング中佐に問う。

 

「失礼を、バルリング中佐殿。我々が苦労して捕らえたかの男、どうするので?」

 

「どうするって? これから結成されるであろう我々に対抗する連合軍に揺さぶりを掛けるためよ」

 

「連合軍? この世界の国家などたかが知れておりますぞ」

 

「いえ、この世界にワルキューレの隊が確認されたのよ。それに、我が空軍の偵察機がある勢力のシンボルを撮影したわ。これ」

 

 連合軍に揺さぶりを掛けるためにウィッジクラフトを敢えて解放したと話せば、ターニャはこの世界の国家の連合などたかが知れてると言う。

 だが、ワルキューレが介入したと言うと、ターニャは眉をひそめる。自分らよりは遥かに上回る戦力を持つ勢力と戦うなど、面倒なことこの上ない。そればかりか、他にも自分らと同じ勢力が介入しているとバルリングが言った。それを示すように、彼女はその証拠の写真をターニャに見せる。

 

鍵十字(ハーケンクロイツ)…? まさか、ナチスが…!?」

 

「正確には第四帝国。厄介なことになるわね」

 

 ナチス、正確には第四帝国の存在を知ったターニャはそれとも戦わねばならぬと思い、この侵略戦争は楽な戦争では無くなったと大きく落胆した。

 

 

 

 ミドルド要塞陥落を同時に、この世界で密かにダイヤモンド鉱山を保有し、採掘したダイヤを他の世界に売り込み、それで利益を得ていたアガサ騎士団の幹部シュルツ・オットー・リップシュタットは、自分の財源であるダイヤモンド鉱山を守るべく、他の商売仲間と人脈を駆使してリップシュタット連合を結成した。

 表向きはこの世界を帝国再建委員会より守るためと謳っているが、実際はダイヤモンド鉱山を守るだけとは、世界を陰で支配するベルンブルク公のロイターとその家族、代々仕えるフランツ・ルーク・アンス・テレジア以外知る由もない。

 リップシュタット連合の決起集会は、その世界の大帝国の首都の宮殿内で行われていた。

 

「私の呼びかけに応じた有志たちよ! 共にイヴ人の神聖百合帝国再建を阻むため、奴らを暗黒の次元断層に追い返そうでは無いか! この世界の友人たちよ、我らが来たにはもう安全だ。我らの武器を取り、我らと戦列を組んで奴らを追い返そう! 我らに勝利を!!」

 

 白ワインの入ったグラスを片手に、礼服を身に纏ってリップシュタットの呼びかけに応じた商売仲間、ゲオルグ・ダモン、テメリア軍の将軍、レダニア軍の将軍、ポラニア軍の将軍、ベルンブルク家やテレジア家、この世界の皇帝や王たちと言った面々と共にグラスを高く上げ、グラスに入った白ワインを一気に飲み干す。その中には鍵十字をシンボルとする第四帝国、即ちナチスの将官の姿もあった。

 連合の連帯感を高めるための集会であるが、誰も仲間意識を持っていない。現に主戦力とも言えるワルキューレの将官や将校らが誰一人参加していない。理由は女性と言う理由だ。故に集会には男しか居ないのだ。ここの風習に合わせて配慮しているつもりだろう。

 挙句、イヴ人と言う民族至上主義の下で結束力が高い帝国再建委員会とは違い、彼らは互いを信用していない。共通の敵がいるからこそ、共闘しているに過ぎないのだ。現実でも言えた物であるが。

 

「(この世界の皇帝や王たちは、仮面で本性を隠して近付いてきた異界の者たちが、この世界その物を我が物にせんとしていることに気付きもしないとは)」

 

 使えるベルンブルク公と共に真実を知るフランツは、リップシュタット等がこの世界を手中に収めるために助けに来たことを知らず、決起集会に馳せ参じた皇帝や王、諸侯らを見て落胆する。

 異世界の軍隊に攻められ、ただ征服されるのを待つばかりのこの世界に、他の異世界から軍隊がこちらを助けるために来た。

 偶然にもご都合主義的にも出来過ぎている。賢い者は助けに来る軍隊を疑う。

 だが、ここに集ったその世界の者たちは、異界より来たリップシュタット等をまるで救世主のように歓迎している。無論、帝国再建委員会を退けた後、貰った兵器を疲弊しきったリップシュタット等に差し向けるつもりだが、彼らはそれを読んで罠を仕掛けている事だろう。

 帝国再建委員会かリップシュタット連合が勝利したにせよ、この世界に未来は無い。

 

「どちらが勝ったにせよ、我々の世界は勝利した者の手に落ちる事だろう」

 

 どちらが先に武勲を上げるかと語り合うリップシュタット連合の面々を見て、フランツは自分たちの世界に未来がない事を悟り、グラスに入った白ワインを一口飲んだ。もう一口を飲もうとした瞬間、ナチスの将官のドイツ語が耳に入って来る。

 

「《速くこの世界の劣等人種共を掃除して、アーリア人が住まう高潔な世界にせねばな》」

 

 その自分らを見下すナチス将官の言葉にフランツは反応してか、彼もドイツ語、この世界ではゲルマン語と呼ばれる言語で彼に話し掛ける。

 

「《この場で分からぬ者が居ないと思ったら、大間違いですぞ。ヘルマン・フライジンガー殿》」

 

「おっと、何とも流暢なドイツ語、いや、この世界ではゲルマン語と言いましたな。名前を覚えてもらって光栄です。テレジア殿」

 

 ドイツ語を話したフランツに気付いたフライジンガーは、この世界の言語で挨拶を行う。それから謝罪することなく、馴れ馴れしく接してくる。

 

「貴殿はこの世界には勿体ないお方だ。早速で悪いが、我々第四帝国への転職は考えてもらえんかね?」

 

「私もそう考えたが、私の家は主君に代々仕えている身だ。今さら鞍替えなど出来ん」

 

「《あのような男でもか? この世界の奴らにはうんざりする。馬鹿ばかりで下品な上、ドイツ系アーリア人ですらあの様だ。我々が入植するには、大部分を抹殺するか奴隷化し、浄化せねばならない。無論、民族系ドイツ人以外はな》」

 

 更には自分ら第四帝国へ来ないかと言ってきた。これにフランツが主君と家を裏切れぬと言って断れば、フライジンガーはドイツ語でこの世界の全ての人間を侮辱のような発言をする。

 これには流石にフランツは我慢できなかったが、帝国再建委員会と言う敵を倒すために敢えて我慢した。いや、自分の世界の民草を守るためならば、見返りを求めて助けに来た彼らに頭を下げなければならない。あの戦車や戦闘機で武装した勢力には、自分らでは敵わないので、同じ力を持つ彼らの力を借りる他無いのだ。

 だが、目前のナチスの将官であるフライジンガーはこの世界の人間を見下している。むしろ人とすら思っていないだろう。フランツを引き入れようとしたのも、自分が救ってやろうと思ったから、誘ってきたのだろう。

 そのフライジンガーの態度でフランツは、ナチスが自分らの世界を手中に収め、住民の大部分の抹殺と奴隷化を企んでいることを見抜き、敢えてそれを自分らの言葉で口にした。

 

「フライジンガー殿、今の発言は聞かなかったことにする。何の見返りで助けに来たか知らんが、貴方がた第四帝国はリップシュタット連合と足並みを揃える気が無いどころか、全て奪い取るおつもりのようだ。それに気取られぬよう、心なされよ」

 

「おぉ、怖い怖い。せっかく馳せ参じたのに。まぁ、私も今の貴殿の発言、忘れましょう。では、再会は祝勝会で」

 

 フランツに考えを見抜かれたフライジンガーは眉間にしわを寄せ、睨み付けてきたが、作り笑いを浮かべ、今の発言は忘れると言って挨拶してから去って行った。

 直ぐに主君にナチスの企みを報告するべきだが、フランツはそれを報告することもしなかった。彼はこの世界は一度滅び、再生するべきだと考えているからだ。フランツは魔王にそれを期待していたが、当の魔王はウィッジクラフトに倒された。否、同行していたウィッジクラフト以外に倒されてしまい、その願いは果たされることは無かった。

 望みはあったが、今の状況では期待できない。何せ、魔王を倒した後に急に攻め込まれたのだ。あの街は当に帝国再建委員会に抑えられている。忍ばせていた密偵は既に殺されている事だろう。

 故にこの世界は、帝国再建委員会かリップシュタット連合のどちらかに委ねられた。

 

「(神よ、私と主君はどうなっても構わない。どちらが勝利しても、家族と民草が飢えぬように計らってくだされ)」

 

 フランツは今は亡きこの世界の神に祈りつつ、決起集会で会話を弾ませる主君ベルンブルク公と連合の盟主たちを見守った。

 そんな時に、連合に取って英雄的に死んだ男が決起集会の会場に乱入してくる。

 

『止まらんか! ここを何処だと思っている!?』

 

『下っ端が退けっ! 俺はベルンブルク公に用があるんだ!!』

 

『無礼者め! なれば正式な手続きをして面会しろ!!』

 

『うるせぇ! 今はそれどころじゃねぇんだ!!』

 

「ぬわっ!?」

 

 出入り口のドアで騒音が聞こえた後、ドアを突き破ってその乱入者が会場へと乱入して来た。その名はウィッジクラフト。連合やこの世界において戦死したはずの英雄だ。

 

「あ、あの男はウィッジクラフトではないのか!?」

 

「どうしてここへ? 先ほどは戦死したと発表されたぞ!?」

 

 死んだはずの男の登場に会場内は騒めく。そんな高貴な身なりの男たちを他所に、ウィッジクラフトはかき分けながらベルンブルク公の元へ向かって来る。

 

「な、なんだ貴様は!? それにその身なりは何だ!? ここを何処だと思っておるのだ!?」

 

「うるせぇ! 臆病者の貴族が! 俺はベルンブルク公に用がある! 早急に聞かせねばならねぇ話があるんだ!!」

 

「なんだあの老人は? ベルンブルク殿、貴公の知り合いか?」

 

 自分の身なりを見て出て行くように促してくる貴族の一人を突き飛ばし、ウィッジクラフトはベルンブルク公の元へ向かって来る。無礼にも等しく向かって来るウィッジクラフトに、ダモンはベルンブルク公に知り合いかと問う。

 

「い、いや、わしは…」

 

「部外者と言うわけだな。このわしが追っ払ってくれるわ。おい、ジジイ! 身分を弁えんか!? ここは上級貴族と王と皇帝、将軍のみが招かれる集会であるぞ! それを分からずに、ごわっ!?」

 

 押し退けてやって来るウィッジクラフトに対し、前に立ったダモンは意気揚々と罵倒するが、払い除けられる。

 

「貴様! 身分卑しき分際で…!」

 

「ベルンブルク公! この同盟は罠だ! 異世界から来たそいつ等はこの世界を支配しようとしている!!」

 

 床に倒れたダモンは腰のホルスターに収めてあるM1892リボルバーを引き抜き、それでウィッジクラフトを撃とうとしたが、彼が叫んだ事実で撃つのを忘れてしまう。この叫びに一同は凍り付いて会場は静音で包まれる。そんな状況下で、ウィッジクラフトは集会に集まった皇帝や王、貴族たちに向けて続けた。

 

「皇帝に王たちよ! 奴らは侵略者だ! 奴らは助けに来た振りをして、俺たちの世界をかっぱらうつもりだ!」

 

「嘘を付くな! このジジイめ! イヴ人共に何か吹き込まれたか!?」

 

「生きていたことには驚いたが。貴公、なぜ生きてここへ来ているのだ?」

 

「そ、それは、奴らに解放されて…」

 

 リップシュタットに指差しながら真実を話すウィッジクラフトであったが、誰もが信じなかった。何せ彼は数時間前まで帝国再建委員会に囚われていた。いきなり帰って来て、助けに来た勢力が実は侵略者だったのだと言えば、敵に洗脳されて返されたと疑われるほか他に無い。

 ベルンブルク公に問われたウィッジクラフトは顔を真っ青にして解放されたと正直に言えば、疑いは更に深まり、真実味は無くなる。

 

「解放された…だと…!? 貴公、魔王討伐の成功の際、わしの前で真に魔王を倒したのはハルとか言う娼婦だとのたまっていったな? 戯言だと思って聞き逃してやったが、今度はわしの異世界の友人たちを侵略者だとほざく! それに何だこの匂いは!? 女の香水の匂いでは無いか!」

 

「ち、違う…! お、俺は…! 俺は女を当てがれてもなけりゃあ、酒も飲んでねぇ! 奴らに、香水を、香水をかけられたんだ!!」

 

 先ほどの勢いを失くしたウィッジクラフトに対し、ベルンブルク公に集会を台無しにした老人に対して容赦なく攻め立て、彼から臭う香水の香りを嗅ぎ付け、それを問い詰めた。

 これにウィッジクラフトはありのままを話すが、誰も信じようとはしない。スパイだと判断され、ハルバートを持った衛兵たちに包囲される。主君を守る役目を果たそうと、真実を知るフランツですら、連合結成記念に貰ったルガーP08自動拳銃の銃口を向ける。

 

「香水を掛けられた? 言い訳は止せ! 貴様の仲間とミドルド要塞の兵士たちは将軍を含めて皆処刑されたのだぞ!」

 

「な、何ッ!? み、みんな殺されちまったのか!? 奴らは仲間と兵士たちの身を保証すると…!」

 

「裏切られたのだよ、ウィッジクラフト。貴殿は我らの連合を乱す捨て駒として、奴らに利用されたのだ」

 

 更に処刑されたことをベルンブルク公が告げれば、それを知らなかったウィッジクラフト膝から崩れ落ち、真実を知って絶望を覚える。更に追い打ちを掛けるように、機嫌を悪くしているリップシュタットは帝国再建委員会より自分らの連合を乱すための捨て駒にされと告げた。

 身の安全を保障すると言っていたのに、処刑されたことを知って挙句に捨て駒にされて絶望したウィッジクラフトは、睨み付けて来るベルンブルク公に問い詰める。

 

「お、お前は…! お前は自分の利益の為に、この世界を売ったのか…!?」

 

「なっ!? 急に何を言い出すかと思えば、わしを売国奴呼ばわりか!? この無礼者めが!」

 

「ベルンブルク公、これ以上この老人を置いておけば、何を言い出すかも分からぬ。我が衛兵につまみ出させよう」

 

「侵略者のお前は黙ってろ! 俺はベルンブルクと話してるんだ!!」

 

 自分の利益の為にこの世界を売ったのかと問うウィッジクラフトに、ベルンブルク公は激怒してグラスを彼に投げ付けた。割れた破片がウィッジクラフトの肌に突き刺さる中、これ以上、彼に喋らせたくないリップシュタットは衛兵に追い出させようとする。

 両脇に控える衛兵はウィッジクラフトを捕まえようとしたが、振り払われた挙句、右の衛兵が腰に吊るしてある剣を抜いてリップシュタットに黙れと叫ぶ。剣を抜いたウィッジクラフトに、周囲の者たちは下がり、衛兵らは自分の得物を向ける。

 

「剣を抜いたぞ!」

 

「き、貴様! わしを殺す気か!?」

 

 衛兵より剣を奪ったウィッジクラフトは完全に敵と認識された。敵と認定されても、ウィッジクラフトは帝国再建委員会より聞いたリップシュタット連合の真実を語り続ける。

 

「奴らに魂を売ったお前らは気付かないだろな! あいつらは俺たちの世界を無茶苦茶にする気だ! 魔王より酷い奴らだ!! そこに居るヘンテコな鍵十字を左腕に付けた奴らは、俺たちを虐殺する気だ! 皇帝に王に貴族共、お前らも対象だぞ! 奴らは俺たちなんて生きる価値のない生き物だと言っているんだ! そこの豚野郎も含めてな! もう一度言うが奴らは俺たちを助ける気が無い! 俺たちの世界を乗っ取る…」

 

「そこまでだ。頭のイカレタ老人」

 

 最後まで言い終える前に、ウィッジクラフトはいつの間にか背後に来ていたフライジンガーが持つピストルで後頭部を撃ち抜かれて射殺された。後頭部を撃ち抜かれ、射殺されたウィッジクラフトの死体は豪華な床の上に倒れ込む。その死は英雄ではなく、撃ち殺された老人の物であった。

 息絶えたウィッジクラフトの元へフランツは近付き、敬意をこめて頭を下げた後に見開いた両目の瞼を閉じる。

 床にウィッジクラフトより流れる出る血が広まる中、、決起集会を台無しにした老人の死体を片付けるように、ベルンブルク公は告げる。

 

「その老人の死体を片付けろ! テレジア!」

 

「御意に」

 

 主君の指示に応じ、フランツは衛兵たちと共にウィッジクラフトの死体を持ち上げようとする。

 

「(そう恨めしそうな顔をしなさんな。貴公に取っては理想ではない死に方であるが、ここで死ねた方が幸せだ。何せ、貴公の愛した女には、貴公が憎む相手の子が宿っているのだからな)」

 

 敬意を表しつつフランツは心の中で、知れば衝撃を受けるであろう真実を告げながらウィッジクラフトの遺体を丁重に会場から運び出した。

 

 かくして帝国再建委員会とリップシュタット連合との火蓋が切って落とされようとしていた。




この連合、纏わりが無さ過ぎる!

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