艦これの進め方   作:sognathus

19 / 60
加賀は歓迎するけど
運用するかは話は別
そんな話……で、納得するかどうかという話です


19:鳳翔

「は? 料理?」

 

加賀は提督から受けたある命令に目を丸くした。

 

「提督は私に厨房(ここ)で料理番をしろと仰るんですか?」

 

明らかに不機嫌な声に鋭い眼光まで添えて遠回しではあるが明確に提督の命令を拒否したいと意思表示をする加賀。

しかしそこは提督にも譲れぬ事情があったので怯まず説得にあたった。

 

「いや、お前の力は認めているよ? これからもっと強くなっていくのも俺は知っているし」

 

「それなら何故……!」

 

「強いからだよ」

 

加賀は提督が言った意味が解らず尚も詰め寄りそうになったが、(すんで)のところでその意味を自分なりに解釈して提督に訊いた。

 

「私の燃費が問題なんですね?」

 

「ご明察。更にうちには問題がある」

 

「……そもそも備蓄してる資材と資源が少ないと?」

 

「その通り」

 

一通りの事情を察して加賀はそれでも滾る不満を沈静化させる為に一度深く呼吸した後に頷いた。

 

「分かりました。そういう事なら仕方ありませんね。しかし1つだけどうしても解せない点があります」

 

「どうぞ」

 

提督は手を向けて先を促した。

 

「そもそも何故料理なんですか。料理なんて細々した事は私には向いてないと思います」

 

「いや、それは……」

 

その事情も提督は話そうとしたが、加賀の後ろに()()()の姿を認めて、その人物に向かって頷いて説明を任せた。

加賀も提督が自分の後ろに注意を向けていた事に気付いたので振り返ろうとしたのだが、それより早くその人物が加賀に声を掛けてきた。

 

「料理、()()()……?」

 

「!」

 

その声を聞いた瞬間、加賀は身体に電撃が走ったように全身を硬直させた。

『彼女』は後ろから震える加賀の肩に手を置き、静かではあるが明らかに圧のかかった声で加賀に語りかけた。

 

「加賀さ……()()()? 私は悲しいです。私はここで一所懸命皆のご飯を作って活力を維持するという大事な役割を果たしているのに、よもや貴女から、料理()()()という言葉が出るなんて……」

 

「ほ、鳳翔さん……」

 

加賀が震える声で後ろの人物の名前を呼ぶ。

彼女が振り返った先にはその言葉の通り、厨房の番人である鳳翔の姿があった。

彼女は加賀に一度微笑みかけると「ちょっと待っててね」と言ってその横を通り過ぎて提督の方に向かってきた。

 

「え?」

 

その展開は提督も予想外だったらしく、小走りで接近してきた来た鳳翔に驚いた顔をする。

 

「あれ、どうしたの?」

 

「あ、いきなりすみません。貴方が私達の新しい提督なんですよね? 恐縮ですが、遅い自己紹介をさせて下さい。軽空母の鳳翔と申します」

 

「ああ、はい」

 

「提督……申し訳ございません。私、貴方にいろいろと良くして頂いていたのに今までご挨拶どころかお姿も存じ上げてなくて……」

 

「いやいや、そんな。こちらこそ食堂に顔を見せなかったせいで挨拶が遅れてしまって。どうぞ宜しく」

 

ここの鎮守府の過去の事を色々察していた提督は敢えてその際に握手を求めなかったが、意外な事にその時は鳳翔の方から手を差し出してきた。

 

「はい、こちらこそ宜しくお願い致します」

 

提督がその手を握るより早く鳳翔の方から手を握ってきた。

彼女の手は華奢だったがそれと同時に心地良い温かさを提督は感じた気がした。

握手を終えた鳳翔は加賀に向けたものとは違うどことなく艷やかさを感じさせる笑みを提督に送ると「さて」と本番はこれからといった様子で加賀の方に向き直った。

 

「提督、後は私にお任せ下さい。必ず加賀()()()を厨房に立っても恥ずかしくない女にしてみせます」

 

「あ、うん……」

 

鳳翔の迫力に圧された提督はそんな曖昧な返事しかできなかったが、鳳翔の背中越しに見た加賀の様子には思わず同情した。

加賀はよほど女性としての鳳翔が怖いのか目に涙を滲ませて提督に無言で助けを求めていた。

 

(提督、助けて……)

 

加賀の悲痛な助力を求める意を酌んだ提督は申し訳程度ではあったがフォローする事にした。

 

「あの、鳳翔? ほどほどにな?」

 

「提督はお優しいのですね。大丈夫です。泣かせるような酷い事をするつもりはありません」

 

(いや、もう実際に泣いてるんだけど)

 

提督は無言のツッコミを入れたが、これ以上介入すると加賀に向けられた鳳翔の機嫌が更に悪化する気もした。

どうしたものかと悩んだ挙げ句、提督は胸ポケットに入れていたある物の存在を利用した妙案を思い付いた。

 

「……?」

 

鳳翔は自分の後ろからまだ提督の気配が無くならない事を妙に思った。

神経を集中して窺ってみると、どうやら彼は自分の服を(まさぐ)って何かを探しているようだった。

 

「あの、提督? どうか致しましたか?」

 

「いや、これから外に出て煙草を吸おうと思っていたんだけどな。どうもライター(火種)が見つからなくて……」

 

「あら」

 

「あ、多分部屋に置き忘れていたかも」

 

提督が部屋に忘れたライターを取りに戻る仕草で二人に踵を返した所で鳳翔が提督を呼び止めた。

 

「お待ち下さい」

 

「ん?」

 

「宜しければ、私がお持ちしますよ?」

 

「え? ライター(火種)を?」

 

「はい。直ぐにマッチ(火種)をお持ちしますので外でお待ちになっていて下さい」

 

「いや、ここで貸してくれたらいいけど……?」

 

「お・も・ち・し・ま・す」

 

「アッハイ」

 

本当はただもう少し鳳翔の気をそらして少しでも斜めになった鳳翔の機嫌を戻すのが目的だったのが、予想外の鳳翔の反応と凄みに提督は根負けして彼女の提案を受けることにした。

 

(お……)

 

そんな彼の視線の先では助けられた加賀が何度も自分に向かって感謝の意を込めたお辞儀をペコペコとしていた。




感想の返信途中での投稿です
また少し忙しくなるのでペースは落ちます
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。