艦これの進め方   作:sognathus

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提督の期待に応える為
そして提示された報酬を貰う為
妖精たちは全力で仕事に取り組み1時間で彼の依頼を完璧に実現した


17:入渠

「えへへ、えへへ~♪」

 

尻を浮かせて浴槽の縁を掴んでバタ足する川内。

彼女はかつて無い程に上機嫌で幸せな気持ちで一杯だった。

 

実戦では怪我はしたけど最高に血が沸く夜戦ができた。

元々夜戦で大活躍したいという本能的な欲求が強い川内だったが、前任者の下ではその欲求すらどうでも良くなっていた。

だがそれでもやりたいという願望は変わらずに残っており、今回それが爆発したというわけである。

 

(あの時は本当に楽しかった……。本当に生きてるって感じがした……。あのまま相打ちで沈んでも軍艦としての本懐を遂げられて満足できそうだった。でも、でも……)

 

仲間と鎮守府に帰ってみたら信じられないほど大きい風呂が自分達を待っていた。

聞けば浴場建築の発案者は提督で、どういう手法を取ったのかは分からないが妖精にかなり働きかけたらしい。

何故彼がこんな素晴らしいものを用意してくれたのか、その理由を大淀から聞いた時川内は思わず目が点になった。

 

「ぷっ……っく、あはは。何だよ『水じゃ冷たそうだから』って……」

 

(ホント……なんだよ……)

 

川内は今度は自然に溢れ出した涙を止められずに、他の者にその姿を見られるのを恥じて浴槽に潜って身を隠した。

 

 

「あー、川内さん忍者ごっこしてるー」

 

身体を洗い終わり、湯に浸かる為にペタペタと足音を響かせて進んでいた皐月が自分もやりたそうに川内を指差す。

しかしそれをやんわりと後ろから龍田が彼女を抱き上げて止めた。

 

「うふふ、駄目よぉ? 今は川内ちゃんをゆっくりさせてあげてねぇ?」

 

「うわっ龍田さん?! うん、うん! 分かったから下ろして!」

 

「ついでだからお姉さんがお風呂まで運んであげるわぁ。さ、一緒に行きましょ~」

 

「えっ、そんな別にいいって。あぁぁぁー……」

 

担ぎ上げられて湯気の中に消えていく皐月を見て電が可笑しそうに笑う。

 

「ふふ、楽しそうなのです」

 

「電、貴女は嬉しそうね」

 

隣で髪を洗っていた朝潮も微笑んでいた。

 

「全く声が響くんだから騒ぐんじゃないっての」

 

と、口では注意しながらもお湯の気持ち良さにはしっかり顔を緩める霞。

 

3人も帰ったらでかい風呂ができていたので吃驚した。

入渠所があった場所にそんなものが口を開いて待っていたので、どうしたものかと迷っていたところに出撃メンバー以外の者を連れて来た大淀が教えてくれたのだ。

 

『ここが新しい入渠所ですよ』

 

最初にそれを聞いた時は信じられなかったが、確かに桶に溜めたお湯を被るだけで疲れや傷がどんどん癒えていくのが解った。

そんなとんでもないものをこの規模で実現し、それを艦娘用とした提督の考えは、艦娘を大事にする他の提督からは共感を得られるかもしれないが、艦娘をどちらかというと兵器に近い存在と捉えている軍上層部からしたら狂っていると思われても仕方がなかった。

 

電は身体にかける湯の一杯一杯に提督への感謝と畏敬の念を込めて誓うのだった。

 

(私は、あの人の為に頑張る……!)

 

 

少し離れた浴槽では羽黒と大淀が話していた。

 

「いいんでしょうか……。私達、特に怪我はしてないのに……」

 

「提督がここは入渠以外の目的でも使用を許可していますし、問題はありませんよ」

 

「そ、そうですか? そうですよね……。じゃあ……はぁ……」

 

大淀のお墨付きを得た事で心のつかえが取れた羽黒は漸く気持ち良さそうにお湯の中により深く身を沈めた。

大淀はそんな彼女の隣でチラリと横目で湯に浮かぶ大きな2つの山を見て、自分の中に今までなかった競う気持ちが生まれるのを感じた。

 

(全く……。今までは気になる事なんて有り得なかったのに……。まぁ流石にあの人に浴場から生まれる不和の可能性にまで考慮すべきなんていうのは無理な話よね)

 

大淀は胸の前で腕を組んで小さく笑った。

 

 

別の所では五十鈴、鳳翔、明石が話していた。

 

「はぁ……気持ちいー……。あの提督、何者なのかしら」

 

「やっぱり? 五十鈴も気になる?」

 

「そりゃここまでのもの見せつけられたら気にもなるわよ。最初は前の人よりマシかなくらいにしか思って無かったからね……」

 

「私はまだちゃんとお話しした事がないので間近で提督を見ている二人がちょっと羨ましいわね」

 

「んー……見た目は普通ですよ? オジサンで冴えない感じだけど、まぁ普通。ねぇ明石?」

 

「そうねぇ……。まぁ私もまだそんなにちゃんとお話ししたわけじゃないけど……良い人、だとは思う、かな?」

 

「まぁそれは確かに。艦娘(私たち)なんかにここまで良くしてくれるなんて、ちょっと変わってる感じがするよねぇ……」

 

「そうですか……」

 

人員不足が理由で未だに所定の位置から動くことが出来ないでいた鳳翔は、まだ見ぬ提督の存在に強い興味を持ち始めていた。

 

(今度大淀さんに提督のお好きな食べ物とか訊いてみましょう。もしお酒も好きなら……っ、それはその時考えましょう)

 

嫌な記憶を思い出して一瞬眉を(ひそ)めた鳳翔だが、それに気付いた者は誰も居なかった。

 

 

所変わって再び川内がいる浴槽には、皐月を解放した龍田がいつの間にか彼女の隣にいた。

 

「そういえば提督はお風呂はここ使わないのよね?」

 

「えっ」

 

潜っていた状態から顔を半分出していた川内は龍田の言葉を聞いて顔を出した。

 

「提督は自室にお風呂があるから、まぁ使わないでしょ」

 

「まぁそうだけど……。私達だけこんなに大きいお風呂に入れて提督は普通の……。まぁ足は伸ばせるんだろうけど、そんなお風呂というのも少し悪い気がするわねぇ」

 

「まさか一緒に入ろうとか提案する気じゃ……」

 

「あの人がそんな提案に乗ってくると思う~?」

 

「それは……ないと思うけど……」

 

「私が言ってるのはぁ、何か提督にしてあげられる事はないかなぁって事」

 

「戦果をどんどん上げるっていう事じゃあ……ないよねぇ」

 

「そうねぇ。それはそれで上からは評価される事になるけど……。まぁ、お互い何か考えておきましょう」

 

「……分かった」

 

川内はそう言うと再び顔を半分沈めブクブクとお湯を泡立たせるのだった。

 

 

この時、鎮守府に所属する艦娘の間での提督の評価は全て上方修正されていた。

それは艦隊を指揮する提督にとっては有り難いことであったが、かといって大体彼の身近にいる大淀ほど提督とコミュニケーションを取っている艦娘はいなかったので、人物や性格面ではまだよく分からない、取り敢えず悪い人ではなさそうという程度に留まっていた。

 

そしてその頃提督は……。

 

(ぜ、全員風呂に入りに行くとは……)

 

確かに自由な入浴は許可したが、まさか仲間全員で一緒に風呂に行くという女性の行動心理までは予想できず、一人でポツンと仕事をしていたのだった。




あまり妄想が膨らまない風呂回ですみません。
まぁ話作ってて敢えて意識することもないかなぁと思いまして。

もう17話……いかん、あと一話くらい本日中に投稿できたら感想返信とかします。
思いつくからとずっと作ってたら頭痛くなってきたorz
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